GSG‐9、作戦行動に移…らない。   作:御簾

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お久しぶりです。
休み無し、時間無し、体力なしの三拍子揃った地獄の日々から解放されました。


416の奇妙な1日 その4

午後6時。

 

バンディットが廃棄区画を彷徨っている間、ブリッツ率いる『救出部隊』が旧I.O.P.研究施設に向けて進行中であった。

 

「…まだ捕まったって決まったわけじゃないんだろ?救出部隊なんて大層な名前付けなくても…」

「いや、あの辺りは人類人権団体の巣窟だっていう情報はあったんだよ。そこに、新型戦術人形が転がり込んで来たら…どうなるだろうな。」

 

常に最悪を想定して動くべきだ。万が一、その人形が拿捕されていた場合、人類人権団体がどんな事をするか分からないのだから。

それは、人形を『機械』として扱う彼らだからこそ、自分達に想像もつかないような残虐行為を行える可能性があるのだと、暗にイェーガーはブリッツに応える。

ヘリアンから送られたデータにあったのは、新型戦術人形の簡単なスペック、そして個体名。

その名は、『MP7』。

 

「バンディットがいれば、確実に突撃していただろうな…」

 

彼の使用する武器を想起しつつ、イェーガーは額を抑える。

ははは、と笑って視界の端に光る物を察知したブリッツがそちらを見ると、路地裏には人の影があった。慌てて駆け寄ろうとするブリッツだが、向き直ってすぐ顔を背けた。

そこに転がっていたのは、人形だったモノ(・・・・・・・)の残骸だ。

光った物は、身に付けたボロ布の隙間から露出したフレームだった。

そのボロ布の下にどんな惨状が広がっているのか、少し想像してしまったIQは、物言わぬ鉄屑と化した人形達に視線を向けて、悲しそうな顔をする。

 

「人の都合で作られて、最後はゴミのように扱われて死ぬ、か…」

 

イェーガーは技術者だが、その前に人間だ。

人形達にもっと良い待遇をしてやらねばなるまい、と彼は決意する。

自分の基地からあんな顔をした人形を出してはならない。

惨めな格好で逃げ続けて、人に絶望し切った、虚ろな目をしながら死んでいく人形を。

それでも一行は進む。

途中、同じような人形を何人か見つけ、その数が両手の指では足りなくなったところで416がしゃがみこんだ。

 

「…少し、待って。」

「…分かった。この先の事で、ブリッツと話しておく。IQ、任せる。」

 

男二人が去っていくと、416は嘔吐した。

見るも無残に手足を引きちぎられた人形、腹に大きな穴を空けた人形、エトセトラ、エトセトラ…

イェーガーに依存する事で、辛うじてバランスを保っていた416の精神が悲鳴を上げるのも、時間の問題だった。

そんな416の隣にIQがしゃがみ込む。

416が落ち着いたのを見計らって、彼女はボトルに入った水を渡す。

 

「…ありがとう。」

 

少し青い顔を上げた416は、IQの顔が凄まじい事になっているのに気付いた。

それは、怒りや悔しさ、あらゆる負の感情が入り交じった顔。

 

「貴女、顔、見たら?凄いことになってるわよ。」

「…ありがとう。416。でもね。私は大丈夫よ。」

 

少しよろめいて立った416を支えながら、IQは近くに見える研究施設を睨む。

嘗ての研究施設は、もっと白かったのだろう。所々に見える外壁はくすんだ白をしていた。だが、外壁の大部分は蔦に覆われたり、または黒く変色したりと無残な有様だ。

まるで、中で行われている事を暗示するかのように。

 

「行きましょう。指揮官が待ってるわ。」

「ええ、そうね。」

 

また四人は歩き出す。

 

 

午後6時30分。

 

 

偶然バンディットと四人が遭遇した。

手短な会話を交わして、バンディットは基地へ戻っていく。

去り際に、マッピングデータを手渡し、イェーガーの肩を叩いて。

 

「そろそろだな。全員、ドローンを使ってターゲットを捜索するぞ。」

 

取り出して投げるのは遠隔操作式のドローン。

各々、身を隠しながらドローンを操作する。

 

 

__________________

 

 

 

探し始めて数十分。

 

「見つけた。やっぱり捕まってるわ。地下よ。」

 

416がターゲットを視認する。

幸いにも地下一階の、階段に近い小部屋に監禁されているようだ。

 

「…指揮官、私のドローンの映像、見たかしら?」

 

端末を仕舞いながら416が静かに話す。

無言で頷いたイェーガーが見たのは、MP7の凄惨な扱われ方だった。

窓や明かりなどない物置のような、トイレだけが備え付けられた部屋の中でたった一人、両手を鎖で縛られていた。

身に付けているのは布切れと言っても遜色ないほどにズタボロになった彼女の制服だ。

おおよそ感情というものが消え去った、仮面のような表情で一人、部屋の隅に座り込んでいる。

人類人権団体が何をしたのか、想像に難くない。

 

「…行くぞ。」

 

ブリッツの号令で、四人は突入を開始する。

侵入経路は至ってシンプル。正面から、堂々と。

錆びついて開閉ができないと思われる正面の扉に向けてIQがブリーチングチャージを設置し、すぐさま起爆、ブリッツを先陣として突入する。

幸運にも(・・・・)ブリッツの前にいた戦闘員は、眩い光を知覚すると共に絶命する。

早速一人殴って処理したブリッツの後ろから、イェーガーと416が射撃。ヘッドショットで確実に戦闘員を処理していく。

施設に入って数分後、

 

「イェーガー、あんたいつの間にアサルトライフルなんか手に入れてるの!?」

「416に教えてもらって武器庫まで遠足した時の土産だよ!」

「どうでもいいけどお二人さん!地下への道のり、把握してるな!?」

「ああ。そこを右だ!階段がある!」

 

彼らは地下への階段を発見。ここでイェーガーが基地に通信を繋ぐ。

 

『バンディット。タクシーを頼む。』

『了解だ。10分で行ってやる。』

「416。バンディットの護衛だ。上まで行ってやってくれ。」

「…分かった。」

 

416が玄関まで戻ったのを確認し、三人は階段を下って行く。

階下からは慌ただしい空気が漏れ出ている。突然の銃声に、構成員が慌てふためいているのだ。

 

「IQ。念の為、お前に救出を任せる。幾らアンドロイドといったって、ターゲットは女性なんだ。」

「分かったわ。…二人は?」

「俺達はお前の援護だ。」

『ブリッツはIQの前で壁役だな。』

「ああ。…って、お前かよバンディット。」

 

打ち合わせを最低限にして、地下に到達した三人は逃げ惑う白衣姿の構成員を目撃する。

 

「おい!あの人形を連れてこ…」

「邪魔だ。」

 

ブリッツが殴りつけて道を確保。イェーガーが416で威嚇射撃を行う。

 

「IQ!行くぞ!」

 

頷きと共にIQが走り出し、野郎二人がその援護に回る。

IQの狙いが自分達の捕まえた人形である事に気付かない者は居なかった。何せ彼らGSG-9はR06地区の新しい指揮官として有名なのだから。

IQの進路に立ち塞がり、拳銃などの武器を構える研究員らしき男達は、迷いなく突っ込む彼女に向けて射撃…出来なかった。

 

「はいはい!俺の相手もしてくれよな!」

「俺達の前に立つには、三年早いんだよ!」

 

IQの前をブリッツが、また彼女の後ろをイェーガーが、それぞれ護衛していたからだ。当然ながら銃を構えるのは素人同然の研究員達。真っ直ぐ突撃するブリッツに銃弾を当てられる者は無く、または銃を構える前にイェーガーに撃ち抜かれる。

目的の部屋へ辿り着く。

乱戦ついでに何人かの男を蹴り倒しながら走り抜けてきたIQ達の息は、一切乱れていなかった。

 

「鍵なんて…ッ!」

 

バガァン!と大きな音と共に鍵を蹴り壊し、扉を開けたIQは思い切り顔を顰めた。

酷い臭いだ。

慰み者にされていた形跡を隠すつもりなどなかったらしい。

 

「…おい。」

 

修羅の表情と化したIQが手近な研究員をひっ捕まえて尋問を開始する。もちろん、イェーガーの416がオマケだ。

 

「他に何人いる?」

「え、」

「早くしろ。」

「地上以外には地下だけです!」

「シャワー室は?」

「そこの角を曲がったところに…」

「おっけ。じゃ。」

「くぁwせdrftgyふじこlp…」

 

尋問した研究員を軽くオトしてからIQはMP7を抱え、角の向こう側に消えて行った。

 

「…IQを怒らせないようにしような。」

「…おう。」

 

男同士の密約が交わされた瞬間だった。




まさかこの話を書いている途中に実装されるとは…
なおドロップはしていない模様。
時間が空いて文章力がガバガバなのは許してくだs(殴

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