TSロリエルフの稲作事情   作:タヌキ(福岡県産)

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米ディッ!!(迫真)

日刊ランキング一位達成しました!!
これも皆様のおかげです、ありがとうございます!!

というわけで第4話です(唐突)

感想、誤字指摘ありがとうございます!!返信はあまりできませんがいつも励みにさせていただいてます!!
それでは、感謝の第4話をどうぞ!!


エルフ従者は稲作の夢をみるか?

「くは……が、ふ……」

「……こんなものですか。冒険者というものも、案外大したことがないですね」

「な、ぜだ。ここには、レベル2の冒険者が大勢いたはずなのっ、ガハァ!?」

「口を開くな、下衆が」

 

 夜。端の欠けた月が大地を照らす中、ある建物の中では一つの蹂躙劇が終わりを告げようとしていた。

 呻き声をあげるのは、この建物を拠点とし各地に支部が存在する裏組織のトップ。……もっとも、その組織も現在はここの本部を残すのみとなり、壊滅状態となっているのだが。

 人身売買、違法薬物の輸出入、暴力の販売など、ありとあらゆる裏稼業を総括するこの組織は、僅か1週間で壊滅する運びとなった。その原因は、いま彼の目の前で木刀を振り抜いた姿勢のまま道端に落ちているゴミを見るような視線を彼へと向けている1人の女エルフ。

 返り血を浴びた緑色のローブに身を包み、窓から差し込む月光を浴びるその姿は妖しく、そして美しい。しかし彼女の身に纏う気配は殺気や怒りに溢れており、迂闊な事をすればすぐさま隣に転がる柘榴(ひとだったもの)の様に砕け散ることになるのは目に見えていた。

 

「さて、いい加減に答えてもらいましょうか」

「だ……だから、知らないって言っているだろう!?俺だって、まだ探している途中だったんだ!!」

「またそれですか。それこそあり得ない」

「ガッ……あ、あ、あああああああ!?」

 

 男は必死に叫ぶが、エルフは取り合わずに彼の足に木刀を突き刺した。ごりゅ、という骨に硬いものが当たる感触と共に、言葉に出来ないほどの激痛が男の全身に走る。

 言語として成り立っていない泣き声をあげながら呻く男を冷めた目で見下ろしながら、エルフは聞き分けのない子供に諭すようにいやに優しい声で語りかける。その手に携られているのは—————美しい、絹糸のような青みを帯びた銀髪。

 

「いいですか。我々エルフは自分が認めた者以外に身体を触れさせる事はありません。あり得ません。それが貴い身分である王族ならば尚の事。……ましてや『髪を売る』などという事はあり得ないんですよ、絶対に」

「ぎ、あぁ……だ、だずげ」

「吐け。あの方は何処にいる」

「じ、じらない!!ほんどうにじらないんだぁッ!!」

「……そうですか」

 

 必死の表情で叫ぶ男に無表情でそう呟いたエルフ……リフィーリアは、無言で手に持った木刀を振り上げ。

 

「なら、もういいです」

 

 振り下ろした。

 ばきゃ、という硬いモノが砕け散った音と共に、男の声が止まる。月光に照らされた床には赤い染みが広がっていき、既に充満していた鉄の匂いがさらにその濃度を増す。その様を無表情で見つめていたリフィーリアは、興味を無くしたようにくるりと踵を返すと、この建物の地下へと向かった。

 饐えた匂いが充満する地下の惨状に、形の整った眉を顰めるリフィーリア。しかし歩みを止める事なく地下の廊下を進み続けると、そこには中身の無い他の牢屋とは違い、厳重に封をされた鉄格子の牢屋があった。

 中にいるのは—————疲れ切った表情を浮かべ、死んだ目をした、同族(エルフ)の少女。職業柄里のエルフの顔を全て覚えているリフィーリアの記憶にはない顔のため、恐らくはウィーシェの森以外の里の出身だろう。

 牢屋の鍵を手に持った木刀《霊樹の大枝》で粉砕すると、リフィーリアはその音で漸くこちらを認識した様子を見せた少女に歩み寄った。

 

「助けに来ました。私は貴女の同族です」

「……うそ」

「嘘ではありません。この紋章は我らの里《ウィーシェの森》のもの。私は王族より命を受け、あるお方の捜索を行っています」

 

 リフィーリアの言葉に、漸くこれが夢などではないと思えたのか、若干だが目に光が戻ったエルフの少女。彼女は、掠れた声でリフィーリアに問いかける。

 

「……ここの、人達は?」

「殺しました。皆森の魔獣にも劣る畜生ばかりでしたので」

「……そう」

 

 殺した、死んだ、と言われても、自らを蹂躙した男たちの末路に実感が持てないのか未だに虚ろな表情のままの少女。その様子にリフィーリアは痛ましいものを見る表情になると「失礼」と一言断ってから、彼女の手足を戒める鉄の拘束具を砕いた。そして、彼女を丁寧にローブで包み抱え上げ、地上を目指す。

 

「ところで、この組織に王族(ハイエルフ)が捕まった、という情報を聴いた事はありませんか?なにか手がかりになりそうな情報があれば、教えていただけると嬉しいのですが」

「私は……ずっと、あの牢屋にいたから……い、いやっ」

「無理をしなくても結構です。……そうですか。ありがとうございます。貴女の里にすぐに返す事はできませんが、我々の里に招待します。信頼できる仲間達なので、安心してください」

 

 道中でリフィーリアは少女から情報を得ようとしたが、彼女の精神状態が危うかったためにすぐに断念した。……念の為、守り人の中でも女性の者を手配しておいて良かった。リフィーリアは信頼できる里の守り人として長年勤めている女性のエルフに少女を預け、同時に里へと向かった彼女に「裏組織に捕まったという可能性は低い」と言伝を頼んだ。

 守り人のエルフから手渡された換えのローブを羽織りながら、リフィーリアは欠けた月を見上げる。青白い光を浴びたそれは、まるで彼女の探し人であるリリアの髪の色のようだった。

 

「リリア様……」

 

 思わず、そう呟いてしまう。

 一人で心細い思いをされてないだろうか。ひもじい思いをされていないだろうか。他者から髪を切られた事を気に病み、泣いてはいないだろうか。まさか泥に塗れ、その美しい顔に傷がついたりなどしていないだろうか。次々とそういった心配が胸中に浮かんでは彼女の心を締め付けていく。

 

「……探せる所は全て探した。裏組織も潰した。後考えられるのはやはり……」

 

 そう独りごちたリフィーリアが指笛を吹くと、すぐに嘶く声と共にドドドド、という脚音を鳴らして駿馬が傍らに侍る。約2週間を共に過ごした今、リフィーリアとこの駿馬の間には強い絆が生まれていた。それこそ、人馬一体とも言える程に。直ぐにその背中に飛び乗り、見据えた道の先には。

 

「迷宮都市オラリオ」

 

 天を突く程の高さを誇る白亜の塔。

 はるか遠くのため、白い線にしか見えないその塔を囲むように高い壁が聳える、都市の威容があった。

 

 

 

 

 

 さて、ところ変わってオラリオ郊外。

 ニニギ・ファミリアの拠点では、当の本人(リリア)がスヤスヤと眠っていた。隣では、彼女と同じ年頃の見た目をした少女《ミシマ・千穂》が同じように穏やかな寝息を立てていた。

 それからしばらくして、時刻は午前5時。未だ草木も眠っている時間帯に、しかし千穂はパッチリと目を覚ました。何度か瞬きをして眠気を払うと、布団の中から這い出て、夜の寒さに震えつつも可愛らしく伸びをした。

 そして夜着から普段着である小袖に着替え、未だ布団でスヤスヤと寝ているリリアの身体をゆさゆさと揺さぶった。

 

「ほら、リリアちゃん。起きて、ご飯の用意しなきゃ」

「ご飯」

 

 その一言でパチリと目を覚ますリリア。すっと立ち上がると、千穂とお揃いだった夜着を躊躇いなく脱ぎ、これまた千穂と同じような柄の小袖を着る。そしてその上から王家の紋章が入ったローブを羽織ると、キリッとした表情で千穂の方を向いた。

 

「今日のご飯は何でしょう」

「どうしよっか。うーん、昨日いい鯖を買ったから、朝は塩鯖かな?」

「素晴らしい」

 

 トントンと軽い足音を立てながら土間へと向かうリリアと千穂。今日の朝の献立を喋りながら決めたら、台所の床下に設置された氷室兼倉庫から今日の食材を取り出す。

 んしょ、と小さい体で大量の食材を取り出した彼女達は、ここで役割分担を始めた。虫除けの乾燥させた唐辛子が入った米櫃から朝ごはんの分の米を取り出す千穂。

 成長期の少年少女が揃うニニギ・ファミリアでは、一回に5合ほど炊くのがデフォルトとなっている。升で米を掬い、米とぎ用の鉢へと移す。その後に、傍らでキラキラと目を輝かせるリリアにその鉢を渡す。

 

「はい、よろしくねリリアちゃん。……言わなくてももうわかってると思うけど、後で使うことになるから」

「とぎ汁は捨てない。分かってる」

「そう、なら大丈夫。私はお味噌汁と塩鯖の準備してるから、米とぎが終わったら炊いてね」

「任せて!」

 

 トン、と薄い胸を叩いたリリアは、意気揚々と水瓶へと向かう。そして、夜の間に冷えた水を少しだけ注ぐと、米の中に手を突っ込んでシャカシャカと米をとぎ始めた。

 前世で米を食べる為に何度も米をといできたリリア。今、彼女のその経験が輝いていた。

 前世では精米技術が発達していた為に強くゴシゴシと研ぐ必要は無かったが、ここは中世にほど近い技術体系のオラリオ。未だ完全な精米とはいかず、前世でといだ時よりも少し強い力を込める必要がある。

 シャカシャカと少し水を含んだ米をかき混ぜると、親指の付け根の辺りで優しく擦るようにしてシャッシャと米を押し、それを数回繰り返した後に水瓶から水を注ぐ。

 二、三杯ほど注げば、白く白濁したとぎ汁が出来上がるので、中身の米が出て行かないように気をつけながら傍に置いてある桶の中にとぎ汁を入れる。そして、水を切った米を再びシャカシャカとといでは、水を注いでとぎ汁を捨てるを繰り返す。

 米を炊く時に、水をケチってはならない。リリアが前世で学んだことの一つである。

 そして、水を注いだ時にうっすらと米粒が見えるようになればそこで米とぎは終了だ。あまりとぎ過ぎて透明度が強いとそれでも美味しい米は炊けないのである。リリアは前世でそれを嫌という程学んだ。

 といだ米を釜に移し、水に浸して吸水させる。米はとぐ時とこの時に水を吸い、旨味を生み出す。ここで水につけ置きしなければ、食べられはするが美味しいとは言えない。

 その間は時間があるので、八面六臂の活躍をしている千穂の手伝いをする。手早く火にかけた鍋をかき混ぜ、味噌を溶かし、具材を投入する彼女にやる事を尋ねると「大根おろし作って、庭からかぼすを取ってきて」と言われた。

 ふむ、かぼす。リリアは大人しく倉庫の隣に設置されている食器入れの中からおろし金を取ると、丼の上にそれを設置して大根をおろし始めた。小さな手では片手で押さえることが難しいので、板の間に上がり、行儀が悪いが胡座をかいて足で丼を固定して大根をする。

 円を描くようにゴシゴシとおろしていけば、ものの3分程度で半分ほどあった太めの大根は全て大根おろしへと姿を変えた。

 だんだんと味噌汁のいい匂いを漂わせ始めた土間の台の上にその丼を置き、千穂にその事を告げるとガラガラと音を立てて引き戸を開け、いまだ薄暗い庭へと出た。

 うっすらと太陽が出始めているのか、白み始めた空をほうと白い息を吐きながら見つめたリリアは、いけないいけないと庭へ向かう。

 小さな池の側に、緑色の小さな実をならせていたのを見つけたリリアは、かぼすの実を一つもぎ取ると、何とはなしにかぼすの木に手を合わせ「いただきます」と呟いてから千穂の下へと戻った。

 

「かぼす取ってきたよ」

「それじゃあ6等分して、そこの皿に大根おろしと一緒に盛り付けて」

「がってん承知」

 

 帰ってくると、魚の焼ける香ばしい匂いが味噌汁の匂いと共に広がっていた。リリアはニコニコと自分の顔に笑顔が浮かんでくるのを感じながらも千穂からの指示に従って大根おろしのそばに千穂から拝借した包丁で切ったかぼすを添える。そして吸水を終えた米の入った釜に分厚い木蓋をすると、かまどにセットして懐から白い枝を取り出し、ボソッと呟いた。

 

「火の精霊様、強めの火をくださいな」

 

 すると次の瞬間、彼女が枝を向けていた先に真っ赤な炎が勢いよく現れた。燃料となる薪も置いていないのに出現したその炎は、消える様子もなくメラメラとかまどの中から米の入った釜を熱している。ここからは自分の忍耐力との勝負だ。しゃがみ込み、かまどの火をじっと見つめながら同時に温められている釜の様子も確認する。

 そして、5分ほど経った後。

 

「お、来た」

 

 カタカタと蓋が動き出し、そのできた隙間から水が溢れ出す。釜の縁に作られた受け皿にその水が受け止められるのを見たリリアは、再び枝をかまどの火に向けて構えると、もう一度ボソボソと呟く。

 

「火の精霊様、火の精霊様。火の勢いを弱めてください」

 

 すると、先ほどまで煌々と燃え上がっていた炎が勢いを弱め、パチパチと音を立てながらも淡く揺れる弱火へと変化した。そして吹きこぼれも収まった後もじっとかまどと釜の様子を見ていると、徐々にかまどから芳醇な米の香りが漂って来た。しばらくして再び一瞬だけ強火に戻し、水気を飛ばした後にかまどの側に置いてある団扇で弱火を消し、米の蓋を取らないまま蒸らしに入る。

 蒸らす米の香りが漂う、至福のひと時である。

 

「おーう、朝からありがとな」

「うまそうな匂い……今日は魚か」

「おはよー……」

「うむ。リリア、千穂。毎朝ありがとう」

 

 すると、この時間帯あたりからご飯の匂いにつられてニニギ達が起きてくる。

 手を上げ、軽くリリアたちに礼を言いながら入って来たのはニニギ・ファミリアの団長にして最年長の17歳である青年、ミスミ・伊奈帆。

 その後ろで今日の献立の予想をしているのは伊奈帆の弟であり16歳のミスミ・穂高。

 そして朝に弱いのか、未だ目をしょぼしょぼとさせながら板の間にやって来たのがニニギ・ファミリアにおいて最年長の女性であり、ミスミ兄弟の幼馴染でもあるミシマ・千恵。

 寝ぼけ眼の彼女は、のっそりとした動きのままとぎ汁の入った桶へと向かい、そのままとぎ汁で顔を洗い始めた。

 

「っ、あーーー!!冷たい!目ぇ覚めた!!おはよう皆!」

「寝坊助」

「なんだとう!?」

 

 キンキンに冷えたとぎ汁で顔を洗い目を覚ました千恵は、ボソリと呟いた伊奈帆に摑みかかる。それを呆れた様子で見守る穂高とニニギ。この光景は毎朝見られる日常のものであった。

 

「今日のご飯は味噌汁と塩鯖とご飯ですよー」

「おうリリア。サンキュー」

「美味しそう!千穂ちゃん愛してるー!」

「あはは……」

 

 そして焼きあがった塩鯖などを配膳している間に、リリアは蒸らし終えた米を釜から茶碗についで皆の前に置いていく。精霊と王族(ハイエルフ)の炊いた米という、霊験あらたかに聞こえる米を前にして、しかしそんなことは露知らずの彼らは嬉しそうに手を合わせた。

 

「よし、それじゃあ食うか!今日の朝食を作ってくれた2人に感謝をして、いただきます!!」

「「「「「いただきます」」」」」

 

 そして伊奈帆の元気な号令の下、朝の食事が始まる。

 今日の献立は、かぼすと大根おろしが添えられた塩鯖と、小さく角切りにされた大根とわかめなどが入った味噌汁。そしてリリアが全身全霊をかけて炊いた白ごはんだ。純和風の食事を前に、リリアは感動で胸がいっぱいになった。

 そう、これだよ。これが食べたかったんだよ。

 心の中でそう呟きながら手を合わせてから箸を握り、他の者達と大差ない箸の使いっぷりで朝ごはんを食べるリリア。

 まずは米。つやつやと光り、粒だった米がリリアの操る箸によって取られ、彼女の口へと運ばれる。そして。

 

「—————んんっ!!」

「ホントにリリアは米が好きだな」

「エルフって米を炊くのも上手いんだな、別に千穂の腕を馬鹿にしているわけじゃないが、美味い」

「分かってますよ。私も最初は驚きましたから」

「やっぱ米には焼き魚だよねー!」

「……美味い」

 

 感動。

 リリアは目を閉じ、会心の笑みを浮かべる。噛みしめるたびに口の中に広がる優しい甘味。食感はしっかりとしつつも柔らかく、他の味をサポートしつつも自分の主張も忘れないしっかりとした味わいだ。更にリリアが箸を伸ばすのは、千恵が食べているのと同じ塩鯖。皮の上から箸を入れると、脂が乗っているのかホロホロとした身が簡単に崩れ、その上にカボスを絞った汁をかけた大根おろしを乗せていただく。

 

「おいしいっ」

「この鯖美味しいな。かぼすもいい味出してる」

「ありがとうございます」

 

 口の中に入れれば、すぐさまかぼすの爽やかな酸味とともに、脂の乗った鯖の身が芳醇な旨味を舌に伝える。

 大根おろしは単体だけだと少し脂っこいかと思われる鯖の脂を程よく中和し、かつ食感のアクセントにもなる。

 それと同時に米を頬張れば、もうそこは極楽だ。

 鯖の脂を吸い込んだ米はまたその顔を変え、噛み締めれば噛みしめるほどにその美味さをリリアの舌に刻みつけていく。

 これは麻薬だ。

 和食と言う名の麻薬だ。これの快楽を知ってしまえば最後、もうこの食事から逃れることはできない。

 そしてご飯と塩鯖の調和に少しの飽きを感じれば、すぐそこにスタンバイしているのが味噌汁だ。

 

「あ゛〜……」

「リリア、凄い声出てるぞ」

「エルフも俺たちと変わんねえんだなー」

「いや、多分リリアちゃんが特殊例なだけかと……」

 

 美味い。

 感想としてはそんな陳腐なものしか浮かんでこない程の味わいだ。

 味噌の塩味がよく効いた濃い目の味付けである味噌汁は、昆布やいりこで出汁を取っているのだろうか、複雑ながらも芳醇な旨味をリリアに与え、これまでの米と塩鯖とは違った美味しさに包まれる。

 そしてワカメの食感やよく煮えた角切りの大根を頬張れば、熱さの中にもしっかりと味の染み込んだ美味さで食の素晴らしさをリリアに再認識させる。

 そして味の変化を楽しんだ後に、再び米を食べる。塩鯖を頬張り、米を食う。味噌汁を飲んで、米、塩鯖、米。

 まさに至福。これぞ食の道楽と言わんばかりの幸せを感じたリリアは、他の皆が食べ終わるのと同時に手を合わせた。

 

「今日もご飯、美味しかったです!ごちそうさま!」

「「「ごちそうさま」」」

「「お粗末様でした」」

 

 そして他4人からの感謝の挨拶に、そう返してから少しの余韻に浸り、食器を下げる。

 

「リリアちゃん、とぎ汁ちょうだい」

「はーい」

「リリア。今日からお前も農作業の方に入ってもらうから、こっち来てくれ」

「はいはーい」

 

 それから慌ただしく、ニニギ・ファミリアの1日は始まっていく。

 

 

 

 ファミリアに加入してから約2週間。

 リリアの日常は、とても平和なものであった。




※今回の米とぎ描写は筆者の体験を基にしています。その為米とぎガチ勢の方からすれば噴飯ものの描写となっている可能性もございますので、ご注意ください(事後承諾)。


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