不変で普遍で   作:@ヨツバ

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思いつきで見切り発車で展開が早すぎると思います。誤字脱字が目立つかもしれません。はっきり言って稚拙な出来ですが、それでも楽しんで読んでもらえたらうれしいです!

たまに語彙脱字を更新したり、見直して変えたいなって思ったら勝手に書き直します。御了承ください( ;꒳; )


プロローグ
第1話


──────まだ千年に一度なんて軽々しく言われてなかった時代、衛生観念がやっと普及され始めた時代、食料問題が浮き彫りになりつつある時代で、日の本の国よりはるか西に一人の男がいた。石造りの簡素な家、贅沢を尽くしたようにはとても見えず、ただ生活と仕事場の機能を持たせた効率的な自宅兼職場。仕事机、書類書物をまとめた複数の本棚、眠るための寝具、一人しか立てない台所、風呂やお手洗いといった清潔な環境。少し高い丘の上、開いた窓から運ばれる森林の香り、心を落ち着かせ仕事に取り組める安住の地を絵に描いたような場所だが、それを実現したのは紛れもなくその男だった。

 

彼の名前はアルバ。そこそこの高身長で痩せも太りもしない普通な体型のしがない20代青年だ。ファミリーネーム?ミドルネーム?当然持ってない。そこそこの収入と若くして死んだ親の遺産を受け取り裕福な暮らしを過ごしてる彼だが、そんなもの椅子の上でふんぞりかえる貴族しか有さない。それに親からもらった「アルバ」という名前を気に入っている。

 

『これから出会うもの、初めてのもの、いろんなことを経験して立派に育ってほしい』

 

波乱万丈かもしれない。悠々自適かもしれない。初めての意味を持つこの言葉は、これから予想もつかない人生を生きる彼のために考えた親の気遣い、志し、優しさ、愛を詰め込んだ名前。嬉しくないはずがない。

 

親の想いに応えたかった彼は情報収集家まがいのことをやっている。通信技術が発達していないこのご時世、いち早く新鮮な情報を求めるのは当たり前だった。需要と供給が成立するこの仕事の顧客は身寄りのない子供から敗戦を許されない国家にまでも及び、多忙を極めることこの上ないが数多くの“初めて“に出会える情報屋はまさに天職と呼べる。

 

 

 

 

真面目で勤勉なのが功を成し、客に困ることはなかったし、もちろん対価は受け取っていた。無駄に肥えた国からは埒外な請求をしたあげく許す限りの資源を搾りぶん取り、何も持ち合わせのない弱者からは命尽きるまで細事、重要性を問わずその全てを無償で提供させた。これにより古今東西あらゆる情報が彼のもとに舞い込み、情報網がねずみ算式に広がり、様々なニーズにも対応できるから顧客が増え、さらに取り扱う情報が増えていく。こんな生活を物心ついてから十数年、よく続いていると思う。何せ入ってくる情報は軽かったり外れたりヤバかったりとそれはもう幅広いこと大陸の如し。命を狙われた回数は数知れず、それに比例する交渉・脅迫を行ってきた。気が進まなくてもやるときはやる、それがこの仕事とうまく付き合っていく唯一の方法であり、可能にしているのは彼の手腕あってこそのものだ。決して真似してはいけない。

 

 

 

 

 

ある日、油断も隙もないアルバがのんびりした生活を送っていた。油断も隙も、ましてや弱点を親にすら見せてこなかった彼が、特に仕事に手をつけず優雅にお茶を啜ってくつろいでいた。無理もない。横目でも確認できるそれらを見てしまえば誰だってそうだ。優しい風でも揺れる手紙のタワー、大の大人ならベット代わりに出来そうな木製机を持ってしても整理が追いついていないのが現状で、日々嬉しい悲鳴が溢れてくる。すでに出回っている情報から全く信憑性のないものまで山積みになっているが、これだけあれば当分金に困ることはない。ここからさらに増えていくとなるとその利益は計り知れない。愉悦に浸ってしまうのも仕方がない。

 

 

椅子に腰掛け、たまに風景を一瞥、ほぅと一息つき、何度もカップに口をつける。まるで老人だ、隠居生活を退屈してる様を連想してしまう。実際は多忙なのだが…あの現象に酷く似ている。宿題や課題が終わってないのにやることがなくてつまんないとかふざけたことを口走る学生のようだ。やる気を一切感じない。だが安らぎを際限なく与え続けてくれるこの場所は嫌でも気持ちを落ち着かせ、休息を強制する。

 

 

 

 

───あぁ、なんて穏やかで素晴らしい日々なんだ。安定した生活、不自由ない日常、代わり映えない平穏、こんな毎日が命尽きるその時まで一生続いて欲しい。

 

 

 

 

恒久的な幸福を自然に追い求める人間的本能であり、堕落した結果であり、当たり前の末路であり、当然の帰結だった。ゆっくり休んでも良い、誰も叱らないからだらけて良い、甘い誘惑が自然と運ばれてくる。無意識にそう思わせてくる。

 

淹れたばかりの紅茶をまた一口。

 

 

香りが鼻を抜ける。

 

 

熱が喉を通り胃に落ち着いていく。

 

 

「……うん。素晴らしいまでに味がしないな。美味しくも不味くもない。こんなこと……初めてだ」

 

 

味が出る前に飲んだとか、味覚が絶望的に機能してないとか、世にも珍しい味なしの紅茶だった、なんてつまらない物じゃない。むしろ市場では高級品として出回ってる逸品も逸品、至高も至高。数多の情報を手中に収める彼にはそれが粗悪品でないことぐらい簡単に見抜ける。

 

 

つまるところ、単純に混乱しているのだ。幸せこそ人間として追い求めて当然のものだが、彼の理性は違う。全くもって違う。これまでの人生あらゆる経験をするがために情報屋なんかになった彼が平穏な生活を心から望むわけがない。そんな退屈を“アルバ”が許さない。

 

 

───星の数よりあるはずの無数の”初めて“。それを余すことなく味わい尽くす。一生の目的でもあるそれを、優しかった親の願いを、生きる活力を、もっと味わいたい。もっと受け止めたい。もっとこの身に浴びたい。

 

 

これだ。これこそがアルバとしての想い。願い。願望。欲望。そして───夢。名前に縛られた人生、言葉の意味に呪われた人生、茨の道に身を投げ捨てた男、それがアルバという人間。強制はされていない。親が願っただけだ気にすることはない。しかし、しかしだ。彼は嬉々としてその道を選ぶ必ず選ぶ、親が死んだその日勇断したから決断したから。親の分まで最高に刺激的で究極に楽しめる毎日を送る、魅力に溢れ退屈しない日々を生きる、ありったけの知識を技術を経験を身につけ手土産として先に待ってる両親にたくさん話してあげる、そう決めたのだ。

 

 

「なんだ。グズってる暇なんてないじゃないか」

 

紅茶を飲み干す。上流階級のものも手が出ないのではと錯覚させるほど香ばしく、美しく、良い音で、味が深く、身体に無理なく流れ込む。今度は素晴らしい出来栄えに感じた。

 

仕事に身が入る、人が変わったように手紙を処理する。集中力が目に見えて増した、一個人の処理速度ではない。

 

幸い新しい情報提供の要請は来てなかった、なら目の前の仕事を片付けよう。

 

思考を整理整頓、結果を出してからは迅速だった。元来優秀であることを自身に義務付け、努力で磨きをかけ、それを見事に体現してきた彼は天から才能を受けた者、天才に類する。

その気になれば情報整理なんてお茶の子さいさいお手のもの。山積みの手紙は分野別に分類し、物珍しい情報を中心に記憶していく。

 

 

「南米周辺に見られる不審死、未知の病原菌、医学の発展、薬学の進歩、近隣住民の不倫生活、未確認生命体の目撃、眉唾物と思われてた骨董品が本当に偽物だった……ろくなのがねーな。でもおもしろい、初めて見るやつばっかだな」

 

 

世界の危機に関係しそうなものから誰得な情報まで仕入れていく。このシステムを作ったのは彼自身だが、事実無駄が多い多すぎる。とある都市伝説“一旦見つけたら際限なく出てくると言われてる台所の黒光り”と同じくらい無駄な情報が多い。一体誰が使うんだこの情報……なんて思うだろうが、いつどこで誰が何のために使うかわからないのが情報というものであり、その全てを把握してこそ一流の情報屋と言えるだろう。とりあえず途中見かけた不倫に関しては後日証拠と一緒に奥さんに送りつける予定だ。許されざる行為には鉄槌を。人として当然だ。

 

情報に少しばかり物足りなさを感じながら赤の他人に腹いせがわりの報復を施す。

 

 

 

以上がアルバという西洋人の性質である。

 

変に生真面目で。

 

どこか抜けていて。

 

類をみない気分屋で。

 

親を敬愛する孝行者で。

 

やるときにはやるやつで。

 

建前で人を助けてしまうほど優しくて。

 

底抜けに興味を持ちやすくて。

 

職業からくる現実主義者で。

 

一言でまとめると「めちゃくちゃな人物」としか言い表せないのが、未知への探求者アルバである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……バカか、こいつ」

 

情報はピンからキリ、当たりか外れ、若干の興味を示せどそれ以上はいかない、そんなの日常茶飯事だ。いや、だった、と言うべきだ。何せ特大の馬鹿野郎が姿を表したのだから。

 

羊皮紙とは違った異彩を放つ紙、ややざらつく手触り、力を入れても水に触れさせても容易には破けそうにない物質、黒炭よりハッキリ見やすい水成分が多そうな字体、噂に聞く和紙と呼ばれる代物に墨が使われた手紙だった。

 

別にそれを貶したわけではない。むしろ褒めるべきだ。形が崩れた日の本の国の言葉、おそらく顧客として扱った誰かが書いてくれたのだろう。その国の流儀に則り慣れない筆記用具を用いたその行為は尊敬に値する。誰よりも”初めて“を重要視する彼からすれば、苦労しようとその感動を伝える手紙の送り主に感動していた。問題はその中身だ。本棚に置いてあった辞書を片手に読むと、端的に書かれた一文はなんとも奇妙なものだった。

 

 

────不老不死の秘薬、求む者現れたし。

 

 

馬鹿げている。初めて他人を馬鹿にしてしまった、本物の阿呆が現れたと確信しまった。なんだこれは……なんだこれはと目に見えて動揺してしまった。取り乱すなんて何年ぶりだろうか、目撃者がいなかったことがここ最近で一番嬉しかったことは間違いなしだ。情報屋として見過ごせない。確かな情報を提供しなければならない情報屋は誰よりも現実主義者の必要がある。しかしそれを抜きにしても、あらゆる体験をこなすにしても、常識はあって当たり前。絶対不変を覆そうとするその行動はとても褒められたものじゃない。

 

気持ちを落ち着かせる飲み物…そう、紅茶だ。ポットから愛用してるカップに注いでくる。底に溜まる程度……先ほど飲み干したのを忘れていたようだ。今すぐ気を落ち着かせたいのか、お湯を沸かすなんて思い至らなかったのだろう。

 

混乱の末に頭を抱え込みながら窓際にうずくまる、情報を口に出さなければまともな思考を保てず、語りたいわけではないが口に出さずにはいられなかった。

 

余談だが、人は混乱すると不安を口に出してしまう。忘れ物をした時とか、悩み事をしてる時とか、どうしようもなく困ると声に出してしまう。これは脳では処理できなかった情報を口に出すことによって迅速に整理するための反応らしい。アルバ自身優秀ではあったが今回ばかりはそれを実行してしまった。何せ彼は現実主義者だ。生きるために身につけた考え方が、理想を追い求める者を理解できない。理解できないからこそ混乱し、混乱してるからこそ口から言葉が出てしまう。

 

「だってそうだろ。人は死ぬんだ。なんでかわからないがそのうち死ぬ。殺されたり、病に倒れたり、寿命で亡くなったり……人が死ぬなんて当たり前じゃないか。こいつはその当たり前を否定しようとしてるのか?愚かすぎる。千年に一度の愚者だ。“救いようのない馬鹿”はこいつのために用意された言葉に違いない。こんな奴は初めてみたよ。馬鹿で莫迦でバカでばかでBAKAで────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────なんておもしろいんだ」

 

 

あり得ない実現できないクソふざけた夢物語を目にした。久しぶりの高揚を、しばらく忘れていた感情の起伏を、経験したことない今を、アルバは彼自身の原点であり理想であり願望であり欲望であり夢でもある“初めて”を受け入れてみたいと感じた。


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