英雄の子どもたち   作:銀楠

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感想お待ちしております!!

今回辺りから、本編っぽいものに入っていきたいと思います。




本編:英雄と冒険
異常(イレギュラー)


バベルの前、よく冒険者が待ち合わせ場所として利用する噴水前にリリアとアイル、リーユは立っていた。既に待ち合わせ時間を半刻ほど過ぎている。

 

「遅い!」

 

「まあまあ、そんなにカリカリしないでよリーユ姉さん

いつものことじゃないか」

 

「いつものことだから怒っている!」

 

ルーズな性格の多い冒険者といえど、理由もなく遅れるものは少ない。ダンジョンで死と隣り合わせの冒険をする彼らはそういったところには厳格な節がある。

さて、フルメンバーともいえるこの三人が揃っていて誰が来ていないのかというと、ティオである。あまり一緒にダンジョンに行くことはないが時々共に潜っているのだ。

時間どころかあらゆることにおいてルーズな性格をしているティオは待ち合わせに時間通りに来たためしがない。

 

 

 

 

「おーまったせー!」

 

「遅い!何をしていたんですか!

いいですかティオ、冒険者が時間にいい加減なのは共に探索するものとして…」

 

リーユ姉さんのありがたい説教が始まったがおそらくティオは聞いていない。というかあの顔を見るに怒られていることにも気付いていないのだろう。

 

「聞いてますか?ティオ」

 

「きーてる、きーてる」

 

聞いてないだろ。

 

こういった適当な性格をしているティオは、何事もきちんとしたいリーユとは折り合いが悪い。というか相性か悪い。

 

「おはよーアイル」

 

ティオはリーユのことを完全無視しながら無駄に元気のいい挨拶をしてくる。(ぬか)に釘という諺を思い出した。

余談だがアイルはティオを若干苦手に感じている。昔ちょっとあったので。

 

「…おはよ、ティオ

レベルアップおめでとう」

 

「ありがとー」

 

そう、実はつい三日ほど前にティオはレベル4になったのだ。

 

「ここで話をしていても仕方ありません

早速ダンジョンに行きましょう」

 

「おー!!」

 

 

「ちょっと待てや!」

 

いざ行かん!ってタイミングで怒鳴り声が響く。そちらを見るとなぜかダイロンがいた。

そういえばティオの側付きやってたっけ。

 

「あれ?ダイラン何でいるの?」

 

「ダイロンです!

というかティオさん、ヘスティアファミリアの奴らとダンジョンに行くなんて聞いてませんよ」

 

「えっ?ティオ、言ってなかったの?」

 

現代では違うファミリアの者同士でダンジョンに潜るのは珍しくない。しかし、その場合は主神に許可を取るのが常識だ。当然、アイルたちもヘスティアに許可を得ている。

ロキの名前を出したとき非常に渋い顔をされたが…

 

「あれ?言ってなかったけ?」

 

「聞いてません!」

 

「じゃあそういうことだから、

ロキには言っといてタイロン」

 

「ダイロンです!

あと、俺も連れてってください」

 

それは困る。リリアに絡まれると面倒なのでアイルは断るために話に入ろうとする。

 

「いや…」

 

「んー、でもパイロンにはちょっと早いんじゃない?25層辺りまで行くつもりだし」

 

「それならそこの小人(パウルム)も同じじゃないですか!

あと、ダイロンです」

 

「リリアはいいんだよ、リリアだもん

 

いーからロキに伝えといてね、シェンロン」

 

いい加減名前を覚えてあげてほしい。願いを叶える龍みたいな名前になってしまっている。もはやダイロンがかわいそうだ。

 

「それじゃー行こー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上層を一気に通り抜けて中層に到着。リリアもいるためここからはそれなりに気をつけなければならない。まあ、アイルの万事幻視(スキル)は壁を透視してモンスターの出現を先に知ることができるためそこまで問題はないのだが。

アイルの万事幻視(ファントムアイ)精神力(マインド)を消費しないのでダンジョンではほとんど発動しっぱなしにしている。

 

「16層にもなると私じゃ勝てなそうだな」

 

「そうかな?頑張ればなんとかなると思うよ」

 

中層のモンスターはレベル2にとってちょうどいいくらいである。しかし、リリアは戦闘センスがないのでここら辺でも厳しいかもしれない。もちろんそんな事本人には言わないが。

モンスターの掃討は基本的に他の三人で引き受ける。リーユが小太刀で敵を吹き飛ばし、アイルがナイフで切り刻む。

そして、ティオは…ミノタウロスにドロップキックしていた。

 

「ティオ…武器はどうしたのですか?」

 

「忘れて来ちゃった」

 

「そんなやつおる!?」

 

リーユの質問に悪びれもせずティオは答える。

ダンジョンに入るのに武器を忘れるなど前代未聞ではないだろうか。

今回の目的地は25階層付近。レベル4から5の彼らにとっては危険というほどの深さではないが、安全マージンは取れるだけ取っておいた方がいい。武器を忘れるなどもっての他だ。

 

「まったく、仕方ないなティオ姉さんは

どこに忘れてきたの?」

 

「私の部屋かな?」

 

「ティオ姉さんの部屋ね…

 

小人(こども)子供(こども)』…」

 

リリアが詠唱を開始する。おそらく魔法を使うのだろう。

リリアの魔法『トレード』は二つ以上の物の場所を入れ換えるという、他に類を見ない貴重で特殊な魔法だが五つの発動条件がある。

一つ目は、入れ換える物は二つとも非生物に限ること。つまり瞬間移動には使えないとういことだ。二つ目は入れ換える物の片方は自分の手元になくてはならないこと。三つ目は手元にない方の物の形をよく知っていなければならないこと。四つ目は二つの物が同じくらいの大きさでなければならないこと。

そして最も厄介な条件である五つ目は、入れ換える二つの物が詠唱中に動くと発動できないというものである。

これらの厳しい条件を満たさなければならないため非常に使いづらい。まあ、それを差し引いても強力であることにはかわりないが。

 

「『英雄になれない小さきもの

弱者の小賢しい小さな悪戯

トレード』」

 

瞬間、ダンジョンの壁面から落ちて転がっていた岩がティオ愛用の大剣に変わる。

 

「何度見てもすごい魔法だね」

 

「ありがとアイル兄さん」

 

「ティオ、あなたもレベル4になったのだからもっとちゃんとしなさい」

 

「わかったよー」

 

分かってないのがまる分かりな返事をするティオ。おそらくまたいつかやらかすだろう。

 

「レベルアップといえば、ティオ姉さんの次の二つ名何だろね」

 

「そっか、二つ名更新されるのか…

次の神会っていつだっけ?」

 

「一週間後だって、ロキが張り切ってた」

 

アイルは二つ名に関してはあまり恵まれていないと思っている。無難なものばかりだからだ。ヘスティアはいいものを勝ち取ったと満足げだったが、アイルはもう少し格好いいものがほしい。英雄への強い固執があるのだ。

 

 

 

三人でモンスターを倒しているのでローテーションを組んでいる。二人がモンスターを倒し、一人がリリアを守る。やり過ぎな気がしないでもないが何が起こるかわからないのがダンジョン。念には念をいれておきたい。そういった対応がリリアにとっては辛いのだが。

 

「じゃあ今度はアイルが後ろね」

 

「分かった」

 

とはいうもののレベル4と5の冒険者が二人がかりで殲滅に向かえばいかに中層のモンスターといえど長くは持たない。

しかし、リーユとティオは致命的に『合わない』。大剣を大きく振り回して戦うティオは他人と共闘することができない。

結局コンビネーションを棄てて各々戦うことにした。

 

「なにやってるの二人とも…」

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、ダンジョンにはイレギュラーがつきものだ。冒険者にとっては当たりまえに知っていること。当然彼らも知っていた。知っていただけだったが………

 

リーユとティオがモンスターを殲滅し終わったその瞬間、ピシッという妙な音がした。

アイルはリリアを守るべくそっと近くによる。同時に万事幻視(スキル)を使い左右の壁を見るが異常はない。当たり前だ、異常があるのは左右()ではなく(天井)なのだから。

 

落石。ダンジョンの中層ではありふれたハプニング。しかし、アイルたちはそれを経験したことがなかった。落ちてきた石は天井まで積まれ道を塞ぐ。

幸運にも一人として巻き込まれなかった。不幸にも分断されてしまったが。リーユとティオ、アイルとリリアに別れてしまった。

 

「リーユ姉さん、ティオ、そっちは大丈夫?」

 

「こちらは問題ありません

そちらは大丈夫ですか?」

 

「僕もリリアも無事だよ

それにしても見事に分断されちゃったね」

 

「リーユねぇ、魔法でこの瓦礫吹っ飛ばせない?」

 

「できますけど、やめておいた方がいいでしょう」

 

ダンジョンで落石が起きた場合、高火力な攻撃魔法は使わないのが鉄則である。脆くなった天井がさらに崩れ、被害が広がる可能性があるからだ。

 

「仕方ない、一端別れて後で合流しましょう

18階層のリヴィラの街で待っています」

 

「分かった」

 

18階層はモンスターが一切自然湧き(ポップ)しない『安全階層(セーフティ・ポイント)』として有名で、宿や店も揃う街まである。

問題は17階層にいるゴライアスだが、レベル4の身体能力なら、走って突っ切れるだろう。

 

「じゃあ、後でね」

 

「ええ、気をつけて」

 

 

 

 

 

 

数分後、先に17階層にたどり着いたのはリーユとティオの方だった。

 

「行きますよティオ」

 

疾走する。ティオはレベル4に成りたてだが、一直線に走り抜けるぐらい訳ない。正直、レベル4と5の冒険者が二人がかりで戦えばゴライアスを倒せないこともないのだが、ティオはレベル4に成りたてで、体がついていけているとは言いがたいので一応やめておいた。

脇目も振らずに疾駆する。結果、無事17階層に到着できた。

 

しかし、彼女たちは気付いていなかった。『迷宮の弧王(モンスターレックス)』の異変(・・)に………

 

 

 

 

これはアイルたちが17階層に到着する僅か一分ほど前の話

 

 

 




ティオ・クラネル Lv,4
力:E475 耐久:G208 器用:I34 敏捷:H124
魔力:I0
拳打:F 潜水:H 対異常:I

《魔法》
なし

《スキル》
英雄ノ子(クラネルブラッド)
・格上と戦う際、ステイタス中上昇
・『守る』ために戦う際、ステイタス超上昇
・早熟する
熱戦激闘(デッドヒート)
・戦闘開始後、一定時間経過ごとに力のアビリティ上昇
損傷(ダメージ)を与えるほど力のアビリティ上昇
狂化狂乱(バーサーク)
損傷(ダメージ)を受けるほど力のアビリティ超上昇
損傷(ダメージ)を受けるほど耐久、器用、敏捷のアビリティ低下

ティオナの子供でアマゾネス。14歳。大剣を用いた大雑把な戦い方をするため、器用が非常に低い。生まれつき力のアビリティの成長が速い。適当な性格をしていて自力で生活するのも厳しい。
容姿は浅黒い肌にセミロングの黒髪、黒い目をしている。
二つ名は『怪力(ギガンツ)


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