北海道旅行日記   作:茉宵 悠瑠璃

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 こんばんは。ゆるりと申します。

 現在中間テスト真っ盛りなのに投降()している、逆境ほど筆が進む現実逃避型駄目人間です。


 舞台名は2話目で出しますが、お分かりになった方は感想欄で大喜利合戦をどうぞ。

 私が彼の地を訪れたのは大学に入学して数ヶ月だったので当然、父の運転する車ででした。多分私自身は浮いた話とは一生無縁なんじゃないかなぁ。


 最初なので短いですが、ごゆるりとどうぞ。


旅は道連れ

 

 

 旅は道連れ云々とは誰の言葉だったのだろうか。

 

 

 某携帯式家畜やら、人外相手に辻斬り御免なファンタジーのおかげで「旅」という行為は過度に美化されつつある現代だが、この言葉は数百年前から変わらない。そしてこの後に続く言葉もまた大して変わらない。

 

「あっ、ソフトクリームだって!』

 

 

 誠に世は情け無い。

 

 

「よくそんなに氷菓子を食べてお腹を壊さないね。」

 

 主に僕の体調に情け(容赦)ないのが、僕の旅の連れだ。大学でのハブられ仲間とも言う。だというのに体調不良の道連れにはなってくれないツレない…友人である。

 

「じゃあ、私のおごりって事で。」

 

「ミックスで。外にいるよ。」

 

 あぁ、空が青いなぁ…

 

 うん、でも、華の咲くような笑顔でコーンを両手にした連れにつき合えば、だ。肌寒い夜更けに寒空の下を連れ回された挙句、冷えた車内で暫く待たされる。つまり、今のうちに耐性を付けるに越したことはあるまい。

 

 歩きながら手渡されたソフトクリームは竹炭味だった。話聞けよ。え? ミックスなんてない? あとはトマト味…そうですか。

 

 この時期はこの地域の観光シーズンの真っ只中のようで、少なくとも僕達の町のお祭り並みの賑わいだ。これが5月から6月の中旬にかけて毎週末この有り様だというのだ。大学が丸一日休みの平日があれば良かったのだが、生憎、僕のような劣等生は苦手科目が評定を下げないように大量に科目を選択している。暇な平日なんてそうそうないのである。

 

 やっとの思いでフードコートのある建物の出入り口から離れ、僅かに人脚の離れが早い野菜直売所前のベンチに二人でどっと座り込んだ。

 

「あーぁ、カップルだったら間接キスとか気にしなくて良いから、一つずつ頼めたのになぁ。」

 

「それ、君が気に入らなかったら僕が全部食べるハメになるよね。」

 

 日陰のベンチは少し冷んやりとしていて、何気なく重ねられた手とは裏腹な言葉。でも、本当に男女の関係とかではなくて、同郷かつ互いに浪人生かつ第一志望じゃない、そんな周囲に溶け込めなかった者同士が吹き溜っているだけの話。

 

 アイスの味? 美味しかったです。でも、さすがに3つ目のアイスともなると舌の付け根にじわじわとねちっこい甘みが残る。それにいくら初夏といえどもお腹は冷える。

 

「ホットコーヒー「がこわい!」…僕に行かせてもコロッケは買わないよ。」

 

 隙きあらば欲望をねじ込んでくるが、甘い。さっきここの駐車場横の昇りを見て、もの欲しげな顔をしていたのは確認済みだ。

 

「うぅ〜、ケチ」

 

「僕すでに2回ソフトクリームおごってるよね。」

 

 金の貸し借りはしないのが友情の秘訣と誰かが言っていたが、僕達の場合は程程の妥協で成り立っている。いや、僕は諦觀で、彼女は心底考え無しなだけだ。

 

 初夏の風に身をまかせるように彼女に手を引かれて喧騒溢れる建物の中へと戻った。

 

「なんでアイスと一緒にコロッケを買わなかったんだい?」

 

「おいしい(と一見思える)物は二人で食べたいでしょ?」

 

「おかしいな。言葉だけならドキリとしても良いものなんだけど、君が言うと毒味役にされる未来しか思い浮かばない。」

 

 彼女はケタケタと笑いを返すだけだった。

 

 昼時が近づいて蛇どころかアナコンダになりそうな券売機前、僕達は他愛も無い話で暇を潰しながらも、“どこで食べるか”という極めて重大な問題に真剣に取り組んでいた。

 

「先のベンチはもう座れないと考えて良さそうだね。」

 

「車で良いんじゃ無いの?」

 

「だが、駐車場に日差しを遮るものは無いから、とてもあつ「ここのフードコートにしよっか」…座れれば良いのだけどね…」

 

 道産子にとって近年の5月末のこの猛暑は辛いものがある。確か、本州では梅雨というジメジメした季節がらしいけれども、道民には7月頃の長雨が「梅雨ってこんな感じかな」くらいの扱いで、むしろこの時期は「そよかぜ〜」と隣ではしゃいでいるのが風に飛ばされ掛けているくらいで丁度良い。

 

 そして漸く券売機の前に辿り着いたのだが。

 

「よぉーし、いざ、菜の花コロッケふた…あり?」

 

 彼女の言葉が止まったので覗き込んでみると案の定硬貨の数が圧倒的に少なかった。精々がコロッケ一つ分か。

 

「小銭が足らないな。コロッケは君の分だけにしよう。コーヒーは?」

 

 彼女がガソリン代を出す代わりに僕は半ばタクシー扱いに甘んじている。ならば、わざわざ過分に紙幣を崩してまで間食を奢られる事は求めない。ただ、項垂れている事だけは後ろに並んでいる他人でさえも分かるであろう。当人がどれ程落ち込んでいるかも含めてだ。

 

「うぅーん、今日は暑いし…」

 

「アイスだね。受け取ったらすぐに出発しようか。」

 

 やたらと金属音を響かせるソフトクリームのお釣りをボタンの連打で消化し終え、排出された3枚の食券を持って先より小さい精々がカナヘビ程度の列に並び直す。少しだけ、ほんの少しだけ心が弾むようで普段は厭うこの動物ごっこでさえも、足取りが軽くなるよう。

 

「えっ、でもそれじゃぁ君の分が。」

 

「なら、君が見つけてくれよ。僕は君が心惹かれた菜の花で充分さ。」

 

 列が前に進み、促されるままに食券を提示し終えると不意に背後からしがみ付かれた。

 

「そんなこと言われたら、がんばりたくなっちゃうじゃないか。」

 

 どうやら目を合わせたくないのか、前に回した手で僕の帽子をひったくる様に取り上げて目深に被ってしまった。…まて、やめろ、君が今締め付けているのは鳩尾だ。人体の急所だぞ。

 

 

「アイスコーヒーにミルクとガムシロップは…いりませんね。」

 

 

 気不味くて二人して足早に車内に戻ったのは言うまでもない。

 





概要

僕:引き籠って本を読んでれば幸せ。動物が好きなだけで半文系の癖に理系に入って詰んだ。物理が分からん。

私:趣味が風景写真の撮影。家族で出掛けることも多いが、文句も言わずに付きあってくれるので二人旅は好き。美術畑なのに理系にやってきた。センスと点数はあるけど興味がない。


コンセプト

 「僕」は顔立ちもそれなりで面倒見も良いという収入に目を瞑れば有良物件、だってバイトより少ない小遣いで買った本の読破に努めちゃうし…色気より本。春画への興味は秘密。

 「私」は他人を蔑ろにするけど「誰か」や人が積み重ねたものは大切にできる子。少しばかり色事にも興味はあるけど、美しい物に惹かれてしまい二の次になりがち。なお、それらの間に食い気が大量にランクインする。



 この二つの違いがわからない。けど気にしないのが駄目人間の駄目人間たる由来なんだろうなぁ。

 ではまた。


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