天空(そら)の彼方に響く旋律 -穢れた七世界の中で生き抜く戦士達-   作:室谷 竜司

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Episode17. まさかのお泊り会!? 男1に女3って、果たしていいのだろうか……?

 今、俺の目の前にある状況を簡単に説明させてほしい。

 先ほどまで彼方しかいなかったはずなのに、何故かその隣に小雪の姿が見えるのだ。え、ナニコレ……。一体、どういうことなのでしょうか……?俺にはさっぱりわかりませんねぇ……。

 夢でも見ているのか、幻影でも見させられているのかなんて言うバカな考えが脳裏をよぎり、まさかなと思いつつも一度扉を閉めてもう一度開けてみる。するとそこには、変わらず小雪の姿があった。

 なお、隣に鎮座する彼方は、なんだか妙に楽しそうな表情を浮かべている。外見の幼さも相まって、年齢さえ知らなければ発育のいい小学生か何かと間違えそうになるくらい、今の彼方は無邪気な笑顔を浮かべていた。

 一方の小雪は、どこか緊張した面持ちでこちらをちらちらと見てくる。この二人の態度の差もなんかよくわからない。

「えっと……、小雪……だよな……?」

「え、あ、うん。 そうだよ。 そ、その……、き、来ちゃった……。」

 こくんと首を傾けて恥ずかしそうに微笑む小雪。正直、プリンセス様のその仕草は反則的なまでの破壊力を持って、俺に襲い掛かってきた。

「えへへぇ、びっくりしたでしょ?」

「あ、はい……。 驚きました……。」

「やった! サプライズ大成功だね、小雪ちゃん!」

「う、うん。 そうだね。」

 サ、サプライズだったのか……。彼方が考えたのだろうか?結構、心臓に悪いことしてくれるじゃないか……。まぁ、別に咎めるつもりもないんだけどさ。

 でも、サプライズのためだけにここに小雪を呼んだわけでもないだろう。

「ま、まぁ、それはそれとして……。 小雪をここに呼んだのには、他にも理由あるんだろ? 彼方。」

「えっとね、今日は小雪ちゃんも交えて3人でお泊り会みたいなことができたらいいなって思って。 ごめんね、いきなりこんな提案しちゃって。」

「あ、そういうことね。 謝る必要はないよ。 まぁ、事前に行ってくれてたらもっと準備なり何なりできはしたんだけど。」

「そこはまぁ、レンくんをびっくりさせたかったからね。」

「はいはい。 んで、まともな準備はできてないけど、それでもよければ俺のところに泊まるのは全然構わないよ。 というか、そういうの女子同士でやればよかったのに。 態々、男のところに来る必要は……っていうのは違うか。 ごめん、湿原だから忘れてくれ。 あれだったら、今から未来でも呼ぶ?」

 恐らく彼方は、まだ少し心細さを抱えているのだろう。だから、より多くの相手ともっと一緒にいたかったのだと思う。そういう思いがあるはずなので、俺は彼方の行動を決して責めたりしない。

 それに、せっかくチームメイトになったわけだし、本心を言えば俺だってもう少し話をしたかったからな。安心してほしいんだが、やましい気持ちは一切ない。純粋に、仲間ともっと親密になりたかっただけである。

「え、いいの!? 迷惑とか思わないの!?」

「別に思わないかな。 俺、友人と夜まで一緒にっていう経験、これまでにしたことないんだわ。 だから、少なからず憧れはある。 まぁ、正直なところ、女3人の中に俺がいていいのかとは思うけどね。 でも、別に彼方の提案に反対するつもりはないよ。 寝る場所とかはちゃんと考える必要あるけど。

「そ、そうなんだ。 それじゃあ、みんなでお泊り会しよっ!!」

「よしきた。 って……、布団あったかなぁ……。」

 一人暮らしなので、布団の呼びなんてそんなに多くない。呼びが1セットあるだけでも充分なほどだ。後先考えずOKしてしまったが、どうしたもんかなぁ。

 せめてもう1セットあれば何とかなる。3人にこの部屋で寝てもらって、俺はリビングのソファを使えばいいのだから。快眠は求められないが、一晩眠るには申し分ないだろう。どっちみち、男の俺は女性陣に交じって眠ることはできないし。

「うーん、わたしと彼方ちゃんは多分二人で一つの布団でもいいかもだけど……。」

「え、そうなの? それなら充分賄えるかも。」

「え、そ、それって……。」

「俺はリビングのソファで寝るからね。」

 そう返しながら、俺はスマホを捜査して未来とのトークルームを開く。今日の昼会話したばかりなので、友達の数が乏しい俺のメッセージアプリでは、未来の名前は履歴の上位にあって見つけやすかった。くっ、その事実が異常なまでに悲しい……。い、いつか俺だって、ボッチ生活脱却してやるんだからな……。

 そして、今彼方からあった提案を未来に伝えてみる。うーん、メッセージより直接通信をつないだ方がいいかなぁ。

 迷いの末、俺は通話ボタンを押した。

 数コールの後、未来はすぐに応答してくれた。

「もしもし、天留です。」

「あ、神奈和だけど。 急に連絡ごめんな。」

「あ、それはお気になさらず。 それで、どうかなさいましたか?」

「ああ、それなんだけどさ……」

 俺は一呼吸おいてから、本題を切り出した。

「さっき、彼方から提案があってな、みんなでお泊り会なるものをやりたいとのことだったんだよ。 それで、未来も一緒にどうかなってことで連絡したんだけど。」

「そうだったんですね。 楽しそうですね。 私も行っていいんですか?」

 電話の向こうの未来の声はどこか弾んでいるように感じられた。昨日今日とかかわってみてわかったことなんだが、未来は結構感情が豊かなように思う。楽しいと感じているときの未来の声や表情はとてもわかりやすい。

「ああ、もちろん。 んで、場所は俺の部屋なんだけど、いいか?」

「ええ、構いませんよ。 何か必要なものはありますか?」

「うーん、特にはないかな。」

「わかりました。 では、すぐに行きますね。」

「はいはーい。」

 短く返事を返し、通話を終了する。

 それから、スマホをズボンのポケットにしまって、彼方と小雪に向き直る。

 すると、彼方と小雪が思ったより近くにいて、思わず数歩後ずさってしまった。二人とも、表情は真剣そのものだったので、余計に驚いてしまった。

「もぅ、言いたいことあったのに、いきなり電話し始めちゃうんだから……。」

「い、言いたいこと?」

「さっき、自分はソファでいいとか言ってたけど、身体炒めちゃうよ。 だからダメ!」

「それに、家主さんをそんな扱いできないよ。」

 そんな二人の気遣いに、思わず心が温かくなる。ああ、こうやって優しくされるのって、なんかいいなぁ。今までの友人にはなかった間隔だ。

「え、えっと、じゃあ布団はどうすれば……。」

 だが、それはそれだ。それよりも問題は、男である俺を女性陣と同室にするのはまずいということだ。

 布団がもう一式あれば、俺は自分の寝室のベッドwいつも通り使って、3人はリビングで寝てもらえばいい。だから、布団さえ確保できればいいのだけれど……。

 うーむ、どうしたものか……。

「わたしのお部屋から1セット持ってくるよ。 絶対その方がいいから。」

「いいのか?」

「もちろんだよ。 むしろ、レンくんをソファで寝かさないためにも、持ってくるからね。 というわけで、彼方ちゃん手伝って。」

「あ、はーい。 それじゃあ、行ってくるね。」

「あ、ああ。 よろしく、お願いします……?」

 小雪と彼方が部屋から出ていく。手伝う余地もなかったな。

 さてと、まさか俺のところに女性陣を3人も泊めることになるとは思ってもみなかった。結構緊張している自分がいる。一人になると、途端に落ち着かなくなる。軽いパニック状態化も。

 意味もなく室内をうろちょろしていると、インターホンが鳴らされた。その音ではっと我に返り、玄関に慌てて向かう。

「はい、今開けます。」

 玄関のドアを開くと、そこにいたのは案の定未来だった。けど、その格好は予想外なものだった。俺は、数秒間固まったままだった。

「あ、あれ? どうかなさいましたか? レン君。」

「あ、いや、ごめん。 なんでもないんだ。 どうぞ、上がってくれ。」

「では、お邪魔します。」

 俺は未来を部屋の中へ引きいれる。

 そんな未来の今の格好は、浴衣姿である。俺が驚いていたのはこういうことだ。いや、仕方ないだろ。いきなり目の前に現れたのが浴衣美人だったんだから。

 でも、なんかものすごく未来の雰囲気にぴったりで、よく似合っている。素直に綺麗だと思った。

「未来は、風呂にはもう入ったのか?」

「ええ、自分の部屋で済ませてきました。」

「その浴衣って、もしかしてパジャマ替わり?」

「そうですよ。 もともと、私は和服が好きなので。」

「へえ、そうなんだ。 良く似合ってると思うよ。」

 俺は素直な感想を口にする。思ったよりもすんなり口から出てくれた。おお、やればできるじゃないか、俺。

「そ、そうですか? ありがとうございます……。 なんか、そう言っていただけると嬉しいですね。 でも、少し恥ずかしいです……。」

 時折見せる未来の年相応な姿は、やはりずるいと思う。ギャップ萌え、恐るべしだな。

 そういえば、未来って学校では浮いた話とか聞かないな。小雪は、プリンセスと呼ばれるくらいもてはやされてはいるけど。学校では基本ボッチの俺でも、噂くらいは耳にする。けど、未来に関する話題は聞いたことがない。普通に男子からの人気ありそうなんだけどなぁ。

「えっと、とりあえずリビングに移動しようか。」

「あ、はい。 では、改めてお邪魔しますね。」

 なんか、こっちまで照れくさい気持ちになってきてしまったので、誤魔化すためにひとまず場所を移すことにした。客人をあんまり立ちっぱなしにさせるのも悪いしな。

 俺たちはリビングに移動した。つっても、布団を取りに行った小雪たちがすぐに戻ってくるだろうし、俺は結局また玄関に戻る必要はあるんだけどな。

「あら、お二人はどちらに?」

「今、布団を1セット取りに行ってもらってるところ。 俺はソファでいいって言ったんだけど、彼女たち適にはダメらしくてな。」

「なるほど、そうですか。 でも、そうですね。 私もお二人のご意見に賛成です。 レン君、自分もちゃんと大切にしないとダメですよ。 風邪とか引いてしまったら大変です。 それに、そんなことになってしまっては、泊めていただく私たちとしては申し訳が立ちません。」

「うーん、そういうものなのか。 まぁ、君ら3人に言われちゃね。 ありがたく布団で寝させてもらうよ。」

 男連中の間だと、床の上に雑魚寝とか普通にあるからな。でも、その感覚は女性人相手には通じないようだ。今後は気を付けることにしよう。

 と、思った通り、すぐにインターホンが鳴らされた。小雪と彼方が戻ってきたみたいだな。俺は未来に断りを入れて、玄関先に急いだ。

「今開けるよ。」

「うん、ありがと。 よいしょっと。」

 小雪と彼方の二人で布団一式を抱えていた。そこまで重量はないだろうけど結構かさばるので、積み上げた状態で運ぶのは背丈が低めの二人からするとかなり大変なように思える。

「ここからは代わろうか?」

「ううん、大丈夫だよ。 えっと、どこに運べばいいかな?」

「そしたら、リビングに運んでもらってもいいか?」

「了解。 そっちは大丈夫? 彼方ちゃん。」

「うん、平気だよ。 んしょっと。」

 そのまま二人で布団一式を運んでいく。二人とも、思ったよりも余裕そうだった。

 そして、リビングの一角にそれを下ろす。

 改めてみてみると、結構大きめの布団を使っているんだな、という印象を抱いた。セミダブルベッドくらいの面積はあるように思う。たたまれているので、正確にはわからないけど。

「お二人とも、先ほどぶりです。」

「あ、未来ちゃん、来てたんだね。」

「わぁ、その浴衣、とっても似合ってるよ! いいなぁ、綺麗だなぁ。」

「ホントだね。 うらやましいなぁ。」

「えっと、ありがとうございます。」

 彼方と小雪がそれぞれ感嘆の声を漏らす。その二人の反応に、未来は頬を桃色に染めつつ、小さく礼の言葉を口にしていた。

「そうだ。 小雪は風炉済ませたのか?」

「え、あ、ううん。 まだだよ。 えっと、お風呂借りても平気かな?」

「大丈夫だよ。 彼方もまだだったもんな。 順番に入ってきちゃいなよ。」

「そしたら、約束通り一緒に入ろうよ。」

「だね。 それじゃあ、お風呂借りるね。」

 楽しげに談笑しながら、彼方と小雪の二人はリビングから出ていった。ホント、仲良くなったもんだなぁ。初対面時はどうなることかと冷や冷やしたが、まぁ何事もなくてよかったよ。もう、あのチクチクとした雰囲気の中には入りたくないからね。

「なんか、こうして二人きりになること多いですね、私達。」

「ああ、確かにそうかもね。 未来も、もっと女子同士で話がしたいとか思ってたりするんじゃないか?」

「まぁ、そういう気持ちもないことはないですよ。 でも、こうしてレン君とお話しできるのも、すごく嬉しいんですよ?」

「お、おぅ、そうか……。」

 一瞬、その言葉にドキリと心臓が跳ねた。そんなこと言われてしまっては、嬉しくないはずがない。それも、未来くらいの綺麗な人となればなおさらだ。

「レン君とは、いつかお話してみたいってずっと思っていたんですよ。 執補会で木乃瀬さんや水樹さんからよくお噂は伺っていましたので。」

「そういえば、昨日もそんなこと言ってたな。」

「ええ。 ですが、なかなか機会がなくて……。 何分、私はあまり人に話しかけることが得意ではないものでして。」

「そうなんだ。 あー、でも、それもそうか。 でないと、チームメイトを一人も見つけられていないなんてことないかもね。」

「はい。 でも、結果的にそれでよかったって思っています。」

 にこりと微笑む未来。その笑顔は、優し気で温かみがあって、それでいてどこか輝いているようにも見えた。

「こうして皆さんと仲良くなることができたわけですし。」

「そっか。 俺も嬉しく思うよ。」

 俺については、単純に話し相手がようやくできたことが何よりも喜ばしいことだ。クラス内で孤立状態ってのは、案外精神的にきついんだわ。どれだけ高等部1年のころに戻りたいと思ったことか。まぁ、その度に愛葉や空にはため息を吐かれ、ミアの無垢な優しさをもらっていたんだけど。

「ところで、話は変わるんだけどさ。」

「どうかなさいました?」

「和服って、どれくらい持ってるの?」

 未来の浴衣姿を見てから、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。俺、意外と和服って好きなんだよな。誰かが来ているのも、もちろん自分で切るのも。つっても、今は一着も持っていないわけだけど。

「うーん、こういう寝間着用の浴衣は三着くらいですかね。」

「外出するときには着たりするの?」

「流石にこのご時世、和服で外を歩く人はあんまりいないので、どうしても浮いちゃうんですよね。 なので、最近は洋服を着るようにしています。 でも、外出用のものもいくつかは持ってはいるんですよ。」

「そうなんだ。 まぁ確かに、目立っちまうもんな。」

 外で浴びる人の視線って、結構気疲れの原因になったりするもんな。そう考えると、服装が周りから浮いてしまって注目されるのはあまり好ましくないかもな。俺だったら、普通に嫌だ。

「和服、お好きなんですか?」

「え、わかるのか?」

「いえ、なんとなくですよ。」

「まぁ、それなりに好きかな。 落ち着いた感じがね。 昔は自分でも着たりはしていたんだけど、最近はもうないかなぁ。」

「そうなんですか。 でも、そうかもしれませんね。 着るのに手間もかかってしまいますしね。」

 まぁ最近は簡単に着られるものもあるにはあるみたいだけどな。というより、割と値段が張るものが多いというのが理由だったりする。だから、結局いつも安物の服を選んでしまうんだよな。某有名服店とかな。あそこは素晴らしい。

「でも、そこまで和服にこだわるのには理由があったりするの?」

「まぁ、そうですね。 私の実家、実は旅館を経営しているんですよ。 それで、昔から浴衣や着物をよく着ていまして。」

「へえ、旅館かぁ。 それは本島にあるの?」

「そうですよ。 私はリージェリストなので、世間からの評判を考えるとどうしても継ぐことはできませんでしたので、姉や妹に負担をかけてしまうことになってしまいましたけど。 それでも、家族は私を優しく見送ってくれました。 いつか、何かしらで恩を返したいです。」

 へえ、未来にはお姉さんと妹さんがいるのか。

 それにしても、未来のご家族は、この現代社会では珍しい感じの人たちみたいだ。まぁ、自分の娘だから、というのはあるかもしれないが。でも、少なからず俺や愛葉、彼方みたいな家族もいるわけだからな。考え方は人それぞれなんだよ、結局は。

 ご家族の話をする未来は、とてもやさしい表情を浮かべていた。そして、どこか寂しそうというか、申し訳なさを感じているようにも感じられた。

「時間があったら、顔を見せに行ってあげなよ。 ちょっと、本島の方は風当たり強いかもだけど。」

「そうですね。 久々に顔が見たいです。 連絡は結構取っているんですけどね。 それでも、時たまに家族が恋しく感じるときがありますから。」

 ご家族に大切にされているって、いいな。

 縁を切ったこちらからすると、そういう家族関係ってたまにうらやましく感じることがある。別に、恨んだり憎んだりはしないけどな。

 うん、これ以上考えるのはやめておこうかな。昔の記憶はあんまり思い出したくないし。俺は話題を変えることにした。

「あの二人、仲いいよな。」

「フフッ、そうですね。 まぁ、どうしてかもなんとなくわかるんですけどね。」

「え、それってどういうこと?」

「いえいえ、こちらの話です。 それに、いずれわかることだと思いますよ。 特に、彼方さんは積極的な方のようですしね。」

 うーむ、よくわからないが、まぁいいということにしよう。気にしたら負けっていう感じだろう。それに、女同士にしかわからない何かがあるんだろう、きっと。

「でも、レン君意外と落ち着いていますね。」

「はは、まさか。 内心結構緊張してるんだよ、これでも。」

「今から、私あのお二人のところに行ってみようかしら。 レン君もついてきますか?」

「や、やめてくれよ……。」

「冗談です。 レン君は面白い反応をしてくれるので好きですよ。」

 またもやどきりと高鳴る心臓。そういう意味で言ったわけじゃないというのはわかっているつもりだけど、それでも「好き」という言葉には思わずドキッとさせられてしまうものだ。え、そんなことないって?いやいや、そんなまさか。

 その時だった。浴室の方から大声が聞こえてきた。

「お、おーい、レンくーん!! ちょっと来てーっ!!」

 声の発生主は彼方か。一体、何があったのだろうか……?

 けど、俺は少し躊躇ってしまう。

「ごめん、未来さん……。 ついてきてはいただけないでしょうか?」

「構いませんよ。」

 俺は未来の協力を得て、浴室の方へと駆け付けることができた。

 なお、要件は「タオルを貸してほしい」とのことだった。そういえば、出すのをすっかり忘れてしまっていたな。完全にこっちの落ち度だ。

 未来を連れてきて正解だったわけだ。おかげで事故を起こすことなく、要件を済ませることができたのでな。安心安心。ざ、残念とか、決して思っていないんだからなっ!!俺はそんなにむっつりではない……はずだ……。

 途中、未来からの誘惑はあったけど、全て振り切ってやったし、万が一を恐れて浴室とは真反対の方向を向いていたし、なるべく紳士的な対応をしたつもりだ。きっと、誰からも咎められることはないはずだ。

 たとえ、彼方・小雪・未来の3人それぞれがどことなく残念そうな表情を浮かべていたとしても、絶対に俺は間違ったことをしていないはずなんだ。もうこれ以上、からかわれるのはごめんだぜ……。


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