変わり始める君   作:海月

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遂にね...。
会いますよ。


邂逅の屋上

保健室での一件から三日が過ぎた九月十三日の昼休み。

未だ、湿気と熱で蒸し暑く、過ごしにくいが、確かに夏の気配は少しずつ失せ始め、昼夜問わず鳴き続ける蝉の音も日に日に弱々しくなってきたこの日。

 

「何でこうなった?」

 

青年が周りを見れば其処には自分を起点に輪を作る様に昼食を摂っている生徒達。その奥には住宅街が快晴の空に照らされて輝く様に建っていた。

 

屋上。その中心で青年は生徒達に囲まれ昼食を摂っていた。

 

ここ最近はバンドメンバーと仲良くなり始めたのか、三日前の様な事を有咲が求めてくる頻度も減っていき、時間に余裕が出来始めた瞬間群がってきた生徒《狩人》達に青年は捕まり抵抗しようにも抵抗できず、最終的に出来たことは白旗を挙げることのみだった。

 

 

 

「先生!先生ってお付き合いしてる人居るんですか?」

 

「居たら良かったんですけどね...」

 

「と言うことは先生って」

 

「フリーですよ、フリーどころか今までお付き合いもした事ありません」

 

青年が今までの女性経験が皆無であることを伝えると途端に生徒達がざわめき出す。

どうやら、彼に女性経験が無いことを知り、自分でもチャンスがあるのでは?、と思い始めたようだ。

そんな彼女達の眼は恐ろしく鋭く、虎視眈々と獲物を狙う肉食獣の様だった。

青年はそんな生徒達(捕食者)に囲まれて蛇に睨まれた蛙のように体をすくませていると勢いよく屋上へと続くドアが開いた。

 

思わぬ助け船。そう思い青年はドアの方向へと眼を向ける。

 

「皆で屋上ピクニック、楽しそうね!」

 

其処には何の汚れも知らぬような笑みを浮かべながら、快晴の下、日の光が反射した煌びやかな金髪を少し湿っぽい夏の風に靡かせている少女がいた。

 

「...ゆ...め...」

 

青年の意識が靄が掛かったの様に不明瞭になって行く。

彼の目の前に現れた少女は余りにも似すぎていた。

 

その日の光が反射し眼が痛くなってしまうほど煌びやかなその金髪も。

 

何の汚れも知らない。見ている人を笑顔にさせてしまう様なその幼さを残した顔も。

 

全てがあの少女――ゆめに似ていた。

 

「ゆめ?誰の事かしら?」

 

誰にも聞こえないような声で呟いてしまった青年の一言を少女は聞き取ったのか、笑顔で青年に近づいてくる。

その一歩一歩は軽い足取りだが青年にとっては死へのカウントダウンの様に思えた。

 

少女は何事も無いかのように耳に顔を近づけ呟く。

 

「その名前を知っているって事は先生があの彼なのね」

 

その狂気に満ちたようにも歓喜に満ちたようにも聞こえる甘い声が青年の思考を掻き乱し、支配していく。

 

「ずっと会いたかったわ」

 

その一言は青年の乱れきった意識を彼方へと飛ばすには十分すぎる物だった。

 




はい、次回は未定です。

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