5月9日
【午前8時30分:美竹家】
緋翠「ん…たしか昨日は美竹さんの家に泊まって…あれ?なんか・・・」
そう呟いて僕は左を向いてみた。そこにいたのは…
日菜「むにゃむにゃ…」
緋翠「なんで日菜さんがここにいるんですか・・・?」
日菜「・・・あ、緋翠くんおはよー!」
緋翠「あ、おはようございます・・・じゃなくて!何で日菜さんがここにいるんですか?」
日菜「うーん、何でだっけ?あ、そうだ!おねーちゃんと緋翠くんの話があたしの部屋まで聞こえたからあたしも!ってなってここに来たんだー!」
緋翠「…ちなみに聞きますけど美竹さんに確認は取りましたか?」
日菜「取ってないよ?」
緋翠「(ですよね…)で、これからどうするんですか?紗夜さんが心配してると思うので日菜さんは一旦家に戻ったほうがいいですよ」
日菜「えー?」
緋翠「えー?じゃないですよ。美竹さんには日菜さんが来るとか伝えてなかったので色々誤解を生むかもしれないので…」
日菜「緋翠くんがそう言うなら今のところは帰ろっかなー。じゃあねー!」
日菜さんはそう言うと美竹さんの家を後にした
緋翠「はあ…本当に日菜さんは神出鬼没だから困る・・・」
(障子が開く音)
蘭「緋翠、さっき日菜さんの声がしたけど何かあったの?」
緋翠「あー…実は昨日僕と紗夜さんが電話してたのが日菜さんに聞こえてたみたいで、いつの間にか僕の寝てる布団のなかに入り込んでたのでさっき話をして家に戻るように言っただけですよ」
蘭「そんなことあったんだ…それで、緋翠はこの後どうするの?」
緋翠「どうするっていっても、特に何もやるないはですけど…」
蘭「あのさ…今日はつぐみ達とみんなでお出かけしようかって話してて、よかったら緋翠もどうかなって」
緋翠「僕が美竹さんたちと一緒に?」
蘭「うん。昨日の夜みんなと話しててひまりとモカが『緋翠くんさえよければ一緒に行きたい』なんて言ってたから…それに、まだあたし達はあって2週間くらいだし何か話したいなって」
緋翠「んー…お邪魔じゃなければご一緒しようかな。」
蘭「じゃあ9時30分につぐの家の前に集合でいい?」
緋翠「羽沢さんの家の前に集合だね、でも僕は場所を知らないんですが・・・」
蘭「じゃああたしと一緒に行こうよ。そうすれば迷わないでしょ?」
緋翠「それじゃあお願いします。」
それから僕たちは羽沢さんの家の前に集合し、2年A組のメンバーが集まった。ちなみに僕たちは待ち合わせ時間より10分前に来ていたので少しだけ話をしていた
【午前10時:ショッピングモール】
緋翠「へぇ…こんなところにショッピングモールなんてあったんですね」
蘭「あたしたちはよく来るけど緋翠は来たことないの?」
緋翠「うん。日菜さんや紗夜さんとも来たことはないよ。一人で出歩くことはあるけどこんなところがあるなんて知らなかったし」
巴「そうなのか?それじゃあ今日はここをじっくりと見て回るか!」
ひまり「賛成!新作のスイーツも発売されたみたいだし今日はたくさん食べるぞー!」
モカ「おー、ひーちゃんがいつもよるツグってるー」
緋翠「ツグってる?」
モカ「ツグってるはツグってるだよー。それじゃあいこー。」
こうして僕たちはショッピングモールを回ることになった。
蘭「…ねえ緋翠、一つ気になったことがあるんだけど聞いてもいい?」
緋翠「何ですか?」
蘭「あたしたち、小さいころ遊んだことなかった?なんかさ…あたしの知ってる幼馴染にも緋翠って名前の人がいたけど、県外の中学校に通うことになってから連絡も取れてなかったし・・・」
緋翠「もしかして…『みーちゃん』?」
蘭「…なつかしいよね、その呼ばれ方。よく遊んでた頃はそう呼ばれてたっけ。あれから5年…か。」
モカ「運命の再開―?翠くんおひさー」
ひまり「えー!?もしかしてひーくん!?おっきくなったね!」
巴「マジかよ!?緋翠、久しぶりだな!両親は元気か?」
緋翠「…僕の両親はとんでもないクズっぷりで、僕のことですらただの道具だと思ってたんだ。ある日、僕の両親は僕が通ってた中学校を廃墟にして…」
つぐみ「そんな…ひどい…自分の子供ですらただの道具だとしか思ってないなんて…」
緋翠「…もう過ぎたことです。今はこの時間を大事にしたいので早く行きましょう」
僕は少しだけ足早に近くにあったゲームセンターに移動した
Afterglowside
蘭「緋翠…あたし達と離れてから苦労してたんだね…あたし達、緋翠のことを何も知らなかった・・・」
巴「緋翠、アタシたちと遊んでた時は笑顔だったのに今は笑顔を全く見せなくなったし・・・何かできることはないのか?」
ひまり「私たちにできることはないよ巴…緋翠くん、私たちの前では平然を装ってるみたいだけど」
つぐみ「緋翠くんのあんな過去を聞いたら私たちに何かできないかなって考えたいけど緋翠くんは自分のことになると周りが見えなくなっちゃうから私たちには・・・」
モカ「翠くんってたしか日菜先輩のところにお世話になってるって言ってたねー?ここは日菜先輩に任せるっていうのはー?」
蘭「…なんでこんなにもあたし達は無力なんだろうね。」
緋翠「あのー、そこで何を話してるんですか?早く行きましょう?」
巴「あ、悪い!早く行こうぜ!」
ひまり「巴ー!待ってよー!」
それから僕たちはゲーセンを回ったり新しい服を買ったりしてショッピングモールを後にした
【午後3時:氷川家リビング】
緋翠「ただいまです」
紗夜「おかえりなさい緋翠くん。」
日菜「おかえりー!どこに行ってたのー?」
緋翠「ちょっと美竹さんたちとショッピングモールのゲーセンとか服屋さんとかに行ってきました。この前は日菜さんが僕のお出かけの服を選出してたので今回は僕が選んで買いましたよ」
日菜「どんな服?」
緋翠「それは今度お出かけする時のお楽しみですよ。」
日菜「え?一緒にお出かけしてくれるの!?」
緋翠「はい。今度は紗夜さんも一緒にどうかと」
紗夜「私もですか?ですが・・・」
緋翠「紗夜さんは最近花咲川での仕事が多いと今井さんから連絡をもらったので偶には息抜きでもどうかと思いまして」
紗夜「今井さん、あなたという人は…わかりました。今度都合があうときはよろしくお願いします」
緋翠「ありがとうございます。さて…帰ってきてすぐですが僕はそろそろ行かないと」
日菜「沙綾ちゃんの所?」
緋翠「はい。山吹さんのお母さんの体調が優れないらしく、最近は一人で家の仕事をやっているらしいので暫くは一緒には帰れないと言っておきますね。」
日菜「そっかー、行ってらっしゃーい!」
【午後3時42分:やまぶきベーカリー】
緋翠「山吹さん、こんにちは」
沙綾「緋翠くん、こんにちは!こんな時間からごめんね…」
緋翠「いえ、さっきまで美竹さんたちとおでかけをしていたのですが山吹さん一人に無茶をさせれないので」
沙綾「ありがとね緋翠くん。今日は休日だからお客さんが多くて…」
緋翠「それで、僕は何をすればいいんですか?」
沙綾「今日はレジをお願いできる?私はパンの様子を見ないといけないから・・・」
緋翠「わかりました。」
沙綾「最近羽丘はどう?」
緋翠「うーん、まだ何とも言えないですかね。あと1ヶ月ほど経てばまともな感想は言えると思いますが・・・」
沙綾「そっか。不安とかあったら大丈夫かなって思ったけど何もないみたいならよかったよ」
緋翠「山吹さんも大丈夫ですか?最近は一人で仕事をしているんですよね?」
沙綾「偶に純や沙南も手伝ってくれるけどあまり無茶はさせれないからね…でも楽しいよ」
緋翠「そうですか。あまり無茶をしすぎないでくださいね。日常でも、仕事でも。」
沙綾「あはは、ありがと。ちょっと気になったんだけど、緋翠くんっていくつなの?」
緋翠「僕の年ですか?16ですけど」
沙綾「あれ?それじゃあ私と同い年じゃん!敬語を使わなくてもいいのに」
緋翠「いえ、これは僕の癖みたいなものなので気にしなくていいですよ。でもそのうち慣れたら名前で呼ぶことにしますね」
沙綾「そっか、何事も慣れが必要だからね。こっちの仕事はどう?」
緋翠「結構慣れてきましたね。今日は帰ったらパンについての本を読み漁らないと…今日羽沢さんたちとお出かけした際にパンの基本とかが書かれている本とかを買っておいたんですよ」
沙綾「へえー。この仕事が気に入ったんだね」
緋翠「はい。僕は子供のころからご飯よりパンを食べることが多かったのでこういう仕事をやってみたかったんです。」
沙綾「よかったね、こういう仕事をやってるところがあって」
緋翠「はい。ところでおばさんたちは?」
沙綾「今日はお母さんは家で休んでてお父さんは仕事に行ってるよ。今日は遅くなるって」
緋翠「それじゃあ少し冷蔵庫に入れてる食材を借りてもいいですか?」
沙綾「いいけど、何か作ってくれるの?」
緋翠「ちょっと晩御飯を作っておこうかなって思って。山吹さんは仕事で忙しいでしょうし僕が作っておきますよ」
沙綾「え、別にいいのに…今日は早めに切り上げようかなって思ってるから」
緋翠「そうだとしても学校と仕事の両立は体に負担が大きいですから今日は僕が作っておきますよ」
沙綾「…ならお願いしてもいい?」
緋翠「はい。こっちはやっておくので山吹さんは無理をしすぎないでくださいね」
僕はそう言うとやまぶきベーカリーの厨房と食材を借りて料理に取り掛かった
緋翠「さて、ご飯は炊いてあるみたいだからこれとおかずは野菜炒めにして…あとは味噌汁と鮭の塩焼きと玉子焼き…それと…」
数十分後
緋翠「よし、こんなものかな。冷めないうちに山吹さんを呼んでこよう」
緋翠「山吹さん、夕ご飯ができましたよ」
沙綾「あ、緋翠くんお疲れさま。よかったら食べていってよ」
緋翠「いえ、親子水入らずの時間に水を差すのも気が引けるので僕は帰りますよ。」
沙綾「でもせっかく緋翠くんが作ってくれたのに緋翠くんが食べないのはもったいないんじゃない?」
緋翠「いえ、今日は山吹さんご一家のために作っただけですよ。普段からバイトで世話になってるので今日は微力ながらその恩返しです」
沙綾「そっか、ごめんね。無理に引き留めようとして」
緋翠「いえ、引き留められるのは日菜さんで慣れてるので・・・今日はお疲れさまでした」
沙綾「うん、今日はありがとね。お疲れ様」
僕はやまぶきベーカリーを後にした…
【午後6時:氷川家リビング】
緋翠「ただいま。」
紗夜「おかえりなさい。といっても今日二回目ですが」
緋翠「あれ、日菜さんはいないんですか?」
紗夜「日菜はあの後仕事に行って今日は大和さんの家に泊まると言っていたので今日は私と緋翠くんだけですね」
緋翠「そうですか。あの・・・紗夜さん、一つ聞いてもいいですか?」
紗夜「私に答えれるのなら聞いてください。」
緋翠「・・・紗夜さん、『好き』って何だと思います?」
紗夜「『好き』…ですか?恋愛の意味で、ですか?」
緋翠「…はい。」
紗夜「…すみませんが私にはわかりませんね。ですがその相談に乗れそうな人はいるので今度声をかけておきましょうか?」
緋翠「…お願いします。」
紗夜「それでは、夕ご飯を食べましょうか。この話は明日にしましょう」
それから僕たちは夕ご飯を食べ、自分の部屋で早めに寝た。…やっぱり僕は日菜さんのことが好き…なのかもしれない。明日は紗夜さんが呼んだという人に相談に乗ってもらおう…
その日の夜、山吹さんから「緋翠くん、今日は夕御飯を作ってくれてありがとうね。お母さんや純、沙南からも好評だったから困ったときはお願いするかもしれないけど時間が空いたらでいいからまた作ってもらえないかな?」とチャットが来たので僕は「はい、そのときまでに新しい料理を覚えておきますね」と返しておいた。
いかがだったでしょうか?
ぶっちゃけこの話を書いてる途中まで「蘭ちゃんがヒロインじゃない?」と思いつつ書いていました(テヘペロリン)
それではここまで読んでいただきありがとうございました