ヨクバリス! ダイエット大作戦!   作:雪化粧

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第二十八話『以心伝心! ヨクバリスとギルガルド!』

 シンのバトルを見つめながらアリスは拳を握りしめていた。

 その姿を見て、ポケナー仮面は思う。

 ポケモントレーナーには幾つかの傾向があり、その中でもアリスは間違いなく『戦う者』だ。

 バトルに対する意欲が高く、センスも良い。

 ジム巡りはあくまでもヨクバリスのダイエットの為であり、最終目標はコンテストに出場する事だ。

 けれど、彼女の本能は戦場を求めている節が在る。

 

「ポケナー仮面様?」

 

 もしかしたら、いずれ彼女と戦う日が来るかもしれない。

 

「……次はアリスくんの番だ。がんばりたまえ」

「はい!」

 

 ジムチャレンジに挑むアリスとヨクバリス、ギルガルドをポケナー仮面はカイリキーと共に見守った。

 

 第二十八話『以心伝心! ヨクバリスとギルガルド!』

 

 キャロルジムのジムチャレンジ! それはハンスジムとは全く異なるものだった。

 通されたのは円形の広場で、そこには三つの扉がある。

 トレーナーと二体のポケモンはそれぞれ別の扉を潜らなければならない。

 アリスと離れ離れになる事にヨクバリスとギルガルドは不安そうだ。

 

「ヨクバリスちゃん! ギルガルドちゃん! 離れていても、わたくし達は一緒ですよ!」

「バ、バリス!」

「ギ、ギル!」

 

 励まし合い、断腸の思いでそれぞれの扉を潜る。

 アリスが通されたのは大きなディスプレイの置かれた部屋だ。ディスプレイには地図が表示されていて、ヨクバリスとギルガルドの姿が映し出されている。

 トレーナーはここから指示を出し、二体のポケモンがそれぞれのルートの障害を突破出来るように導かなければならない。

 ポケモン達の方はトレーナーの指示を受けながら障害を乗り越えていくのだが、二つのルートはそれぞれが干渉し合う仕組みになっている。

 ヨクバリスが自分のルートで仕掛けを作動させるとギルガルドの方で仕掛けが動く。逆もまた然り。

 このチャレンジでは一人と二匹の信頼関係が試されるのだ。

 

「行きますよ、ヨクバリスちゃん! ギルガルドちゃん!」

『バリス!』

『ギル!』

 

 アリス達のジムチャレンジが始まった!

 

 ◆

 

 ヨクバリスは部屋に入った直後から密かに燃えていた。

 そこはいつかのアスレチックコースのようになっていたのだ。

 

「バリスゥ」

 

 あの頃のヨクバリスはコースのスタート地点に辿り着く事すら出来なかった。

 見事にコースを走破したカイリキーを褒めるアリスの姿が瞼の裏に焼き付いている。

 あの時の悔しさをバネにして、ヨクバリスは走り始めた。

 

「バリス!」

 

 最初は飛び石渡りだ。

 いきなりの難関だけど、ヨクバリスは果敢に挑もうとした。

 

『待って、ヨクバリスちゃん!』

「バ、バリス!?」

 

 アリスの声に止められて、ヨクバリスは慌てて足を止めた。

 すると、飛び石同士の間に広がっていた隙間が突如埋まってしまった!

 

「バリス?」

 

 首を傾げるヨクバリス。

 すると、不思議な事が起こった!

 

 ―――― ギル!

 

 ヨクバリスの目に別の光景が映り込んだのだ。

 

「バリス?」

 

 ギルガルドの声も聞こえた気がした。

 不思議に思ったけれど、どうしてか温かい気持ちになった。

 

『ヨクバリスちゃん! その先の大岩を動かして!』

「バリス!」

 

 埋まってしまった飛び石エリアを超えて、ヨクバリスは大岩の前に立った。

 かなりの重量だけど、ヨクバリスはゆっくりと押していく。

 

「バリィィィィ!」

 

 大岩の下には大きな穴が空いていた。どうやら滑り台になってどこかへ通じているらしい。

 

『ヨクバリスちゃん、ギルガルドちゃん! その穴を降りて!』

「バリス!」

 

 ―――― ギル!

 

 また、ギルガルドの声が聞こえた。

 

「バリス!」

 

 ヨクバリスはその声に応えながら穴を降りていく。

 

 ◆

 

「ギル!」

 

 ギルガルドは勝手に動き出した(・・・・・・・・)大岩の下の穴を降りていく。

 

 ―――― バリス!

 

 ヨクバリスの声が聞こえる。

 ギルガルドは嬉しそうに暗闇を突き進んでいく。

 暗闇が晴れると、そこは炎のフィールドだった。

 

「ギ、ギル……」

 

 ほのおタイプが苦手なギルガルドは尻込みした。

 

『大丈夫よ、ギルガルドちゃん!』

 

 アリスの声が聞こえてくる。

 

『ヨクバリスちゃん!』

 

 ―――― バリス!

 

 ギルガルドの視界に炎の道が映し出される。

 天井と両側の壁が炎によって満たされている。

 そこを視界の主が進んでいく。

 

 ―――― バリ! バリス! バリスゥゥゥゥ!

 

 難しい事など互いに分かっていない。

 ただ、この道を自分が進めばギルガルドの助けになる気がする。

 そんなヨクバリスの心がギルガルドに伝わってくる。

 

「ギルゥゥゥゥ!!!」

 

 ギルガルドはキングシールドを発動した!

 

『ギルガルドちゃん!?』

 

 ヨクバリスがゴールすれば、ギルガルドの道も開かれる。

 その事はギルガルドもなんとなく気づいている。

 それでも、ギルガルドは炎の道を突き進む。

 キングシールドによってダメージはない。けれど、はがねタイプのギルガルドにとって炎は脅威であり恐怖だ。

 それでも、ヨクバリスの道を作りたくて、ギルガルドは炎の道を走破した!

 

「ギル!」

 

 ―――― バリス!?

 

「ギル! ガルド!」

『ギルガルドちゃん……。よーし、あとちょっとよ! がんばって、二人共!」

「ギル!」

 

 ―――― バリス!

 

 ◆

 

 ゴールは近い。ギルガルドとヨクバリスは次々に仕掛けを攻略していく。

 アリスには分かっていた。

 ヨクバリスとギルガルドが互いの助けになりたくて自分のルートの攻略を頑張っているのだと!

 

「凄いわ! 凄い! ヨクバリスちゃん! ギルガルドちゃん!」

 

 その声をマイクは拾っていない。それでも二匹のポケモンには不思議と伝わっていた。

 

『ギルゥゥゥゥ!』

『バリスゥゥゥ!』

 

 いよいよ最終ステージだ。

 真っ直ぐな道を二匹のポケモンが駆けていく。そして、アリスの前の画面が天井に吸い込まれていき、目の前に扉が現れた。

 アリスが扉を潜ると右からヨクバリスが、左からギルガルドがやって来た。

 

「ヨクバリスちゃん! ギルガルドちゃん!」

「バリスゥゥゥ!」

「ギルゥゥゥゥ!」

 

 二匹に抱きつかれながら、アリスは『チャレンジャー・アリス! ジムチャレンジ成功! 目の前の扉を通って、ジムリーダーが待つバトルフィールドへ移動して下さい!』という音声を聞いた。

 

「ヨクバリスちゃん」

 

 アリスはヨクバリスのほっぺたを撫でる。

 

「ギルガルドちゃん」

 

 ギルガルドの鍔の部分を撫でる。

 

「よく頑張ったわね! 凄いわ!」

「バリス!」

「ギル!」

 

 ドヤ顔を浮かべるヨクバリスとギルガルド。

 二匹を再び強く抱きしめると、アリスは立ち上がった。

 

「行きましょう!」

「バリス!」

「ギル!」

 

 一人と二匹は扉を潜っていく。

 周囲にはグツグツと煮えたぎるマグマが流れ、採掘場のような雰囲気のバトルフィールドが広がっている。

 

「良くぞ参られた、チャレンジャー!」

「ジムチャレンジ攻略、見事也!」

 

 赤い髪の男女がバトルフィールドの向こう側に立っていた。

 男性の方はガイ。

 女性の方はフォークス。

 二人で一人のジムリーダーだ!

 

「我らは心を試す!」

「さあ、君の力を見せてくれ!」

 

 ハイパーボールを構えるガイとフォークス。

 

「はい! よろしくお願い致します!」

 

 アリスが応えると共にヨクバリスとギルガルドがフィールドに入っていく。

 

「いくぞ、ドサイドン!」

「いでよ、ゴウカザル!」

 

 ガイはドサイドンを、フォークスはゴウカザルを繰り出した。

 いよいよ、アリスにとって二度目のジムバトルが始まる!


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