GE世界で生きる吸血鬼生活日記 作:クイン・カナリア
期待されてるのか物珍しさか、評価もなさってくださったので頑張りました……。
リンドウ視点は回想です。なので人称がごっちゃになってる可能性がありますがそれは作者の力不足ですので存分にののしってください……。
では、どうぞ
7ヶ月と2日目 嵐……竜巻? 天気は曇り
前回の日記から少し時間が空いた。色々とやることが多くて中々時間が取れなかったんだ。
というのも、この2ヶ月ほど原作の進捗具合を確認してたんだ。練血で夜霧の衣とナイトストーカーを使い隠密重視で動き回り厳重に口と鼻の周りをマフラーみたいに巻いて匂いを嗅げないようにして人がいるところに忍び込み……とか、色々とね。
それで分かったことはやっぱりまだ原作開始まで時間がかなりあるようだ。
まず前提として、神機は作られているが、ピストル型から得られたコアを使って第一世代の神機開発に四苦八苦しているのが現状。
まぁ無理もない。神機はある種生物兵器のようなものだ。開発、運用を開始するまで時間がかかっても仕方が無いと思う。幾ら人類滅亡にリーチがかかっているとはいえ……否リーチがかかっているからこそフェンリルはより人間に犠牲を出さ無いようにしなければいけない。
それに、恐らくもっとコアが集められれば進捗も捗るのだろうがその為に人を使い潰すわけには行かないのだろう。
ゴッドイーターになれる存在は希少だ。使い潰した結果手遅れになって滅亡しましたでは笑い話にもならない。
そんな訳で第一世代の開発が難航しているのだろう。
……これ、俺がアラガミ狩りまくってるからそれも影響して遅れてる……なんてことは、ないよな……?
7ヶ月と4日目 雨
どうも以前の心配は杞憂だったようで、先日漸く開発の目処がたったみたいだ。なんてタイムリー。
めちゃくちゃ安心した。
俺という異物が存在するとはいえ、まだ原作にはあまり関与していない。その過程で元のシナリオから大幅にズレてしまったら……って不安だった。杞憂だったけど。
……原作自体、かなりの綱渡りの上で漸く束の間の平穏を手に入れるんだ。少しでも脇道に逸れていたらそれだけで全てが台無しになってしまう中、俺という存在の所為で未来が変わってしまったら……考えるだけで、震えが止まらない。
未来が変わる、変わってしまう。つまりそれは俺の行動如何によって何千、下手すれば何万の人の命が失われてしまう。もしかしたら考えすぎかもしれない、例え俺の介入があったとしても歴史の修正力がどうにかしてくれるかもしれない。でもそれは
重すぎて……潰れてしまいそうな程に。
7ヶ月と5日目 (アラガミの)血の雨
昨日日記を書き終わったあとふと思ったんだ。……あれ? 人間の匂いマスク付ければ解決しね? って。でもよくよく考えたら無意味だった……あーぁ、ホントどうしようか。
練血がもっと便利だったら良かったんだけどそんな都合よくはいかないしなぁ。
7ヶ月と6日目 晴れ
今更感漂うが、俺が普段使ってる武器……どういう訳か劣化や損傷をしない? みたいだ。いや、もしかしたら素人目で確認しただけじゃわからないだけかも知れないが、少なくとも見た感じすり減っていたり切断力が悪くなったりなどしたことが無い。一体どういうことだろうか。
形あるものはいつか壊れるのが運命のはず。なのにこれは壊れるの様子がない。
……体の中に粒子化して収納している影響だろうか? いやだがゲーム中でも武器ごと粒子化してたはずだ。ヤドリギから移動する時真っ先に武器が粒子化していた記憶がある……だとしたら仕様か? ならムラクモの存在意義は……? 俺にだけゲーム特有のご都合主義が働いてるとでも……? ……そう言えば、アラガミの動作も殆どゲームと変わらない確立化された動きだった。
……あぁダメだ、考えれば考えるほど分からなくなる。
この世界は、俺は。一体なんなんだろう。
7ヶ月と7日目 雪
下手の考え休むに似たり。結局俺が考えた所で何かが判明するわけもなし。ならこの世界を未来が変わらないよう原作には関わらず、のんびり過ごしていくことにしよう。
いつ覚めるとも分からない夢なのだから。
2年と3ヶ月12日目 晴れ
久々に日記を手に取る。最後に日記を書いてから1年半以上経ってるのか……意外と時間が経つのは早い物だ。
今回俺が日記を手に取ったのは、なんていうか……アレだ。なにか吐き出さないと気がすまなかったから。
何を吐き出したいのかって言うと。
――――なぁんで榊博士が俺を探してるっぽいんですかねぇ!?
一体俺が何をした!? この2年間ずっとひっそりアラガミ狩り続けてただけだぞ! 原作にも関与してない自信がある! だのに、なんで……?
可笑しいだろ、絶対可笑しい。もしかして俺の行動が監視されていた……? ならば探す必要は無い、ピンポイントに俺に会いに来ればいいだけだ。それがないってことは監視されてたわけじゃない? じゃあどうして……アラガミを狩りすぎた? いや、アイツらは腐る程いる。俺一人が食事兼戦闘訓練のためにぶち転がした所で変わる部分は無いはずだ。アラガミに食われたこともないからそこから俺の存在が判明することはないはず。ならばなぜ……?
もしかして、記憶の消失は俺にも適用される……? 俺が忘れた何かの中に原作に関与することがあった? 思い当たることがあるとすれば……あるとすれば……そうだ、あの子供二人。ツバキとリンドウ……あの二人が生きてて、尚且つ祈る者のショールを未だ持っていたとしたらそこから俺の存在が露呈する可能性もある……か? 幼い子供とはいえある程度成長していた。記憶力もあるはずだ。もしかしたらあの子たちが喋った可能性もある。
……あぁクソ、こんなのどうしろってんだ。接触するか? バカ言うな出来る訳が無い。博士が探してる、つまり俺の存在によってどこかが食い違った可能性もあるんだ。そんな中で不安要素を……いやでも、ゴッドイーターの護衛があるとはいえ彼がこのまま俺を探している間にアラガミに襲われて亡くならない可能性があるとでも? こんな世界だ、どれだけ用心していても人は簡単に死ぬ。異常な身体能力に感覚、練血なんて力も持ってる俺もゴッドイーターも呆気なく死んでしまう世界だ。絶対なんて保証はどこにもない。
なら出て行って……出ていってどうするってんだ? 説得する? 丸め込まれる未来しか想像出来ない。
……詰みじゃねえか。クソ……。
2年と3ヶ月13日目 クソ喰らえ
ダメだった。護衛のゴッドイーターがアラガミに一掃されて、博士が死にそうになってる場面で見て見ぬ振りなど出来なかった。……もしかしたら、これで良かったのかもしれない……なんて現実逃避だけれど。
意外と博士は俺の事を追求はしてこなかった。聞かれたのはアラガミを神機も使わずに狩れるか否か。子供を二人助けたか否か。今までどのように生活していたのか、その程度。
追求されなくて良かったのか悪かったのか。もう俺には分からない。
それに俺が人の多い所で顰め面をするからか、ゲームでシオが隔離されていた部屋に似た所に居させてくれた。不思議なことに出入りも自由らしい。
……まぁ、それもどうでもいいかもしれない。恐らくとっくに未来も変わってしまっている。今更俺が何かを考えた所でどうしようも出来ない。
……なんで俺がこんな目に……なんて愚痴っても仕方ないんだけど。愚痴らずにはいられない……本当に、なんで
★
雨宮リンドウ
俺があの人と出会ったのは、廃墟となった雪の寺の片隅。近くを闊歩するアラガミの気配に姉と二人隅で怯えながら寒さを凌いでた時の事だ。
そのアラガミはまるで――恐らく気の所為だろうが――俺達が怖がるのを楽しむかのようにギリギリのところを行ったり来たりしていた。正直見つかるのも時間の問題だと、半ば諦めていた時。
――――突然アラガミの体が浮き上がり、地面から剣身が生えてきてアラガミを串刺しにし、そして刺さった場所を起点にするようにまた更に多くの剣身が内側から食い破るようにその身を穿いた。
まるで魔法のようなその光景は、俺達を更なる絶望へ落とす。
小型のアラガミだったから、もしかしたら。万が一にも逃げられる可能性もあった。けれどあれでは万が一にも――――
多分俺はここで一度心が折れていたのだろうと思う。逃れられない絶望に。無力な自分自身に。
諦めて、目を瞑って、ただ運命に委ねようとして――
「……あれ?」
耳に飛び込んできたのは、知らない人の声だった。
目を開けて声の方向を見てみれば、一人の女性が立っていた。でも、安心することは出来ない。だって初めは恐怖しか感じなかったのだから。猫のように縦に割れた瞳孔、赤く紅く輝く不気味な瞳。見たことも無いマントのようなものと無骨な剣を持ったその人は、余りにも無表情で。まるで人の形をとったアラガミかと思ってしまったほど。
姉も多分同じ感想だったのだろう、気丈に睨み返しながらも俺の手を握るその右手は痛いほど強く、そして小刻みに震えていたから。
「……子供?」
人ならざる者のようなあの人の二度目の声は、意外にも透き通った、しかし人間味のある声だった。
少々抑揚が足りないようだが……それでも、その声だけは初めて見た時感じた恐怖を払拭するほど優しさに満ち溢れていた。
「…………まぁ。いいか」
しかし、それもすぐに消え去る。冷たく、まるでこちらへの興味を一切失ったかのような。感情は一切乗らず、機械のように無機質な声音。まるで本当に化け物のようで。
「死にたくなかったら着いてきて」
「……え?」
思わず呆気に取られてしまったのも無理からぬ事だと今でも思う。見捨てられるか、殺されるか。二つに一つだと思っていた中でその言葉はあまりにも予想外に過ぎたから。
聞き間違えかと思い小さく出た言葉はただ一瞥されるだけで無視された。けれど少し先に行ったあと振り返るその姿は嘘には見えなくて。
俺はあの人について行くことに決めた。どうせここで蹲っていても狩られる命なのだから微かな希望にでも縋った方が良いと思えたから。
「これ、食べて」
姉を連れたって彼女について行くこと数分、瓦礫は一切合切排除された比較的綺麗な一軒家にたどり着いた。布団や家具などはないが最低限人が眠れる程度の場所もある。
その中で最初にされたのは少し汚れた、でも暖かそうな毛布を渡される事と、恐らく非常食らしきものを手渡される事だった。
一応警戒はしていたけど、人間三大欲求には逆らえない。
姉と一緒にぽつりとお礼をいって食べたそれはパサパサで、味も濃すぎるくらい舌に纏わり付いて、控えめに言って食えた物じゃ無いくらい不味かった――――けれど。自然と涙が出て来るくらい温かかった。
それから俺は微かにあった警戒も取り去り、あの人に質問攻めするかの如く話し掛けた。少しだけウザがられるかもしれないと考えていたけれど彼女はそんなことを噫にも出さず静かに、けれど律儀にはっきりと答えてくれた。
名前はカナリアだということ。目はちょっとした事が原因でこうなったこと。アラガミを突き刺したのは今も羽織っているマントのようなものであること。アラガミを殺せる事。なんでも聞いた、なんでも答えてくれた。
それが嬉しくて楽しくて、また更に質問を重ねて話して、気付けば寝付いてしまっていた。
今思い返すと我ながら単純だと思っちまうが。今でもこれで良かったと思う。
「……ん、起きた? おはよう」
「おはよう!」
「……おはようございます」
翌日目を覚ました時にはカナリアは既に起きていた。もしかしたら寝てないのかもしれないが、顔には微塵も現れていない。
有り触れた朝の挨拶を返して、俺はカナリアを見つめる。
一度眠って興奮が冷めたのか先日のように質問攻めにはしなかったが、剣を見てなにかしているすぐ側でじっとその姿を観察していた。
姉も一日経ってある程度なにか許容したのだろう、先日よりも警戒は多分に薄れ近くに来ている。
……少し前は有り触れていて、昨日までは夢にも見た穏やかな朝だった。
朝飯もクソ不味くて温かいレーションを食べた後、今度は姉と一緒にカナリアと歓談した。
話してみるとどうにもカナリアは世間知らずというか常識が欠けているのか時々突飛なことを言う。また独り言も多少あり、耳を傍立ててみれば神機がどーのゴッド……なんとかかがこーのと呟いていた。
――――神機が当たり前になった今じゃ普通の独り言だが、まだ初期の段階だったあの時の独り言にしては異様だ。深く考えちゃいなかったが、神機使いの一員になった今ならそれがどれ程おかしな事なのかよく分かる。
それにその後突然襲来してきたアラガミの殺し方についても謎だらけだ。カナリアは
本当に謎だらけだ。……まぁ、あの時の俺はそんなこと微塵も気にすることなくアラガミを瞬殺したカナリアにすげー! カッケーッ!! ってじゃれ着いてたんだが――――
しかし、出会いがあれば別れもあるように。彼女との別れは唐突に訪れた。
翌日の事だ。朝起きて、メシ食って。カナリアが俺達を人のいる場所に連れていく、そういった時のこと。音もなく空から震ってきたゴリラのようなアラガミに彼女は呆気なく殴り飛ばされた。外はアラガミの巣窟だ、けれど周りは雪が積もっている。恐らく、俺達という庇護対象を連れて動くのは不慣れだったのだろう。俺達に注意を割き周りの警戒が疎かになった瞬間を運悪く奇襲された。
その瞬間は状況を理解出来なかった。初めてあった時の強さ。前日アラガミを瞬殺した凄さ。それを目の当たりにしているからこそ訳が分からなかった。
なぜ彼女が吹き飛ばされているのか。家屋にぶつかって真っ赤なザクロが咲いているのか。
「――――っ、ごぇ……」
まだ生きている彼女の口から花が飛び散る。真っ白な雪はそれを吸い取り鮮やかな色を点す。
遠くから誰かの足音が聞こえた。動いたアラガミが追い打ちをかけるように彼女方へ向かっている。それを見て何かしなきゃと焦燥に駆られるも、姉も俺も困惑と徐々に現実を認識し始めたが故の恐怖で体か動かない。動けない。
ダメだ、このまま行かせたらカナリアが、でもなんの力もない俺達がなにかした所でどうなると?
悩んで悩んで悩み抜いて……その時の俺達には、答えなんて出せなかった。ただ、目の前でまた人が殺されるのを見ることしか出来ない――――
「――――ぇろ……っ、にげ、ろぉッ!!」
――――はずだった。体から血を流し血反吐を吐きながら彼女が言う。その言葉が聞こえた瞬間、まるで体は自分のものでは無いかの如く弾かれたようにアラガミのいない方向へ、微かな足音がした方向へ駆け出していた。
――――見捨てた。
後ろからは鈍く耳に残る不快な音がして、アラガミの気配は消え失せる。それでも、足が止まることは無い。後ろを見ないように前だけをみて体全身を使いながら歩きづらい雪な上を走る。
――――もしかしたら、どうにかすれば、助けられたかもしれないのに。
走って、走って……武装した大人たちの元につく頃には、周囲にアラガミの気配どころかあの人の気配さえもしなくなっていた。
――――彼女の最期の姿が瞼の裏に焼き付いて離れない。不器用だった。感情が表情や声にまるで出ない人だった。この地獄のような世界で、優しい、人だった。
――――その人を、俺達は命欲しさに見捨てたのだと。まるで責めるかのごとく、胸が傷んだ。
その後、俺達は極東支部にて保護されることになった。その場所で幼馴染みであるさくやに出会ったり。紆余曲折を経て姉も俺もゴッドイーターになる。誰かを守るための力を欲して。もう二度と、あの時のような無力感と絶望の中見捨てることがないようにと。そう、心に固く誓って
評価本当にありがとうございます!(建前)
評価よりも感想くださいお願いします!(本音)
NG喰らわない程度の罵詈雑言でもダメ出しでもなんでもいいです、特にこれはおかしい、矛盾してる、など物語の根幹に響いて来そうな矛盾箇所、自分でも何度か読み直して投稿してますがどうも見落としは防ぎきれない部分があり……本当にお願いします……(土下座)