ヨクバリス! ダイエット大作戦!   作:雪化粧

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第十八話『開催! ポケモンコンテスト!』

 グリムシティのコンテスト会場上空に花火が上がる。

 いよいよコンテストがスタートするのだ。

 コンテストにはランクがあり、『ノーマルランク』、『グレートランク』、『ウルトラランク』、『マスターランク』に分かれている。

 更に『かっこよさ』、『うつくしさ』、『かわいさ』、『かしこさ』、『たくましさ』の五つの部門にも分かれていて、コーディネイター達はそれぞれのランクの部門を選択してリボンを狙う。

 そのランクの五つの部門のリボンを手に入れれば上のランクに上がる事が出来る。

 そして、マスターランクのリボンを五つ集めれば、いよいよコーディネイターの最高峰である『グランドフェスティバル』に挑戦出来る。

 グランドフィスティバルの優勝者は『トップコーディネイター』と呼ばれている。

 トップコーディネイターの中には四天王・リリアンや最北のヘンゼルジムのジムリーダー・グレイも名を連ねている。

 

「うっふーん! フェアリーテイルの調査も大切だけど、このコンテストを成功させる事も大切! 未来のトップコーディネイター達の審査、楽しみだわ!」

「……グリム大会はすべてのランクの審査がありますから、少し大変ですけどね」

「いいじゃないの、グレイ! ここに集う者は誰もが美を追求している! 素晴らしいわ! 上を目指す子も、只管に自分のポケモンを伝えたがる子も、これからコーディネイターの世界に入る子も! 誰もが美しいわ!」

 

 リリアンの言葉にグレイはクスリと微笑む。この人程分かりやすい性格の人間もそうはいない。

 決して人を騙さず、そして、騙されない。

 コーディネイターとしても、人間としても、グレイは彼を尊敬していた。

 

「そうですね。みんな、美しい」

「さあ、始まるわよ!」

 

 第十八話『開催! ポケモンコンテスト!』

 

「急いでください、ポケナー仮面様!」

 

 アリスは戻って来たポケナー仮面と観客席へ急いでいた。

 アリスやエリスが出場するノーマルランクはコンテストの最初に行われる。

 更に、エリスとレオンの『かっこよさ』部門はトップバッターだ。

 既に開会式が始まっていて、エリスは既にスタンバイしている。

 

「す、すまない! えっと、Vip席はこっちだな!」

 

 アリスはお嬢様である。それもゼノが経営する企業はルイス地方最大手のハートカンパニー!

 当然ながら、アリスにはVip席が用意されていた。

 二人がVipフロアに辿り着くと、アリスは自分の席の扉を探した。

 Vip席は個室なのだ。

 

「えっと、こっちですわ!」

 

 近くの壁に掲示されていたマップを見て、アリスは急いだ。

 エリスの審査を見逃すわけにはいかない。レオンの審査もとても気になる。

 

「あっ、アリスくん!」

「きゃっ!」

 

 急にポケナー仮面がアリスを持ち上げた。

 曲がり角から人が現れ、あと少しでぶつかるところだったのだ。

 アリスとその人物はぶつからなかった。けれど、その人物の眼前にはポケナー仮面のほとんどパンツ同然の黄色いアンダーが現れ、悲鳴が響き渡った。

 

「きゃぁぁぁぁ!? 変態!!」

「ごはっ!?」

 

 アリスと同い年くらいの少女の鉄拳がポケナー仮面の大切な所を撃ち抜いた!

 急所に当たった! 効果は抜群だ!

 ポケナー仮面はアリスをよろよろと降ろすと、蹲って悶絶し始めた。

 

「ハッ! も、申し訳ありません! つい、咄嗟に! わ、わたくし、なんて所になんて事を!?」

「ポ、ポケナー仮面様!? 大丈夫ですか!?」

「……す、すまない。ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ……」

 

 あまりにも辛そうな姿に鉄拳少女はおろおろと狼狽え、アリスもあわあわと右往左往し始めた。

 それから三分ほど、ポケナー仮面は息も絶え絶えのまま苦痛に耐えた。そして、ようやく痛みが引いてきた。

 

「し、死ぬかと思った……」

「も、申し訳ありません!!」

 

 鉄拳少女は涙目になりながら謝った。

 

「い、いや、大丈夫」

 

 ポケナー仮面はあまり大丈夫ではなかったけれど、なんとか取り繕った。

 

「……って、あれ? もしかして、リデルちゃん!?」

「え? あっ、アリスちゃん!?」

 

 アリスは大きく目を見開いた。

 鉄拳少女の正体はアリスの幼馴染のリデルだったのだ!

 

「キャーン! 嬉しいわ! 会いたいと思っていた所だったの!」

「も、もしかして、アリスちゃんもコンテストに?」

「リデルちゃんも!?」

 

 歓声を上げるアリスに対して、リデルはあまり嬉しくなさそうだとポケナー仮面は思った。

 

「アリスくん。そろそろエリスくんの審査が始まってしまうぞ」

「あっ! そうでしたわ!」

「で、では、わたくしも席に戻りますね」

 

 リデルはそそくさと去って行った。

 

「わたくし、不躾だったでしょうか……」

 

 返事すら待たずに去って行ったリデルを見て、アリスは少しショボンとなった。

 

「そんな事は無いと思うが、人間関係というものは複雑だからな。それより、エリスくんの審査を見に行こうじゃないか」

「……はい」

 

 優しい言葉で誤魔化す事は簡単だった。けれど、ポケナー仮面はリデルがあまり友好的な態度ではなかった事を敢えて否定しなかった。

 十歳になったら旅に出る。それが慣例となっている理由はいくつかある。

 その内の一つが学校では学べない事を学ぶ為だ。

 旅に出会いはつきものだ。それが一期一会となるか、永遠の友情となるか、良からぬ関係となるかはその時々による。

 その経験は子供が大人になる為の大切な宝だ。

 リデルの態度もアリスの成長の糧となる。

 それに、アリスにはエリスという友がいる。クルエラに襲撃された時、彼女はグソクムシャが辿り着くまでアリスを守り通した。

 その後も悪の組織に狙われているアリスと変わらぬ友情を貫いている。

 彼女との友情という代え難い宝がある以上、多少の人間関係における艱難辛苦はむしろ歓迎すべき事だろう。

 

「ほら、もう開会式が終わってしまうよ」

 

 ポケナー仮面はアリスの背中を押してVip席へ入って行った。

 

 ◆

 

『それでは! これより『ノーマルランク』、『かっこよさ部門』の審査を開始致します! 出場者はポケモンを舞台の台座の上に出して下さい!』

 

 いよいよスタートしたコンテスト!

 最初の審査はアクセサリーで飾られたポケモンの素の魅力を競うもの。

 エリスのイーブイは紫のスカーフに紫のブローチ、それにいくつかの宝石を身に着けている。

 眼帯をしているグレッグルやら、王子様風な服を着ているイワンコなど、他の参加者達と比べると少し地味めな印象だ。

 けれど、エリスは絶対的な自信を持っている。イーブイのかっこよさは誰にも負けない。だからこそ、イーブイの魅力を最大限に引き出せるようアクセサリーは敢えて絞ったのだ。

 

「……さすがだ」

 

 出場するコーディネイターが多いため、審査はいくつかの組に分かれている。

 エリスをライバル認定したレオンは彼女の次の組だ。

 後ろから彼女のイーブイの晴れ姿を見て、気合を入れ直している。

 

「出番だ。征くぞ、我が最愛のペンドラーよ!」

「ドラッ!」

 

 レオンのペンドラーは全身にイナズマをイメージしたアクセサリーが飾られている。

 触覚の形を強調したファッションだ。

 レオンもエリス同様にあまり過剰な飾り付けはしていない。

 素のペンドラーこそ最高にかっこいいのだと確信している!

 

『さあ、これで一次審査が終了しました! 二次審査に駒を進めるコーディネイターとポケモンは此方だ!!』

 

 一次審査ではわざわざポイントを発表してはくれない。あとで希望すれば内訳を見せてくれるが、この場では進行が優先される。

 舞台の後方のモニターに二次審査へ進む事を許されたコーディネイターとポケモンの画像が表示されていく。

 ノーマルランクは最も人口が多く、百人以上も参加していたというのに、次へ進む事が出来るのは三十人のみ。二次審査ではそこから更に五人に絞られる。

 狭き門だけど、エリスとレオンはからくも一次審査を突破した!

 

『十分間の休憩時間の後、続いての二次審査が開始されます!』

 

 出場者達が奥へ引っ込んでいき、その間、舞台の後方のモニターには二次へ進んだポケモンの映像が流れ続ける。

 

「ポケナー仮面様! エリス様とレオン様が二次へ進みましたわ! どちらもかっこいいですわ!」

 

 アリスははしゃいでいる。友達とそのライバルの健闘が彼女の暗い気持ちを払拭してくれたようだ。

 

「エリスくんのイーブイならば当然の結果と言えるがね」

 

 ポケナー仮面は言った。

 グソクムシャが倒したガブリアスは決して弱いポケモンではない。

 けれど、エリスのイーブイは臆する事なく戦い、見事にアリスとエリスを守った。

 その『ゆうかん』さは立ち振舞にも現れている。

 

「イーブイは一般的に可愛いポケモンとされている。だが、彼女のイーブイは『かっこよさ部門』でこそ最大の魅力を発揮するタイプだ。リボンはいただきだな!」

「さすがですわ! でも、レオン様のペンドラーちゃんもすごくかっこよくて困っちゃいます! わたくし、どちらにも負けて欲しくありませんわ!」

「たしかに、あのペンドラーもすごくいいな! 遠目から見ても実に美しい。おそらく、とても大切に育てられて来たのだろう。けれど、『かっこよさ部門』よりも『うつくしさ部門』で輝くポケモンだな」

「まあ!」

 

 アリスは目を見開いた。

 実のところ、アリスもイーブイは『かわいさ部門』が最も得意なポケモンだと思っていた。

 だから、レオンは自分の得意な『かっこよさ部門』で挑んで来たのだと思っていた。

 

「レオン様はエリス様とイーブイちゃんの得意な部門で挑んで来たのですね!」

「そのようだな。よほどの自信か、あるいは……。いずれにしても、彼は良いコーディネイターのようだ。エリスくんも素晴らしいライバルを得たな」

 

 友を得る事ばかりが幸福ではない。

 アリスとヨクバリスがシンというライバルを得た事で多くの糧を得られたように、素晴らしいライバルを得られる事は正に値千金だ。

 

『それでは! 二次審査スタートです!!』

 

 二次審査が始まる。審査の内容はダンスだ!

 ノーマルランクは課題となる曲が決められていて、その曲とポケモンに合うダンスを踊らなければならない。

 五体ずつ審査が進められていく。

 

「いくよ、イーブイ! レッツ、ダンシング!」

「ブイ!」

 

 陽気な音楽が流れ始める。

 エリスのイーブイは舞台の上の台座に飛び乗り、フィットネスジムで練習していたダンスを踊り始めた。

 小さな台座の上を軽やかに跳ね回り、その魅力を遺憾なく見せつけている。

 

「キャーン! イーブイちゃん、とっても素敵ですわ!」

「ああ、なんとキレのあるダンスだ! 素晴らしいぞ!」

 

 アリスとポケナー仮面は歓声をあげている。

 彼らだけではない。他の四体と比べてもイーブイのダンスはキレキレだった。

 会場の視線を独り占めだ!

 

「フィニッシュ!」

「ブイ!」

 

 一度大きく跳躍すると、イーブイは音楽の終わりと共に華麗に着地してみせた。

 文句なし! 審査員達はイーブイの三次審査出場を決定した!

 

「見事! 次は我の番だ! 見ているがいい!」

 

 エリスの次の組であるレオンは戻ってくる彼女とすれ違いながら言った。

 

「見てるよ! 最高のダンスを見せてちょうだい!」

「ああ!」

 

 ペンドラーは初めから台座の上に乗って音楽のスタートを待つ。

 巨体であるペンドラーはイーブイと同じ様なダンスは出来ない。

 どんなダンスをするのかアリスとポケナー仮面は固唾を飲んでいる。

 

「レッツ、ダンシング!」

「ドラァ!」

 

 ダンスが始まった!

 舞台の上で体を伸び縮みさせ、時には丸くなり、その場で回り、ダイナミックなダンスを披露する。

 ペンドラーのダンスも会場の視線を独り占めだ!

 

「キャーン! ペンドラーちゃん、とっても素敵ですわ!」

「ああ、なんとダイナミックなダンスだ! 素晴らしいぞ!」

 

 さっきとコメントがほとんど同じだ!

 それほど、イーブイとペンドラーのダンスは甲乙つけがたい。

 審査員達も頷きあってペンドラーの三次審査進出を決定した!

 

『それでは、三次審査へ移ります!』

 

 二次審査で一気に五体に絞られ、最後は一体ずつが演技を見せる事になる。

 ポケモンの技を使い、如何に魅力をアピール出来るか。

 それが最後の審査だ!

 

「イーブイ、スピードスター!」

 

 エリスとイーブイはトップバッターだ!

 イーブイのスピードスターが舞台を輝かせる。

 

「続けてウェザーボール!」

 

 天気によって形を変えるわざ。

 会場は外も内も『晴れ』だ!

 ほのおの球が旋回するスピードスターの中心で破裂した!

 ダイナミックな光景に会場のテンションは高まっていく。

 

「ひみつのちから!」

 

 イーブイの体が輝き、その光はスピードスターとほのおの球を拡散させた!

 それはまるで花火のように美しく、会場のテンションは最高潮だ!

 

「イーブイ! とっておき!」

 

 ひみつのちからの輝きが更に強くなっていく!

 星と炎と光が更に会場全体へ広がっていき、イーブイの技は会場を完全に支配していた。

 

「……すごい」

 

 アリスはイーブイの演技に圧倒されていた。

 

「あ、ああ……。これは見事という他ないな」

 

 ポケナー仮面も感動のあまり言葉を失っている。

 ノーマルランクとは思えない華麗な演技だ。

 

「ウェザーボール、ひみつのちから、とっておき。どれも扱いの難しい技だ。それを完璧に使いこなしている」

 

 これがコーディネイター。

 これがコンテスト。

 アリスの胸は高鳴っていた。

 

『続きまして、レオン選手の審査です!』

 

 エリスの次はレオンの番だ。

 イーブイの演技を超える演技など想像もつかない。

 アリスは固唾を飲んでいる。

 

「ペンドラー! いわなだれ!」

「ドラ!」

 

 ペンドラーのいわなだれ!

 周囲に現れた岩をペンドラーは上空に放った。

 その暴挙に会場からは悲鳴が上がっている。

 

「ミサイルばり!」

 

 その岩をペンドラーはミサイルばりで撃ち落とした。

 破裂する岩塊が降り注ぐ中で、レオンは叫ぶ。

 

「つるぎのまい!」

 

 戦いの舞を踊るペンドラー!

 そのダイナミックな演技に会場はヒートアップしている。

 

「フィニッシュ! メガホーン!」

「ドラァ!!」

 

 最後の最後までダイナミックなペンドラーの演技にアリスは歓声を上げている。

 

「彼も見事だな。だが……」

 

 他のポケモン達の審査も終わる。

 そして、いよいよ結果発表!

 舞台の後方のモニターに五位から順番に名前と画像が表示されていく。

 三位までにエリスとレオンの名前はなかった。

 

「どちらが……」

 

 アリスはハラハラしながら二位の発表を待った。

 そして――――、

 

『一位と二位を発表致します! 二位はレオン選手とペンドラー! そして、栄えあるノーマルランクのかっこよさ部門優勝者はエリス選手とイーブイだ!』


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