東方三紅姉妹録~異界に喚ばれし幻想郷~   作:松雨

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期間が開き過ぎました。すみません。それと、異世界国家側の話になります。




侵略の行進

 エンデント王国を侵略しようと躍起になっているキーリマイラ魔導連合軍。その最前線にて魔法剣士や大魔導師、各小隊の隊長達が集まって会議を行っていた。

 

「では、これから王国攻略軍の会議を始めたいと思います」

「すいませーん。よりにもよって最前線で会議とか馬鹿な――」

「黙りなさい、クウネ。我が国の大魔導師達の防御障壁は最強なのです。規模も質も何もかも劣っている国の攻撃程度では破れません。この世界の列強国家レベルの強さであれば別ですが、魔女の偵察隊の報告ではそんな事はないとの事ですし……」

 

 本来、もう少し後方の安全な場所で行うはずであったこの会議は、相手を『蛮族』『雑魚』等と舐め腐っている司令官の一声で、危険な場所で行う事に決まってしまった。いくら相手が劣るとは言え、流石に最前線で会議など馬鹿ではないかとの反対意見もあったものの、押し切られてしまった様である。

 

 実際、この司令官は高い質の大魔導師や各種最新武器や兵器、隠密性に優れた偵察魔女部隊と言った軍備を持つ自国を盲信する性格であり、遥かな格下が相手であるとこのような態度を取ってしまい、もしかしたら一矢報いられるかもしれないと言う可能性を考えない欠点があった。

 

「はぁ……まあとにかく、報告でーす。本日、眼下に見える町『イーティエラ』を占領完了致しました。こちら側の被害は歩兵300名程の負傷のみとなってまーす」

「当たり前です。相手は1500人程度に対し、我が方は質と練度で大きく上回った上で5000人……負けるはずがありませんよ」

「……そうですねー」

 

 そうして最初に大魔導師の1人、クウネと言う男の人から報告するも、興味がなさそうに司令官は答えた。ここの所連戦連勝の報告ばかり届いていたため、聞き飽きていたからだ。被害も負傷のみであった事も、それに拍車をかけている。

 

「イリー司令官。だからと言って油断は禁物でしょうよ。それに連戦連勝の報告ばかりとは言え、真面目に聞いてくれないと困るぞ?」

「はいはい。全く、カノスはいちいち……」

「これが普通なんだが……」

 

 そんなイリーと言う名の司令官に釘をさす様にして言ったのが、今回の侵攻軍の主力隊を率いる魔法剣士のカノスと言う男だ。キーリマイラ軍が連戦連勝出来ているのも、彼と彼が率いる主力隊の獅子奮迅の活躍のお陰と言うのが大きい。

 

 他にも色々人脈を持っているため、イリー司令官も彼と彼の率いる隊がいる限り、多少失礼な発言をされようとも、たまに命令に従わない事があろうとも、今みたいに指摘されようとも理不尽な指令を誰にも出す事は出来ないし、するつもりもない様だ。

 

「それで、占領した町に居た民衆はどうしているのです?」

「ああ、それなら中央広場と役場と我が方の陣地の余った場所に拘束した上で防寒防雨の結界内に押し込んでまーす。どうするかは司令官の指令待ちでーす」

「分かりました。それでは、全員に――」

 

 そうしてイリー司令官が捕らえた町の民の扱い方を指示しようとした時、不意に大きな爆発音が辺りに響いた。部下が何が起きたか調べると、どうやら防御障壁に火属性爆発魔法が数発着弾した痕跡が見つかった。

 

 しかし防御障壁は無傷であるため、会議には支障はないが、制空権を取られた状況下で地上部隊の派遣など、いくら蛮族の魔導師部隊が相手でも勝てはするだろうが好ましくないと思っているイリー司令官は……

 

「司令官、上空にエンデント王国の空戦魔導師部隊が!」

「慌てる事はありません。この中に居れば死ぬ事はないでしょうけど、このまま派遣しては地上部隊に少なからず被害が出るでしょうね……こちらは大魔導師空戦部隊を出しますよ。クウネ、行けますか?」

「はーい。では行って参りまーす」

 

 空の敵にはこちらも空の部隊をぶつける事に決め、大魔導師クウネ率いる部隊に出撃の指示を出した。そうしてやる気なさげに出撃していった彼らを見送ると、安心して再び椅子に座る。

 

「これで制空権の奪取は確定ですね。哀れな王国軍、我が方に攻撃してきた事を後悔する事でしょう」

「しかし、あの火属性爆発魔法の威力は相当なものでございました。無防備な状態で受ければかなりの犠牲者が出ていた事だろうと思われますが……」

「それはそうでしょう。いくら精強な列強国家の軍でも、無防備な状況で受ければ相当の負傷者と少数の死者が出るのは当たり前です」

 

 防御障壁内に残った魔導師とそんな会話をしながらイリー司令官が空戦を見ていると、僅かに10分程度でエンデント王国の魔導師部隊を全員撃墜する事に成功した様だ。

 

「えーっと……全員撃墜してきました。こちらの被害はありません」

「ご苦労。相変わらず練度が高いですね、流石クウネの率いる部隊です」

「……どうもー。それで、これでもまだここで会議する気ですか?」

「当然でしょう。防御障壁は無傷でしたので。これにヒビでも入れば別ですが」

「……本当、このアホの目覚ましに誰か障壁にヒビでも入れてくれないかな? 出来れば粉々に……」

「ん? 何か言いました?」

「いいえ、何も」

 

 いくら障壁が無傷だったとは言え、高威力の魔法攻撃を放てる敵が居るこの状況でまだ最前線に居座ろうとするイリー司令官に呆れるクウネ。思わず小さな声で、障壁にヒビを入れるか破壊してくれないかと愚痴をこぼした。

 

 そんな状況のため、若干雰囲気が悪くなりかけた時、上空に箒に乗った魔導師が数名現れた事にクウネは気づく。良く見ると、とある港町に偵察に行った魔女隊だったので、障壁に少しだけ穴を開ける。そうして全員が通った後、穴を閉じて話を聞いた。

 

 すると、魔女隊の語った事が神話でしかないような物であったため全員が衝撃を受ける。

 

「なんと、ラスフの港町付近に前はなかった巨大な島が突如出現していたと……そんな事があるのか。まるで神話だな」

「人間はともかく、妖精や吸血鬼に妖怪と呼ばれる種族、幽霊に不老不死の存在に……神々まで存在しているとは……冗談でしょう?」

「イリー司令官、冗談ではありません。現にこの目で見てきましたので……それに、吸血鬼が住んでいると思われる館に侵入しようとしたカーレ様が……あっさり捕らえられてしまいました。ユキ様も行方不明ですので、恐らくは……」

 

 魔女隊曰く、ラスフと呼ばれる港町の近くの海に大きな島が出現していて、そこには神も含む多種多様の種族が存在していたと言うのだ。それだけでも荒唐無稽な話だと言うのに、偵察魔女隊の精鋭1人が捕らえられ、もう1人が行方不明だと言う。これを聞いた時の衝撃が大きすぎて、声すら上がらなかった。

 

「……あの2人がこうもあっさり捕らえられてしまうとは、恐らくはその報告は事実なのでしょう。して、その島の名前は?」

「『幻想郷』と言う様です。文明レベルは大きく劣りますが、先ほど申し上げました通り、そこの住民の一部は非常に強力かつ危険です。仮に王国軍の拠点をそこに移されたら……いくら精強な我が軍でも……」

 

 まさか、こんな格下の国に危険な存在が突然現れるとは夢にも思っていなかったイリー司令官は驚きを隠せない様だ。

 

「ふむ……ならばどれだけ危険な存在が居るのか偵察を継続するしかありませんね。決して、2人が捕まった場所への潜入はしないこと。そして、戦闘は必要最低限にする事。この2つを守らせましょう。念のため、本国に援軍を要請しなさい!!」

「「「了解!!」」」

「それと、港町への進軍は継続の方針で行きますよ」

「「「分かりました!!」」」

 

 そうして気を取り直したイリー司令官は改めて幻想郷なる場所の偵察を指示し、目の前の戦争に集中する事にした。

 




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