アズールレーン 一人ぼっちの正義の味方   作:ズィー

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誰がいたってやることは変わらない。

敵を倒す。それが俺のやるべきことだから。


古参の戦士

 敵の総数は大凡40。

 

 俺1人でも十分だが、ここにいる以上手伝ってもらおう。

 

「俺が先行する。後方の下を狙え、そこが動力炉だ」

 

 それだけ伝えると、シールドを張ったまま突っ込んだ。後ろから問いかけが聞こえたような気もするが、気にも留めなかった。

 

 船の合間を縫いながら、先ほど伝えた通りの場所をピアスで打ち抜いていく。普通の船も煙突の下に動力炉――要は主機だ――があるものだが、どうやら奴らも変わらないらしかった。

 

 それに、近づいて横につけば砲もこちらを狙えない。そもそもなんでかはわからないが、そこまで奴らの攻撃は精度がよくない。10発撃ったら2発ほどが至近弾になる程度のものだった。

 

 ところどころの船は後方の連中に任せるためにノータッチだ。本命は奥の空母型。人型、いや、KAN-SEN型というべきか。艤装は装備しているが奴らはとはコミュニケーションがとれない。喋れたあいつらとはあの時以来会っていないが、奴らだけの特性と言うべきなのだろうか。

 

 ただ、そんなことはどうでもよかった。喋れようが喋れまいが、敵意を向けて攻撃してくるならそれに答えてやるまでだ。

 

 空母型は俺を目視するなり無数の艦載機を放った。イソギンチャクのような艤装から放たれるそれを逐一撃ち落としている暇はない。

 

 多少のダメージは覚悟の上だが、攻撃されるまでにラグがあるならそれを生かさない手はないだろう。

 

 足に限界まで力を溜める。いきなり足を止めた俺に対して、そいつはにやりと笑ったのがわかった。艤装の故障とでも思ったのだろうか。

 

 上空から艦載機が迫り、ミサイルと機銃を放つ。が、それが俺に届くことはなかった。

 

 脚部のエネルギーを一気に開放すると同時に、前方にも三角錐型のシールドを張る。

 

 防御用ではなく、空気抵抗を極限までカットするためだ。

 

 大気との摩擦が極限まで減った上で加速した俺は、傍から見ればまるで瞬間移動でもしているように見えただろう。

 

 その加速を保ったまま、体を一回転させ、腕を腹に対して振りぬきながら奴の横を通り過ぎる。瞬間的に腕に集めたエネルギーは、ブレードというにはあまりに切断力の高い代物だ。

 

 プラズマだとかそういうものではなくマイクロブラックホールの一種――科学者曰く、ではあるが――が発生し、物体を切るのではなく、触れた部分を消滅させている。

 

 それ、を腕にまとわせたまま腹に対して振りぬけばどうなるか。答えは火を見るよりも明らかだろう。

 

 そいつは何が起きたかを理解することも無いまま上半身が滑り落ち、残った足は浮力をなくして沈んでいった。

 

 ほどなくして、残った量産型を倒したらしいKAN-SEN達が再度俺のもとに集まってきた。

 

 なかなか素早い。ある程度数は減らしてやっていたが、それを加味しても上出来なレベルだろう。

 

「救助の必要は無かったか?」

 

 そう言うと、4人は何かを言おうとしているが、うまく言葉にできないようでお互いの顔を見合わせていた。

 

 ほどなくして、一人だけ他の奴と顔を見合わせていなかった奴が俺に対して話しかけてきた。

 

「あなた、セイレーンなの?」

 

「いや、むしろそれを倒す側だ」

 

「正義の味方、とおっしゃってましたよね」

 

 後ろにいた奴も話しかけてくる。

 

「......お前がZ23か?」

 

「あ、は、はい!Z23と申します。改めて、助けていただいてありがとうございました!」

 

 礼儀正しく頭を下げられた。感謝されたことは今までなかったからか、なんだかくすぐったく感じる。

 

「ま、それが仕事だからな」

 

「ふぅん......かっこいいわね。私はプリンツ・オイゲンよ。よろしくね」

 

「わ、私はライプツィヒです......」

 

「我はツェッペリン......グラーフ・ツェッペリン。我からも礼を言う。助かった」

 

 ひとしきり自己紹介は終わった。俺は別に名乗らなくてもいいだろう。

 

「そっちの回収部隊は来るのか?」

 

「一応連絡はしました」 

 

 なら大丈夫だろう。そう思って俺もサンダースに連絡を入れる。

 

≪終わったぞ≫

 

≪お疲れ......と言いたいところだが、ちょっと厄介なことになったぞ≫

 

≪物凄く聞きたくないんだがなんだ≫

 

≪上層部がカンカンだ。KAN-SENと共同作戦なんて数回しか例がない上に姿を見られてんだからな≫

 

 秘匿されるべき存在の物が公に出れば焦るのも無理はない、が、怒りの矛先を向けるべきは俺ではなく鉄血のような気もするのだが。

 

≪まさかあいつら......≫

 

≪おめでとう。鉄血側からの引き抜きのご案内が届いてるぞ。残りの3陣営からの苦情込みで≫

 

≪いったん基地に戻る。公聴会は開かんぞ、死んでもな≫

 

≪へいへい。機をそっちに回すよ≫

 

 そう言ってから数十秒後には無人機が垂直離陸モードで近づいてきた。相変わらず仕事の早い奴だ。通信しながら既にこっちに手配してくれていたのだろう。

 

「またどこかで会うかもな」

 

「その時は何て呼べばいいのかしら?」

 

「さぁな。それじゃ」

 

 ハッチが閉じられ、無人機が垂直離陸から通常航行モードに切り替わる。本土に戻るまで少し寝ておくことにした。帰ったら帰ったで何を言われるかわかったものではないので先に嫌なものをすべて忘れておこうという魂胆だ。

 

 

 

 帰った瞬間。出迎えてくれたのはユニオンの海軍上層部のお偉いさんの方々だった。

 

 要件は一つ。これからの俺の立場である。

 

 鉄血からの支援要請は適切なものであったと既に結論付けられており、それに関しては特に何もなし。ただ、俺がKAN-SENと共戦したという事実だけが問題だった。

 

 なぜそこまで取り立てられるのかと言えば、俺の存在が明るみに出るのが危ないからだ。

 

 KAN-SENとアズールレーンによって平和は守られてきた。そういうことになっている。

 

 だが実態はこれだ。

 

 KAN-SENが出来上がるまでユニオンどころかロイヤル、鉄血、重桜、その他の国。それらに駆り出されてきたのは俺だったからだ。

 

 KAN-SENによる安定した戦闘ができるようになったのがようやく15年前。KAN-SEN主軸の国が出来上がったのが12年前と考えれば、俺がどれだけ一人で戦ってきたかわかるだろう。

 

 セイレーンの技術回収も俺のおかけではるかに速く進んだ。生首を持って帰って来たり、動いている艤装を持って帰って来たりすることができたからだ。最も、砲を使わず接近戦を続けたおかげで怪我だらけになったわけだが。

 

 そういう背景があるからこそ、俺の存在が明るみに出れば、俺は一気に英雄としてはやし立てられる。アズールレーンの旗とメンツを背負うおまけ付きで。

 

 そんなのは勘弁してほしかった。

 

 一度重桜と鉄血が離反しかけた時にセイレーンの技術を俺が勝手に裏で回し、何とか難を逃れたこともある。

 

 だからこそ、今また営利関係やら責任問題やらで国がバラバラになるのは避けたかった。

 

 そして、最終的に下された結論が――。

 

 

 俺が鉄血に移り、先ほど共に戦った連中の指揮官になること、だった。

 




この世界線ではレッドアクシズは存在しません。

主人公が裏で手をまわしまくったおかげですね。

そのおかげでかなり厄介ごとに見舞われてしまいますが、それはこれからのお話です。

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