勇者システムはビルド式である   作:きし川

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デューク美森「要件を聞こう…」


アサガオ無双と動き出す者達

友奈と美森が無事スコーピオンを撃破した頃風と樹はサジタリウスとキャンサーの連携に苦戦を強いられていた

 

「あーもう!しつこい男はありがとう嫌いなのよ!」

 

「お姉ちゃん!モテる人みたいなこと言ってないで早くなんとかしてよーっ!」

 

「いやーちょっと隙がね…」

 

先程から止まることのないサジタリウスの射撃をよけ続ける二人、風はまだまだ動けるが元々運動があまり得意ではない樹は体力が限界に近づきつつあった。しかし、体を休めようと樹木の陰に身を隠してもキャンサーが装甲を操りサジタリウスの針を隠れても命中するよう調整してくるため二人は体力を回復させることが出来なかった

 

「あいつさえなんとかできれば…」

 

風が悔しげにサジタリウスを睨んでいると、サジタリウスがどこからか飛んできた青い光に貫かれ射撃を中断させられた。さらに、二発、三発と続けてサジタリウスに直撃しサジタリウスの体に風穴を開けていく

 

一体誰がと思い、立ち止まって呆然とその様子を見ていると

 

「お姉ちゃん!危ない!」

 

「っ!」

 

樹の声にハッ!とし上を見るとキャンサーの装甲が迫ってきていた。しまったと思い慌てて大剣を盾にして攻撃に備える

 

「オォォリャァァァ!」

 

そこへ合流した友奈がキャンサーの装甲を全力で殴り攻撃を逸らす

 

「風先輩、大丈夫ですか!?」

 

「ありがとう助かったわ!アンタの方こそ大丈夫なの結構ボロボロだけど」

 

「はい!東郷さんをおかげで大丈夫です!それと、バーテックスも倒しました!」

 

「東郷が…」

 

では、アレをやっているは東郷なのかとサジタリウスの方を見ていると風の端末通信が入る

 

《風先輩…》

 

「東郷!アンタ……戦ってくれるの?」

 

風がそう美森に尋ねると美森はすぐに

 

《はい、遠くにいる敵は任せてください》

 

力強く返した

 

「…わかった。任せたわよ東郷!」

 

《それと、風先輩…》

 

「ん?なに?」

 

《部室ではすみませんでした。風先輩の事情も考えず八つ当たりをしてしまって…》

 

キャンサーを倒そうと前に出ようとする風を止めて美森が言ったのは部室でのことの謝罪だった。それを聞いた風は

 

「悪いのはこっちの方よ…説明不足な上にいきなり戦えだなんてアタシが同じ立場でも怒るわ……ごめんなさい」

 

電話越しだが頭を下げて謝罪する風

 

《風先輩…》

 

「よし!二人共謝ったからこの話は終わり!後は、敵を倒すだけだーっ!」

 

二人の間にある重い空気を吹き飛ばすように友奈は大きな声を出してオリャー!とキャンサー向かっていく。その後を樹が追っていく。そんな様子を見て二人は自然と笑顔になる

 

「まったく、友奈はいつも通りね…」

 

《フフッ…でも友奈ちゃんらしいです》

 

友奈はいつも誰かが喧嘩しそうになったり、悲しそうにしているとそんな暗い雰囲気を飛ばすように立ち回っていた(本人に自覚なし)

 

「さてと、それじゃ東郷遠くにいるアイツ頼んだわ」

 

《はい!任せてください!風先輩もお気をつけて!》

 

「おう!」

 

風は通信を切るとキャンサーの元へ向かって行った

 

 

 

 

 

「さて…」

 

美森は端末をしまうとライフルのスコープを覗きサジタリウスを見る。すでに、先程の攻撃で空けた穴は再生され塞がっており、射撃の体勢に入っていた

 

「させない!」

 

ライフルの照準を今まさに放たんとしているサジタリウスの発射口に合わせ、撃つ

 

すると、放たれようとしていたエネルギーが発射口内で爆発しサジタリウスの体に穴を空ける。すると、空いた穴から御霊の姿が見えた。すぐに、御霊に照準を合わせ撃とうとすると

 

サジタリウスが急速にエネルギーを圧縮させ巨大な針を作りこちらに放とうとしていた

 

それに気づくと美森は瞬時に状況を分析する。

 

回避…帯の足では間に合わない

防御…精霊バリアを張ってもただではすまない

 

となれば

 

「…迎撃する」

 

しかし、かなりのエネルギーを圧縮した巨大な針を正面から迎撃するのは不可能だと思う。だが、美森は…

 

「御国のため…そして、友奈ちゃんのためだったら…私は不可能を可能にしてみせるわ」

 

レバーを回しボトルを活性化させる

 

『Ready Go!』

 

活性化でできたエネルギーをライフルに集中させる。そして、美森はライフルを構え、照準をサジタリウスに合わせる。それと同時に両者は引き金を引いた

 

互いに向かって真っ直ぐ進んでいく弾と針はやがて軽く接触しすれ違う

 

そして、サジタリウスの針は美森の頭上を通り、美森の弾丸は御霊に突き刺さり御霊に小さな銃痕をつける

 

『ボルテックアタック!!』

 

ドライバーから音声が流れると銃痕からヒビが広がっていき、御霊は砕け光になっていった

 

「ふぅ…うまくいった…」

 

額の汗を拭いながら一息つく美森

 

美森がやったことは単純なことで相手の弾に自分の弾を当て弾道をずらしただけである

 

遠距離の狙撃において小さなズレは狙いから大きくズレることになるという。美森はそれを使ってサジタリウスの攻撃を反らし射ぬいてみせた

 

「次は、アイツを…」

 

美森はライフルを構え、キャンサーに照準を合わせる。そして、撃つ。しかし

 

「っ!弾かれた!?」

 

キャンサーの装甲は予想以上に硬くライフルの弾丸は弾かれてしまった

 

「近づくしかない…」

 

遠距離では弾が通らないと判断し美森は帯の足を動かしてキャンサーの元へ向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

美森がサジタリウスを撃破した頃キャンサーと戦闘中の三人は

 

「オリャー!…うーん、やっぱり硬いなぁ…」

 

友奈がキャンサーの装甲を殴るがヒビすら入らない

 

「どうすればいい?……あ!そうだ!」

 

一向にキャンサーの装甲を突破できない中風がひらめくとベルトのレバーを回す

 

『Ready Go!』

 

「友奈、離れて!」

 

風は活性化させたエネルギーを大剣に集中させると友奈にキャンサーから離れるよう言った

 

「はい!」

 

風の指示を聞いた友奈はキャンサーから離れる

 

「ウオォォ!!」

 

風は友奈が離れたのを確認すると大剣を上段に構え、エネルギーを使って大剣を巨大化させていく

 

「デリャャャャ!!」

 

そして、巨大化が止まると一気にキャンサーに振り下ろす

 

『ボルテックアタック!!』

 

振り下ろされた大剣はキャンサーの装甲に激突、一瞬の拮抗後、装甲を砕きそのままキャンサーの体に叩きつけ大きな切り傷を付ける

 

「いくよ!樹ちゃん!」

 

「はい!」

 

それを見た、二人は傷が再生する前に追撃するためレバーを回す

 

『『Ready Go!』』

 

「勇者ァァ!!パァァンチッ!」

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

友奈は風が付けた傷に全力の勇者パンチを叩き込む。すると、キャンサーの体が砕け、そこから御霊が見えるようになる

 

「みぃ~つけた!」

 

御霊の姿を確認した樹はエネルギーを流してやや太くなったワイヤーで御霊をがんじがらめにすると、キャンサーの体から引っ張り出す。

 

「そして~お仕置き!!えい!えい!え~い!!」

 

『ボルテックアタック!!』

 

そして、そのまま地面に叩きつけさらに、バウンドした反動を利用してまた叩きつける

 

「うわ~樹ちゃん、結構ストロング…」

 

友奈が樹の意外な戦い方に少し驚いていると

 

「こいつの、せいで、こっちは、ずっと、走らせれ、てたん、ですよ!これくらい、やっても、ゆるされ、ますよねぇ!?」

 

そんな友奈の言葉が聞こえたのか御霊を叩きつけながらキレ気味に叫ぶ樹

 

「そ、それもそうだね!樹ちゃんがんばれーっ!」

 

「がんばれ!がんばれ!い・つ・き!!」

 

そんな樹に同情したのか応援する友奈とその横でチアガール風に応援する風

 

「おぉぉぉ!大・雪・山おろしぃぃぃ!!」

 

二人の応援を聞いて興が乗ったのか。今度は、御霊を振り回す樹。

 

すると、ワイヤーがブチッ!と音をたてて切れ御霊が飛んでいってしまう

 

「あ"!!やっちゃった!!」

 

「なにやってんの!!樹ぃぃ!」

 

「早く追いかけないと!!」

 

三人が慌てて御霊を追いかけようとすると

 

飛んでいく御霊に向かって青い影が飛んでいき御霊に取りつく。美森である

 

美森は御霊に取りつくと四本ある帯の足の内二本をアンカーのように御霊に刺す。

 

さらに、残りの帯の先端を裂き人間の手のようにすると召喚したショットガンを持たせ、自分も同じショットガンを装備し、計四丁のショットガンを御霊の割れてできた亀裂に差し込む。

 

「この距離ならいくら固かろうが関係無いわ…!」

 

そして、美森は同時に引き金を引く。

 

次々に撃ち込まれる銃弾に御霊は為す術もなく砕かれ、光になっていった

 

天へと昇っていく御霊を見ながら美森はどう着地しようか考えていると

 

「東郷さ~ん!」

 

「友奈ちゃん!」

 

落ちてくる美森に向かってバリアの足場を使い友奈が近づく

 

そして、美森に追い付いた友奈は美森をキャッチしお姫様抱っこでバリアの足場を使ってゆっくり降りる。そして、無事に地面に着地すると美森を下ろした

 

「東郷さん」

 

「なに?友奈ちゃん?」

 

「東郷さんのおかげで今回も無事に全員生き残れたよ、本当にありがとう」

 

「いいえ、友奈ちゃん…私だけの力じゃないわ。みんなが頑張ったからよ」

 

お礼の言葉を口にする友奈にそれは違うと否定する美森そんな二人に風と樹が合流する

 

「そんな謙遜しなくていいわよ。東郷、今回はほんとに助かったわ。ありがとね」

 

「風先輩…」

 

謙遜するなと美森に言いつつ感謝する風。

 

「それに、さっきはうちの妹が迷惑かけちゃったし」

 

「うぅ…すみませんでした…」

 

風は横にいる樹をジト目で見ると樹は申し訳なさそうに美森に謝罪した

 

「まったく樹ったら、調子乗るといつもこうなんだから。今日の晩御飯は樹の嫌いもの多め入れるからね」

 

「うぇ~…そんなぁ………お姉ちゃんの鬼(ボソッ)…」

 

「なんか言った?」

 

「ヴェ,マリモ!!」

 

「あはは!」

 

「フフッ」

 

小声で風の悪口を言う樹。しかし、聞こえていたのか風が問いただすと樹は慌ててなにもないと言おうとしたが呂律がまわっていない。そんな樹を見て友奈と美森は思わず笑う

 

「あっ…樹海が…」

 

四人が周りを見ると樹海が前日と同様に輝き始め。そして、

 

「あっ、戻った」

 

中学校の屋上に戻っていた

 

「あ~疲れた…」

 

樹がそう言うと三人も緊張が解けた途端一気に疲労感が来た

 

「あー確かに」

 

「そうねぇ…」

 

「こりゃ、明日は確実に筋肉痛だわ」

 

友奈、美森、風がひどく疲れた表情でつぶやく

 

「今日は、お役目初日にまさかの二連戦だったし…今日の部活は休みにしましょう…」

 

「そうですね…急ぎの依頼もありませんし」

 

風の提案に端末で依頼の確認をしていた美森も同意する

 

「それじゃ、解散…」

 

「「「お疲れ様でしたー…」」」

 

四人は各々の教室に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~つっかれたぁ~…」

 

時刻は夜10時を回った頃、友奈はベッドに倒れように横になる

 

「今日はいろいろな事が起こって大変だったなぁ…」

 

今日の出来事を振り替える友奈。そして、これからは、あんな敵と戦っていかなければならないのかと一瞬不安になるが、みんなが居れば大丈夫だと思い不安を吹き飛ばす

 

「おやすみ~」

 

机の上でクッションを齧っている牛鬼とその横に置かれているクローズドラゴンにおやすみを言うと電気消して瞼を閉じ、すぐ眠った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ?」

 

友奈は気づくと白い空間にいた

 

「えっ?…どこ、ここ…夢の中?」

 

「よぉ、やっと会えたな」

 

「誰っ!?」

 

突然の事に困惑している友奈に何者かが背後から声をかけた。友奈が慌てて振り返るとそこにいたのは

 

「…誰?」

 

見知らぬ男性だった、髪は茶髪で青いスカジャンを着て腰にチェック柄の服を巻いている。そんな変わった服装の男性がそこにいた

 

「あー自己紹介がまだだったな…俺は『クローズ』の精霊…バサッ…プロテインの貴公子、万丈龍我だぁ!」

 

突然現れて人差し指を上に向けながら名乗りをあげる男性にもう友奈の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。ふと、混乱する友奈の脳裏に黒い服を着た男がヴェハッハッ!!と笑いながら土管から生えてきた。その男は友奈を指を指しながら

ユウキユウナァ!と友奈の名前を言うと神託を告げる

 

ナゼイキナリシブンハコンナトコロニイルノカァ、ナゼシラナイオトコノヒトトソンナトコロイロノカァ!ソノコタエヲシルホウホウハタダヒトツ…メノマエノオトコニシツモンスルノサァ…ヴェハッハッ!!

 

それだけ言うと男は笑いながら土管に戻っていった

 

「あの…ここってどこなんですか!?」

 

とりあえず友奈は気持ち悪い男の人に感謝しながら、神託にしたがって質問してみた

 

「えっ?しらね」

 

思わずずっこける友奈。けど、と万丈龍我は続ける

 

「お前が使ってるドラゴンの事とか教えてやれるぜ」

 

「っ!教えて下さい!あのドラゴンはなんなんですか!?」

 

「おう。そのためにお前に会いに来たんだからな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、ここはどこかの研究所の一室。そこでは、一人の男性がパソコンにデータを打ち込んでいた。

 

すると、コンコンとその部屋のドアがノックされ、男性の応答を待たずに一人の男性が入ってきた。

 

「聞いたか葛城。今代の勇者達がバーテックスを撃破したらしいぞ」

 

それを聞いた。葛城と呼ばれた男性は打ち込むのを止め入ってきた男性の方を向く

 

「当然だ、勇者システムは二年かけてかなり強化したからな。それぐらいやってもらわなきゃ困る」

 

「しかもだ…初日で四体も撃破したんだぞ」

 

それを聞いた葛城は少し驚く

 

「ほう…今代の勇者は随分優秀だな」

 

「ああ…みんな優秀だ…特にとびっきりなやつがいる」

 

「へぇ…君がそこまで絶賛する子かどんなやつだい?」

 

「彼女の名前は、結城友奈。歳は14歳で元気な娘さ……そして、」

 

「三人目の『パンドラシステム適合者』だ」

 

「っ!」

 

それを聞いた葛城は目を見開き、思わず立ち上がる。

 

「それは…本当か?」

 

「ああ…間違いない」

 

男性はそう言うとタブレット型の端末を操作しあるデータを見せる

 

「たった今、『クローズ』パネルのデータが一部アンロックされた」

 

葛城は端末に表示されたデータを見ながら

 

「…春信」

 

「なんだい?」

 

「彼女をここに招待してくれ。出来るだけ早く」

 

「了解」

 

春信と呼ばれた男性は部屋を出ようとドアに向かおうとして立ち止まり、葛城の方を向いて

 

「あっそうそう、次の襲撃からうちの妹が参戦するから、サポートのご教授お願いしますよ。葛城先生」

 

それを聞いた葛城は嫌そうな表情を春信にむけると

 

「先生は止めろ。僕はそんな柄じゃない」

 

「フッ…そうかい」

 

そして、春信は部屋を出ていった

 

 

 

 




次回 赤が来る

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