狼王の野望   作:のろま亀

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第六話です。少し投稿間隔が空いてしまって数少ない見ていただいてる方に対して失礼ですね。これからも精進しますのでどうかロボと有栖の物語を楽しめてもらえるなら作者としても幸いですら。では第六話お楽しみください。


第六話 夢から目覚めたら

また、なにかを失す。有栖はそんな恐怖感で支配されていた。もういっそなにかを失すぐらいなら、逝ったほうがマシ、そんな思いにすらなっていた。有栖はまたあの死神と出会った。

 

「汝、死した者か?」

 

「またなの?私にはもう生きている意味なんて・・・」

 

今回も有栖の返答に大した興味がないようで次の質問が飛んできた。

 

「汝に大切な者はいるか?」

 

「汝が一生傍にいたいと想う者はいるか?

 

有栖はハッとしたような顔をして、死神をじっと見て、その瞬間虚ろな目に生気が戻った、そして言った。

 

「夢でも別にいい、でも私の大切な人は変わらない。」

 

「・・・・・・」

 

死神は黙って聞いていた。

 

「私の大切な人はロボだけ!夢でもいいからロボの傍にいたい!」

 

「なぜもっと早くに言わない。それが汝の生きる意味なのだろう?」

 

今まで私の返答に興味ないようだったのに。有栖は思った。すべてが見透かされていたのだ。そこには例外などはなく。

 

「汝はもう我々と話すのも三回目だ。できれば次はないことを、お互いに祈りたい。」

 

「それってどういう・・・」

 

有栖は困惑し、どういう事か聞こうとしたが、前回のように霧に包まれてその会話は終わった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「有栖は起きるのか?倒れてからから寝たきりだが?」

 

「処置をしましたので、恐らくは・・・」

 

声が聞こえる。なぜか落ち着く彼の声が。また夢を見ているのかな。夢でもいい、この夢では自分がある。自分を捨てなくていい。

 

「そこにいるのはだれ?ロボ?」

 

有栖は少々弱いが確実に回復したであろう声で聞いた。その声を聞いた瞬間、彼は有栖に顔を向けた。

 

「起きたのか。そうか。」

 

彼の反応は淡々としていた。だが明らかに安心したようだった。有栖はまだ目の前の事が信じられない様子にいた。

 

「お前は席を外せ。」

 

彼は医者を見て言った。医者が退室したため部屋は有栖とロボの二人だけになった。彼は有栖の寝ているベッドに腰を下ろし、有栖を見つめた。有栖はどこを見つめているかわからない視線で聞いた。

 

「これは現実?私はまだ夢を見ているの?」

 

有栖は虚ろな声だった。彼はそんな有栖を見て一瞬顔を曇らせたがすぐに尋ねた。

 

「なにを言っている?夢とはどういうことだ?」

 

「今見ている光景は夢で、いつか目覚める。私はそれが怖い・・・」

 

彼は一瞬で悟った。有栖が一体どのようなものを見たのか。

(寝ている間はうなされているようだったが、それほどまでに有栖にとって恐ろしいものを見たということなのか・・・)

ロボは胸がつまる思いだった。そして言った。

 

「有栖、これは夢ではない。現実だ。怖がる必要などない。」

 

有栖は涙を流していた。彼の前では会ってから一度も流していなかった涙を。そして嗚咽で上手く言葉にはならないが言った。

 

「本当に夢じゃないの?本当にロボの傍に・・・」

 

 

それ以上は言葉になっていたかったが、有栖の言いたい事はわかった。有栖はただ泣いて、そんな有栖をロボは不器用ながらも優しく抱き締めていた。有栖はしばらくして泣き止むと、ぽつりぽつりとなにかを言い始めた。

 

「私、もとの生活に戻る夢を見たの。」

 

それは、これまで自分の事を語る時に独り言のようだった語りとは違い、本当に誰かと話している語りだった。

 

「でね、お母さんの声がしたの。それで私は現実に戻ったと思った。それまで見ていたロボとの思い出は夢だったんだって。」

 

有栖の言葉に彼は静かに耳を傾けていた。

 

「私にはそれがとても怖いことに思った。だってあそこに戻ってもだれもが私を避けて、私から離れていくから・・・」

 

「ご母堂はどうだったのだ?有栖を理解してくれてたのか?」

 

ロボは静かに聞くつもりだったが、思わず聞いてしまった。自身が想像した以上に、いや、まったくもって想像できなかった、過去を聞いていくと不憫に思わずにはいられなかった。

 

「お母さんは最初は理解しようとしてくれたけど、結局考えるのをやめた。」

 

「それでは、あまりにも・・・」

 

私も母に理解してもらえず、時が経つと母は離れていった。私はそれでいいと思った。だが、有栖は違う。なぜ理解されない?彼はまたも胸がつまる思いに襲われた。

 

「私って、人が発した発言を聞くと、その人がその時に思っていることがわかるんだ。」

 

有栖はゆっくりとしつつもしかっりと言葉を紡いでいった。

 

「小さい頃の私にはそれがとっても辛かった。」

 

 

突然の事で驚いたが、彼は動揺することなく静かに聞いていた。そんな姿を見た有栖は不安が混ざった表情で言った

 

「変だよね私。もしかしたら私の妄想かもしれないのに。それでも本当の事って、思ってくれる?」

 

「私としては真だと思う。有栖が現状で嘘を言う必要などないのだから。」

 

「それに、有栖が私に対して言っていた事は真だったしな。」

 

それを聞くと有栖は安心したように言った

 

「信じてくれるの?やっぱり優しいねロボは。」

 

有栖は続けて言った。

 

「私は最初、お母さんだけが信じてくれてるって思ってたけど。ある夜の事だったの。私が何気なくお母さんと話をしに行こうとしたら、そこではお母さんがのお父さんと話していたの。」

 

「・・・・・・」

 

「で、私のことでお母さんが悩んでた。あの子は一体どうなってしまったのって。あの子がわからないって。私、それを見てわかった気がした。」

 

「私を理解してくれる人はだれもいないって。お母さんでも、ましてやお父さんでも例外なく。」

 

「・・・・・・」

 

彼は言葉を詰まらせた。あんなに元気に振る舞っていた有栖がこんなに辛い事を背負ってた事に。

 

「もういいの。私はまたロボの傍に戻ってこれた事だけで嬉しいから。」

 

ロボはそんな静かな佇まいで優しく微笑む彼女に口にはできない神々しさを感じた。

(私はなにを考えていたのだ?有栖に哀れみや慰めの言葉をかけてなにになる?私はただ離れるのを恐れていたのか・・・)

 

「ごめんね!私の事で。ロボは仕事に戻っていいよ、みんなが困っちゃうでしょ?私は自力で部屋に戻るから。」

 

有栖は話を切り替えるために精一杯の笑顔で微笑んでいた。

 

「起きたばかりなのに自力で戻るのか?それにもう仕事は終わっているぞ?外を見てみろ夕暮れだ。」

 

そんな有栖を見て彼も静かに微笑んで言った。

 

「それにだ、お前がまた今までと同じように過ごすとまた倒れるだけだぞ?」

 

彼は微笑みながらも普段と同じように有栖に聞いた。それを聞いて有栖は困惑した。そんな困惑した有栖を見て彼はどこか嬉しそうな声で言った。

 

「これを常に身に付ければ、もう倒れる心配などない。」

 

彼が差し出したのは、紅色に染められた1mほどの紐だった。有栖は首を傾げて尋ねた。

 

「え?これなに?どうして倒れなくなるの?」

 

「これはRealという特殊な液体に浸した紐で、常に身に付けていれば人間の体に悪い魔力を浄化して、魔力の耐性を付けてくれるのだ。」

 

有栖はその紐の説明を聞いて不意に嬉しくなった。それはいきなり込み上げてきて言葉に出来なかった。

 

「大丈夫か?色が気に入らなかったなら、色を変えるが。」

 

「ううん、すごく気に入ったよ!私、すごく嬉しいよ。ロボが私のために用意してくれたんだから。」

 

「そうか。」

 

彼は素っ気なかった。だが、その声に宿っていたものは有栖を心から思ったものだった。

 

「ところで顔が赤くなっているが大丈夫か?まだどこか悪いのか?」

 

「え?また?!なんで!?」

 

「どこか悪いなら医者を呼ぶが・・・」

 

「どこもわるくないから大丈夫だよ!」

 

(なんでまた顔が赤くなっているの!?うぅぅ、なんで・・・)

有栖は感情がほとんどといっていいほどない現代の時とは打って代わり顔を赤くしている事に対し若干取り乱しながらも答えた。彼は多少心配だったが有栖が言うのでそれ以上は聞かなかった。

 

「さて、そろそろ戻るか。有栖はどうする?あと少しこの部屋で横になっているか?」

 

彼はそう言って有栖に聞いた。

 

「え?どうしよう。」

 

「まだ横になるというなら無理には連れていかないが・・・」

 

有栖はそこで思い出した。あの死神の問いに対して自分が言った言葉を。彼らがそれを聞いた真意を。

 

「私も部屋に戻る!」

 

彼はそれを聞くとすぐに立ち上がって有栖をお姫様抱っこで持ち上げた。不意打ちとも言える彼の行動に有栖はまた顔を赤くて言った。

 

「いきなりどうしたの!?」

 

「どうしたはなんだ?部屋に連れていくだけだが。」

 

「そいうことじゃなくて・・・」

 

有栖はその問いに対して口ごもってそれ以上は言えなかった。そんな姿を見て彼はやっと日常が戻ったような気持ちになった。たった数日の出来事がまるで日常だったように思えた。彼自身にはよくわらなかった。だが確信していた事はあった。自分が有栖を失えばその時こそ自分は何者でもなくなる事を。

 

「では行くか。」

 

「わ、わかった。」

 

ロボはそう言うとゆっくりと歩んでいた。有栖はたどたどしく返事をしてその言葉に頷いていた。二人にとってはもう日常なのだ。やっと戻った日常だった。


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