英雄の子どもたち   作:銀楠

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小さな妹

雨は嫌いだ。じめじめするし歩きづらくなる。更に、運ぶ荷物が濡れてしまうというオプション付き。サポーターである私にとってこれ以上厄介なことはない。これならダンジョンの中の方がマシというものだ。

今日は珍しく兄がダンジョンに誘ってくれた日なのに…

 

小人(パルゥム)である私はダンジョンではお荷物にしかならない。荷物持ちが荷物になるとはとんだ笑い話だ。

小人(パルゥム)は生来全アビリティが低く冒険者には向いていない。その中で冒険者になり名を馳せることができるのはごく一部だけだ。

 

私、リリア・クラネルはレベル2。小人(パルゥム)にしてはよくやっている方だがいかんせん血筋の問題がある。英雄(クラネル)の名を持つのにレベル2では話にならない。私の一つ上の兄、アイル・クラネルはレベル4だというのに。

アイル兄さんとは昔からよく遊んでいた。ダンジョンにも一緒に行っていたが、私より速く成長する兄に私は距離をおくようになっていた。

『クラネルの落ちこぼれ』と呼ばれる私は自分で自分が惨めになる。強さに固執している兄が月に一度はこうしてダンジョンに誘ってくれるのが惨めさを際立たせる。

そして、兄と二人の時間を楽しんでいる自分の卑しさが恥ずかしくなる。今だけは対等なのだ。選ばれた英雄と対等なのだと。

 

優れた能力を持つ兄や姉を羨ましくは思わない。恨めしくもない。妬みも嫉みもしない。ただ、寂しいのだ。凄まじいスピードで輝かしい道を歩んでいく兄達においていかれるのが。

 

 

 

ダンジョンに入るとじめじめしていた空気が一転からっとした空気に変わる。上層を踏破してすぐに中層に入る。私には少し早い気がするが、アイル兄さんにとっては物足りないといったところだろう。私はやっぱりお荷物だ。

 

アイル兄さんは中層の魔物を一人でさくさく倒しながら時々私に止めを任せてくれる。アイル兄さんなりに私が危険を犯さずに経験値(エクセリア)を稼げるようにしてくれているのだろう。やっぱり惨めだ。

 

 

私も冒険者に憧れたことがないわけではない。しかし、私には致命的に才能がなかった。剣を振るえば振り回され、槍を振るえばすっぽ抜ける。弓は当たらず、格闘も出来ない。兄達(冒険者)の後ろに付いていって魔石を回収するだけ。

 

アイル兄さんは稼ぎが増えるて嬉しいと嘘をつく。

稼ぎなど気にしていないくせに。

 

 

 

 

英雄ベル・クラネルの子供たちには生まれつき特殊なスキルが発現する。

英雄ノ子(クラネルブラッド)

このスキルの最大の特徴といってもいいものが、《早熟する》という効果だ。ステイタスの伸びが少し速くなるという特殊な効果。しかし、この《早熟する》という効果には大きな個人差がある。アイル兄さんやリーユ姉さんはかなり早い方だ。それに対して私はかなり遅い。普通の人よりちょっと早いかな?程度である。私が落ちこぼれと呼ばれるのも納得だ。

 

「かなり倒したね、そろそろ帰ろうか?」

 

うっすら浮かんだ汗を拭いながらアイル兄さんは振り替える。

おそらく私を気遣ってくれているのだろう。やっぱり優しい。その優しさが私には痛い。

 

「ううん、私は大丈夫

アイル兄さんももうちょっとやりたいでしょ?」

 

「でもリリアの荷物大きすぎるし」

 

「大丈夫、私には縁下力持(スキル)があるから」

 

「そう?じゃあお言葉に甘えてもう少しだけ」

 

少し笑って答える。アイル兄さんの笑顔は好きだ。元気になれるなんて陳腐な表現だけど、まさしくその通りだと思う。

アイル兄さんは昔ほど笑わなくなった。焦っているのだろう。英雄には年齢制限がある。大人になりすぎては英雄になれない。純粋な人間(ヒューマン)であるアイル兄さんにはボケッとしている暇がない。増えていく私のバックの魔石とアイル兄さんの頬を伝う汗の量がその焦りを表しているように見えた。

 

何時間経っただろうか?朝にダンジョンに入って、途中お昼ご飯を食べてから数時間経っている。背中のバッグもパンパンになった。

もう魔石が持てないのでさすがに出ることになった。

 

ダンジョンを出たらその足で換金に行く。とんでもない量を稼いできてしまったので換金に時間がかかる。渋滞をつくってしまった。それがいけなかった…。

 

「痛っ…」

 

大きな人とぶつかって倒れてしまう。まあ小人(パウルム)である私にとって大抵の人は大きいのだが。

 

「いてーなーっ!!

どこ見て歩いてんだよ!リリア!」

 

顔を上げると人間(ヒューマン)の青年がいた。この男とは顔見知りだ。ロキファミリアでティオ姉さんの側付きをしているレベル2の冒険者だ。名前は確かダイロンだったか?

どうも私のことが気に入らないらしく見かける度に何かとつっかかってくるのだ。

 

パウルム(雑魚)の癖に俺に当たっといて謝罪の一つもなしですかー?」

 

「ひっ!ご、ごめんなさ」

 

「どうかしたの?リリア」

 

「ア、アイル兄さん…」

 

思わず謝罪しそうになっているとそこにはいつの間にかアイル兄さんがいた。

 

「げ、子兎(ラビット)

 

ダイロンの顔色が目に見えて悪くなる。それだけで十分面白い。この男格上には大きく出れないのだ。

 

「はぁ、またアンタかダイロン

今度はどうしたんだ?」

 

「い、いや、その小人(パルゥム)が俺に当たって来たからよ…」

 

「そいつはうちの妹が失礼したな

でもわざわざ怒鳴り散らすことはないんじゃないか?」

 

アイル兄さんは怖いほど冷たい声で言う。アイル兄さんは身内以外にはひどく淡白に会話することが多い。

 

「はぁ!?相手は弱者(サポーター)だぞ!

少しくらい強気に出たっていいだろ!」

 

サポーターを恩恵(ファルナ)を受けておきながら非戦闘員であることから弱者と呼ぶものがいる。ダンジョンで戦えないサポーターの扱いは酷いものだ。しかし、これでも何年か前よりは大分よくなった方らしい。20年ほど前は暴力を振るわれ分け前は貰えず、あまつさえ囮にされることもあったそうだ。今ではサポーター組合というものが設立され、ある程度の権利が保証されている。

 

「はぁ…。お前は器が小さい癖に態度だけはでかいな…

 

まぁいいや、ティオはどうしたんだ?お前、あいつの側付きだろ?」

 

ちなみなに側付きとはロキファミリアで最近で始まった制度で、低レベルの冒険者が高レベルの冒険者の身の回りの世話をするというものだ。ティオ姉さんは生活力が致命的にないので側付きが4人もいる。

 

「ティオさんならどっか行っちまったよ」

 

「全くあいつは…」

 

ティオ姉さんの自由奔放さは昔から手を焼いていたが、冒険者になった今でもそうらしい。

 

「まぁいい、もうリリアに絡むなよ」

 

「はぁ!ふざけんな!そっちが先に…」

 

「分かった分かった」

 

と、言いながらアイル兄さんは私の手を取って歩き出す。アイル兄さんにとってはダイロンなどとるに足らない存在なのだろう。その強さはやっぱり少しだけ羨ましいかもしれない。

 

バベルを出ると空は晴れていた。

 

「アイル兄さん、手…」

 

「ああ、ごめんごめん」

 

繋ぎぱなしだった手を離すと少し寂しく感じた。やっぱり言わなかった方がよかっただろうか?

 

しっとりとした空気は少し気持ちいい。空にはうっすら虹が掛かっていた。雨は嫌いだったがやっぱり少し好きになってもいいかもしれない。

 

「リリア!危ないぞ!」

 

「へっ?」

 

ツルッ

 

マヌケな声を出しながら盛大に転んでしまった。ぼうっとしていたら水溜まりで足を滑らせてしまったらしい。全身びしょびしょだ。アイル兄さんを見ると笑っていた。笑顔は好きだがなんか腹が立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり雨は嫌いだ。

 

 

 

 




リリア・クラネル Lv,2
力:E402 耐久:H112 器用:D502 敏捷:I35
魔力:D513
幸運:I

《魔法》
【トレード】
・二つ以上の物体の位置を入れ換える
・二つの物体の大きさに差がありすぎる場合不可
・消費精神力(マインド)は距離と重量に比例する

《スキル》
英雄ノ子(クラネルブラッド)
・格上と戦う際、ステイタス中上昇
・『守る』ために戦う際、ステイタス超上昇
・早熟する
縁下力持(アーテル・アシスト)
・一定以上の装備過重時に能力補正
・能力補正は重量に比例

リリルカの子供。13歳。冒険者に対して少し苦手意識がある。武器は使えず攻撃系の魔法もないためダンジョンではほぼ活躍できない。しかし、空間に作用する魔法という特殊な魔法を持っている。
容姿は茶髪に茶目、小人(パルゥム)なので身長はかなり低い。
二つ名は『子栗鼠(スクイル)

詠唱
【トレード】
小人(ごども)子供(ごども)
英雄になれない小さきもの
弱者の小賢しい小さな悪戯

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