今回はオリファミリアが登場します。あと米に関するオリ設定マシマシです。ガバもな。
それではどうぞ。
「しっかし、変な奴だニャあ……」
クロエは目の前でモグモグと口を動かす幼女を見つめ、そんな感想を漏らした。
あのカオスな光景からしばらくして。クロエの予想通り、厨房からのっそりと姿を現したミアからこってりと絞られたリューは落ち込んだ様子ながらも接客に戻っていた。
それでも時々チラリとパエリアを食べるリリアを確認しているため未だに振りきれた様子は見えない。まあ当然だろう。
いくらリリアが米に関すること以外は基本的に気にしない米キチであるとはいえ、王族に対して不敬極まりない態度をとってしまったことに変わりはないのだ。むしろ気にする様子もなく「……えっと、私は大丈夫ですので」とだけ言ってからパエリアを食べ始めたリリアが異常なのだ。
小さな顔に見合った小さな口を開けてパエリアをパクつくリリア。その動作は流石王族と言ったところか。スプーンの扱いから水を飲む動作まで全てが絵になり、気品に満ち溢れていた。
リリア自身も久しぶりの米料理と言うことで厳かに食べていることで、より一層気品のある食事風景となっていた。パエリアを厳かに食べるというギャグかと言いたくなるような状況ではあったが、リリアの外見とその身に纏う真剣なオーラがその手のからかいをするのを躊躇わせていた。
こうして勘違いは加速していくのだ。罪な馬鹿娘である。
(これが、この世界でのパエリア……うん、おいしい。味が少し濃い目な気がするけど、地域の特色ということなら気にならない程度だし)
リリアはそんなことを考えながら黙々とパエリアを食べ進めていく。子供用に量が少し減らされているとはいえ、冒険者向けの店ということもあって基本的にこの店の料理はボリューム満点なのだが、リリアは久しぶりの米ということもあって構うことなく食べ進めていく。
そして。
「……ごちそうさまでした」
リリアは遂にパエリアを完食した。ぱち、と手を合わせ、食後の祈りを捧げる。
海が近いのか、それとも海産物をどこからか輸入しているのか。通常よりも大きめの海老がパエリアを彩っており、プリプリとした食感と旨味の染み込んだ芳醇な香りが共にリリアを楽しませる。
主役の米も、上に乗った蓋代わりの具材から託された旨味をしっかりと吸い上げて米本来の甘味と見事な調和を醸し出している。パプリカと思わしき黄色い野菜などの他の具材も、その少しの苦みや酸味で米と海老だけでは単調になりがちな食感にアクセントを加え、量が多いことを感じさせない飽きの来ない仕上がりとなっていた。
総じて言えば、三ツ星である。
リリアは満足げに微笑み、食後の水を飲みながらこの店のパエリアにそう評価を下していた。
かなりの上から目線である。
「美味しかったです」
「ん、それはよかったニャ。ミア母ちゃんのご飯はオラリオ1だニャ」
そして、傍らにいたクロエにそれを告げる。クロエもまんざらではない様子で、そう言ってパエジェーラを下げる。そしてリリアのもとへ戻ってくると、手のひらをリリアに差し出して言った。
「さ、金を払うニャ。合計550ヴァリスニャ」
さて、どう出る?クロエは差し出した手のひらを見つめるリリアの顔を注視しながらそう心の中で呟いた。
ここで金を払うのを渋るようであれば、このガキは冷やかしよりも悪質な無銭飲食をしたのであり、ミアからのキツい折檻の後に働いて飲み食いした代金を返すことになる。
ちょうど今厨房で皿洗いをしている冒険者のように。たとえ彼女が暴れて抵抗したとしても、この店の店員は殆どがランクアップ済みの元冒険者である。速攻で取り押さえられ、折檻の度合いが酷くなるだけだ。
いや、まじで死ぬ目に遭うから暴れるとか蛮勇の極みだニャ。
クロエはかつて一度だけ見たことがあるミアの本気の折檻の様子を思い出してぶるりと震えた。
あの冒険者、ホントに生きてるかニャ。そう考えてしまうほどの折檻……いや、暴力であった。
「はい、どうぞ。……あの、金額合ってますか?」
「ん、ああ。ぴったりだニャ。安心するニャ。おみゃーは折檻を免れたニャ」
「はい?」
ジャラ、と重たそうな音をならす袋からヴァリス金貨を取り出すリリア。駆け出し冒険者の一日の稼ぎ、その約半分ほどの値段を躊躇うことなく支払える辺り、王族らしく金は持っているらしい。
ピン、と受け取ったヴァリス金貨をエプロンのポケットにしまうと、クロエはこちらを心なしかキラキラとした目で見つめるリリアに気がついた。何かまだ用があるのだろうか、と首をかしげるクロエに、リリアはワクワクした表情でクロエに問いかける。
「あの、質問があるんですけど」
「ん?なんニャ?シルのスリーサイズなら本人に聞いた方が早いニャ」
「……クロエ?」
「じょ、冗談に決まってるニャ!?だからその振り上げたお盆を下ろすのニャ、シル!?」
「この店の食材をどこで仕入れているのか、教えてもらってもいいですか?」
わたわたと怖い笑みを浮かべるシルに弁解するクロエの様子などお構いなしに告げられた米キチからの質問に、クロエとシルは顔を見合せ、そしてリリアの方を見た。
「……それを聞いてどうするのニャ?まさかおみゃーが飲食店やる訳じゃなさそうニャし」
「まあ、答えるとするなら《デメテル・ファミリア》の直営店ですけど……」
「デメテル……豊穣の女神ですか。なるほど。ありがとうございます」
「え、あ、ちょっと。質問に答えるニャ!」
ガタ、と音を立てて立ち上がり、再びローブのフードを被って店の外へ出ようとするリリア。クロエが彼女にそう声をかけると、彼女は一度だけこちらを振り向いて、無駄にキリッとした表情で一言だけ、
「私には、やらなくちゃいけないことがあるんです」
と言い、そのまま店を出て行った。
ちなみに、やらなくちゃいけないこととは当然、稲作の為の知識を学習することである。しかしそんなことは知る由もない豊饒の女主人の店員たち。シルとクロエは一様に首を傾げ、リリアの言葉の意味を考えていた。……無駄な努力である。
「やらなくちゃいけないこと……?」
「なんか、すっごい変な客だったニャ」
「シル、クロエ。立ち止まっているとまたミア母さんから叱られますよ」
「叱られてたのはリューの方だニャ」
うーん、と唸っていた2人に注意しに来たリュー。しかしクロエからの反論を受けて、心なしか憮然とした表情を浮かべる。そしてチラリと周囲に視線を向け、リリアが店内にいない事を確認すると、少し焦った表情で2人に質問した。
「……ところで、あの
「さっき店を出て行ったニャ。なんかウチの食材の仕入れ先とか聞いてきたのニャ」
「あれ、でもあの子……直営店までの道、知ってるのかな?」
クロエとシルからの返答を聞いてますますその顔に焦りを浮かべるリュー。リリアは曲がりなりにも王族、貴い身分の者だ。見目麗しい事この上ない
まずい。非常にまずい。
リューは脳裏に最悪の事態を思い描き、背中に走った悪寒に思わず身震いした。そしてすぐさま厨房で料理を作っていたミアの下へ向かうと、少しの会話の後にシル達の方へと早足で戻ってきた。
「すみません、少し抜けます」
「ニャ!?突然何があったのニャ、リュー!?」
「リュー、追いかけるなら急いだ方がいいよ。あの子、多分道に迷うと思うから」
「はい」
そして、暫く店の仕事を抜ける事を伝えると、なるべく音を立てないように、しかし素早くドアを開けて外へ飛び出した。ギィ、と軋みをあげながら揺れるドアを見つめ、顔を見合わせてからシルとクロエは未だ店内で食事を楽しむ家族連れの客の下へと笑顔で向かって行った。
そして、その後は特に変わった事もなく、豊饒の女主人はリューが抜けたまま昼の営業を終えた。
「……ハッ」
てかりかりーん。
そんな
店を出てから僅か数分の出来事である。だが、自分が迷子になったという自覚は無いリリアは、自分の直感の赴くままに歩みを進め始める。
デメテル・ファミリアの直営店とやらに行けば米の生産者の事が分かるかもしれない。そう考えた彼女は、ひとまずその直営店に向かおうとして、そして自分がその店へ向かうための道筋を聞き忘れていた事を思い出した。……どうしようか。そう考えた彼女は、思考の果てに凄まじい方法を思いついた。
(感じる……これは、米の気配ッ!)
ンな訳ねえよ。
思わずそう突っ込んでしまいそうな事を考えながら明らかに裏道と思わしき道を進んでいくリリア。
……そう、彼女が思いついた方法というのは「米の気配を辿っていく」というスピリチュアルなものであった。下手すると、いや、下手しなくてもオラリオでの破滅ルートを最速最短で突っ切るような暴挙。
今の彼女は久しぶりの米の摂取により浮かれきっており、オラリオの治安の事など頭の中から吹き飛んでいた。目を離すとこのように自分から死へと突っ込んでいく
自分を見る浮浪者の視線など物ともせず、ただ自分の米レーダーに感知された気配に向かって一直線に進んでいくリリア。その足取りは堂々としており、道に迷った果ての所業だとは思えない程に洗練された歩みであった。
そして。
「……おおぅ」
リリアの目の前に、一軒の家屋が現れた。
複雑な裏道を抜け、大通りを横切り、路地を更に行った先。恐らくこのオラリオの端に位置するのであろう壁の近くに建っていたその家屋は、リリアにとっては懐かしくも見慣れない純和風の建物であった。
藁葺きの屋根はその積み重ねて来た年月によってか日に焼け、黒く染まり、しかし雨風をしっかりと凌げるのであろう重量感を見る者に伝える。
そしてその屋根を支えるのは白い壁と木枠で出来た壁。窓はなく、木枠に取り付けられた障子が採光の役割を果たしている。庭は広く、鯉と思わしき魚の泳ぐ小さな池の側にはリリアと同じ背丈ほどの小さめの石灯篭が置かれている。
まさに日本人が想像する「田舎の日本家屋」が、リリアの目の前に広がっていた。
「……おや、こんな辺鄙なところまで来るなど珍しいな。エルフの子よ」
「……貴方は」
思わずぼうっと目の前の家屋を見つめていると、彼女の背後から低い男性のものと思わしき声がした。振り返ると、そこには黒々とした豊かな髪と髭を蓄えた1人の男の姿があった。
首には翡翠の色をした勾玉や石が連なった首飾りをしており、服装は質素な白い無地の貫頭衣の様なもの。その手には折りたたまれた荷台のようなものが握られていた。一言で言えば、日本神話に出て来る男神のような見た目である。
しかし、リリアはその服装ではなく、彼の全身から発せられる気配に畏れを抱いていた。
(この人……全身から、溢れんばかりの米の気配を感じる……!!)
米キチ、ここに極まれり。リリアは自分の米レーダーにビンビンと反応する目の前の男性に本能的に跪いた。
「よい、よい。別にそこまで堅苦しくなる必要などないぞ、エルフの子よ。私はここではしがない神の1人。そして神としての力は粗方封じ込めている。それほどの敬意を向けられるほどの存在ではない」
「いえ、貴方のその全身から溢れ出る清浄な米の気配。敬意を払わないなど私にバチが当たります」
「……ふむ?」
小首を傾げる男神。そんな彼の様子など御構い無しに、リリアは跪いた姿勢のまま畏れ多くも、と前置きして言葉を発する。
「貴方の御名をお教えいただけないでしょうか、神よ。我が名はリリア・ウィーシェ・シェスカ。エルフの里の1つ、ウィーシェの森出身のしがないエルフの1人にございます」
この王族、ごますりに全力である。
この世界に生まれてから初めてであろう全力の敬語を用いたその言葉に、男神は1つ頷くと厳かに口を開いた。
「む、そうだな。名乗られたのならば名乗り返さねばなるまい。……我が名はアマツヒコヒコホノニニギ。長い為、我が眷属をはじめとする者たちにはニニギと呼ばれている」
「貴方が神かッ!!」
「突然何をしている!?」
男神の名を聞いた瞬間。リリアはそう叫び、同時に地面に倒れ伏した。膝を畳み、腕を伸ばし、額を地面に擦り付ける。
極東の国に伝わる最上級の敬意・謝意を示す動作DOGEZAである。このロリエルフ、王族としての自覚やプライドはウィーシェの森に置いてきてしまったらしい。
それはそれは見事なDOGEZAを見たニニギは、驚愕の声を上げながら目の前で唐突に五体投地を始めたリリアを助け起こした。それでまた「助け起こされるなど畏れ多い!!」と叫び勢いよくDOGEZAに移行しようとする
しかし、彼女がこのような態度をとるのにはある理由があった。
彼女が最大級の敬意を向けるニニギ、アマツヒコヒコホノニニギは、日本神話における《天孫降臨》において日本に降り立ったとされる神の1柱である。
武神や相撲の神と名高いタケミカヅチらが、国津神であるオオクニヌシらに働きかけて行った《国譲り》を受けて降臨した彼は、祖母であるアマテラスの神勅の1つによって、神の住まう高天原から稲を現世に持ち込んだという。
……つまるところ、彼は「米の始祖」である。米キチが敬意を抱くのは必然と言える。
「と、とりあえず中に入れ、何か私か、私の眷属に用があってきたのだろう?それならば話を聞こ」
「神の在わす場所に立ち入るなど畏れ多いッ!!」
「絶妙に面倒臭いな!?」
「あら、ニニギ様?どうされました?」
「ああ、千穂!良いところに。この子を中に入れてやってくれ。何か用があるようでな」
その後、ニニギと彼の眷属の1人であるミシマ・千穂が協力してぎゃーぎゃーと喚く馬鹿を家の中にかなり強引に家の中に連れ込み、事態は事なきを得た。
一方、その裏では。
「……ふう」
「ぐ、あ……」
「畜生、バケモノめ……」
リリアが通っていた裏道、そこに屯していたガラの悪い連中を一掃し、連戦に次ぐ連戦で息を吐くリューの姿があった。
すぐに追いついたリューだったが、先ほどの失態を気にしすぎた結果声をかけるタイミングを見失い、結果このようなシークレットサービスじみた事を行うことになった。
そして、すぐさまリリアが向かった道の先へと向かうリュー。その先で彼女が見たのは、ニニギ・ファミリアの拠点に入って行くリリアとニニギ、そして千穂の姿であった。
オラリオではあまりその名を知られていないファミリアの一つだが、ニニギ自身は善神として名高い。彼らの下で保護されるのであれば少しは安心出来るだろうか。
いや、やはり自分もしばらくは見張りについていたほうがいいだろう。王族を守る戦力は多ければ多いだけ良い。リリアは何かしらのトラブルに巻き込まれているのだと考えられる、ならば元アストレア・ファミリアの冒険者として、陰ながらであっても彼女を守りきらねばなるまい。
……
頑張れ、リュー・リオン。
強く生きるのだ、リュー・リオン。
彼女の戦いは、まだ始まったばかりだ。
「……んで、だ」
「ニニギ様、まーた犬猫拾う感覚で子供連れてきたんですか?しかも今度はエルフだし」
「いや、この子は少し違うのだが……」
「とりあえず、頭を上げたら?リリアちゃん」
「いえ、畏れ多いです」
そして、しばらく経って、夜。
ニニギ・ファミリアに保護され、オラリオに放り出されることがなさそうなことを確認したリューは去り、それと入れ替わるようにニニギ・ファミリアの冒険者たちが帰ってきた。齢15から17ほどの2人の少年と1人の少女からなるそのパーティは、玄関を開けるといつものメンバーに追加で見事なDOGEZAを披露するリリアを見て、そんな感想を漏らした。
リリアの隣では彼女と同じ年頃の千穂が困った表情でDOGEZAし続ける彼女に声をかけていた。そんな千穂を見かねてか、ニニギは少しだけ神威を解放してリリアに話しかけた。
「……リリアよ」
「はいッ!!」
「顔を上げよ、でなければ話ができないであろう?」
「承知しましたッ!!」
その言葉を受け、ガバッと勢いよく顔を上げるリリア。「ひゃあ!?」と驚いた千穂を同情の目で見つめ、ニニギは神威を収めてからリリアに再び声をかけた。その後ろでは、リリアの容姿の端麗さに驚いた眷属達が息を呑んでいる。
「それで、用は何だ?随分と私に敬意を持ってくれているようだが、私は特にエルフに語られるような神話はなかったはずなのだが……」
「米を愛する者として、ニニギ様を敬わないなどということは出来ませぬ」
「……あー、うん。なるほどね」
「エルフって米好きなのか……」
誤解である。
リリアの言葉に納得の声を上げるニニギの眷属達。何を隠そう、ニニギ・ファミリアはオラリオの外にて田地を拓いており、オラリオ唯一の稲作を行なっているファミリアである。ニニギ・ファミリアの米と言えば知る人ぞ知る名米で、農作物関係の商業系ファミリアとして名高いデメテル・ファミリアに卸しているほどの品質だ。
ならば、他の極東系ファミリアの構成員のようにニニギに対して敬意を持ってもおかしくはない……のか?ニニギ・ファミリアの眷属達は揃って首を傾げた。
「それで、用というのはですね。……私めに、稲作について教えて頂きたく存じます」
「……ほう、米を作りたいと?」
「はい」
しっかりと頷いたリリアの目を見て、ニニギは1つ溜め息をついた。
この小娘、嘘は言っていない。米が好きだという言葉は嘘ではないし、その言葉には米への愛がこもっていた。
しかしこの小さな体で米作りという重労働をこなせるとは思えない。それを理由にここで教えられないというのは簡単だが、そうすればこの小娘がどう行動するかが読めない。
……ならばいっそのこと自分のファミリアに入れて面倒を見るのが一番か……?何か、放っておくとすぐに死んでしまいそうな小鳥のような印象を彼女からは受ける。
実際には小鳥のように繊細なのではなく、その米にしか興味を示さない性質から地雷を踏み抜いても気が付かずに地雷原を突っ切りだすだけなのだが、そうとは気が付かないニニギであった。
そして。
「……では、私のファミリアに入るか?」
「……えっと、その。ファミリアとはなんでしょうか?」
「知らずにここに来たのか!?」
「端的に言うと神の眷属、または家族だ」
「なります」
リリアの言葉に驚いたように声を上げる眷属を他所に、ニニギとリリアの会話は進んでいく。ニニギの眷属というフレーズを聞いて一瞬でファミリア加入を決めたリリアは、ふと思い出したように懐を探ると、ジャラリと重たい音を立てる皮袋を畳の上へと置いた。
「えっと、入会金です。お納めください」
「いや、別に金はいらん。……と言うより、ファミリアに入ると言うのなら、私への過剰な敬意はやめなさい」
「……分かりました」
少ししょんぼりとした表情で金の入った袋をローブの中にしまうリリア。そんな彼女に、ニニギは手を差し出した。
「ほら、握手だ」
「……はい?」
「これから私達は家族となるのだ。この場にいる者達は皆、お前の仲間だ」
「……なかま」
「そうだ」
そう呟いたリリアは、すっと立ち上が……ろうとして、畳の上に崩れ落ちた。長時間のDOGEZAで足が痺れたのだ。焦った様子でリリアの肩を支える千穂に「ありがとうございます」と告げてから、リリアはその場で頭を下げた。
「今日から、よろしくお願いします」
その挨拶に、眷属達は皆困惑気味ながらもパチパチと拍手を送る。
ニニギはリリアのこれからについて思いを馳せ、遠い目をしながらも新たな眷属の誕生に笑顔を浮かべていた。
こうして、エルフ達の心配を他所に世にも珍しい稲作エルフの生活がスタートした。
【リリア・ウィーシェ・シェスカ】
所属 : 【ニニギ・ファミリア】
種族 : エルフ
到達階層 : 無し
武器 : 《霊樹の枝》
所持金 : 101450ヴァリス
【ステイタス】
Lv.1
力 : I0
耐久 : I0
器用 : I0
敏捷 : I0
魔力 : I0
《魔法》
【スピリット・サモン】
・
・自由詠唱。
・精霊との友好度によって効果向上。
・指示の具体性により精密性上昇。
《スキル》
【
・消費
・精霊から好感を持たれやすくなる。
【装備】
《王家の紋章付きローブ》
・最高級品。
・ウィーシェの森の最上級機織が作成。
・防御力は無いに等しい。
《霊樹の枝》
・最高級品。
・ウィーシェの森、王族の屋敷中央にある霊樹が自然と落とした枝の中で最も大きな枝。大きさは15センチ程で純白。
・魔力との親和性が高く、精霊にとっても心地の良い居住地。
・現在は彼女の出奔に力を貸した《火の微精霊》《風の微精霊》《土の微精霊》《水の微精霊》が宿る。