英雄の子どもたち   作:銀楠

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前書きって書くことないですね…


癒しの森

僕は今ピンチだ。まぁ、冒険者にとってピンチなどダンジョンで何十回も経験するものだが、今回は毛色が違う。

 

「アイル、昨日どこで何をしていたのですか?」

 

リーユ姉さんは弟大好き。決して一人でダンジョンに行っていたなどばれてはいけない。

 

「昨日はリリアと『豊穣の女主人』に行ってたよ」

 

「ほう、では昨日そのリリアがアイルが一人でダンジョンに入っていったのを見た、というのは何かの間違いでしょうか?」

 

詰みである。

こうなると話し合いなど無駄。自慢の健脚をいかしてホームの窓から飛び出す。そして、いつもの追いかけっこ開始。

街の人々には慣れ親しんだ姉弟の微笑ましい追いかけっこ。まあ、速すぎて普通の人には何かが通ったことしか分からないのだが。

入り組んだ裏路地を駆け回り屋根の上を走る。

アイルには規格外の敏捷に加え逃走の発展アビリティがあるが、リーユにも高い敏捷と狩人の発展アビリティがある。レベルに開きがあるためアイルが逃げ切れたことは一度もない。しかし、今日のアイルはついていた。

今日はオラリオの外から食品を大量輸入していたのだ。つまり、かなり大きい馬車が来ていたのである。裏路地を走っていたとき万事幻視(ファントムアイ)で見つけた。リーユはまだ気付いていないであろう。アイルはそれを利用することに決めた。

とはいえ、アイルやリーユにとって、馬車はそこまで速いものではないし、ぶつかってもダメージを負うのは馬車のほうであろう。単に馬車を遮蔽物とするのでは意味がない。

 

アイルは路地を抜けた瞬間勢いよく右に曲がった。無論これだけでふりきれるわけがないので馬車の荷台に乗り込む。

食べ物の詰まった荷台はキツイ匂いで充満していた。入ると同時に息を殺す。肺が限界を知らせるように激痛を放ち脳が酸素を寄越せとうるさく喚く。

しかし、運良く逃走は成功したようだ。

視界から消え、音を出さず匂いも消せば狩人のスキルでも追いかけることはできない。

 

アイルを乗せた馬車はリーユの索敵範囲からまんまと逃れることに成功した。

 

 

しかし、どこに行こうかという問題である。

ホームは論外だし、ダンジョンに行くにも装備を持ってきていない。お金も置いてきたため。完全にできることがない。

 

「まぁ、あそこしかないか」

 

こんな状況で行けるところをアイルは一つしか知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

涼やかな音色のドアベルがなる。

 

「いらっしゃー…

おろ?アイル君じゃないかー」

 

「久しぶり、アイナ姉さん」

 

店内の雰囲気は落ち着いているという表現が一番あっている。少ないテーブルに趣味のいい古本とそれを収める本棚。観葉植物が壁や角を彩っている。

ここ、『癒しの森』は去年アイナがオープンしたお店で、軽食と飲み物を主体に出す店である。アイナのほんわかとした雰囲気と良くマッチしている。ちなみに酒はアイナが苦手なので置いてない。

 

「珍しいねーアイル君が来るなんて

今日はどうしたの?」

 

「リーユ姉さんとちょっとね」

 

「ほえー、逃げ切れたんだ、これは珍しい!

お祝いになんか作ってあげよう」

 

「いいよ、今日お金持ってないんだ」

 

(というか、よく考えたら僕ただの迷惑客じゃん)

お代を持たずに店にはいるのはただの冷やかしだ。

 

「だから、お祝いだって

お金はいいから食べてきなー」

 

アイナ姉さんは昔から優しい。

アイナ姉さんはクラネル家の長女でありながら恩恵(ファルナ)をもらっていない。昔から頭が良く、その賢さは姉弟随一だった。若干18歳にして店を一つ持っているのだから相当なものだろう。

ちなみにけして弱いというわけではない。格闘術に関しては天才で、そこら辺のレベル2位だったら普通に倒せてしまうかもしれない。というか、ちょっと前に調子に乗りすぎたダイロンがぶっ飛ばされていた。

 

「それで?どうして追いかけっこなんてしてたのー?」

 

「昨日一人でダンジョンに行ってたのがバレてさ」

 

「相変わらずブラコンだなー、リーユちゃんは

男の子には冒険が必要なのにねー」

 

そう、なんと以外にもアイナはアイルが一人でダンジョンに行くのに肯定的なのである。

可愛い弟には是非ダンジョンで冒険をして、いっぱしの(おとこ)になって欲しいのだ。そういった点ではリーユとアイナは正反対と言えるだろう。

まあ、もしアイルがダンジョンでモンスターにやられでもしたら、怒り狂ったアイナはダンジョンモンスターを血祭りあげるかもしれないが。

 

「はぁー、この店やっぱ落ち着くわ」

 

「そぉー?ありがとー」

 

「うん、すごく静かで…

時間がゆっくり流れてるみたい」

 

「ふっふーん

実は本当にゆっくり流れてるかもねー」

 

店内の雰囲気は静かで落ち着いていてゆっくりしている。しかし、決して閑古鳥が鳴いている訳ではない。常連は沢山いるらしい。まぁ、この雰囲気の店でこの料理を出せばそれもそうかという感じだが。

 

「これからはたまに来るかも」

 

「いつでもおいでー

家族割引してあげるから」

 

「ふふっ、ありがと」

 

まあ、アイナ姉さんのことだから何かと理由を付けてタダにしてくれるのだろう。優しいのだ、この姉は。

 

「はぁー、この時間が永遠に続けばいいのに」

 

「うーん、それはちょっと厳しいかもねー」

 

「へっ?」

 

カランコロン

 

ドアベルの音と共に殺気がいらっしゃいませ。振り返らなくても分かる、リーユ姉さんだ。

お帰りくださいませお客様。

 

「いらっしゃーい、リーユちゃん」

 

「お久しぶりです姉さん

いきなりで悪いですがアイルは連れていきますね」

 

「はぁーい、どーぞー」

 

もう窓から逃げるしかない。窓ににじり寄りながらリーユ姉さんに話しかける。

 

「どうしてここが分かったの?」

 

「アイルがこれる場所などここぐらいでしょう」

 

「なるほど…」

 

まあいい、もう一度窓から逃げてやる。

 

「さぁアイルお説教です」

 

「お断りしまーす」

 

勢いよく窓に飛び付く。逃走開始だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はめ殺しだと!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

一年ほど前、アイナが『癒しの森』を開店して一週間も経たない頃の話。

 

「センパーイ、レベルアップおめでとうございます」

 

「おー、まあ俺にかかればこれくらいチョロいもんよ」

 

今日はこの男、ダイロンがレベル2になったお祝いをしていた。

と、言ってもロキファミリア総出のお祝いではない。大規模ファミリアであるロキファミリアでは低レベル団員のレベルアップのお祝いは月に一度まとめて行われる。

今日はあくまでダイロンと後輩のギアンの個人的なお祝いであった。二人はまだ低レベルであるためちょっとお高めの『豊穣の女主人』には行けなかったのだ。そこに開店セールをしていた『癒しの森』を発見して渡りに船といわんばかりに入店したのである。

 

「それにしてもやっとあのクソ小人(パウルム)に追いついたぜ」

 

「あー、あのリリア・クラネルとかいう」

 

「そうそう、『クラネルの落ちこぼれ』だよ

どうせ優秀な兄貴にくっついて、おこぼれでレベルアップしただけの癖に、俺より早くレベル2になりやがって」

 

「まぁ、先輩の敵じゃないっすけどね」

 

「おーよ、あんなクソ小人(パウルム)、敵じゃない

どうせ、一人じゃなんもできねーんだからな!」

 

今日のダイロンは機嫌が良かった。レベルアップをして、雰囲気のいい店を見つけたからだ。ダイロンは上機嫌になっていた…というよりは調子に乗っていた、乗りすぎていた。店主が薄ら寒い笑顔を浮かべていることに気づかないほどに。

 

「お客様」

 

「あ?なんだ?」

 

 

「誰の店で誰の悪口言ってんだこのガキ」

 

 

瞬間、ダイロンはちょっと文字には起こせないような(むご)い音を出しながら飛んでいく。店のドアをつき破り、道の反対側の小物屋の壁に当たって止まる。

かわいそうなのは店に残されたギアンの方だ。アイナに睨まれたギアンはまさに蛇に睨まれた蛙、というより龍に睨まれた(おたまじゃくし)。惨めにも程がある。

 

「お客様はー、アレ(・・)のお連れ様ですかー?」

 

「ひっ」

 

「お代はけっこーですのでー、アレ(・・)持って帰ってくださいねー」

 

「はいぃぃぃ!!」

 

ギアンはダイロンを回収して走り去っていった。

 

めでたし、めでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アイナ・クラネル 恩恵無し
エイナの子供。18歳。姉弟で一番年上。頭が良く、よく他の妹たちから頼られる。格闘術の天才で鬼のように強い。ほんわかと会話することから適当に流していると思われがちだが家族に対してはかなり真剣に話している。家族以外に対しては………営業妨害になってしまうので言わないでおこう。
容姿は薄い茶色の髪に濃い茶色の目で長身、そして巨乳。

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