アカデミーでの4ヶ月   作:タッチアップ

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「あ、ナイスヒットだね阿部さん♪」

 

「ありがとうみずきちゃん」

 

ダッグアウトに戻る俺を笑顔で祝福してくれるみずき。

 

 

「うむ…阿部さん、みずき。

済まないが、今の結果内容は喜べたものでは無いぞ」

 

喜ぶ二人に聖が釘を刺す。

 

 

「ちょっと聖!アンタ水差す事を言わなくて…」

 

「いやみずきちゃん、聖ちゃんの言う通りだ。

あれじゃーなぁ…」

 

 

それもその筈、明らかマグレな当り。

 

というのも、自分でも分かったがタイミングの取り方がめちゃくちゃ。

 

初球のストレートには完全に振り遅れ、2球目の変化球には初球のストレートの印象が有ったのか逆に早く取り過ぎたせいで、踏ん張りが出来ずまた空振り。

 

そもそも、本来バスター打法はあんなフルスイングする様なフォームでは無い。

 

もっとシャープに振り抜き、ヒッティングに重点を置いたフォーム。

 

 

 

 

「次、六道!」

 

「私の番か。では、行って来るぞ」

 

聖ちゃんもまた、アカデミー指定の木製バットを握り締めバッターボックスに向かう。

 

 

「べー!三振しちゃいなさい!」

 

「まーまーみずきちゃん。俺は気にして無いから仲良くね?」

 

「アハハ!ジョーダンだって阿部さん!」

 

阿部さん真にしちゃってウケる♪

 

 

それに、あの娘が簡単に三振しちゃうと思って?

 

ざ〜んねん♪聖はバッティングも凄いんだから!

 

長打力は無いけど、選球眼とミート力はそこらの男子に負けて無いからね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランクが無ければの話だけど。

 

 

 

 

 

『ストライッ!バッターアウッ!』

 

「」グスン…

 

 

あらら。

 

三球三振、秒殺だったなー

 

ベンチ最奥に座り込み、暗く落ち込む聖ちゃん…

 

あおい先生とみずきちゃんが慰めに行く。

 

 

俺はそっとしよう…

 

今の俺が喋り掛けるのはナンセンス。

 

 

「次、鬼塚!」

 

「よっしゃ!俺の番だ!」

 

気合十分の鬼塚。

 

 

「ピッチャー交代!小南!」

 

 

「はい!」

 

 

小南VS鬼塚。

 

 

 

 

 

(ん?鬼塚?)

 

“鬼塚”という単語に聞き覚え有る阿部。

 

(…確か俺が通ってたジムのスタッフの子じゃ無かったか…?)

 

後で挨拶してみようか…

 

もし人違いだとしても、損は無い筈。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ

 

向き合う両者。

 

鬼塚は左打席に入り、高々とバットを上げる。

 

(早速小南との対戦か…!)

 

全力で行くぜ!!

 

 

 

 

ザッ

 

オーソドックスなワインドアップモーションの小南。

 

そこから…

 

 

ビュッ!

 

「∑なッ!」

 

 

 

 

 

ズバーーーン!

 

『ストライッ!』

 

唸りを上げる豪球に全く反応出来ず見逃す鬼塚。

 

 

 

 

「すげぇな…」

 

ダッグアウトから見ても速すぎて分からねえ…

 

これが噂に聞く、小南球児のストレートか…

 

 

「また速くなってるわねアイツ…

あおい先生、小南君何キロ位出てるんですか?」

 

若干の嫉妬混じりにみずきがあおいに訪ねる。

 

「どうかな…確か大学の時のMAXが154Km/hだったけど…」

 

 

ヒュー、おっそろしい♪

 

盗み聞きしてした小南球児の球速に感服しちまう俺。

 

 

(150超えとかプロ並みじゃねーか)

 

そんな奴がなんでアカデミーに…?

 

まあ何はともあれ、これはしっかり目に焼き付けてとかねーとな。

 

 

(速い…速すぎるだろコイツ…!)

 

神宮出場は伊達じゃない。

 

バッセンの160を見た事有るが、まるで別格…

 

 

 

(これが同じ人間が投げる球かよ!)

 

 

ザッ

 

「ッ!」

 

ビュッ

 

 

 

クッ

 

(まがっ…)

 

 

ズバーーン!

 

『ストライッ!ツー!』

 

 

自身に食い込んで来る変化球に腰が引けてしまったが、ストライク宣告。

 

 

(あ、あの速度で曲がって来やがった…)

 

 

「へっへー!追い込んだぜ鬼塚♪

どうした?フォームだけは威圧感有るけど見掛け倒しか?」

 

「ッ…!」

 

小南の挑発に1度打席を外す。

 

 

ブォン!!

 

 

『!?』

 

魂心の素振りを披露。

 

マウンドまで届く風斬り音を轟かせ、再び打席に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

(やるな…!)

 

スイングスピードから察するにパワーだけなら友沢以上。

 

 

 

ザッ

 

(そう来なくちゃ…)

 

ビュッ!

 

(面白くねーぜ!)

 

 

クッ

 

 

 

ズバーーン!

 

『ボッ!』

 

一瞬ピクリとバットが動くが見送る鬼塚。

 

打者の手元で小さく落ちたボールは僅かにストライクゾーンから外れボール。

 

一見見切った様に見えるが、只反応が間に合って無いだけ。

 

鬼塚の圧倒的不利に変わり無い。

 

 

(あっぶねぇ…)

 

首の皮一枚残った…

 

まだだ…

 

まだ負けてねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ

 

(最後だ!!)

 

ビュッ!

 

 

 

 

 

 

 

ズバーーーーン!!

 

『ストライッ!バッターアウッ!』

 

全力のストレートを真ん中高め一杯へねじ込む。

 

鬼塚の魂心のフルスイングも敢え無く散る…

 

 

 

 


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