天空(そら)の彼方に響く旋律 -穢れた七世界の中で生き抜く戦士達-   作:室谷 竜司

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Episode14. チームとしての話し合い。 ウェストセブン始動!

「うん、完成! お待たせ。」

 キッチンからそんな声がかかった。どうやら、カレーが完成したみたいだ。

 食欲をくすぐるカレーのいい匂いがリビング中に充満している。

「それじゃあ、サラダも盛り付けちゃうね。」

「うん、お願いね。 えっと、みんな、どれくらい食べるかな?」

 小雪がリビングにいる俺と未来にそう問いかけてくる。

「そうですね、皆さんと同じくらいの量で私は構いませんよ。」

「オッケー。 レンくんは?」

「任せていいの?」

「もちろん。 やっぱり、男の子だし、結構食べるよね。」

「どうかな。 まぁ、少し多めにお願いしようかな。」

「はーい。」

 俺たちの答えを聞いた小雪が、それぞれの皿に白米とカレーをそれぞれ盛り付けていく。こうして誰かにご飯を用意してもらうって、なんかいいな。それも、異性に。

 これまで、まるで異性とかかわってこなかったから、現在の状況がとても新鮮であるように感じられる。

「よいしょっと。 はーい、お待たせー。」

 テーブルの上に、カレーが盛り付けられた皿が並べられていく。盛り付けも綺麗で、食欲がより沸き立つ。

「あと、これがサラダね。」

 続いて、彼方がサラダの盛り付けられた皿を並べる。

「ほらほら、みんな席着いて。 レンくんのは、これね。」

 小雪が俺の席を指し示す。俺の皿だけ、みんなとは量が違うからな。間違えないように、とのことだろう。

「わかった。 ありがとうな、いろいろと。」

「いいよ、気にしないで。 さてと、わたしたちはどこに座ろうか。」

 途端、静まる3人……、というか、彼方と小雪……。未来は、静かにその二人を見守っているようだった。そして、何故かにやけ顔である。

「だ、誰がどこ座る?」

「う、うーん、どうしよう……。 み、未来ちゃんはどこがいい?」

 不意に未来に話を振る小雪。え、どこでもいいのでは、と思うのは俺だけだろうか。

 というか、さっきから彼方と小雪がチラチラと俺に視線を向けてくるのは、どうしてなのだろうか。

「私はどこでも構いませんよ。 あー、でも、そうですね……、では、ここにします。」

 そう言って未来が腰を落ち着けたのは、俺の対角線上の席だった。そして、こっちを見ながら、またにやけ顔を浮かべる。

 俺は意味が分からず、首をかしげてしまった。

「皆さん、レン君ともっとお話がしたいんだと思いますよ。 私はさっき、レン君といろいろとお話しできたので、レン君の近くの席は、お二人にお譲りしようかと思って。」

「あ、そういうことか……。 別に、どこでも話しできるのに。」

「まあまあ、そう言わず。 女の子はそういうものなんです。」

「そうなのか……。」

 女って、本当にわからないな。

 まぁでも、俺が首を突っ込んだりすることはしない。あくまで、お二人さんの成り行きに任せるだけだ。

「じゃ、じゃあ、ワタシはこっちにしようかな。 いい?」

「うん、それじゃあわたしはこっちで。」

 そう言って、彼方は俺の正面に、小雪は俺の隣に腰を下ろす。ひとまずは落ち着いたみたいで何よりだ。

「さて、冷めちゃう前に食べようか。」

「そうですね。 では、いただきます。」

「いただきまーす。」

「いただきます。」

 それぞれ手を合わせ、それから食事に手を付ける。

 まずはサラダを口に運び、それからメインのカレーに手を伸ばす。

 スプーンの上に、カレールーと白米を5対5の割合で載せる。そして、そのままそれを口に運ぶ。

「おっ、うまいな、これ。」

「本当ですね。 すごくおいしいです。」

「ホント? よかったぁ。」

 あの短時間でこれだけおいしくできるって、小雪と彼方の料理の腕は本物かもしれないな。いくらでも食べられそうだ。

「手伝ってくれてありがとね、彼方ちゃん。」

「ワタシは特に何もしてないよ。 これも全部、小雪ちゃんのなせる業だね。」

「そんなことないよぉ。」

「これだけ料理ができるなんて、とてもうらやましく思います。」

 謙遜しあう二人を見つめながら、未来がぽそりと呟く。

「そうかな? 未来ちゃんは普段料理とかしないの?」

「できないんですよね……、私……。」

「そうなの? 何でも熟せそうな雰囲気してるのに。」

「周りからはよく言われるんですけど、実際私って結構不器用なんですよ。」

 そう言ってやや自虐的に笑って見せる未来。確かに、雰囲気的には何でもできる人みたいなイメージを持つかもしれないな。実際、俺もそうだったわけだし。まぁでも、人には欠点があって普通だよな。そんな完璧超人なんて、そうそう存在しないものだ。

「でも、料理できないって言っても、砂糖と塩を間違えるような、漫画のテンプレみたいなことは流石にしないでしょ?」

「彼方ちゃん、流石にそれはないと思うよ。」

 こ、これは……、フラグを建築してしまったような……。

 そう思って俺は、恐る恐る未来の方へと視線を向けてみる。

「……。」

 ぜ、絶句していらっしゃる……。なんか、表情が「どうしてそれを!?」と訴えているような、そんな感じの雰囲気を醸し出している。

 まさか、この世界にそんなテンプレを起こしたことがある人がいるとは……。ちょっと感動したのは、未来には内緒だ。

「「え……。」」

 思わず、彼方と小雪も言葉を失う。

「で、でも、それは昔の話であって、今は流石にそんなことないんですからねっ!! 人並み……とは言えずとも、簡単なものくらいは作れるようになったんですからっ!!」

 未来、必死の弁解。普段はおとなしくてどこか大人びた雰囲気の未来だが、慌てるとその相貌は崩れ、年相応に見えてくる。ギャップってやつかな。結構可愛く思えるのが不思議だ。

「わ、わかったから、一旦落ち着こう?」

「あっ、す、すみません……。」

 しょぼんとしながら、自分の席に縮こまる未来。ふむ、なかなかいいものを見せてもらった。って言うと、なんか変態臭いな……。そういう意味じゃないからな。

「でもそっかぁ、意外だなぁ。 普段、作るとしたら何を作るの?」

「そうですね……、お味噌汁くらいは自分で作ったりしますね。 あとは、炒め物とかは自分でもできます。 材料を切って炒めるだけですからね。」

「おおぅ、なんか男の子の一人暮らしみたいなメニューだね。」

「うぅ、言わないでください……。」

 小雪が地雷を踏みぬいてしまったらしく、未来がさらに縮こまってしまった。でも、俺も内心小雪と同じことを思ってしまったので、口には出さずとも同罪かもしれない。

「ご、ごごご、ごめんなさいっ! つい思ったことが口から……。」

「小雪、それフォローになってない……。」

「はうぅ……。」

「だ、大丈夫ですよ、気にしないでください。 どうせ私は、料理なんてできないんですから……。」

 落ち込んでいるところ悪い……、可愛いなこの生き物。

「うーん、そうだなぁ……。 小雪ちゃんにお料理教えてもらうっていうのはどうかな? ついでにワタシも教えてもらいたいし。」

 唐突に彼方がそんな提案をする。

 小雪によるお料理教室か、なかなか面白そうではあるな。

「わ、わたしが教えるの!? わたしに務まるかなぁ。」

「大丈夫じゃないかな。 お昼のオムライスも、今食べてるカレーもすっごくおいしいもん。 ぜひ教えてほしいな。」

「お、教えていただけるんですか!? そ、そういうことなら私にも是非ご教授いただけませんか?」

「そ、そこまで言うなら……。 わたしでよければお手伝いくらいはするよ。」

 若干気おされた感はあるが、どうやら小雪のお料理教室は開かれるようだ。

 どうしよう、ついでに俺も教えてもらおうかな……。いや、でもなぁ、流石に迷惑だろうしなぁ。俺はおとなしく黙っていることにしよう。

「で、でも、あんまり教えてあげられることなんてないからね……。 編に期待はしないでね。」

「ええ、よろしくお願いします、小雪さん。」

「うぅ、未来ちゃんの目がまぶしすぎるよぉ……。 あと、一つ言いたいんだけど、彼方ちゃんは普通にできるんじゃないの?」

「まぁ、そうなんだけどね。 小雪ちゃんの腕前には勝てないからね。」

「そんなことないと思うけどなぁ……。 まぁ、いいけど。 って、ごめんね、レンくん。 わたしたちだけで盛り上がっちゃって。」

「ああ、気にしないでくれ。」

 この間、俺は黙々と小雪と彼方によって用意されたカレーとサラダを食していた。本当にスプーンが止まらないんだわ、これ。

 もっと時間があったら、これ以上のクオリティになると考えると恐ろしい。こんな料理を毎日食べていたら、舌が肥えてしまいかねない。もっとも、この二人の料理を毎日食べられるなんてこと、あるはずないんだろうけど。秘かな期待くらいはしても罪にはなるまい。

「そうだ、対抗戦のチームの話なんだけどさ。」

 小雪が対抗戦の話を持ち出してくる。ちょうど俺も、その話がしたかったので、グッドタイミングだ。

「これからの方針ってどうするの? まずはチームメイトをそろえないといけないっていうのはわかるんだけど。」

「チームメイトになってくれそうな人を探しながら、私たちは私たちでしっかり対抗戦に向けての特訓もしないといけませんからね。」

「あと3人って言ってたっけ。 みんな、当てはあるの?」

「「「……。」」」

 彼方の言葉に、俺たち3人は一斉に黙り込む。

「残念ながら……、私の周りでまだチームを組んでいない人というのは……、いない気がしますね……。 すみません、私の人脈ではお力になるのは難しいかもです……。」

「わたしもかな……。 これといって仲のいい人がいないからね、わたし。」

「俺もだ。 何なら、君らが今のクラスでの初めての友人だし。」

 元ボッチにとって、人脈を求められるような仕事は正直きつい。おい、誰だ?今もボッチと変わりないとか考えている奴……。

「え、そうだったの!? あー、でも確かに、レンくんがクラスの人たちと話してるところ、わたし見たことないかも。」

「そうですね。 木乃瀬さんや水樹さんたちとお話をしているところはよくお見掛けしますが、クラスメイトの方々となると、あまり関わられてはいなかったかもしれませんね、思い返してみると。」

「友人曰く、俺はコミュ障らしいからな。」

「そんな風には見えないけどなぁ。」

 彼方のフォローがとてもありがたい。けど、事実はそうではないんだよ……、自分で言ってて悲しくなるけど……。認めたくもないけど……。

「んなわけで、当てはないかな。」

「あらら……。 うーん、どうしようね……。」

「未来ちゃんって執補会で仲のいい後輩とかいない? もしくは、去年執補会にいた先輩とか。」

「うーん、そうですね……。 いないことはないんですけどね。 その子、戦闘向きの能力じゃないんですよね。」

「そうなんだ。 となると、ちょっと難しいかもね。」

「サポート系の能力を持つ学生は、対抗戦当日はフィールド管理と対抗戦出場者のバックアップに当たりますからね。 でも、その子経由で探してみることはできるかもしれないです。 少し時間はかかってしまいますが、それでもよろしければすぐに掛け合ってみます。」

 未来の提案に、俺と彼方と小雪の3人はほぼ同時に頷く。チームメイトが確保できる可能性があるのなら、どれだけ時間がかかっても集めてやりたい。今の俺は、何が何でも対抗戦に出場してやりたいと思っているからな。みんなの協力はありがたい。

「わかりました。 では、週明けさっそくその子に話してみますね。」

「ああ、よろしく頼むよ。」

「わたしも、よさそうな人がいたら声をかけてみるね。」

「ごめんね、これに関してワタシは力になれないから、みんなに任せちゃうことになるけど、その分他のところでは力になるからね。」

「うん、お願いね、彼方ちゃん。」

 チームメイトに関しては、未来を中心に探していくという方向で固まりそうだな。

 俺もなるべく探してみることに使用。果たして、コミュ障の俺がちゃんと探して声をかけることができるかは知らんけど。

「今後の特訓についてはどうする?」

「場所はこの寮の中庭でいいと思う。」

 実は、各寮の中庭は、個人鍛錬を行っても問題が出ないように、設備が整えられているのである。もし、能力が被弾して隣接する寮に飛んで行ってしまわないように、特殊防御結界が張り巡らされていたり、退陣訓練を行う際には、怪我防止のための特殊フィールドの設置が可能だったりなど、対策の種類は様々である。

 そのため、中庭を訓練場所として選択する学生は多い。チームによっては、チームメイトの住む寮がばらけている場合もあるため、みんながみんな寮の中庭を使っているわけではないが。

 まぁ、俺たちの場合は、今のところ全員同じ寮だし、ひとまずは西7寮の中庭を特訓場所にするという方針でいいと思う。

「そうですね。 チームメイトが集まってきたら、随時場所について話し合いをしていけばいいでしょうし、一旦はここの中庭を使うということで私もいいと思いますよ。」

「うん、わたしもそれに賛成かな。」

「そしたら、あとは練習時間かな?」

「これに関しては、執補会の兼ね合いもあるから、未来の都合次第ってところかな。」

 確か、執補会の定期会議は火曜日の放課後で、時々臨時会議が入ってくることがある。特に今の時期は、対抗戦の準備に関する話し合いのため、臨時会議を行う頻度が少し高いように感じられる。これらは、愛葉やミアから聞いた話だ。

「基本的に、水曜日は臨時の話し合いも入らないので、そこは固定で大丈夫です。 あとは……、すみません、ちょっと読めないですね。 その都度、連絡は入れるようにします。 この場で決めてしまうことはできなさそうですので。」

「了解。 じゃあ、俺たちのグループトークでも作っておくか。 って、そういえば、彼方はスマホ持ってるの? 昨日から、そんなそぶりは見せてなかった気がするけど。」

「ごめんね、持ってないんだ。 ずっと一人だったから、必要性を感じなくてね。」

 いや、だから重いって……。そんな自虐的にならなくても……。と思うが、本人は割と無意識らしいので、下手にツッコんだりはしないようにしておこう。

「そっか。 なら明日、買いに行こうか。 持っておくと案外便利だし。」

「うん、そうしようかな。」

「じゃあ、今ちゃちゃっとグループ作るね。 あ、名前は?」

 そうだった……。一応、対抗戦に出場するにあたって、チーム名が必要だったのをすっかり忘れてしまっていた。

「名前かぁ……。 どんなのがいいかなぁ?」

「西側7番寮だし、ウェストセブン、とか?」

「そ、そのままですね。 でも、正直思いつきませんね……。」

「センス……、いや、何でもない……。 俺もこれといって思い浮かばないからな。 正直、もうそれでいい気がしてる。」

 小雪のネーミングセンスをとやかく言うつもりはない。実のところ、俺もあまりネーミングセンスには自信がないからな。だからまぁ、もうウェストセブンで決定でいいと思ってしまっている。

「むぅ、センスなくてすみませんね……。 じゃあ、もうこれでいくよ。」

「はい、大丈夫です。」

「オッケーだよ。」

「俺もそれでいいと思う。」

 というわけで、俺たちはこれからウェストセブンだ。よく言えばシンプル、悪く言えばちょっとダサめなチーム名ではあるが、嫌じゃない。覚えやすいのはいいことじゃないか。むしろ、俺は気に入ったぜ。

「はい、グループ作ったよ。 レンくんと未来ちゃんを誘っておいたから、確認しておいてね。」

「あ、はい。 招待が来てますね。」

「うん、俺のとこにも来てる。」

 俺はグループ参加のボタンをタップする。ほぼ同じタイミングで、未来もグループ参加したらしく、その通知が届く。

「これで明日、彼方がスマホを買ったらこのグループに入れよう。」

「お願いしまーす。」

「はいよ。 じゃあ、今後の方針としては、ひとまず水曜日を固定練習日として、あとは未来の都合でその都度練習時間を決めていく、ってことでいいな?」

「うん、問題ないよ。」

「ワタシも平気だよ。」

「すみません、私の都合に合わせていただいちゃって。」

「気にすんなって。 んじゃ、みんな賛成みたいだし、これで一旦は決定な。」

 一応、これからの活動方針について固めることができた。

「あ、チームリーダーは?」

 おっと、それも決めておく必要があったか。

「それは、レン君でいいのでは?」

「同じく、それでいい気がする。」

「異議無しだね。」

「えっ……。 そんなあっさり……!?」

 そんなわけで、ウェストセブンのチームリーダーは、拒否権なしに俺が引き受けることとなったのだった。こんな決め方で果たしてよいのかは、俺にはわからん。まぁでも、任されたからには、しっかりやりますけどね。


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