運命の刃   作:DestinyImpulse

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 さぁ、いよいよ那田蜘蛛山編に突入だ!

 それではどうぞ!!


八話・出会いと再開

 

 

 善逸と伊之助……個性的な二人が仲間に加わた。炭治郎達はそんな二人が自分達の旅で死なないように稽古をつけることにした。

 

 全集中の常中を習得させるために空気の薄い山の山頂で走り込みや川に放り込んだりと……とにかく肺を鍛えた。

 

 そして数日がたった頃、善逸と伊之助は浴美に渡された瓢箪を持ち息を吸い込み瓢箪に吹き込み破裂させ、破片をあたりに飛び散らせる。

 

「しゃあ!!どうだ!ざっとこんなもんよ!!」

「ええ、よくやりましたね伊之助君」

 

 まだ、常中には至らないが出会った頃よりは格段に肺活量が強化された伊之助の誉める浴美。一方で善逸は禰豆子に怪盗ダイブする。

 

「禰豆子ちゅわ~ん!!俺頑張った「妹に抱きつくな」そんな~!いいじゃないですか、お兄さん!!「誰がお兄さんだ!!!!」

 

 が、炭治郎に止められる。そんな賑やか時間を過ごしていたら……

 

「カァ~!北北東。次ノ場所ハ北北東!"那田蜘蛛山"!那田蜘蛛山ヘ行ケー!」

 

 鎹梟はそれだけを告げると、窓の外へ飛び去る。それを聞いた炭治郎達はすぐさま身支度を整える。

 

 

「では俺達は行きます。いろいろとお世話になりました」

 

 炭治郎達は見送りに出てくれた宿の主の老婆に向かって頭を下げる。それに合わせて伊之助もぎこちなくとはいえ頭を下げる。

 

 老婆も彼らにこたえるように深々と頭を下げる。そして頭を上げると、袂から火打石を取り出した。

 

「では、切り火を……」

 

「ありがとうございます」

 

 炭治郎がそういうと、伊之助は不思議なものを見るように、老婆に顔を向けた。そして老婆が火打石を二回打ち鳴らすと、カチカチという音と共に火花が飛び散る。それを見た伊之助は驚きの声を上げる。

 

「何すんだババア!!」

 

 いきなり大声を上げて老婆に殴りかかろうとしたのを浴美が止める。

 

「伊之助君、これは切り火というお清めの一種で害はありません」

「よく分かんねぇけど、害がないなら別にいいか。」

 

「どのような時でも誇り高く生きてくださいませ」

 

「誇り高く?ご武運?どういう意味だ?」

 

 伊之助の言葉に炭治郎は手を顎に当て少し考えながら答える。

 

「改めて聞かれると難しいな。誇り高く…自分の立場を理解して、その立場であることが恥ずかしくないように正しく振舞うこと…というべきか」

 

 炭治郎が説明するが、伊之助はわけがわからないと言った様子でさらに口を開く。

 

「その立場ってなんだ?恥ずかしくないってどういうことだ?責任っていったい何のことだ?なんでババアが俺たちの無事を祈るんだよ?何も関係ないババアなのになんでだよ?ババアは立場を理解してねえだろ?」

 

「他人を思いやるのが人間というものですよ」

 

「…やっぱ訳分かんねぇ」

 

「いつかわかる時がきますよ。とにかく急ぎましょう…何かが起こりそうな予感がします」

 

「あぁ、急ごう」

 

「あ…俺が先に行くんだ!負けるかーーーーー!!」

 

 炭治郎と浴美は言葉を切り上げるとそのまま急加速しそれに対して闘争心に火が付いた伊之助が追いかける。

 

「イヤー!置いていかないで~!!」

 

 善逸も泣きながら追いかける。

 

 

 

 

 

 

 炭治郎達が那田蜘蛛山についた頃は既に夜になっており明らかに異常であると炭治郎と浴美は気づく。

 

「浴美……」

「ええ、明らかに何かありますね。デスティニーはなんて言ってます?」

 

 浴美にはデスティニーの事は伝えてある。コソコソ話では耳のいい善逸に聞かれてしまうので、ザフト式の手話で会話する。

 

 炭治郎に血涙の痣が現れ強化された第六感が那田蜘蛛山に居る者の気配を感じ取った

 

 

「…………何体かの鬼が居る。多くの隊員も居るが……何かがおかしい………それに"下弦"が居る」

 

 

 それを聞き浴美の表情が強まる。下弦が居るのなら普通の隊員が何人いようが相手にならない。残る下弦は壱と伍……

 

「どっちだと思います?」

「たぶん、伍だと思う。気配がそんなに強くない」

「おい!なんか居るぞ!!」

 

 炭治郎と浴美は伊之助の声に反応し指さす方を見るとボロボロの隊員が倒れていた。

 瞬間、炭治郎と浴美は気づく。隊員に何かの糸が繋がっていたのだ。

 

「!、浴美!!」

「ええ!壱の型・初雪の雪化粧!」

 

 浴美が放った斬撃がその糸を断ち切った。

 

「大丈夫ですか?私は雪柱……援軍に来ました」

「は、柱…!柱が来てくれた!」

 

 柱である浴美を見て安堵の涙を流す隊員。

 彼から話を聞くと指令を受け、十人ほどの集団でこの山に入った。だが、しばらくして隊員たちが突如斬りあいを始めたという。そして彼も巻き込まれそうになり、命からがらここまで逃げてきたということだった。

 

「違和感はそれか………あの糸で操り人形のように隊員を操作していたのか。……浴美」

「ええ、私が伊之助君と善逸君を連れて行きます」

 

 自分の意図を理解した浴美に頷き。炭治郎は上に来ていた着物を籠の中に入れデスティニーの仮面をつける。

 

「じゃあ気をつけろよ」

 

 そう言って炭治郎は先に山の中へ消えていった。

 

「では、私達も行きましょう」

「おう!!腹がすくぜ!!」

「………腕がなるです」

 

「じゃあ……俺は此所で待って「じゃあ、善逸君は今日でさようならですね」ヒィ!行きますから一人にしないで~!!」

 

 こうして浴美達も突入した。

 

 

 

「蜘蛛の巣だらけじゃねえか!邪魔くせえ!」

 

 山へと入った伊之助は被り物の下で顔を思い切り顔をしかめる。ふとあたりを見回すと、あちこちに蜘蛛の糸が絡みつき、かすかな月明かりで不気味に光っていた。手についた蜘蛛の巣を乱暴に振り払い悪態をついた。そんな彼の背中に、浴美は声をかける。

 

「蜘蛛や糸には注意をしてくださいね……他にも生存者が居ましたか」

 

 浴美達は生存者を発見する。その眼には絶望が浮かんでいた。

 

「援軍なのか…」

「ええ、雪柱。命を受け援軍に来ました。状況の説明をお願いします」

 

 一応、彼からも説明してもらったが…さっき聞いた話と対して変わらなかった。その時、あたりから奇妙な音が聞こえてきた。生存者の隊員は、音に聞き覚えがあるのか瞬時に顔が青くなる。音はこちらに近づく様にどんどん大きくなっていく。そして不意に、彼らの背後で何かが動く気配がした。反射的にその方を向くと森の奥から一人の隊士がこちらに向かってくる。さらに森の奥から次々と他の隊士たちも現れた。全員口から血を流し、目の焦点が合っていない者もいる。

 

 そしてそのうちの一人が刀を構え浴美達に斬りかかってきた。

 

「ヒィ!!ヤバいよコイツら正気じゃない!!」

 

「ハッハ!こいつらみんな馬鹿だぜ。隊員同士でやりあうのはご法度だって知らねえんだ!」

 

「いえ、彼等は操られています」

 

 浴美は身をかわしながら伊之助と善逸に説明する。実際彼らの動きは明らかにおかしく、人間ならばありえない動きをしているのだ。それに中には死体すら向かってくる。

 

「伊之助君、善逸君、とりあえず糸を斬ってください」

 

 そう言われ目を凝らすとそこには、やっと見えるくらいの糸が何本もつながっていた。その糸を断ち切ると隊士の体は解放された様に地面に吸い込まれていった。

 

「よっしゃ!わかった!!」

「イヤー!こないでー!!」

 

 伊之助はイキイキと善逸は泣き叫びながら刀を振るい複数の隊士の糸を切り捨てた。

 とはいえ糸を切るだけではまた蜘蛛が操り糸をつなぐし、その蜘蛛は血鬼術の類で作られているから本体を叩かないと意味がない

 

「伊之助君、本体を見つけてください。貴方にしかできない事です」

「俺にしかできない…………ヘへ!任せなぁ!!」

 

 浴美できない事を頼まれたのが嬉しいのか上機嫌で持っていた二本の刀を地面に突き刺し両手を広げ感覚を研ぎ澄ませる。

 

「獣の呼吸・漆ノ型 空間識覚!」

 

 

 炭治郎は嗅覚。善逸は聴覚。そして伊之助の特技は、触覚が人並外れて優れていること。意識を集中すれば僅かな空気の揺らぎすら感知することができる。ただしその場から動けなくなり無防備になってしまうため、一人での使用には危険を伴うが、自分よりも強い浴美ならば大丈夫だと考えていた伊之助は気にせず捜索を続ける。

 

「…見つけたぞ!そこか!!」

 

 しばらくした後、伊之助は大声で叫びその方向に指を向けた。

 

「よくやりました。流石ですね」

「でも浴美さん。これどうするの!?」

 

 善逸が泣きながら襲いかかってくる隊士を指差す。しかし生存者……村田が刀を受け止め絞り出すように叫んだ。

 

「ここは俺に任せて先に行け!!」

 

「小便漏らしが何言ってんだ!?」

 

 伊之助が返すと村田は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「誰が漏らしたこのクソ猪!テメエに話しかけてねえわ黙っとけ…情けない所を見せたが、俺も鬼殺隊の剣士だ!!ここは何とかする!!糸を切ればいいというのが分かったし、ここで操られている者達は動きも単純だ。蜘蛛にも気を付ける。鬼の近くにはもっと強力に操られている者がいるはず。先に行ってくれ!!」

 

「…………わかりました、お願いします。二人とも行きますよ!」

 

 

 彼に任せて浴美は二人を連れて先に進んだ。探知した方角に進むたびに本体にちかづいている証拠か、蜘蛛が増え、糸も多くなる。その様子に伊之助は苛立つ。

 

 すると先程のキリキリという金属音が聞こえ、浴美達は足を止める。暗がりの中からすすり泣く声と共に、糸に繋がれた隊士が現れた。

 

「駄目…こっちに来ないで…」

 

 今にも死にそうなか細い声で隊士がそう嘆願するのは、黒髪を一つにまとめた女性の隊士だった。顔色が悪く、右手には他の隊士が突き刺さったままの刀を持ち、左手は同じく血まみれになった隊士の屍を掴んでいる。

 

「階級が上の人を連れてきて!!そうじゃないと、みんな殺してしまう!お願い、お願い!!」

 

 女性隊士の刀が振り上げられ、浴美達を襲う。

 

「おい!コイツさっきの奴よりも強いぞ!」

「操られているから、動きが全然、違うのよ!私たち、こんなに強くなかった!!」

 

 

その無理な動きで彼女の骨が砕ける音が響き、潰れたようなうめき声が上がった。

 

 さらに全身から血を噴き出し、体のあちこちが人体の構造上あり得ない方向に曲がった三人の隊士が現れる。

 

「頼む。こ、殺して…くれ…」

 

 一人の隊士が息も絶え絶えに懇願する。満身創痍、それでも糸がお構いなしに持っている刀を振り上げさせようと、無理やり彼の腕を引き上げていた。

 

「イヤー!?どうすんの浴美さん!?これヤバすぎでしょーーー!!」

 

 流石に善逸でなくてもこれは酷いと感じる。

 

(本体は私達を見ている……もう少しで!)

 

 浴美は刀を納めると、女性隊士に突進する。そしてそのまま懐に入り彼女を抱え女性隊士を真上に放り投げた。そしてそのまま木の枝に糸が引っ掛かり、ぶら下がりの状態になった。

 

 糸が複雑に絡み合いこれでは刀を振るうどころか、動くことさえままならない。

 

 それを見て伊之助は

 

「なんじゃああそれええ!!俺もやりてええ!!」

 

 子供の様にはしゃぎだし、同じ様に隊士を放り投げた。木の上で絡まる隊士を見て、伊之助は小躍りしながら声を上げる。

 

「見たかよ!俺にだってできるんだぜ!?」

 

「その調子です!どんどんいきますよ!」

 

「おっしゃ!、負けてらんねぇ!」

 

 憤慨した伊之助は再び隊士を掴むと、再び渾身の力で放り投げた。そして負けじと次々と放り投げてゆく。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 一方でその様子を蜘蛛を目として見ていた本体の鬼は苛立っていた。

 

「何なのよ、全く役にたたないじゃない!!もういいわ!!まだ切り札がある……使えない人形なんていら………え?」

 

 鬼は困惑した……無理もないだろう。目の前に"首のない自分の体"があるのだから。

 

「終わりだ」

 

 声のする方に視線を向ければデスティニー(鬼神)の面をつけた鬼狩り(炭治郎)があり……それが最後に見たモノだった。

 

 

ーーーーー

 

「え?止まった?」

 

 操られていた隊士が解放され地面に倒れ伏す。それを見た善逸と伊之助は頸を傾げるが……

 

「やりましたね、炭治郎」

 

 浴美は上手くいったと、安堵していた。

 

「どういうこった?権次郎がなんかしたのか?」

「炭治郎ですよ………操られた人達の動きを止めても鬼が使えないと判断して彼等を殺す可能性がありました。だから鬼の注意を私達に向け、その隙に炭治郎に斬ってもらったのです」

 

 あの糸は無理矢理体を動かしていた。もしかしたら頸を捻って殺す事もできただろう。

 

「さぁ、他にも鬼は居ます。まだいけますよね?」

「当然だ!!いくぜ、猪突猛進!!」

「たがら、一人にしないで~!?」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「お願いだから、もうやめて累…」

 

 山の中を進む炭治郎はすすり泣くような声が聞こえてきたのでのぞいてみると、そこには顔から血を流してすすり泣く少女の鬼と、その傍らで冷たい眼で彼女を見下す少年の鬼の姿があった。少年の手には、血の付いたままの糸があやとりをするように指にかかっていた。

 

「何見てるの?見世物じゃないんだけど」

 

 累は炭治郎に視線を向けさほど興味がないといった口調で言った。

 

「仲間割れか……」

 

「何言ってるの?仲間などというそんな薄っぺらなものと同じにするな。僕たちは家族だ。強い絆で結ばれているんだ…それにこれは僕と姉さんとの問題だよ。余計な口出しするなら、刻むよ」

 

 そう言う累を炭治郎は愚かしく見ていた。

 

 自分にとって家族というのは炭治郎(今世)の時もシン・アスカ(前世)の時も温かく何よりも大切なものだ。

 

 だからその家族を道具でも見るような目で見ている累の言葉に何も感じなかった。

 

 そんな時、不意に背後から草が揺れる音がした。

 

「お?ちょうどいいくらいの鬼がいるじゃねえか」

 

 炭治郎が視線を向けると、そこには一人の鬼殺隊士が笑いながら近づいてきた。

 

「こんなガキの鬼なら俺でも殺れるぜ!俺は安全に出世したいんだよ。出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからな。俺の隊は殆ど全滅状態だが、とりあえず俺はそこそこの鬼一匹倒して下山するぜ」

 

 彼はそう言って刀を累へとむけた。

 

「止めろよこの馬鹿!?相手は「うるせえ!お前は黙ってろ!!」

 

 炭治郎の言葉を聞かず男はそのまま背後から累に斬りかかった。

 

 累は手の指に絡まっていた糸を隊士の方へ伸ばした。その糸は一瞬で隊士の全身を細切れに刻み、サイコロステーキへと変えてしまった…

 

「…………馬鹿野郎」

 

「次は君の番だよ。僕達家族を侮辱して……刻んであげるよ」

 

 累は先程、隊員を切り刻んだ糸を放つが……

 

「なら、何でお前達は互いに嫌悪している。本当の絆なら信頼しあうモノだろ」

 

 炭治郎は容易く糸を切り裂いた。

 

「所詮アンタ等の絆は言葉だけの紛い物だ」

 

 炭治郎の言葉が累の逆鱗に触れる。空気が重く濃くなり威圧感が増すが炭治郎は一切同様しない。

 

「………今、何て言ったの?」

 

「アンタは所詮、恐怖で縛りあげているだけだ。それは"絆"じゃなく"支配"だ」

 

「……………黙れ」

 

 襲いくる糸を切り裂きながら炭治郎は語る。累は恐怖で縛りあげ家族の役割を押し付けているだけだ。

 

 

「何度でも言ってやる。お前の絆は偽物だ」

 

「黙れ!黙れ黙れ黙れーーーーー!!」

 

 

 累は血を含んだ真っ赤な糸を炭治郎の周りに張り巡らす。普通の糸はすでに斬られていることを累は先ほどのやり取りで知っているため確実に炭治郎を殺す為に放つ。

 

(…………わかってる。見せてやろう相棒(デスティニー))

 

 どうやらも累のやり方に相棒(デスティニー)も文句を言いたいようだ。日輪刀が真紅に輝き放つは父が託してくれた技。

 

 

「ヒノカミ神楽!!」

 

 

 燃え盛る炎の幻を纏い、日輪刀が次々と糸を切り裂いた。自身の本命の糸が次々と断ち切られたことに、累の眼が見開かれる。

 

「そんなはずはない!――血鬼術・刻糸輪転!!」

 

 

 ようやく炭治郎の強さを理解し焦りに焦った累の手にいくつもの糸が集まり、輪のようになっていく。最高硬度の糸をさらに密集させた文字通りの本気の攻撃、その糸の束を累は炭治郎に向かって放った。糸の嵐が、轟音を立てて彼に向かう。当たれば先程の隊員みたいに切り刻まれる。

 

 しかし、炭治郎には前世から運命を共にし今も尚、共に戦ってくれる相棒(デスティニー)がいる。そして放ったのは亡き父が託してくれたヒノカミ神楽……

 

 偽りの絆を縛る糸が、本当の絆の焔に勝てる筈がなかった。

 

 

「円舞!!」

 

 

 炭治郎は糸を切り裂き、累の頸を切り飛ばした。累の頸がずれ、ごろりと頭が地面に落ち体が灰になって消えていく。炭治郎はすぐさま珠世からもらった道具で血を採取する。

 

「累が殺られた……!?い、イヤー!!」

 

 

 それを見ていた少女の鬼が悲鳴をあげて逃げていく。それを追おうとしたが………

 

「?、禰豆子?」

 

 禰豆子が籠の中から出てきた。不思議に思う炭治郎だが禰豆子が見つめる先には頸を斬られ灰なりながらも此方に手を伸ばす累だった。

 

 それを禰豆子は悲しそうに見つめていた。少し震えていた………不安なのだろう。自分もいつか……取り返しのつかない事をしてしまうのではないかと…

 

 

「…………心配するな。お前にこんな運命は歩ませない。お前は俺が……"俺達"が必ず元に戻してやる」

 

 

 その時、こちらに向かってくる何かの匂いがした。禰豆子の前に立ち刀を抜き襲撃者を迎撃する。

 

「あら?」

 

 襲撃者は空中でくるりと体勢を立て直すと、炭治郎を見た。その女性は蝶を彷彿とさせる羽織を纏い、蝶の髪飾りを付けた小柄な女性。

 

「どうして邪魔をするんですか?」

 

 浴美のような丁寧な口調で喋る女性は炭治郎を見てあることに気づく。

 

「………血の涙のお面。もしかして貴方が鬼神さんですか。運がいいですね、お館様が貴方の事を探していたんですよ」

 

 女性は嬉しそうに言うが炭治郎は聞く耳もたず女性を観察していた。

 

(蝶みたいな羽織をきて針のような刀を持つ女性の剣士。…蟲柱、胡蝶しのぶ)

 

 浴美からお館様が自分を探していることや他の柱の事を聞いていた。

 蟲柱が鬼に効果的な毒を扱う剣士だと知る炭治郎は禰豆子を避難させるべきだと考える。

 

「禰豆子、俺は後から追う。先に浴美の所に行け。いいな?」

 

 禰豆子は頷きこの場を離れる。しのぶは禰豆子を斬ろうとするが炭治郎に受け止められる。

 

「…もしも~し、何か言ったらどうですか?」

 

 それでも炭治郎は一言も答えない、声で正体がバレたら仮面を被る意味がない。

 

「…あぁ、もしかして元家族の方ですか?だとしたら可哀そうに…」

 

 一方しのぶは事情を察したらしく気の毒そうに口元に手を当てた。しかし、憎しみが漏れ出しそれを上っ面の笑顔で隠そうとしている。

 

 憎しみで動く相手に何を言っても無駄だ、かつての(シン・アスカだった)自分がそうだったように。

 

 

「安心してください、苦しまないよう優しい毒で殺してあげますから。それまで眠っていてください」

 

 

 炭治郎(血涙の鬼神)が強者なのは理解しているのでしのぶも本気で攻撃する。

 

 

「蟲の呼吸 蜂牙の舞い 真靡き」

 

 

 それは蜂のように舞い相手を鋭く刺す、突きの威力に特化した刺突技。

 

 下弦では反応すらできない最速の突き。初見ではまず避けられない。

 

(急所は外しますが、行動不能にはなってもらいますよ。鬼神さん) 

 

 笑みを浮かべるしのぶだが………彼女は……

 

 

「え…!?」

 

 

 鬼神(炭治郎)を甘く見すぎていた。

 

 

 しのぶの笑みは消え去り驚愕の表情が浮かぶ。

 

 無理もないだろう。鬼神(炭治郎)のとった行動は迎撃でも回避でもない。

 

 初見でありながらどんな技が見破り、何処に攻撃がくるかも理解し、一寸の狂いなく、突きを放った刀を腰に備えていた鞘で受け止め納めたのだ。

 

 しかも、上位の鬼の頭蓋すらも余裕で貫通する威力も殺している。

 

 まさに神業とか言い表せない行動にしのぶはただ唖然としていた。

 

 

(…あり得ない…こんなことが…!?)

 

「…………アンタが鬼を憎もうが恨もうがアンタの自由だ。何も言いはしない」

 

 此処で炭治郎が初めて口を開く。しのぶの刀は炭治郎の鞘に納められてしまって使えないが草鞋の裏の部分に仕込まれた小刀で不意を突こうとするが……

 

「だけど、関係のない人を巻き込むな。俺達は(アンタ)と戯れてる程暇じゃない」

 

 

 そんなモノは通用しない。足を踏まれ行動できず、その言葉と共に強い衝撃が襲い、しのぶの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しのぶを気絶させた炭治郎だが……先に行った禰豆子を追わず、強い警戒心のまま……今まさに自分を見ている人物に言い放った。

 

「よかったのかよ。助けなくて」

 

「………………誰にも聞かれずにお前と話がしたかった。それにお前が必要以上に傷つける筈がない」

 

 

 男性の声が背後から聞こえてくる。炭治郎はデスティニーの面を外し、素顔で男性を見る。

 

 

「随分俺を信頼しているですね……"アスラン"」

 

 

 その男は前世で自分が殺したかつての仲間……守護之正義(アスラン・ザラ)だった。

 

 

 

 

 

 

END

 

 




 次回予告!

 遂に再開してしまった炭治郎と正義。二人はその胸に抱えたモノを刃に宿しぶつかり合う……やはり、わかりあう事はできないのか……

次回・運命の刃

【運命と正義】

 世界を越えて尚、戦うしかないのか……炭治郎(シン)!!正義(アスラン)!!














 サイコロステーキ先輩だけ原作通りだけど……是非もないよね!

炭治郎にオリジナルの呼吸や型はあっていいか?

  • あってもいい。
  • なくていい。

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