「ふぁぁ……」
次の日の早朝、いつもはほぼ同時に目が覚めるのだけど、珍しくレミリアはフランよりも先に目が覚めた。時間が時間である為人が殆んど居ないこの時間帯、1人で起きていても暇で仕方ないと思った彼女は再び寝ようとしたが、完全に目が冴えてしまったのか、全く眠る事が出来ずにいる様だ。
なので、レミリアは皆が起きるまでの暇を紛らわす為に、隣ですやすや寝ているフランの寝顔を見ながら考え事をする事にした。
「相変わらず可愛い寝顔ね……ちょっとくらい、触れても良いわよね」
思わずそんな事を口に出す。フランが前異世界に召喚され、戻って来てから余計にそう思う様になってきていたレミリアが、彼女が寝ているのを良い事にそっと頭を撫でた時、心なしかフランが笑った様に見えた。
寝ている所を起こしてしまった様に見えて焦ったレミリアだったが、寝息を立てている所を見てそうではなかったと分かり、ホッとした彼女であったが……
「お姉様ぁ……えへへ~」
「ちょっとフラン、起きてたの?」
突然フランがそう言ったかと思うと、隣で寝ていたレミリアに対して抱き付いてきた。これには彼女も少し驚いて、起きているのかとフランに問い掛けるが反応がない。恐らく彼女に関連した何らかの夢を見ていて、現実でも身体が動いてしまったと言う事だろう。
「凄い力……離れるのは無理そうね」
普通の人間であれば、骨が砕けて死んでしまうレベルの力でレミリアに抱き付いて離れないフラン。同族の吸血鬼である為無理やり引き離す事も出来なくもないが、彼女が幸せそうな顔をして寝ている上、自分もフランに抱きしめられて幸せを感じている。別に引き離す必要など無いのだ。
「一体どんな夢を見ているのかしらね、フラン」
そんな事を囁きながら考え事をしていると、フランの身体の暖かさも相まって眠気を再び感じるようになったレミリア。なので、自身もフランを抱き返してそのまま再び眠りについた。
次にレミリアの目が覚めたのは昼間だった。目が覚めたと言うよりは、申し訳なさそうにしている咲夜に起こされたのだが。
「お嬢様、妹様。幸せそうにして寝ている所大変申し訳ありません。実はご報告がありまして……罰を与えると言うのなら後で受けますので、まずはお聞きください」
「別に罰なんて与えるつもりなんて無いわよ。貴女がわざわざ私とフランを起こすって事は何か重要な事が起きたのでしょう?」
「ありがとうございます、お嬢様。では美鈴、パチュリー様、どうぞ」
そう言うと、咲夜が美鈴とパチュリーの名前を呼んだ。すると、中に1人の箒と杖を持った魔女のイメージそのままの、推定10代の少女が美鈴によって縛られた状態で入ってきた。ご丁寧にパチュリーも後ろに控えている所を見ると、相当厄介な魔女の侵入者だったのだろうか。
「咲夜、一体何があったの? そいつ、侵入者?」
「はい。今朝方美鈴が館上空を箒に乗って飛ぶ3人を発見して監視していた所、館に侵入しようとした為捕らえたとの事です。しかし、妙な魔法らしき力を使われて2人には逃げられてしまいました。1人ば図書館に迷い込んだ際にパチュリー様に捕らえて頂きましたが……申し訳ありません」
「過ぎた事なのだから気にしないで。1人捕らえられただけでも十分よ……さて」
すると、レミリアは侵入者の少女をじっと見据え、ゆっくり歩いて近づく。その様子はまるで、獲物を見つけた肉食動物が獲物を狩ろうとしているかの様に見えた。捕らえられた少女は何らかの魔法を唱えようとするも、縛られている状態では満足に魔法を出す事など不可能である。当然、不発に終わった。
「なぜ、館に侵入しようとしたのかしら? 一応言っておくけど、私と後ろに居る子は吸血鬼よ。事と次第によっては……後は分かるわね?」
「……こんな仕事受けなきゃ良かった。もちろん、捕まったからには全てを話しますよ。死にたくないので」
すると、その捕らえられた少女はレミリア達に対して全てを話し始めた。どうやら、彼女は紫が言っていたキーリマイラ魔導連合軍に所属する、偵察魔女部隊の『カーレ』と言うらしい。ここに来た訳は、港町に潜んでいたスパイから『突然現れたデカい島を調査してくれ』と指令が下り、その過程で強力な魔力の波動を感じ取ったからとの事。
「幻想郷に来たのは3人だけ?」
「いえ、私を含めて10人は居た筈です。何処に居るかは知りませんが、貴女達のような猛者に捕まらなければ――」
「お姉様、そう言えばキーリマイラ魔導連合の奴らって全員壊さなきゃいけないんじゃなかったっけ? 私がやる?」
「え……?」
その後、カーレとレミリアが話をしている途中にフランが割り込んで来て、キーリマイラ魔導連合の奴らなら殺さなきゃいけないのではないかと、そうであれば私がやろうかと、レミリアにそう問い掛ける。
突然のフランの発言により、カーレの身体が凍りつく。死にたくないから情報を全部公開したのに、ここへ来て殺されてしまうかもしれない可能性が出てきたからだ。
「確かにそうよ。でも、それは攻撃を1度でもされてからの話であって、まだカーレはここに侵入してきただけ。壊してはいけないわ」
「はーい!」
しかし、レミリアによって死ぬ事はないと確約された為、その可能性は潰えた。カーレは小声で『あの時魔法が不発で良かった!』と、自分の幸運に感謝をした。
「とは言え、どうしようかしらね……」
「じゃあさ、霊夢の所に連れていけば良いんじゃない? 紫は何処に居るんだか分からないから却下で」
「まあ、そうね。じゃあ行きましょうか。咲夜、ちょっと出掛けてくるわね」
そうして、捕まえたカーレの処遇をどうするか聞く為に、レミリアとフランの2人とカーレは、博麗神社へと向かっていった。
「あ、フラン姉様にレミリア姉様~!」
「ヴァーミラ? どうしたの……ってその女の子は?」
「えっとね、この女の子が箒に乗って空を飛んでたんだけど、その時にチルノと激突しそうになったから私が庇ったの。それで落っこちて気絶したから、今ミアに治してもらおうと思って……」
道中、カーレと似たような背格好をした女の子を背負ったヴァーミラとチルノの2人に出会った。話を聞いてみるとどうやら、箒に乗って飛んでいた女の子とチルノが激突しそうになった為、ヴァーミラが魔力を纏って代わりに激突し、そうして落っこちた彼女を念の為にミアの元に連れていく所らしい。
「ちょっと宜しいですか? その娘の治療、私がやります」
「カーレ、回復魔法使えるの?」
「いえ、回復薬学です」
すると、カーレがポーチからほんのり緑に輝く液体の入った瓶を取り出し、その中の液体を気絶していた女の子の口に入れた。更に傷口には濃い緑に輝く液体を豪快にかける。すると、吸血鬼の再生能力と同等の速度で傷口が再生し始め、あまり待たない内に完治した。この効力は、ほぼ魔法と言っても過言ではないだろう。
「これでもう大丈夫、直に目を覚ますでしょう。それに、その娘もキーリマイラ魔導連合の偵察魔女部隊所属ですし、一応霊夢って人の所に連れて行った方が良いのではないでしょうか?」
「そうね……ミラ、チルノ。一緒に来てくれるかしら?」
「良いよ、姉様」
「あたいも、ミラが構わないなら構わないぞ!」
こうしてレミリア達は魔女2人を連れ、霊夢の元へと向かっていった。
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