カルナ(個性)のヒーローアカデミア   作:クルミ割りフレンズ

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休み中に何とかもう1話は出したくなりました。これからは暇を見ては書き溜めて行きたいです。


太陽は漸く動き始める

 幼少の頃より言い様の無い渇望や不足感を感じていた。生活に支障を来すようなモノでは無いがそれでもやはり気がかりではあったのだ。言うなればパズルの最後のピースが見当たらない、と言えばいいだろうか。

 個性診断の為に病院に赴いた時には個性はあるのだろうが個性(ソレ)が何か分からないと言われた。しかしその時何かに触れたような気がした、それが何なのか分からなかったが並行して一つの疑問が生じた。何故自分の名がカルナなのか?という疑問だ。別に自分の名に不満は無かったし何なら両親に授けられた最初の贈り物とも言える名は物心付いた時より誇りと感謝を感じていた。だからこそ気にならなかった自身の名(カルナ)の意味を父上に問うた。

 そして知った、父上と母上はインドの叙事詩【マハーバーラタ】が好きなのだと。そしてその物語りに登場する英雄の名がカルナであり俺の名の由来なのだと。凄まじい衝撃を感じたのを覚えている。

 父上に当時の事を聞かされたがあまり我が儘を言わず子供らしく無かった俺がほぼ初めて言う強請りだったのだと、只管にマハーバーラタを読んでくれとせがんだと聞かされた。

 当時俺が何を言っていたのか殆ど覚えていないが、強い飢餓感を感じたのは覚えている。それ程の事だったのだろう、そして庭先で父上にマハーバーラタを読み聞かせて貰ったのだ。読み終わった後にはとても満足気な表情をしていたらしい。

 それも当然と言えるのだろう、漸く最後のピースがカチリと嵌ったのだから。その後俺はふと立ち上がると急に炎に包まれたのだ。我が身を焼き尽くす業火では無い、ただ偏に祝福と温かな揺り籠のような優しい炎だった。炎が晴れた時には肌に張り付く黒い衣に否が応でも目を引く黄金に輝く鎧を纏っていた。初めて己の個性を自覚したのだ、自身の個性が英雄カルナの力の一端だと言うことを。

 そして急ぎ病院に駆け込まれ検査され自身の個性の詳細を聞かされた、曰く”英雄再演”と呼ばれる個性の一つであり実際に存在したか否かに関わらず過去の英雄・偉人の力の一端を内包しているのだと。そこからだろう、今現在の俺が形成されていったのは。その日から今日まで鍛錬を欠かした事は無かった、奇しくも両親から送られた名と個性名の一致、単純に運命と言うものを感じてしまったのだ。

 だからこそカルナに恥じない人間に成りたいと思った、いつしかソレが当たり前になっていった。

 

 そしてやはり未だに理解出来ていないが周囲からは俺は超が付くお人好しなのだと、俺は謙虚で善性の塊だと。しかし俺はそうは思わない。俺はただ英雄カルナに憧れその後知ったヒーローと言う者に惹かれた存在であり、俺が成して来た事は俺の傲慢、我欲に過ぎないのだ。

 その事を知人に説明した所(「カルナさんっ!そういう所っスよ!」)等と言われた。っと考えこんでいたら着いたようだ、雄英高校の試験会場前だ。やはり国内有数のヒーロー育成機関か、俺と同じ受験者達が数多くいる。当たり前だが見た事のない制服も数多い、文字通り全国から来ているという事なのだろう。む?肩が誰かにぶつかってしまったようだ。

 

「あっ!ごっめんね~!試験前で興奮して周りが良く見えてなかったんだ!」

 

「こちらこそ周囲に気を取られていた、其方だけの不注意では無いが故に俺にも非がある。謝罪しよう、すまなかった。」

 

 快活、と言う桃色の肌と髪に触覚を生やした黒の目と金の瞳を持った少女に頭を下げると面白そうにクスクスと笑う。

 

「どうした?俺は何か間違っていたのか?」

 

「あはは!ごめんね、違うんだ。喋り方がちょっと堅苦しかったからソレが面白くてさ!」

 

「別に謝る必要はない、知り合った者は個人差はあれど皆俺の口調に何かしら反応する。この口調は俺の素である為今更変えたくは無いのだが…。」

 

「別にいいんじゃないかな、こうして話してみると君に似合ってるし。あっ、名前言ってなかったね!アタシ芦戸三奈っていうんだ、よろしくね!」

 

「む、こちらも名乗っていなかったな。改めて俺の名は陽神カルナだ。今日はお互い雄英受験生ということで競い合う仲だがよろしく頼む。」

 

 お互い名乗り合うと握手を交わす。二言三言交わしこれも何かの縁だからと友達になろうとお互いの連絡先を交換する。俺はやはり運が良いようだ、こうして受験日という本来なら緊張と焦りが襲う日にこんなにも気さくで話していて気持ちの良い相手と巡り会い剰え友人となれたのだから。

 俺と彼女はお互い受験頑張ろうと励まし合い会場が別な為途中で別れた。

 さて、今日ばかりは友人とは言え他人ばかり心配は出来ない。別にヒーローに成るには雄英しか無い、という訳ではないがやはり国内トップというならそれだけ猛者達が居るはずだ。俺も実力者である事は疑っていないが上には上がいるという。

 今より更に己を鍛え磨けるというのだ、心躍らない筈が無い。雄英と比肩するならば他にも士傑高校があるが距離でいうなら雄英の方が近かったのだ。受験会場に入ると既に7割型が到着している、そして何人かは浮かない顔をしている。それは仕方無いというモノだろう、【東の雄英。西の士傑】と称されるその片方に来ているのだ。かく言う俺もまったく緊張していない訳では無い、適度な緊張はする気は無いが慢心を抑制する。

 俺は漸くスタート地点の一歩前に来ただけだ。ここで躓くようではヒーローなど夢のまた夢というやつだろう。

 

 

 

 

 筆記は問題ないと思われるが、はてさて此処からどうなるか。事前の通達で実技試験があると伝えられている、体力テストや戦闘力だが。

 考えていたら教員が一人舞台に立ち説明を始める、彼はプロヒーローのプレゼント・マイクだな。知人が良く彼のラジオを聞いていたな、時折便りが読まれると喜んでいた…6割がた炎上というのをしていたが。

 ふむ、どうやらロボットを相手にした戦闘試験らしい。それぞれにポイントが割り振られており倒せば倒すだけ加点されて行くようだ。しかし、中には0ポイントの敵が存在し所謂お邪魔虫だという。…0ポイントか、気がかりだな。こういう時の勘はよく当たるものだ、頭の隅に置いておこう。

 受験生はそれぞれいくつかの会場に分かれて受験するようだ、遅れないように俺も移動しよう。

 

 会場に着いたが見た所ビル群が立ち並んでいるな、一つの町だと言われても納得できるな…人の気配がしない以外は。さて、来るな。

 

「スタートォ!!!」

 

 試験開始の合図と共に炎を纏い戦闘衣を身に纏い会場内に入り目に付いた敵を槍で切り裂き焼き尽くす。スタートダッシュは決められたようだ、未だに会場前で呆然としプレゼント・マイクにもうスタートしていると改めて伝えられ俺以外が初めて動き出した。

 そこからは戦闘とも言えない戦闘が始まった。いくらロボットといえど此方の裏を掻く事すらなく視界に入れば無作為に来る猪武者だ。薙ぎ払うだけで事足りる。

 ポイントを稼ごうとした緑がかった髪の生徒の獲物を獲ってしまった事に罪悪感を感じるがこれも試験なんだと割り切る事にした。ここまでは順調だ、途中から数える事を辞めたが80Pはあるだろうか?しかし、こうして飛び回っていたが倒した敵倒された敵の残骸を確認したがどれも既に見知った種類だ。つまり0ポイント敵が無い。0ポイントなのだから相手をする者もそういないのだろうが、それならそれで居る筈だ。必ずしも存在する訳では無いのか?

 すれ違い様に敵を倒しながら考え込んでいたら背後で轟音を響かせながら巨躯が姿が現した。なるほどこれが0ポイントか。

 

 

 

 

 その頃雄英の教師達が会しているモニター室で受験生達を吟味していた。此処はそれぞれの会場での受験生達の動きを見ている。期待されている者、見切りを付けられている者という風に評価されている。

 

「そろそろ良い頃合いだね。この実技試験は受験生に敵の総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地、そこから炙り出されるのさ。状況をいち早く把握する為の情報力、あらゆる局面に対応する機動力、どんな状況でも冷静で居られる判断力、そして純然たる戦闘力。市井の平和を守る為の基礎能力がポイント数っていう形でね。」

 

 獣のような見た目の教師が言うとそれを合図とするようにボタンが押される。0ポイントの巨大ロボットを起動させるスイッチだ、此処からどう動くのか見どころである。

 

「ふむ、それにしても陽神カルナ君か。スタートダッシュを決め次々と敵を沈めている。はっきり言って末恐ろしいのさ!はっきり言っちゃうとこの子はもうこの時点で完成しているのさ!」

(そして個性は英雄再演か…この個性が最期に確認されたのはもう何十年も前だね。歴史上で語られた英雄の力の一端を発現させる個性、この時点でもかなり強い個性だけど神話の中でもかなりスケールの大きなインド神話の施しの英雄カルナの力だね。資料を確認してもこの子はかなりの善人だね、誰かの為に何かを成せる人間はそういないからね。それだけが救いだね、使い方を間違えればそれこそ英雄カルナの力なんて大惨事なのさ☆)

 

 

 

 想定していたよりも聊か大きいがこれといった問題はない、ここで退く気は無い。ポイントは十分稼いでいる、ならばコイツを倒してもロスにはならないだろう。放っておけば受験生達の命までを奪いはしなくともこの大きさだ、余計なパニックを招き想定外の怪我というのが出るやもしれない。

 む?あの受験生はあの時の…成程、瓦礫で足を取られた少女を助ける為に向かって行ったという訳か。取り敢えずあの少女を救助する事が先だな。あの少年も無作為で行った訳ではあるまい、アレを倒せる何かがあるが故に行ったのだろう。

 瓦礫を取り除き、患部を見る。

 

「瓦礫に足をやられているな。ふむ、折れてはいないが悪化しないように固定しておくぞ。」

 

「あ、ありがとうございます。ってさっきビュンビュン飛んでた人!お願いします、あの人を助けに行って下さい!」

 

 戦闘衣の一部を破り取って彼女の足を固定するとそう叫ぶ。

 

「それは出来ない、奴はお前を助ける為に他の者達は足竦む中でとび出して行ったのだ。ここで俺が横槍を入れれば奴の意志を無碍にする事になる。奴とて無作為で行ったわけでも無いだろう、跳躍であれだけ跳べるのだアレを倒せるだけの手段は有しているのだろう…尤も制御は出来ていないようだが。」

 

 とび出した緑髪の少年の足を見ながら言うと彼女もそれに気付いたのだろう。先ほどよりも更に青ざめている、がどうやら奴はやり遂げたようだ。巨大ロボットを殴り飛ばし破壊してみせたのだ。

 しかし殴った腕は見るも無残な事になっている。骨折どころか粉砕しているだろう。痛みに絶叫しながら落下している左腕を力まかせに何かしようとしているが制御出来ないのなら先と同じ結果になるだろう。

 

 「お願いします!あの人を助けて下さい!お願いします!」

 

 そう声高に請われれば助けるしかないだろう、元より怪我することが分かっているのなら無視する事も出来ん。

 

 「了解した、奴の戦いは終わったのだから今度こそは助けよう。少女よお前は降ってくる瓦礫に当たらぬように避難しておくがいい。立てるか?」

 

 「大丈夫です!お願いします!」

 

 

 あともう少しだ、デトロイトスマッシュを使えば左腕は壊れるけどどうにか助かる筈だ!ってあれ?急激な落下を感じていたのに緩やかになっていた。

 って、えっ!?この人ってさっき会った人だ。僕を助けてくれたのかな。

 

「先の蛮勇、見事だったぞ。次に使う機会があればその時は制御を覚えることだ。」

 

「すっすみません!助けてもらってありがとうございます!」

 

「気に病む事は無い、謝罪するのならば俺の方だ。少し前にお前の獲物を獲ってしまった。すまなかった。」

 

「そんな事ないですよ!これ試験ですし、こうして助けてもらいましたし。だから君も気に病まないでください。」

 

「了解した、下に降りたら先ずは壊れている腕と両足の応急手当だ。」

 

「え?アイタタタタタタタ!!そういえば僕怪我してた!」

 

 

「まったく大丈夫ではないがこれ以上悪化はしないだろう。残り時間少ないとはいえ今すぐに棄権し適切な治療を受ける事を進言する。」

 

「でも僕0ポイントだから!せめて1ポイントはとらないとだから!」

 

 しかしそこで無慈悲にも試験終了の合図がかかる。少年は絶望した表情をしながら気絶した。緊張・疲労・怪我・脱力によって気絶したようだが命に別状は無い。

 そうこうしている内に医療班が到着したようだ。背の低い老婆が周囲の受験生達に甘い駄菓子を配っている。成程彼女が雄英高校が抱える医療教諭のリカバリーガールか。

 

「グミだよ。はい、グミをお食べ。」

 

「リカバリーガールとお見受けする、此方に両足と右腕の重傷者と瓦礫による片足の軽症者がいる。先に診てもらえないだろうか。」

 

「はいよ、あぁそれとアンタにもグミをあげるよお食べ。」

 

「ご厚意感謝する、ありがたく頂かせて貰おう。」

 

「ふむ、どっちも応急処置はされてるねぇ。アンタがやってくれたんだろう?ありがとね。」

 

「あの、本当に私とこの人救けてくれてありがとうございます!」

 

「どちらも礼には及ばない、が素直に受け取っておこう。それに俺はヒーロー志望だ、目先で要救助者が居るのなら救けにいくのに躊躇いは無く理由はそれだけで事足りる。次にまた会えたならその時はよろしく頼む。」

 

 言いたい事を言い終わると俺はそのまま会場を後にした。後日試験結果が自宅に届くという事で帰宅した。

 

 

「私が投影されたぁ!!」

 

 後日自宅に届いた試験結果の封筒を開けると中に小型の機械があり、起動させると先ほどのようにオールマイトが投影された。俺とした事が想定外の事で驚愕している。

 

「やぁ陽神カルナ君!何故私オールマイトが映っているかと言うとだね、実はこの春から私が雄英高校で教師になるからさ。手っ取り早く結果を言うと合格だよ!筆記は余裕で合格ラインを越えている、実技試験では82点で堂々の1位だよ!おめでとう、と言いたいところだけど実はもう少しあるんだよ。82点の部分はあくまでも仮想敵を倒した事による加点なんだが実はもう一つ評価基準があったんだ!その名もレスキューポイント!これは誰かを助けたりする事で評価される項目なんだ!人助けをしたのに評価されないなんてヒーロー科としてあってはならない事だからね。陽神カルナ君!君のレスキューポイントは50点!先の82点と合わせて合計132点だ!これは歴代の雄英試験結果でも堂々の1位だ!来いよ、雄英は君を歓迎するぜ!」

 

 漸くだ、漸く俺はスタート地点へと動きだせた。

 両親に結果を伝えるととても喜んでもらえた。俺は感情を表に出すことがあまり得意では無い。俺にそれだけの技量があればそれこそ手放しで喜んでいるのだろう。あぁ、しかしなるほど。これはとても良い気分だ。




最後が適当になっちゃったよ。でも深夜のテンションだから仕方無いよね!誤字とかあればご指摘下さい。
青山君不在にしちゃったんですが、そこは目を瞑って下さい。友人にヒロアカの2次創作でクラスの人数で困ってるって相談したら、「なら青山を不在にしちゃえYO!」って言われたのでそのアドバイスに乗りました。青山君ファンの方には申し訳ありません。後々作者の独断と偏見でヒロインを決めようと思います。この世界には某引きこもりの象神になりそうな人はいますがあくまでも友人関係ですので悪しからず。では皆さんまたの機会があればよろしくお願いいたします。

【日輪よ、死に随え】の使いどころ

  • 敵に対して
  • 宿敵に対して(カルナの宿敵と言えば?)
  • 興味ない
  • 使わない

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