死の支配者と太陽   作:望月りんご

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04 カルネ村 上

「あっ!村を見つけましたよ!」

 

 モモンガは自室で目の前に浮遊する鏡に向かってパントマイムのようなことをしていたが、決して遊んでいたのではなくこの鏡の操作方法がわからなくて四苦八苦していただけなのだ。

 この鏡は、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)という指定したポイントを映し出すというアイテムだ。

 

「どれどれ…あれ?なんですかこれ?」

 

「あっ、襲われてる」

 

 鏡に映し出された光景は、武装した騎士らしき集団に一方的に襲われている村人たちであった。

 姉妹らしき小さい女の子の手を引いて逃げる少女に追いついた騎士が背中を斬りつけた瞬間に我慢できずに魔法を発動する。

 

転移門(ゲート)!」

 

 何もない虚空に開いた禍々しい赤黒い穴へと飛び込んでいく天照大神。

 

「あっ!天照さん!」

 

 モモンガが止める間もなく転移してしまった天照大神。

 すぐさまモモンガは傍に控えていた執事のセバス・チャンへと指示を出す。

 

「セバス!アルベドとシャルティアに完全武装で来るように伝えろ!それと後詰の準備だ!」

 

「はっ!」

 

 モモンガはアイテムボックスからギルドの証たるギルド武器のスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出して転移門(ゲート)を開き天照大神のあとを追う。

 

 

 

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国の辺境にある開拓村であるカルネ村の村娘のエンリ・エモットはいつものように畑仕事をしていると、突然武装した騎士の集団が村へと襲いかかってきたのだ。

 両親が身代わりになり妹のネムとともに逃げたのだが、すぐに追いつかれてしまい背中を斬りつけられてしまう。

 騎士が剣を振り上げてもう駄目だと思ったが、いつまで経っても剣が振り下ろされることはなくおそるおそる顔を上げると、騎士たちはエンリを見ていなかった。

 騎士たちが見ている方向へと顔を向けると、何もない虚空に禍々しい赤黒い穴が開いていた。

 

「え…」

 

「な、なんだ!?」

 

 虚空に開いた禍々しい赤黒い穴からはその禍々しさとは裏腹にこの世のものとは思えないほどの美しい女性が出てきた。

 

内部破壊(インプロージョン)!」

 

「ひでぶっ!」

 

「ちにゃっ!」

 

 女性が言葉を発すると騎士たちの体がまるで風船のように膨らみ、そのまま体が弾け飛び血や臓物をぶちまける。

 騎士たちが爆発して一体何が起きているのかわからないエンリとネムはただただ呆然とするしかない。

 

 

 

「もう大丈夫ですよ」

 

「あ…ぅ、え…」

 

 騎士に襲われていた少女たちは恐怖のためかうまく話せないようだ。

 それもそうだろう、今まさに殺されそうになっていたのだから。

 こういう抵抗すらできない弱者を理不尽に虐げるなど、リアルでの貧困層をこき使う富裕層を思い出して我慢ができなかったのだ。

 

大治癒(ヒール)

 

 背中を斬られた少女に治癒魔法を使用して傷を癒やす。

 少女の背中の傷は跡形もなく綺麗に治る。

 

「天照さん!飛び出さないでくださいよ!」

 

「ごめんなさい」

 

 転移門(ゲート)が開きモモンガが慌てて出てきて飛び出したことを怒られてしまった。

 

「「ひっ!」」

 

 少女たちは転移門(ゲート)から出てきたモモンガを見て怯えているようだ。

 座り込んでいる地面が濡れているので漏らしてしまったのだろう。

 

清潔(クリーン)、モモンガさんの顔が怖いみたいだよ」

 

「え?あっ!」

 

「この人は私の友達だから大丈夫よ、顔が怖いけどね」

 

 怖がっている少女たちを大丈夫だよとなだめる。

 モモンガが開いた転移門(ゲート)から完全武装した漆黒の全身鎧のアルベドと真紅の全身鎧のシャルティアが出てきた。

 

「お待たせしました、モモンガ様、天照大神様」

 

「それでこの人間どもはなんでありんすか?」

 

「この子たちは保護対象です、現在村を襲っているそこにミンチになって転がっている騎士と同じ者たちのみを倒します、いいですね?」

 

「「はっ!」」

 

「では、モモンガさん。私は先に行っていますからね。シャルティアついてきなさい」

 

「かしこまりんした!」

 

 天照大神はシャルティアを連れて騎士に襲われている村へと向かっていった。

 あとに残されたモモンガは、アイテムボックスから取り出した泣いているような怒っているようなマスク、嫉妬する者たちのマスク(通称は嫉妬マスク)をかぶりガントレットをはめるて、はだけている胸元を閉じる。

 

「さて、我々も村へと向かおうか。村についたらもう終わっているだろう」

 

「はっ!」

 

 モモンガはアルベドと助けた少女たちを連れて村へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあっ!」

 

「天照大神様、終わりんした」

 

「ご苦労さま」

 

 村へと到着すると騎士たちは村人たちを広場へと集めており一箇所に集まっていたので、すぐに騎士たちの手足をへし折り動けなくする。

 村人たちは突然現れた天照大神とシャルティアが騎士たちを倒すのをただ見つめているだけだった。

 

「お、おいっ!俺を助けろ!金ならやる!200金貨!いや500金貨!…1000きぶげびょっ!?」

 

「天照大神様に気安く話しかけるな、身の程を弁えろ下等生物風情が!」

 

 騎士の1人が命乞いをするも顔をシャルティアに蹴られて顎が砕けた激痛にのたうち回っている。

 その様子に抵抗を諦めたらしい騎士たちに問いかける。

 

「さて、そなたらの隊長はどなた?」

 

「隊長はそこのベリュースです」

 

 と、シャルティアに蹴られてのたうち回っている騎士を指差す騎士たち。

 こんなのが隊長とは、なんとも言えない気持ちになる。

 

「…まあいいわ。記憶操作(コントロール・アムネジア)

 

 対象の記憶の閲覧・操作・消去を行うことができる魔法を使用して騎士たちの隊長の記憶を閲覧する。

 

「…ただの下っ端のようね」

 

「何かわかったのでありんすか?」

 

「ええ、この騎士たちはバハルス帝国の騎士に偽装したスレイン法国の兵士よ」

 

「王国と帝国は戦争をしているんでありんすよね?」

 

「そうよ」

 

「えぇっと、じゃあなんで法国は王国を攻撃しているんでありんすか?」

 

「そうね、法国は帝国に勝ってほしいのかもしれないわね」

 

 専業の兵士を育成している帝国と違い、王国の兵士のほとんどは平民の徴兵である。

 帝国が収穫時期を狙って戦争を仕掛けてくるのは、農作物を収穫する農民が徴兵されてしまい農作物の収穫もままならなくなり収穫量が減り、王国の国力を低下させることが狙いだろう。

 そして直接農村を襲い農民そのものがいなくなれば農作物を作ることそのものができなくなり更に国力が落ちるので、帝国との戦争には勝てず王国は帝国に併合されると法国は考えているのかもしれない。

 恐怖公の眷属たちが調べた情報にも王国は相当腐敗しているようだし、代々優秀な皇帝が治める帝国に統治させたいのかもしれない。

 ただの下っ端に過ぎないこの騎士たちにはろくな情報が与えられていないので、憶測の域を出ないのだが。

 あとは、モモンガが村へと来るのを待つことにした。

 

 


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