天空(そら)の彼方に響く旋律 -穢れた七世界の中で生き抜く戦士達-   作:室谷 竜司

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Episode10. 知らない間に仲良くなっていたんですが……。 一体何があった……。

「よっと。 なんかここに来るの久しぶりな気がする。」

 テレポート能力を使って、俺はとある場所へと降り立った。

 俺の目の前には、大体沖月と同じくらいの大きさの建物がそびえたっている。年月的には古いはずなのに、衰えているようには見えない。

 そこは、RSOの本部だ。俺は今日、ここの組織長と話をするためにこの場所に来た。

 というのも、沖月はRSO本部直下の専門学校なので、組織長が直接学校の総括も行っているのである。そのため、彼方の転入手続書やその他もろもろは組織長から頂かなければならない。いやまぁ、平日であれば、沖月内にいる理事に頂けばいいのだが、何せ今日は土曜日だ。学校を除きに行けば理事がいるかもしれないが、どうせいろいろと話したいこともあったため、組織長に顔を見せに来たわけである。

 例の入寮者リストについての文句も言わなければならなかったしな。

「そういや、愛葉はここには滅多に来ないよな。 遠いから、とか言ってたっけ。」

 実際、このRSO本部は沖月から徒歩30分ほどのところに位置する。そのため、愛葉はあまり好き好んでここには訪れないのだろう。

 俺はまぁ、テレポート能力があるから、時々組織長に進捗の報告をしに来たりするんだけどな。ちなみに、このテレポート能力は、能力使用者本人しか転送できないというわけではない。だから、愛葉を連れてここに飛ぶこともできるんだけどな。実際、昨日彼方を助けた時もこの能力を使ったわけだし。

 でも、無理やり引っ張っていくと、あいつちょっと不機嫌になって怖いんだわ。

 っと、俺の能力について説明するのを忘れてしまっていた。

 俺の能力はコピー能力だ。これは、対象のリージェルをコピーすることだけでなく、見た動作を瞬間記憶し真似ることもできる。後者はただある動作を見ていればいいだけなので非常に楽なものだ。実際、愛葉と剣の打ち合いをすることになったとき、俺は動画などで剣道の試合をあさって知識をつけていた。でないと、愛葉の相手として不十分すぎたからな。決して、負けず嫌い精神が働いたからじゃない。本当だ。

 んで、全社に関しては少々面倒くさい工程をくぐらなければならない。というのも、対象のリージェルの存在する箇所を探り当てる必要があるからな。それだけなら、能力のうちに備わっているから問題ない。しかし、そこからコピーを実行するとなると、対象のリージェル存在付近の肌に触れなければならない。もちろん、服の上からでは意味がない。ということがあって、あまり能力コピーはしようとは思わない。それに、なんだか他力本願のような気がしてしまうのだ。

 だから、現在俺が所持している能力は4つである。そのうちの一つがテレポート能力というわけだ。ちなみにこのテレポート能力は、組織長から頂いたものだ。だから、ありがたく愛用させていただいている。結構便利なんだよ、一人で行動するときには。

「さて、中に入るか。」

 というわけで俺は、本部敷地内へと足を踏み入れた。

 

「いらっしゃいませ。 あら、神奈和君、組織長に用事?」

「ええ、今日は直接転入手続書をもらいに。」

「そうなの。 誰か知り合いが転入するの?」

「そうなんです。 ちょっといきなりのことでこちらも驚いてはいるのですが、本人の意思が最優先ですからね。」

「そうなのね。 今、ドア開けるわね。」

 そう言うと、受付カウンターの向こうに座るRSO職員の女性は、自動ドアロック解除のボタンを押した。一応、だれでも自由に入ることができる、というわけではないので、受付の人に顔を見せなければならない。

「ありがとうございます。」

「いえいえ、ごゆっくり。」

 俺は受付係の女性に促されるまま、ドアの向こうへと入っていった。

 そして、組織長の部屋を目指す。廊下を進み、突き当りを右に曲がってすぐの階段を上る。そのまま最上階である4階まで上がる。

 階段を上り終えたすぐ正面の部屋が組織長室である。

 俺は扉の前に立ち、軽く2回、扉をたたく。

 すると、返事はすぐにあった。

「どうぞ。」

 そんな短い返事を聞いてから、俺は扉を開く。

「失礼いたします。 神奈和です。」

「おお、レンか。 半年ぶりだな。」

「そうですね。 お久しぶりです、小河原さん。」

 中で俺を出迎えたのは、小河原(おがわら) 幸久(ゆきひさ)、このRSOを取りまとめる現組織長である。

 そして、俺が初めてこの島に来た時、俺を助けてくれたのがこの人だ。つまり、俺にとっての恩人とは、この人のことである。

「おうおう、元気してたか?」

「はい、まぁ半年ですので、そこまで変わりはないですよ。」

「愛葉はどうだ?」

「あいつも元気でやってますよ。」

 俺と同じく、愛葉もこの人にいろいろと世話になっているからな。

「たまには顔くらい見せに来いって言っといてくれよ。」

「そうですね、今度連れてきますよ。」

「ああ、頼むよ。 んで、今日の要件はなんだ?」

 小河原さんが姿勢を正し、本題を聞いてくる。

 俺も居住まいを正して小河原さんへと向き直る。

「近々、沖月に転入したいという人がいて、そのための書類を受け取りに来ました。」

「なるほどな。 態々俺のところに来てくれるとは、嬉しいねぇ。」

「まぁ、それ以外にも話しておきたいこととかありましたし。」

「そうかい。 それで、その転入希望者は寮には入るのか?」

「本人はそれを望んでます。」

「はいよ、了解。 それじゃ、これが転入手続書で、これが教材注文票。 あと、入寮手続き書だな。」

 俺は小河原さんから数枚の書類を受け取る。

 軽く目を通し、間違いがないことを確認してから鞄にしまう。

「ありがとうございます。」

「にしても、お前にそんなコネがあったのか?」

「いえ、昨日たまたま拾った子でして……。」

「なんか、お前みたいだな。」

「まぁ、デジャブ的なものは感じましたね。 んで、その子にこれからのことを聞いたんですけど、沖月に通いたいということだったので。」

「なるほどな。 まぁ、学生が増えるのはありがたいことだし、俺は大歓迎だよ。」

 ははっ、と笑って見せる小河原さん。この人はいつもこんな感じだ。俺も、この人の器の大きさと明るさに救われた人間の一人だからな。

 感謝している。が、それはそれとして……

「あの、小河原さん。 そういえば、うちのところって入寮者リスト配られたことないんですけど……。」

「ん? そうだったっけか?」

「ええ。 てっきり俺以外誰もいないのかと思っていたんですけど、普通にいましたよ? これ、どういうことですか?」

「ははっ、すまん。 お前のところだけ、いつも印刷忘れてたかもな。 別に、わざとじゃないんだぞ?」

「ま、まぁ、それはわかるんですけどね。 でも、できれば忘れないでいただきたいです。 一応、寮生の把握はしておきたいので。」

「わかった。 今後は気を付けよう。」

 だ、大丈夫だろうか……。こんな軽いノリだから、少し心配になってしまうこともある。恐らく、少ししたらすぐに忘れていることだろう。こういうところがあるから、時々不安になってきてしまう。よくこの人、RSOを統括できるなぁ、とな。

 でも、話を聞く限りでは、かなり優秀な人ではあるらしい。RSOの他の職員の皆さんからは慕われているようである。

「要件は以上です。」

「そうか。 んじゃ、また何かあったらここに来い。 いつでも話聞いてやるからな。」

「はい、ありがとうございます。 次来るときには、絶対愛葉を連れてきますので。」

「よろしくな。 久々に愛葉の顔も見ておきたい。」

「そう伝えておきます。 では、失礼します。」

「おう、またな。」

 というわけで俺は、組織長質から退室した。

 あの人は、俺の親代わりのような存在だからな。無下にはしたくない。

 今度、愛葉を引きずってこないとな。なんて思いつつ、俺はRSO本部を後にした。

 

「っと、忘れるところだった。」

 本部敷地を出たところで俺は、もう一つの用事を思い出した。

 買い物である。忘れると、今日も冷蔵庫の中身がすっからかんのままになるところだった。それは正直困るので、帰りがけにスーパーに立ち寄ることにした。

「テレポーテーション。」

 俺はスーパーの近くまでテレポート能力で移動する。

 別に運動は嫌いではないので歩いてもいいのだが、時間短縮だよ。

 そして俺は、次の1週間分の買い物を済ませることにする。

 って、もしかすると数日間だけ二人分になるかもしれないのか。それを考慮しないといけないよな。ふむ、どうしようか。

 彼方の好みなどまるで知らない。だからと言って、俺がいつも食べているような簡素な料理をふるまっていいものか……。まぁでも、大丈夫かな。

 俺は薄味が好みだ。そして、これは偏見かもしれないが、女性はあまり濃い味を好まないような気がする。だから、うん。きっと問題ないはずだ。そう信じることにしよう。なお、参考にした女は愛葉とミアの二人だ。それ以外の親しい異性などいない。天留さんと小瀬戸さんは別な。

「野菜はこれと……」

 スーパー内をぐるぐる回りながら、俺は買い物かごに食材を詰めていく。

 野菜・肉・魚・その他料理の元や切らしていた調味料等々……。ふむ、結構な量になってしまったな。まぁ、仕方ないだろう。これも生活のためだ。それに、金はRSOより支給される。普段使わないのだし、こういう時暗い使っても罰は当たるまい。

「よし、レジに並ぶかな。」

 そんなわけで俺は、普段より多い買い物を済ませ、帰路に就くのであった。

 いや、テレポートですけどね。

 

 

 部屋に戻り、俺は買ってきた食材を冷蔵庫に詰めていく。

 うむ、改めて思ったが、結構買ったものだな。彼方がどれくらい食べるかわからないので、ひとまず多めに買ってきたら、6000円ほどかかった。

 昨日、コンビニで買い物をしたときは、遠慮して少ししか買っていなかったしな、彼方の奴。

「そういえば、彼方はまだ小瀬戸さんの部屋なのかな?」

 荷物一式を俺の部屋に置いたままにしているので、一応確認しておきたい。

 もしかしたら、話の流れで小瀬戸さんのところに泊まるかもしれないしな。

「って、そういや、小瀬戸さんの部屋どこか知らないや。」

 俺はメッセージアプリを起動させて、小瀬戸さんのトークルームを開く。

 そして、簡単にメッセージを送信した。

 すると、数秒後にすぐに既読が付く。マジ早いっす、小瀬戸さん。

ーあ、帰ってきたんだ。 わたしの部屋は103号室だよ。

 おっ、案外近いんだな。

ー了解、今そっち向かうよ。

ーあ、いいよいいよ、わたしたちがレンくんのとこ行くね。

ーそう? そんじゃ、待ってるよ。

ーは~い!

 そこでメッセージのやり取りを終える。

 やはりまだ慣れない。異性に下の名前で呼ばれるのは。

 実際、彼方の時もたまにむず痒くなることがある。許せ、俺のピュアハートに罪はないんだ。きっと、これから図太くなっていくはずさ。

 そして、待つこと数分。室内にベルの音が響いた。

「ほいほーい。」

 俺はすぐに玄関に向かい、扉を開ける。

 そこには、小瀬戸さんと彼方が並んで立っていた。

 ん?さっきよりなんか仲睦まじげ?先ほどあったぎすぎすした雰囲気はどこへやら、という感じで、二人はなんか晴れやかな顔をしていた。

「よっす、さっきぶり。」

「うん。 レンくんは用事、終わったの?」

「終わったよ。 無事、彼方の手続書をもらえたから、後で記入を頼むよ。」

「わかった。 ありがとうね。」

 これでもう何度目かわからない感謝の言葉。俺的にはお腹いっぱいだけど、まぁ感謝されることは嫌いじゃないから別にいいか。

「それでね、レンくん……。 お、おひるごはんはもう食べた……?」

 そこで、小瀬戸さんが何やらもじもじしながら俺にそう問いかけてきた。

 そういえば、もう昼時か。確かにそういわれると空腹感が襲ってくる。

 今まで時刻のことはすっかり忘れてしまっていたからな。

「いや、まだ食べてない。 そっちは?」

「えっと、もう済ませたよ。 んでね、まだ残ってるんだ。 だからさ、もしレンくんがよければ、食べていかない?」

「いいのか?」

「う、うん、もちろんだよ!」

「小雪ちゃんの手料理、すごくおいしかったよ!」

 彼方がニコニコしながら料理の乾燥を端的に述べる。

 その笑顔に嘘偽りはないだろう。

「へえ、じゃあお言葉に甘えようかな。」

「うん! あ、となると、結局わたしの部屋に来てもらった方がよかったね。」

「いいよいいよ。 んじゃ、お邪魔してもいいかな。」

 というわけで、俺は小瀬戸さんの部屋で昼食をいただくこととなった。

 

「お邪魔します。」

「まだ片付いてないんだよね。 こんな部屋にあげちゃってごめんね。」

「気にしないで。 それに、普通に綺麗な部屋じゃん。」

「あはは、ありがと。 それじゃあ、すぐに用意するね。 そこの椅子、テキトーに使っちゃっていいから。」

「じゃ、ありがたく。」

 近くの椅子に腰かける。

 少しすると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。

 なんかいいな。こうやって誰かに料理をふるまってもらうのは。こっちに来てからは、基本的に自分で作るか出来合いのものを口にするだけだしな。

「はい、お待たせ。」

 すると、すぐに皿が運ばれてきた。

「ありがとう、小瀬戸さん。」

「……小瀬戸さん?」

 っとと、なんか急ににらまれてしまった……。俺、何か間違えただろうか?

「ど、どうしたの?」

「小雪、だよ。」

「え、えっと……。 あっ、そっか。 ご、ごめんごめん、小雪……さん?」

「それ、ワタシの時も同じこと言ってなかった?」

「そ、そうだっけ?」

「呼び捨てでいいよ。」

「さ、小雪……。」

 くっ、やはり照れてしまう。異性を下の名前で、しかも呼び捨てっていうのは躊躇われる……。が、彼方の時と同様、本人が望んでいるのだし、その意向に従っておくが吉だ。

「うん、それでよし はい、どうぞ。」

「おお、オムライスかぁ! 滅茶苦茶うまそうだな!」

「えへへ、そんな大したものじゃないよ。」

「んじゃ、いただきます。」

 俺はさっそく料理に口をつける。

 おお、これはうまい!卵はふわふわしてて、尚且つ、下のチキンライスもケチャップの斑がなく食べやすい。しかも、俺の好みの薄味だ。

「うん、すごくおいしいよ。」

「ほ、ホント?」

「嘘なんて吐かないって。 本当にうまいよ。」

「よ、よかったぁ。 味付け、わたし好みだから、気に入ってもらえるかわからなかったんだよね。 ほら、男の人って濃い味を好む傾向あるし。」

「俺は薄味が好きだからね。」

 素直な感想をこぼすと、小雪は安どのため息を吐く。

「そ、そうなんだ。 味の好みが同じなんて、なんか嬉しいかも。」

「ちなみにワタシも薄味が好きだよ。」

 おっ、そうだったのか。ほらな、やはり女は薄味が好きなんだよ。……うん、ホントごめん……。流石に偏見が過ぎたわ……。

 そして俺は、黙々と小雪の作ったオムライスを口に運び、ものの10分で食べ終わってしまった。

「ふう、ご馳走様! うん、大満足だよ。 ありがとうな。」

「どういたしまして。 それじゃあ、お皿もらうね。」

「あ、これくらい俺が自分で洗うよ。」

「いいよいいよ、気にしないで。 もう、レンくんは優しいんだから。」

 俺から食器を受け取った小雪は、とことことキッチン辛苦に向かい、その食器を洗い始める。な、なんてできた子なんだ……。

 あの状況、愛葉なら、皿くらい自分で洗えとか言ってきそうなものだ。

 女の子って素晴らしいな、おい。

「それでね、レンくん。 このあとなんだけどさ、一緒にお買い物行かない? って言っても、主にワタシのお買い物がメインになっちゃうんだけど。」

「ん? 買い物か。 いいよ、荷物持ちくらいにはなるだろうし。」

 あれ、このセリフ、小雪とメッセージでやり取りした時にも使っていなかったっけ?

「え、えっと、そういうつもりじゃなかったんだけどね。 その……、一緒にお出かけしたいなって。」

「オッケー、もちろんいいよ。」

「あ、それならさ、天留さんも誘ってみない? せっかく同じ寮なんだし。」

「天留さん?」

「俺たちのクラスメイトで友人だよ。」

「そうなんだ。」

 彼方はまだ天留さんとは話したことがないはずなので、首をかしげていた。

「いいかもな。 ひとまず連絡入れてみるか。」

 というわけで、俺は再びスマホを開いた。そして、昨日交換したばかりの天留さんのトークルームを開いて、買い物に誘ってみた。


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