極指揮官道   作:瑚椒

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ハロウィンなので初投稿です


第八話

 10月31日と言えばそう、ハロウィンである。それはこんなご時世になっても変わることは無い。

 そしてこの基地はグリフィン管理下の街に近い為街の子供がお菓子を貰いに基地に遊びに来るのだ。

 今回遊びに来たのは街の子供達である。

 

「「「トリックオアトリート! お菓子くれないとイタズラするぞ!」」」

 

 子供達は案内された部屋の前でお菓子を強請る。すると扉を開いてジャック・オー・ランタンを被った大柄の男性が姿を表す。

 それだけなら良かったのだが着ている服が指揮官のそれではなかった。

 上下をいかにも高そうなスーツで固めており中には赤のワイシャツを第二ボタンまで外している。首には白いマフラーをかけている。

 

「ほぉれ……どのブツがええんや、言ってみ? お?」

 

 言い方が最悪である。悪ガキ達は怯えてしまい腰を抜かす。

 

「なんや? イタズラしたいんか? お前らゴンタやのぉ」

 

 だが悪ガキ達は恐怖の余り声が出せない。それを見兼ねた今日の副官、ガバ子が助け舟を出す。

 

「えーと……あんまり怖がらなくていいですよ〜指揮官はこう見えて優しいので」

 

お、おかしを、く、くくれないと……」 

 

「くれんと、なんや? 言ってみ?」

 

 指揮官は被っていたジャック・オー・ランタンを外す。するとクソガキ達はまた固まってしまう。そう、この基地にいる人形達は慣れているかもれないが外部から来た子供達には刺激が強すぎるのだ。

 ピッチリと固められたオールバックに鋭い目付き、それに加えて額から右目にかけて真っ直ぐと伸びている切り傷。その上にサングラスを掛け中からは鋭い眼光が覗いている。

 指揮官を知らない外部の子供達には刺激が強すぎたのだろう。その場にへたりこんで泣き始めてしまう。

 

「あっ……」

 

「ちょっと指揮官!? 外さないでって言いましたよね!?」

 

「はい」

 

 ガバ子は泣き出してしまった子供たちをあやしている。そしてしばらくして子供たちは泣き止んでくれた。

 騒ぎを聞きつけたG36cに子供の相手を任せてガバ子は指揮官に説教をしている。

 

「いいですか。指揮官。絶対にジャック・オー・ランタン(それ)を取らないでくださいって言いましたよね!!」

 

「はい」

 

「はい、じゃないです! これで何回目ですか! もう三回目です!」

 

 そう、これが最初ではないのだ。だがこれでも服装などの見た目はかなりマシになった方なのである。

 最初なんか仮装に力を入れすぎて子供が気を失うほどだったのだ。流石に血糊を使うのはまずいですよ! 

 

「いいですか? 今度はぜっっっっっっっっっっったいに外さないでくださいよ!」

 

「はい……」

 

 そして今度訪れたのは二組の少女である。

 

「「トリック・オア・トリート! お菓子くれないとイタズラするぞ!」」

 

「イタズラやt──」

 

shut up(黙れ)!! 

 

 Q;コイツマジ? A;本気(マジ)である。

 

 巫山戯ずに真面目にやっているのだからタチが悪い。お前そろそろクレームくるぞ、と言わんばかりの事をしているが何故か未だにクレームが来ていないのである。不思議だなぁ(すっとぼけ)

 さて、話を戻そう。指揮官はガバ子に後ろから思いっきりぶん殴られ倒れてしまう。それを少女達はポカンと口を開けている。

 

「えっと……はい、お菓子だよ。また来てね」

 

 頬を引き釣らせながらガバ子はお菓子を子供達に渡して素早く気絶した指揮官を部屋の中へと引きずり込む。

 とりあえず身体を揺さぶってみるが全く反応しない。うんうん、と頭を悩ませるも状況は変わらない。

 

「とりあえずこれ以上騒ぎにならないからいいか……」

 

 それでいいのかガバ子……

 そして指揮官を椅子へと座らせたガバ子は一息ついて指揮官の姿勢を見る。足を組ませ肘をついて頭を傾けている。なんだろうか、この座り方だと勇者を待つ魔王にしか見えない。

 するとそこにシカゴが執務室へと入ってくる。 

 

「よぉ! アニキ! 今いいか?」

 

 咄嗟にガバ子は机の下に潜り込み身を隠す。

 

「あれ? おい、アニキ? アニキッ!?」

 

 シカゴは指揮官の肩を揺さぶるが全く反応がない。シカゴは顔を青ざめ急いで誰かを呼びに飛び出ていく。

 

(あれ? これっと相当まずいのでは?)

 

 ガバ子は額に汗を滲ませる。急いで机の下から出ようとしすると執務室の扉が勢い良く開かれる。

 

「ご主人様! ご無事ですか!」

 

 G36とシカゴが完全武装で突入してくる。ガバ子は完全に出ていくタイミングを見失う。

 

(ヤバい……ヤバいヤバいヤバい!!)

 

 見つかればタダでは済まないだろう。このまま見つかれば解体処分を受けるのではないか、等と思考がマイナス方向に振り切れてしまったガバ子は机の中でガタガタ震えるしか無かった。

 しかし、ここで奇跡が起きたのだ。

 

「う……うん?」

 

 指揮官が目を覚ましたのである。

 

「あれ? お前らどうしたんや?」

 

「アニキ! 大丈夫か! いったい誰に!?」

 

「ご主人様! ご無事ですか?」

 

 指揮官はポカンとした表情をする。そりゃ気絶して起きればいきなり部下二人に問い詰められているのだから。

 そしてふと下を向くとガタガタと膝を抱え震えている。指揮官は自分の身に起きた事を思い出し口を開く。

 

「いやぁ~昨日ちょいとばかし夜ふかししすぎたみたいや。爆睡しとったわ」

 

 それを聞いて二人は安心して肩の力を抜く。

 

「なんだよ……心配したんだぜ、アニキ」

 

「そうですか、ではお休みになられますか?」

 

「そうやなぁ……少し休むか。そうや、少し紅茶淹れてきてくれんか? それとシカゴはちょっとお菓子持ってきてくれんか?」

 

「はい、では三つ淹れて「四つ頼むわ」……はい、では失礼いたします」

 

「分かったぜ。それじゃ持ってくる!」

 

 そして二人が出ていったのを確認して指揮官はガバ子に声をかける。

 

「ガバメント、ちょっとええか?」

 

 ガバ子はビクリと肩を震わせて顔を上げる。目が腫れ涙目になっており、指揮官はそんなガバ子に手を差し出す。

 恐る恐る手を伸ばし手を握ってくれたのを確認して机の下からガバ子を連れ出す。

 

「どしたんや、お前らしくないのぉ」

 

「だって……わ、わたしが……しきかんを……」

 

 指揮官はガバ子の背中をなでて落ち着かせる。

 そして落ち着いた頃に理由を聞く。

 

「なんや、そんな事をさせる訳ないやろ」

 

 指揮官は涙を拭い頭を撫でる。

 

「ケツモチは任せぇ、部下の面倒を見るんも上司の役目や」

 

 この後指揮官はガバ子達とお菓子を食べながらティータイムを満喫したのであった。

 

「ありがとうございます。ダーリン」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「いえ、気のせいじゃないですか?」




極主夫道!1~3巻好評発売中!買ったよなァ!!!!!!!!!

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