デュエリスト・マンション   作:紺屋 黒猫

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前回のあらすじ

白石 蒼、ひよこのカードショップにたどり着く。そして、友を得た。



第3話 弟子襲来

 ひよこのカードショップに行った日から3日が経ち、家に自分用のデュエルディスクが届いた。

 これでいつデュエルの誘いがきても大丈夫だ。 デッキも改良用のカードを買い集め、エクストラデッキもちゃんと組み込んでいる。 だがしかし、現実は無慈悲だ。 彼は昨日まで忘れていた事を思い出した。

 

「今日も就活行かなきゃな」

 

 就職活動、学校を卒業して自由な時間ができたからこそ見なければならない現実もあるのだ。 新米デュエリストになった今で言える事だが、デュエリストとして稼ぐにはプロとしてどこかの企業と契約を交わし勝ち続けるか、アマチュアでも優勝賞金のかかった大会に参加して、並みいる猛者達を倒しその中で賞金を手にしなくてはならない。 正直、新米になって3日のひよっこには何から何まで足りないのだ。 身支度を済ませ朝食を摂ると、白石は職業安定所へ向かった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 白石が職業安定所に着いて仕事を検索し始めた頃、カミュは自室でデッキの調整をしていた。 3つあるデッキの内1つが納得のいく改良が出来ていない状態なのだ。 彼はこれでも賞金のかかった大会に参加するタイプのアマチュアデュエリストだったりする。

 

「あと1枚が決まらないな……、これを入れると妨害にはなるけど突破力が足りなく感じる。 ……ふぅ、少し休憩しよう」

 

 煮詰まった時は切り替えが大切である、昔の著名人が言っていた気がするが今のカミュには重要だったりする。 冷蔵庫から瓶入りの牛乳を取り出すと一煽りする。 冷たい牛乳が喉を降りていく感覚で彼はクールダウンをする。 冷たい飲み物ならだいたいはOKなのだ。 因みに、彼は未成年なのでまだ酒は飲めない。

 

「……気分転換に外に出よう、何かヒントが見つかるかも知れない」

 

 カミュは緑色の上着を着ると外へと出かけた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 入ってから2時間ほど経って白石が微妙な顔をして職業安定所から出てくる。成果はよくなかったらしい。

 

「コンビニやスーパーで働くのも悪くなさそうだけど、資格とかあまり持ってないからそっち系は全然ダメだったし、かと言って内職は裁縫ばかりで出来そうなの無かったしな……」

 

 そんなことをブツブツ言いながら家路についた。彼は裁縫がとても苦手である。

 マンションまでたどり着くと、2人の子供がデュエルしようとしていた。皆デュエルディスクを付けている辺り、このマンションの住人なのかもしれない。白石は今後の参考のために観戦する事にした。

 

「みんな、やっつけてやる!」

 

「やれるものならやってみな!」

 

 

「「デュエル!」」

 

 

女の子 LP 8000

 

 

男の子 LP 8000

 

 

 背の低い女の子とやや太り気味な男の子のデュエルが始まった。デュエルディスクのランプが点灯したのは男の子の方だ。

 

「おれさまは先行をもらうぜい、手札から〈先史遺産トゥスパ・ロケット〉を通常召喚」

 

 空からロケットとおぼしきモンスターが呼び出される。コクピットには乗組員のようなのも乗っている。

 

〈先史遺産(オーパーツ)トゥスパ・ロケット〉 攻撃表示

 

星4/地属性/岩石族/効果モンスター

 

ATK/1000 DEF/1000

 

 

「召喚に成功したので、デッキまたはエクストラデッキ(以下、EXデッキ)から『先史遺産』モンスター1体を墓地へ送り、フィールドのモンスターを対象として発動する。 この効果でデッキから〈先史遺産ネブラ・ディスク〉を墓地へ送り、自身を対象にして〈先史遺産トゥスパ・ロケット〉のモンスター効果発動。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで墓地へ送ったモンスターのレベルまたはランク×200ダウンする」

 

「自分のモンスターを弱くしてどうするんだ?」

 

「おれさまのターンだから別にいいだろ。 続けて、墓地へ送った〈先史遺産ネブラ・ディスク〉の効果発動。おれさまのフィールドのモンスターが『先史遺産』モンスターのみなら墓地からこのカード表側守備表示で特殊召喚できる。 この効果を発動するターン、おれさまは『オーパーツ』カードの効果しか発動出来ない」

 

 緑色の円盤型のモンスターが転がりながらやってきた。見ようによってはマンホールの蓋にも見えなく無い気がする。

 

 

〈先史遺産ネブラ・ディスク〉 守備表示

 

星4/光属性/機械族/効果モンスター

 

ATK/1800 DEF/1500

 

 

「これでレベル4のモンスターが2体だぜい。 さらに、おれさまはレベル4の〈先史遺産トゥスパ・ロケット〉と〈先史遺産ネブラ・ディスク〉でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!ランク4、〈No.36 先史遺産―超機関フォーク=ヒューク〉を守備表示で特殊召喚するぜい」

 

 2体のモンスターが空にあいた暗い穴に吸い込まれ爆発したかと思うと、丸いバリアによって守られた都市遺跡のようなモンスターが空から現れた。バリアには『36』という数字が映っている。

 

 

〈No.36 先史遺産―超機関フォーク=ヒューク〉 守備表示

 

ランク4/光属性/機械族/エクシーズ/効果モンスター

 

ATK/2000 DEF/2500

 

 

「おれさまはこれでターンエンドするぜい」

 

「あたしのターン、ドロー。 まずは〈月光黒羊〉を手札から捨ててデッキから〈融合〉を持ってくる効果を発動。

チェーンはある?」

 

「いや、ないぜい。 止める時は『待った』かけるから、そのまま回すといいぜい」

 

「そう、それなら〈融合〉を手札に加えてから、〈月光彩雛〉を通常召喚」

 

 黄色いひよこの帽子をかぶった女の子がフィールドに現れる。

 

 

〈月光彩雛(ムーンライト・カレイド・チック)〉 攻撃表示

 

星4/闇属性/獣戦士族/効果モンスター

 

ATK/1400 DEF/800

 

 

「1ターンに1度、デッキまたはEXデッキから『ムーンライト』モンスター1体、あたしはデッキの〈月光黄鼬〉を墓地へ送って〈月光彩雛〉のモンスター効果発動。 このターン、このカードを融合素材とする場合、墓地へ送ったモンスターと同じ名前のモンスターとして融合素材に出来る。 さらに、〈月光彩雛〉の効果で墓地へ送られた〈月光黄鼬〉の効果発動。 デッキから『ムーンライト』魔法・罠カードを1枚手札に加える。 この効果でデッキから〈月光融合〉を手札に加える」

 

「相変わらずよく回るデッキだぜい」

 

「手札から〈融合〉発動。 自分の手札・フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚する。 手札の〈月光蒼猫〉とフィールドの〈月光彩雛〉を墓地へ送り、EXデッキから〈月光舞猫姫〉を融合召喚」

 

 両手にナイフを持った赤い髪の女性がリズミカルにフィールドへ踊り出る。

 

 

〈月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)〉 攻撃表示

 

星7/闇属性/獣戦士族/融合/効果モンスター

 

ATK/2400 DEF/2000

 

 

 融合召喚、手札・フィールド・墓地といった場所のモンスターまたはゲームから除外されているモンスターを『融合』や『フュージョン』と名の付く魔法・罠カードや一部のモンスター効果を使用して、融合モンスターに記されたモンスターを素材に強力なモンスターを呼び出す召喚方法でカードは紫色だとカミュが言っていたのを思い出した。

 

「融合素材となり墓地へ送られた〈月光彩雛〉の効果、今使った墓地の〈融合〉を対象に発動。 手札に加える。 続けて魔法カード〈月光香〉を墓地の〈月光黒羊〉を対象に発動。 そのモンスターを特殊召喚する」

 

 肩から角の生えた黒い服を着たモンスターが墓地からフィールドへ呼び戻される。

 

 

〈月光黒羊(ムーンライト・ブラック・シープ)〉 攻撃表示

 

星2/闇属性/獣戦士族/効果モンスター

 

ATK/100 DEF/600

 

 

「再び〈融合〉を発動。 フィールドの〈月光黒羊〉と〈月光舞猫姫〉を素材に〈月光舞豹姫〉を融合召喚」

 

 フィールドにいた2体のモンスターが光に飲まれ、混ざり合い、そこから出てきたのは腕に刃物を付けた褐色の女性だった。

 

 

〈月光舞豹姫(ムーンライト・パンサー・ダンサー)〉 攻撃表示

 

星8/闇属性/獣戦士族/融合/効果モンスター

 

ATK/2800 DEF/2500

 

 

「〈月光黒羊〉の2つ目の効果発動。 融合素材となり墓地へ送られた場合に、〈月光黒羊〉以外の自分のEXデッキの表側表示の『ムーンライト』ペンデュラムモンスターまたは墓地の『ムーンライト』モンスター1体を選んで手札に加える。 あたしはこの効果で墓地の〈月光彩雛〉を手札に加える。 さらに、魔法カード〈融合回収〉を発動。自分の墓地から〈融合〉1枚と融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。 〈融合〉と〈月光黒羊〉を手札に戻す」

 

 この時点で女の子の手札があまり減っていない事に白石は気が付いた。 「遊戯王」と言うカードゲームにおいて一部の例外はあるが、基本的に手札は重要なものであり上手く管理する事もそのプレイヤーの強さを表す。つまり、あの女の子は強いのではないか?と白石は感じるのであった。

 

「これで準備は整ったぞ。 あたしは〈融合〉を発動。手札の〈月光黒羊〉と〈月光彩雛〉、フィールドの〈月光舞豹姫〉を素材に〈月光舞獅子姫〉を融合召喚!」

 

 3体のモンスターが光の中で混ざり合い、光が消えると一本の剣を持った女性が立っていた。

 

 

〈月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオ・ダンサー)〉 攻撃表示

 

星10/闇属性/獣戦士族/融合/効果モンスター

 

ATK/3500 DEF/3000

 

 

「再び融合素材となり墓地へ送られた〈月光黒羊〉の効果発動。 墓地の〈月光蒼猫〉を手札に戻す。 手札のスケール1の〈月光狼〉を左のペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

 カードの中には、ペンデュラムカードと呼ばれる一部のモンスターが存在する。 カードの上下で色が違い、モンスターでもあるが魔法・罠カードのように魔法・罠カードゾーンの両端にある場所を『ペンデュラムゾーン』として表側表示で置く事が出来る。 だが、置けるだけではないペンデュラムゾーンにある時に発動出来る強力な効果を基本的に持っている。

 

「〈月光狼〉のペンデュラム効果発動。 1ターンに1度、自分メインフェイズに発動出来る。 自分フィールド、墓地から『ムーンライト』融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスターをEXデッキから融合召喚する。 墓地から〈月光彩雛〉、〈月光黒羊〉、〈月光舞猫姫〉の3体を除外し〈月光舞剣虎姫〉を融合召喚!」

 

 両手に剣を持った女性が光の中から獅子姫のとなりに降り立つ。

 

 

〈月光舞剣虎姫(ムーンライト・サーベル・ダンサー)〉 攻撃表示

 

星9/闇属性/獣戦士族/融合/効果モンスター

 

ATK/3000 DEF/2600

 

 

「バトルフェイズに移行!」

 

「待った! おれさまはメインフェイズ終了時に手札のモンスター効果、相手が5体以上のモンスターを召喚・特殊召喚したメインフェイズに発動出来る。 お前はこのターン合計で6回召喚・特殊召喚しているぜい! 自分・相手フィールドの表側表示で存在する全てのモンスターをリリースし、〈原始生命態ニビル〉を特殊召喚するぜい!」

 

 巨大な隕石のようなモンスターがフィールドに存在していた全てのモンスターを蒸発させながら墜ちてきた。

 

 

〈原始生命態(げんしせいめいたい)ニビル〉 攻撃表示

 

星11/光属性/岩石族/効果モンスター

 

ATK/3000 DEF/600

 

 

「うそでしょ……、〈原始生命態ニビル〉を持っているなんて全然聞いてないんだから!」

 

「カードパックを開けたら出てきたんだぜい! その後、相手フィールドに『原始生命態トークン』を特殊召喚する。 このトークンの攻撃力・守備力はこの効果でリリースした元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。 トークンは守備表示で出しておくんだぜい」

 

 もうもうと煙の上がるフィールドの中に蠢く何かがいる。

 

 

〈原始生命態トークン〉 守備表示

 

星11/光属性/岩石族/トークン/通常モンスター

 

ATK/? DEF/?

 

 

〈原始生命態トークン〉 ATK/?→8500 DEF/?→8100

 

「……くっ、一掃されたけどまだやれる。 メインフェイズに墓地の〈月光香〉を除外し、〈月光蒼猫〉を手札から捨てて効果発動。 デッキから『ムーンライト』モンスターを1体手札に加える。 この効果でデッキから〈月光虎〉を手札に加える。 右のペンデュラムゾーンにスケール5の〈月光虎〉をセッティングして、そのままペンデュラム効果を墓地の〈月光蒼猫〉を対象に発動、そのモンスターを特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される。 守備表示で特殊召喚する」

 

 蒼白色く猫っぽい女性がフィールドに現れる。

 

 

〈月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)〉 守備表示

 

星4/闇属性/獣戦士族/効果モンスター

 

ATK/1600 DEF/1200

 

 

「エンドフェイズ、フィールドに特殊召喚した〈月光蒼猫〉が破壊され効果発動。 デッキから『ムーンライト』モンスターを1体特殊召喚する。 あたしは〈月光蒼猫〉(2体目)を守備表示で特殊召喚してターンエンド」

 

 フィールドに居た蒼猫が手を振りながら『ポンッ』と音を立てて爆発すると、2体目の蒼猫が空から落ちてきて着地する。 マジックと言えば通じそうな登場だった。

 

「おれさまのターン、ドロー。 手札から〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉を通常召喚」

 

 金色の飛行機型のモンスターが空から飛来する。

 

 

〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉 攻撃表示

 

星4/光属性/機械族/効果モンスター

 

ATK/1300 DEF/1400

 

 

「〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉の効果発動だぜい、自分フィールド上全ての『先史遺産』モンスターのレベルを1つ上げる」

 

〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉 星4→5

 

「続けて、〈先史遺産モアイ〉を特殊召喚。 このモンスターは自分フィールドに『先史遺産』モンスターが存在する場合、手札から守備表示で特殊召喚出来るんだぜい」

 

 地面を突き破り、モアイ像が生えてくる。

 

 

〈先史遺産モアイ〉 守備表示

 

星5/地属性/岩石族/効果モンスター

 

ATK/1800 DEF/1600

 

 

「おれさまはレベル5になった〈先史遺産ゴールデン・シャトル〉とレベル5の〈先史遺産モアイ〉でオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! ランク5、〈No.33 先史遺産―超兵器マシュ=マック〉を攻撃表示で特殊召喚するぜい!」

 

 再び空にあいた暗い穴に2体のモンスターが吸い込まれ爆発する。 中央に水色の光を蓄えた都市遺跡が空中に浮かんでいる。

 

 

〈先史遺産―超兵器マシュ=マック〉 攻撃表示

 

ランク5/光属性/機械族/エクシーズ/効果モンスター

 

ATK/2400 DEF/1500

 

 

「これで終わりだぜい! 〈No.33 先史遺産―超兵器マシュ=マック〉の効果、ORUを1つ取り除き、相手フィールドに表側表示で存在する〈原始生命態トークン〉を対象に発動。 選択したモンスターの攻撃力と、その元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、与えたダメージの数値分だけこのカードの攻撃力をアップする! 〈原始生命態トークン〉の元々の攻撃力は『?』だぜい、だが攻撃力『?』は『0』の扱いを受ける。 よって、トークンの攻撃力分のダメージ、8500ポイントを受けてもらうぜい!」

 

 水色の光が輝き、壁面から無数の大砲が出てくる。 大砲がトークンに狙いを定めると一斉に砲撃を開始する。 着弾する瞬間に煙が晴れ、そこにいた異形のクリーチャーに命中する。

 

 

女の子 LP 8000→0

 

 

「……くっ、負けた。 さあ、煮るなり焼くなり好きにすればいい! だが、あたしの心までものに出来ると思うな!」

 

「いや、確かに勝ったがお前を好きにする気は無いぜい ……と言うか、お前はそれを言いたいだけじゃないのか?」

 

 2人の試合も終わったようなので、そのまま部屋に戻ろうとする白石を男の子が呼び止めた。

 

「ちょっとすみません、あなたもこの『デュエリスト・マンション』に住んでる方ですか?」

 

「ああ、一応そうだけど。 ……ところで『デュエリスト・マンション』って何?」

 

「「え?」」

 

 2人が揃って変な声を上げ、こそこそと何かを話し始めた。話し合いはすぐに終わった、どうやら何かまとまったようだ。

 

「あー、おれさ……ぼくは、岡山 大地(おかやま だいち)です。 ここのマンションに住んでるカミュさんに用事があって来ました。 ですが、誰も出てこないのでどこへ出かけたのかご存知ないでしょうか?」

 

「さっきの試合見てたから、おれさまのままでいいよ。 堅苦しいのもなしでいいから。 カミュがどこへ行ったかはちょっとわからないな……、隣の部屋だから伝言あるなら伝えておくけど?」

 

「……今、隣の部屋って言いましたよね。 あたしは東北 明里(とうほく あかり)っていいます。 カミュ師匠の一番弟子です」

 

「え? 一番弟子……? カミュに弟子居たんだな、それで用事って何?」

 

「あたしはカミュ師匠に稽古を付けてもらうためです!」

 

「おれさまはカミュさんを倒すためにここに来たんだぜい!」

 

 話しを聞きまとめると、だいたいこうなる。

 2人は別々の目的でこのマンションに来たが、目的の人物は外出していて会えなかった。 そこで、とりあえず戻ってくるまで待つことにしたが、なかなか戻って来ないので2人はどちらが先に目的を果たすかを賭けてデュエルで決めようとしたところに、丁度白石が戻って来て試合観戦をし始めたと言う事らしい。

 

「なるほどね、事情はわかったよ。 僕で良ければカミュが戻ってくるまでの間、相手になるよ」

 

「やったぜい! 遂に他の『デュエリスト・マンション』の住人と戦える日が来るなんて! 全力で行かせてもらうぜい!」

 

「こいつの後は、あたしもお願いします!」

 

 その後、カミュが戻ってくるまでの間、2人を交互に相手取りむちゃくちゃデュエルする白石であった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 時間は少し巻き戻り、白石が観戦を終えた頃のカミュは商店街で福引きを回していた。 ゴロゴロと福引き機を回しつつ、改良中のデッキの事を考えていた。

 

「お、また白だね。 はい、残念賞のポケットティッシュ1つ。 さあ、次が最後だよ」

 

(……あと少し、あとちょっとだけが足りない。それさえ揃えば全てがまとまる!)

 

「お、お客さん! 回しすぎは勘弁してください!」

 

「あ、すみません…… 考え事をしていたもので」

 

(いけない、今は目の前の事に集中しなくては……)

 

 改めて、ゆっくりと福引き機を回し始めたカミュの頭の中に突如、電光が走る。

 その電光は幾何学的な起動を描きながら、複数枚のカードを貫いて行き一つの大きな円を形作る。 この瞬間、出かける前に感じていた迷いや悩みが消し飛び、ここに1つのデッキが完成したのである。

 

「これだ!!」

 

「お、大当たり! お客さん、良かったね大当たりだよ! はい、特賞の商品券5万円分だよ!」

 

 カミュは福引き機から出た玉が虹色に輝いているのを見た。 今日はツイている、良い日になりそうだ。

 

「ありがとうございます!」

 

 受け取った商品券を上着の中に仕舞うと、荷物を持って足早に家路に就いた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 カミュが荷物を持ってマンションに戻ると、白石達がベンチに座りなにやら楽しそうに話していた。

 

「やあ、白石君。ただいま、なにやら楽しそうな話しをしているね。 ボクも混ぜてくれないか?」

 

「おかえり、やっと帰ってきたね。 今、カードの話しをしていたんだ。 手札誘発カードって凄く出にくい上に、高額カードだったとは知らなかったよ」

 

「あれさえ無ければ勝ててたのに……、悔しいな」

 

「今日のところは、おれさまが勝てただけだぜい。 次はどうなるかわからないぜい」

 

「ここで話しをするのも何だし、良かったらウチに上がってかないかい?」

 

「「「お邪魔します」」」

 

 こうして4人は日が暮れるまでカミュの部屋でデュエルするのであった。




ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

私の小説は、実際にデッキを回した分を収録して文字に起こしています。
そのため、更新が遅くなる事もあります。

今回の試合の対戦カードは先史遺産vs月光でしたが、まさか3ターンで決着が着くとは思っていませんでした。
もちろん、仕込みはやってないので純粋に引いた結果になります。
読まれた方の中に「ニビル・アレルギー」の方が居たらすみません。

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