植物図鑑という不完全チートスキルを手に入れたのでこの腐った世界を変えたい   作:ヨーグルト先生

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05 能力を使うのは容易ではない

「はぁ・・・ぁ・・・辛いよ・・・!菜乃花ちゃん!雪哉!!」

 

「頑張りなさい!」

 

「お前そんなに体力なかったけ?」

 

 体力をつけるべく、今は走り込みをしている。正直辛い。僕は部活に入っていなければ運動ができる訳でもない。まず、基礎訓練は体力をつける所から始まった。

 

「はい、あと3週!」

 

「ひえ〜・・・辛い」

 

 王に目をつけられている為派手な行動はできないため基礎訓練は洞窟の近くの森林地帯で行っている。

 

「そう言えばさ、蛍夏スキル使ってみたか?」

 

「いや、使ってないよ。だって一つ一つのスキルが対人スキルとかだし・・・」

 

 見慣れた図鑑の全てのページをめくりめくってスキルを全て確認をしたがその大体が対人用のスキルだった。

 

「俺に使ってみろよ」

 

「え?」

 

「本当に何を言っているの?死ぬわよ?」

 

「はぁ?俺のスキルを舐めんなよ?」

 

「じゃあ、蛍夏!模擬戦しようぜ!」

 

?いやいや、本当に何を言っているの!?

 

「先手必勝!!」

 

 と言った雪哉は指をパチンと鳴らし時を止める。僕は何も出来ずその場にとどまる。時間は止められるが自分の意識はしっかりあるようだ。

 

 雪哉が近ずいてくるのが分かる。

ゆっくり、ゆっくりと僕に近ずいてくる。

 

「はい、俺の勝ち」

 

 ポコ!

 鈍い音が僕の頭で鳴る。

 雪哉の持っていた木の棒は僕の頭に当たり、その瞬間能力が解かれる。

 

「そんなん卑怯だよ、雪哉のスキル・・・。勝てる人とかいるの?」

 

「いや、いや居ないな」

 

僕が聞くのが早かっただろか返答の方が早かっただろうか。

 

「蛍夏はスキルをまだ理解しきれてないからね、負けちゃうのは当たり前よ」

 

 僕を慰めてくれる奈乃香ちゃん。スキルを使うも何もこんなスキル使えば雪哉しんじゃうよ。

 優しいスキルなんてそこにはなにもなかったからだ。

 

「ありがとう、一刻も早くスキルを使えるようにするよ」

 

「そうね、一緒にがんばろ!魔王退治なんてすぐだよ」

 

「確かにね」

 

 今日を一日目とカウントすると明後日には魔王を倒すと言うのだ。

 僕はなぜか不安や恐いと思う事はなかった、僕達ならやれると思っているのだ。

 

 

「はぁーーーづかれだぁぁ・・・」

 

「だらしない声ね」

 

「そりゃあ、あんな距離走らされれば誰だって疲れるよ、逆に2人はなんでそんなに元気なの?」

 

 

僕達は拠点としている洞窟へと戻っきた。この洞窟は中の方に空洞があり、僕達はそこで生活をしている。体温もいいため、今は最前の手だろう。見つかるのも時間の問題だとは思うが明日、今日見つからなければいい・・・。

 

「そりゃ、俺達バリバリ運動部だからな」

 

「そうね。蛍夏は逆に運動しなすぎよ」

 

「う・・・確かにそうだけどさ・・・」

 

 返す言葉も見つからず言われるがまま。こんな事になるなら少しでも運動しておけばよかった。

 

「あなた達午後はモンスターを狩りに行くわよ」

 

「モンスター?」

 

 モンスターという言葉に反応する。

 僕の思っているモンスターとは、なんかこうガオー!みたいな感じなんだよね。そんなのと戦うのかな?

 

「モンスターか!そりゃぁいいな。やりがいあるってもんだ!」

 

「戦うの?」

 

 僕は一応問いかける。なんでそんなにもウキウキで居られるのだろうか雪哉はすごいなと関心してしまう。

 

「そうね。実践訓練をつんで置かないと、別に対人でもいいと思うけど私達のスキルって人に向けると殺してしまう可能性があるわ、だからモンスターで実践を組もうと思うの?どうかしら?」

 

「俺は賛成だぜ!異世界のモンスターって奴に会えるのは勿論、スキルをそいつに向かってぶつけられるんだからな!!」

 

「わかったわ。蛍夏は?」

 

 僕はどうしようか?モンスターと戦う事は別に問題ではないと思う、だけれどもスキルの使用が上手くいかなくて2人に迷惑をかけてしまったら…。

 

「僕は・・・」

 

「別に無理しなくていいぞ、恐いなら恐いでさ」

 

 僕を煽るかのように雪哉は僕にそう言ってくる。もしかしたら僕に自信をつけてくれたのかもしれないけど僕は、その挑発に乗るかのように。

 

「やるさ!僕だってやる時はやるんだからね!!」

 

「そうそう、その意気だよ」

 

 

 僕達は、洞窟から数キロ離れた平原へと来ていた。周りにはカラフルな液体状の個体のなんかがいる。んー、スライムって奴なのだろうか?

 

「あれ、は?」

 

「ああ、あれは王道のモンスターって言ってもいいモンスター『スライム』だよ。戦闘力自体は強くないけど油断しているとけがくらはするダメージは与えてくるからね?油断はしちゃダメだよ?」

 

「う、うん」

 

 異世界に来て初めて見たけれど、実際モンスターを見てみるとあまり怖くないものなんだな・・・。最初に出会ったのがスライムだからだろうか?

 

「じゃあ!早速おっぱじめるとすっか!」

 

 雪哉はそう言うと「あっ」と何かを思い出したかのように僕に問いかけてくる。

 

「お前さなんか武器を出せるスキルとかある?」

 

 僕はスキルの宝庫じゃないぞ!って言ってやりたいけど実際はそうだから言ってやれない。僕は、そんな気持ちを忘れ植物図鑑から探し出す。

 

「ないねー、作成、製造スキルは無いみたい。」

 

「んだよ、使えねーな」

 

「し、仕方ないじゃないか!」

 

「はいはい」

 

 雪哉は手をこっちに振りながら、スライムの元へと歩いていく。何か方法でもあるのだろうか?すると、次はこう聞いてきた。

 

「じゃあさ、時間が止まっている間、お前が動けそうなスキルってある?」

 

「そんなスキルあるかな・・・?」

 

 僕は再び植物図鑑をめくり、めくって探してみる。そうすると、ひとつの花が見つかった。

 

「ヤナギラン・・・。スキル、『フリーダム』・・・スキル詳細はどんな状態であろうとどんな所でも使用できるスキル・・・。らしいよ?」

 

「ふーん、じゃあ試しに使ってみろよ、お前がスキルを発動させてたら俺も発動させるからよ」

 

「分かった」

 

僕は、言われるがままにスキルを発動させようとする。頭の中でスキル発動しろ、発動しろと唱えているが発動はしない。何故だろうか?

 

「発動・・・しないんだけど」

 

僕は、恐る恐る小さな声で言ってしまう。

 

「そうか、そうだな・・・。コツは頭の中で想像するんだ。俺だったら全ての時が止まるようなな」

 

雪哉は以外にも優しくコツを教えたくれた。

失望させちゃダメだ・・・。そんな気持ちでいっぱいだった。

 

「分かったよ、やってみるよ」

 

 僕は、自由を連想させてるイメージをさせる。思いついたのは、僕がこの世界で1人だけだと言うイメージ。なんて悲しく、なんて虚しいのだろうか。

 

すると、本が光だす。

 

「お、おお!!」

 

 途端僕の体が青い光に包まれる。

暖かくて優しい感じで心がポカポカする。

 

「これが・・・スキル?」

 

「そうみたいだな、それがお前の最初のスキルみたいだな」

 

 凄いけど実感がわかない。

すると、雪哉が…。

 

「じゃあ使うぜ」

 

 パチンと指を鳴らす。

真っ暗な視界に包まれる。雪哉は勿論、僕も前とは違く自由に動けるようになっていた。

これが、スキルの効果なのだろうか?

 

「う、動けるよ!?」

 

「そうだろ?そういや、ほら霧崎は無防備だぜ?」

 

ニヤリと嫌な微笑みを浮かべながら僕に言ってくる。何を言っているんだ! 僕がそんな事をするわけ・・・。と言いつつも目で追ってしまう。いけない、いけない、今は雪哉の戯言に付き合ってる場合じゃなくて集中しないとな。

 

「いいよ・・・。そう言うのは・・・」

 

「なんだよ、つれねぇーな、じゃあ。俺一人でも」

 

「もぉ!!からかわないでって! 早くスライム倒そうって」

 

「はははっ!冗談だって!俺が霧崎に興味があると思ったか? あるわけないだろ?」

 

本人が聞いていたら雪哉消されてただろうな。

 

「まー、いいや。夏蛍お前その状態でもう1つスキル使えるか?」

 

「もう1つ?うん、やってみるけどなんのスキル使うの?」

 

「なんか敵倒すやつで!」

 

なんか敵を倒すやつってどうすればいいんだ。それに、もう1つって使えるかな?

僕は、植物図鑑を開いて今使えそうなスキルを見つけ出す。うーん。これで、いいかな?

僕が選んだスキル・・・それは。

 

「ひまわり…」

 

「ひまわりだぁ!!?」

 

「うん、スキル名は業火(しゃくねつ)、敵を必ず燃やし殺す…だって」

 

「なんじゃそりゃ…?」

 

「分からないけど・・・?とりあえず敵を燃やすスキルとかじゃないかな?使えばわかると思うけど」

 

僕は、本を片手にスキル名、花の名前を言う。

 

「『向日葵』」

 

 すると一体のスライムに異変が起きる。

いきなり体内から湧くように火が溢れ出しスライムが火で包み込まれていく。

ボォォォッッ!とよく燃えたスライムは火が消えると同時に炭となって自然の一部となっていった。

 

「わぁ・・・ぁぁ・・・」

 

「おお!すげーな!向日葵ってスキルも凄いけど、何より凄いのは複数のスキルを同時に使えるだな!!」

 

「そうだね、この調子でどんどん倒していこうよ!」

 

「そうだな」

 

 僕達は目の前にいるスライムを葬り去る。

最初は、恐かったスライムだが、倒している途中に慣れてしまったようだ。

なれと言うのは恐いものだ。

 

「ふぅー。あらかた倒したな」

 

「そうだね、無抵抗の敵に一方的にスキルを使うと言うのはあまり気が進まないけども…」

 

「ん、ああ、そうだな。今回はお前のスキル実験みたいなものだったからな」

 

「色んな、スキルがあるから、焦らず一つずつ覚える事にするよ」

 

「賢明だな」

 

 草原からは大体スライムが居なくなったところで雪哉はスキルを解除する。

止まっていた時間は動き出した。

 

「ちょっと!いきなり時間を止めないでくれる!?」

 

「おう、悪ぃな」

 

雪哉は笑いならがら謝る。それは、謝るとは言わないか。菜乃花ちゃんのスキルでは自由をどうこうというスキルでは無いからね。

 

「まぁ、落ち着いて」

 

「ん〜、仕方ない……」

 

雪哉の胸ぐらを掴んでいた手を話し、腕を組み僕のほうへと向く。

 

「さて、スキルを使えるようになったらしいわね」

 

「うん、まだ使ったことの無いスキルもあるけどね、それはのちのち使ってみようと思うよ」

 

「そうね、その方がいいわ。でも、実戦でぶっつけ本番で使うのはよした方がいいわね。貴方の能力は何が起きるか分からないから」

 

うん、確かにそうだ。

もしかしたら、2人に迷惑をかけてしまうかもしれないから本番でのスキル使用はやめとこ。

 

「うん、そうするよ」

 

そして、明日は等々魔王退治。

今思った事がある。

 

 

……明日魔王と、戦うというのに基礎訓練必要だったのだろうか?……と。

 


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