ヨクバリス! ダイエット大作戦!   作:雪化粧

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第三話『アリス、決意の時!』

 ダイエットグッズ! 

 それは多岐に渡る。人間用とポケモン用も合わせれば、それこそ星の数ほど存在している。

 ルイス地方最大のカンパニーの社長であるゼノはヨクバリスのダイエットの為に専用のダイエットルームを用意した。そこには所狭しとダイエット器具が設置されている。

 

「リババババババババババババ」

 

 カイリキーによって運び込まれたヨクバリス、早速ダイエット器具の一つである振動マシーンに乗せられてブルブルしている。

 タプタプと震える脂肪分。

 

「キャーン! ブルブルしているヨクバリスちゃんも可愛い!」

「リキリッキー!」

 

 自分で動く必要のないダイエット器具。これなら大丈夫だろうとカイリキーは安心しきっている。

 そして!

 

「バリスゥ……」

 

 ヨクバリスは目を回してしまった。どうやらブルブルに酔ってしまったようだ。

 

「イヤァァァァ、ヨクバリスちゃん!」

「リッキー!?」

 

 今日もまた、ウッソだろお前! と目を見開くカイリキーだった。

 

 第三話『アリス、決意の時!』

 

「ヨクバリスちゃん……」

「バリスゥ……」

 

 ヨクバリスは木の実を要求している。

 アリスはすぐにでも木の実の部屋からオボンの実を持って来てあげたかった。だけど、今のヨクバリスにはシェフのオリマーが考案したダイエットメニュー以外食べさせてはいけないと主治医のアルフからきつく言われている。

 

「……わたくし、ヨクバリスちゃんに木の実をあげたい!」

「バリス!」

 

 アリスの言葉にヨクバリスは喜色を浮かべる。

 

「だから、ヨクバリスちゃん!」

「バリス!」

 

 はやく木の実をくれと両手をアリスに向けるヨクバリス。

 その手をアリスは握りしめた。

 

「ヨクバリスちゃん、ダイエットよ!」

「バリス!?」

 

 木の実をくれるのだと期待していたヨクバリス、予想外の言葉に大混乱。

 

「このままだと、ヨクバリスちゃんに一生大好きな木の実をあげられない! そんなのイヤ!」

 

 ヨクバリスの手を離し、拳を固く握りしめる。

 いつもはおっとり気味な性格のアリス、愛するヨクバリスの為ならば熱血にだって目覚めてみせる!

 

「ヨクバリスちゃんだけに辛い思いはさせないわ!」

「バリス……」

 

 瞳をメラメラと燃やしながら決意を固めるアリスにヨクバリスは嫌な予感しかしなかった。

 

 ◆

 

「わたくし、旅に出ます!」

 

 夕食の席でアリスは宣言した。

 一瞬、場が静まり返った。そして、一気に爆発した。

 

「ど、どど、どういう事だい!?」

「お、お、お、お嬢様ぁ!?」

「おち、おち、落ち着いてください、お嬢様!」

「ちょちょ、ちょっ、待って下さいよ!」

 

 父のゼノ、メイドのメイメイ、執事のフランツ、シェフのオリマー、揃って大混乱である。

 

「十歳になれば大人の仲間入り! ポケモントレーナーとして旅に出る! それが世間様では当たり前と聞きます!」

「いやいやいやいや! 確かにポケモントレーナーとして旅に出る子もいるが、全員が全員じゃないぞ!」

「そ、そうですよ! 私だってメイドになるまで家から出た事なんて殆どありませんでしたよ!?」

「それはそれでどうかと思うが、旅は過酷なものです!」

「そもそも、どうしていきなり旅に出るなんて言い出したんです?」

「よくぞ聞いてくれました、オリマー! お父様達、一旦お口チャックです!」

 

 素直にお口チャックする一同を見回すと、アリスは言った。

 

「ヨクバリスちゃんのダイエットの為にわたくしも自分を追い込まなければならないのです!」

「いやいや、どういう事だ!?」

「お口チャック! まだ、話は終わってません!」

 

 アリスに怒られてシュンとなるゼノ。

 

「わたくし、お父様やメイメイ達のおかげで何不自由なく生きて来ました。そんなわたくしがヨクバリスちゃんに我慢を強いる資格なんてありません! フランツ、旅は過酷と言いましたね?」

「は、はい……」

「だからこそ、わたくしは旅に出るのです! もちろん、辛く苦しい道のりになる事でしょう。お父様達が居なければ、わたくしなんて非力な子供でしかありませんから……」

「お、お嬢様……」

 

 そんな事はありません! そうメイメイは叫びたかった。

 けれど、叫んでしまったらそれこそ止める理由を失ってしまう。

 

「『若い時の苦労は買ってでもせよ』という諺があります。ヨクバリスちゃんのダイエットを成功させる為にも、わたくしは艱難辛苦が必要なのです! ですから、お父様!」

 

 ゼノは泣いた。

 この世界では十歳で成人扱いとなる。まさに大人の仲間入りだ。けれど、実際に十歳で大人になれる者など殆どいない。

 だと言うのに、愛するヨクバリスの為に苦難を背負いたいと願う娘は初老に差し掛かる自分よりもずっと大人に見えた。それが誇らしくもあり、嬉しくもあり、同時に寂しくもあった。

 

「し、しかし、お嬢様! さすがに一人旅など認められません!」

 

 フランツが悲鳴のような声で言った。

 メイメイやオリマーもうんうんと頷いている。

 この屋敷の人間でアリスを大切に思わない人間などいない。この場にいない主治医のアルフや庭師のオリバもここにいたらメイメイやオリマーに倣っていた事だろう。

 

「分かっています! ですが、家の者と同行しては甘えてしまいます! だから、お父様!」

 

 アリスは一冊の本を取り出した。『ポケケツの全て!』というタイトルのポケモンのお尻の写真を集めた本だ。

 ワンパチのふっくらしたお尻の写真が表紙にデカデカと掲載されている。

 作者の名前は『ポケナー仮面』!

 

「ヨクバリスちゃんのダイエットを記録する為にも、このポケナー仮面様を雇って下さい! 彼に同行して頂きます!」


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