Fate/4th・Espada   作:八つ橋

20 / 20
話を書くのを優先して中々感想の返信が出来ておりません。申し訳ないです(泣)
ちゃんと読んでいますので、少しづつ返信していきます!


第19話 聖女マルタとタラスク

 

スタークは右手を突き出し手を広げると青い霊圧が収束されていき、虚閃は放たれた。

 

 

「タラスク!」

 

 

マルタの合図と同時にタラスクは息を吸い込むと、口からは炎を吐き出した。炎と虚閃はぶつかり合い相殺という形で爆発を起こす。

 

 

――ガァン!

 

 

金属同士がぶつかる音が鳴り響く。煙が晴れた先ではウルキオラがタラスクを切ろうと刀を切りつていた。だがタラスクの甲羅が硬いのか弾かれてしまう。

 

 

「大した硬度だ…今までの塵とは違うらしい」

 

 

タラスクの目はギョロっとウルキオラの方へ動くと、体を回転させてその凹凸のある体でウルキオラを吹き飛ばさんとする。

吹き飛ばされる前に素早く響転で距離を取ると、背後に周り虚閃を撃とうと霊圧を込める。

 

 

「させないっての!」

 

 

追撃を阻止するためマルタはウルキオラへ武器を振り下ろした。

虚閃を中断し、腕でそれを防ぐ。

 

 

「……なるほど……身体能力も向上しているようだな」

 

 

「あなたも腕で防ぐのね…!」

 

 

「その程度の攻撃、コイツは不要だ」

 

 

「そう?ならこれはどうかしら!」

 

 

マルタの身体から魔力が放出されると、ウルキオラの腕をジリジリと押していく。とっさに腕を振り払いマルタと距離を取る、ガードしていた右腕はブランと垂れ下がっていた。

 

 

「どうやら骨が折れたようね?その右腕は使い物にならないわよ」

 

 

「……勝機の一つや二つ見つけたくらいで一々煩い奴だ」

 

 

刀で腕を切り捨てるウルキオラ、その行動にマルタは驚くがそれの行動にすぐ納得がいった。右腕が一瞬のうちに再生したからだ。

 

 

「ほんっと、化物ね」

 

 

「俺は虚だ……元より人間ではない」

 

 

刀を抜くとマルタへと向かっていく。武器と武器が混ざり合い、辺りへ轟音と衝撃が広がっていく。

 

 

「▪️▪️▪️▪️!!」

 

 

タラスクは空気を震わせる程の音量で吠えると、スタークへと突進する。

 

 

「あんまりこういう戦いは好きじゃねえんだけどな」

 

 

突進してきたタラスクを腕を使い押し止める。

 

 

「そいつを吹き飛ばしなさい!」

 

 

マルタの合図を聞くとタラスクはさらに吠え、力を込めてスタークを押していく。

 

 

「ちっ…!力比べは柄じゃねえって!――虚閃」

 

 

虚閃を放つとタラスクを逆に押し返していく、力が緩まりスタークはその場から離れ距離を取る。

 

 

『聖杯の強化で彼等でもやっぱり苦戦するか…!』

 

 

戦況は今のところ互角といったところだろうか。それでも強化されたマルタ相手に互角に渡り合う2人は異常な強さを持つとわかる。

 

 

「宝具は?宝具を使えば騎士王の時みたいに勝てるかも!」

 

 

『それはダメだ!彼の宝具は魔力消費が大きいから、立香ちゃんの魔術回路に負担がかかるよ!』

 

 

「ならスタークの宝具は?スタークはカルデアの魔力で負担してるんだよね?」

 

 

『彼の宝具か……確かに可能性はあるけど…』

 

 

「スタークなら解放しないよ」

 

 

立香とロマニの会話に割り込むように言ったのはリリネットだ。

 

 

「スタークは余っ程の事がないと解放しないから。疲れるって言ってやらないんだよアイツ」

 

 

「そ、そんなあ…」

 

 

「でも大丈夫。あの二人は十刃だから」

 

 

本来の力を知っているリリネットは焦ること無くスタークとウルキオラの戦闘を見ていた。特にスタークに関しては彼女が一番理解しているのだろう。

 

 

 

「もう1人は大丈夫かしら…?タラクスは私のように甘くはないわよ?」

 

 

タラスクの攻撃を防ぐ防戦一方のスタークを横目で見ると挑発のように口にする。

 

 

「戦闘中に余所見とは余裕な奴だ」

 

 

視線を外した瞬間にすかさず刀を振るう。切っ先を紙一重で交わすと武器から片手を離し、その拳でウルキオラを叩きつけた。拳を片腕で防ぐとその衝撃で足を地面と擦りながら後退していく。

 

 

「私はコレだけじゃないの。この手も足も全てが武器よ!」

 

 

武器を地面に突き刺すと生身の身体で向かって来る。手、足、膝、肘とあらゆる部位からの連続攻撃。片腕を高速で動かしそれを一つ一つ的確に防いでいくウルキオラ。

 

 

「なるほど……その言葉伊達ではないらしい」

 

 

「何時までその余裕な顔は続くかしら…!」

 

 

ドンドン加速していく体術の連撃。目にも止まらぬ速さの拳は次第にウルキオラの速度を超えていく。

 

 

「ハァァ!」

 

 

ついに拳が胸に直撃する。その衝撃により吹き飛ばされるウルキオラ。木を何本か薙ぎ倒すとその倒れた木々で舞い上がる砂煙で見えなくなった。

 

 

「ホントにかったい身体ね…鉄を殴ってるみたいだわ」

 

 

己の拳を見ながらそう言うと、すぐさまウルキオラが飛ばされた方へと視線を移す。

彼は砂煙の中から何事も無かったかのような目でゆっくりと歩いてくる。

 

 

「お前は今までの塵とは違うらしい……いいだろう、敵として認めてやる」

 

 

途端に辺りの空気が重くなる。ウルキオラが霊圧を上げたのだ、彼なりに本気で相手をするという意思だろう。

 

 

「まさかまだこれだけの力を……」

 

 

ゴクリと生唾を飲むマルタ。体を取り囲む彼の霊圧はビリビリと肌を通していく。マルタはその得体の知れない力から恐怖に近いものを感じる。

 

 

「いいわ、なら私も全力を出す!……タラクス!」

 

 

マルタは後方に下がり武器を取ると、同時にタラスクを呼び戻す。スタークからタラスクは離れると彼女の元へ素早く戻った。

彼女は目を閉じ魔力を溜める。タラスクの体にも魔力が漲り体を覆うように魔力が増大していく。

 

 

「リヴァイアサンの子、今は人を守りし者。──流星となれ!『愛知らぬ哀しき竜よ』!!」

 

 

タラスクの身体が輝くと、高速回転をしながら向かってくる。摩擦熱からの発熱、そして口からの火炎を吐き出し灼熱を撒き散らしながら襲いかかろうとする。

 

 

「…マシュ、少し時間を稼げ」

 

 

ウルキオラはマシュの元へ向かいそう言った。マシュは「わかりました!」と言うと盾を勢いよく叩きつけ、宝具を展開する。

 

 

「宝具、展開します!!」

 

 

巨大な城壁が現われると、タラスクの進行を防ぐマシュ。

 

 

「――くっ!」

 

 

マルタの宝具に少しづつ押されていくマシュ。歯を食いしばりながら耐えようと必死になる。

 

 

『ヤバい!マシュの宝具じゃ、あの宝具を防ぎきれないぞ!』

 

 

「だ、大丈夫です!!私はまだ……いけます!!」

 

 

マシュは全身全霊で防ごうと目を細めながらも回転するタラクスを見つめる。

 

 

「よく耐えたな。――後は俺がやろう」

 

 

耐えているマシュの横でウルキオラは片手を突き出す。

 

 

「さっきの技かしら?そんな技じゃタラスクは止めれないわよ!」

 

 

「虚閃ではない。これは俺達十刃にのみ許された虚閃だ」

 

霊圧が収束していく。今までウルキオラは指先だったが今回は掌。緑と白が混じった霊圧は卍のように螺旋を描き収束される。同時に辺りの空気は重みを増し震え出す。

 

 

「――――王虚の閃光」

 

 

今までの物とは比べ物にならない霊圧の波動。マシュは寸前で宝具を解除すると、素早く後退する。王虚の閃光はタラクスにぶつかると少しの間力と力が拮抗する。そしてタラスクを飲み込むとそのままマルタと辺りの大地や木々を巻き込み粉砕していった。

全てを粉砕しながら進んだその力を見た立香達は立ち尽くして呆然としていた。

 

 

「今のは彼の宝具…なのかしら?」

 

 

「いや……今のはウルキオラの宝具じゃないよ。私も見た事ない技だけど」

 

 

「アレが宝具じゃないってのかい!?」

 

 

マリーとアマデウスは王虚の閃光の一撃の凄さに目を開いて驚くばかり。英霊の宝具を真正面から打ち破るのが宝具ではなく、技というのに驚きを隠せないのだろう。

 

 

「空間が歪んでいますね……それだけ恐ろしい一撃なのでしょう…」

 

 

ジャンヌの視線には空間がねじ曲がり周りの背景が歪んでいた。空間に影響を及ぼす程の一撃、王虚の閃光はかつてグリムジョーが黒崎一護との戦いで使用したがその時と同じような現象だ。

 

 

「う…そ……でしょう?私の宝具であるタラクスを消し飛ばすなんて…」

 

 

崩壊した大地の先には膝を着いて座り込むマルタの姿。恐らく先に直撃したタラクスが盾になったお陰でなんとか一命を取り留めたのだろう。しかし片目を瞑り、頭から流血、足は折れたの変な方へ曲がっている。

 

 

「宝具も通用しなかった……そう……私はここまでみたいね」

 

 

ゲホッと血を吐くと武器を杖にしてヨロヨロと立ち上がる。

 

 

「手は抜いてないわ………むしろ全力を出し切ったわ。それなのにこのザマとはね」

 

 

敗北したマルタは悔しそうな顔はせず、むしろ清々しい表情をしていた。

 

 

「リヨンに向かいなさい。そこの彼等でもあの竜種に太刀打ち出来るかもしれない……でも、竜を倒すのは聖女でも彼等でもない。昔から竜殺しと相場が決まっているわ」

 

 

彼女の身体が薄く光、足元が透けていく。

 

 

「タラスク、ごめん。次はもうちょっと真っ当に召喚されたいものね」

 

 

マルタは目を閉じるとそのまま静かに光の粒となって消えていった。

彼女が消え、沈黙が辺りを包み込む。

 

 

「聖女マルタでさえ、抗えないなんて…」

 

 

消えた彼女を見て悔しそうなジャンヌ。

 

 

「召喚されたサーヴァントに加え、狂化されてしまっては仕方ないのかもしれませんね……それでも彼女が会話を成立させたのは類まれなる克己心が故でしょう」

 

 

「穏やかで同時に激しい方でした。私はわかります。あの人は鉄の聖女、なんであれ最後は拳で解決する金剛石のような方です」

 

 

狂化されても理性を保ちこちらと会話をしたマルタの鋼のような精神力、それは彼女が聖女としての証もあるのだろう。そんな彼女を讃えるようにマシュとマリーは話した。

 

 

「うんうん。タラスクは説教で沈めたと言うけど、ホントはアレだな。力ずくで従えたに違いない。なにはともあれ、彼女のお陰で次の目的地が決まったんだ、旅は急げというだろ?さあリヨンへ向かおう」

 

 

聖杯による強化を受けたマルタを退けたカルデア一行。次は竜殺しがいるであろうリヨンへ向かう事になった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。