矛盾とか多くなる可能生大。
聖闘士が敵なので地雷に注意。
俺の名前は黎羽(れいは)カデンツァヴナ・イブ、日本人だ。
何だかとっても厨二感満載の名前ではあるのだが、俺を転生させた神が名付けの親に電波を送信した結果なので気にした負けだ。
つい先月孤児院から放り出されついでに前世の記憶と神とのやり取りを思い出した、今をときめく18歳の俺ではあるのだが、現在、かなり苦しい局面に立たされてしまっていたりする。
何せ家なし金なし行く宛てなしの三十苦。21世紀に到達していないこの国の法整備の穴に落っこちてしまった状態なのである。日雇いの仕事を見つけ日銭を稼いで生きるので精一杯だ。
「肉が、肉が食べたい・・・」
ミディアムなステーキを300グラムほど食わせて欲しい、切実に。
グウウ、と虚しい音を響かせる腹を押さえながら、俺は大きく溜息を吐き出した。
毎日3食ご飯が食べられる生活って滅茶苦茶幸せだったんだなと過去に思いをはせながら、俺は曲がり角に足を向けた。
──ふいに、目の前が真っ黒になる。
「ッ──うぐああっ!?」
事態を完全に理解する暇も無く、恐ろしい衝撃が全身を襲い、後方へと吹き飛ばされる。
何かに・・・いや、真っ黒な人間にぶつかったのだ、俺は。
それも、とんでもない速度で。
ガシャァァァンッ!! と耳障りな音を響かせて、俺は真っ黒な人のクッションになるようにして後ろのフェンスに叩きつけられた。
「っ・・・いってぇ」
巨人の拳に全身を殴打されたかのような激しい痛みに、俺は苦悶の声をあげた。
状況を理解しようと眼を動かし、俺をクッションにした衝撃の正体を確かめる。
まず眼に入ったのは艶はあるがとっちらかった黒髪のロン毛。
視線を下げると黒い鎧に、右手には怪しげな長剣が握られている。
「・・・ハッ、まさか、戦乙女的な美少女──、」
「ぐう・・・お、のれ・・・聖闘士め・・・!」
「残念めっちゃ低い声!! おいあんた、事情は分からないがとりあえず避けてくれ! その鎧の突起が刺さってめちゃくちゃ痛い!!」
「? ・・・貴様、余を救ったことは賞賛に値するが、あの速度で衝突し無傷とは・・・まさか、聖域の人間か?」
男は振り返ると、ギロリ、と鋭い視線で俺を睨めつけた。
美人に類する人間の怒り顔は怖いという先人の言葉は正しかった。こんな顔で睨まれて喜ぶ奴らの気が知れない。
俺はブンブンと必死に首を横に振り、弁明のために口を開く。
「断じて違う! 俺はその聖域? っていうのも知らないただの身体が丈夫な人間だ!」
「・・・嘘では、ないようだな」
「まじか、案外簡単に信じてくれた! あんたいい人だな!」
「不敬な、余を人間と間違えるとは、万死に値するぞ、人間──、」
ピタリ、と言葉を止めると、黒い人は目線を俺から前方へと向ける。
つられたように眼を動かすと、そこには黄金の鎧を着た男が屹立していた。
「フン、冥界神ともあろう者が、人質をとるとはな」
怒りに満ちた低い声で、紫髪の男は言葉を発する。
「・・・勘違いするな、余はそのような卑賤な真似はせぬ・・・おい、貴様」
「えっと、俺?」
「そうだ、貴様だ」
仮名冥界神は俺に片目を向けると言った。
「疾く失せるがいい。いくら丈夫な身体に生まれ育ったとて、ただの人では、神である余と黄金聖闘士の戦いに巻き込まれれば命を落とす。貴様は余を救った・・・冥界に落ちるにはまだ早い」
「・・・よく、分からないけど・・・あんた、ピンチなんじゃないのか」
「感謝はしているが、貴様には関係ない。あの男は聖闘士、地上の平和を保つの防人なれば、人間である貴様が狙われることはない」
「・・・・・・」
黒い男は立ち上がると、沈黙する俺の腕を掴み、俺が元来た道の方向へと突き飛ばした。
これ以上関わるな、という顔で一瞥をくれると、男は黄金の男へと身を向け長剣を構えた。
「またせたな、スコーピオンよ・・・して、余は貴様ら聖域の者と戦うつもりは毛頭ないのだがな。気は変わらぬか」
「巫山戯たことを抜かすな、冥王ハーデス。サーシャを・・・アテナを騙し魂を奪った貴様を許すわけがないだろう!!」
「その訳も話したのだがな・・・聖域は聞く耳を持たん愚者の集まりであるようだ」
「・・・もういい、とっとと身柄を拘束して聖域に連行させて貰う!! 深紅の衝撃を受けろ!! ──スカーレットニードルッ!!」
黄金の鎧を着た男は怒声を放つと、サソリの尻尾を彷彿とさせる真っ赤に尖った爪先を黒い男目掛けて突き刺す。
すると、深紅の爪先から、赤星のような煌めきが放たれた。
キィィィンッ!! と甲高い男が響く。
音の正体は、深紅の攻撃が、仮名冥王ハーデスの握る長剣により弾かれた音だった。
──しかし、
「──グウウッ・・・神の身体に、毒針を打ち込むとは、不敬な・・・!」
「15発のうち防げたのが8発か、神の名が泣くな。・・・15発打ち込めば死に至るこの技、神の身体ならば残り7発打ち込んでも死にはしないだろう」
「っ──お、のれ」
ドサリ、と片膝を地に着けて、黒い男は喘鳴混じりに呟いた。
黒い鎧に包まれる白い肌には、数え切れないほどの汗が浮かんでいる。
ひどく、苦しそうだ。
「・・・なんで、こんな・・・」
状況の理解は未だに出来ていない。
何が何やら。ただ目の前に広がる突然の非日常に俺は硬直するしかできないでいる。
しかし、いくら鈍感な頭でも、一つだけ理解できることはあった。
──このまま放っておけば、あの黒髪ロンゲは殺される。
「──、」
それは少し、いや、かなり嫌だ。
「さあ、これでやっと・・・追いかけっこは終わりだ、冥王ハーデスッ!!」
「くっ──」
黄金の男は闘気みなぎらせると、深紅の爪先がある手を、目先のロンゲへと向けた。
またあの紅い爪先から、攻撃を放つのだろう。
事情は分からない。
もしかしたら黒ロンゲが悪いことをしたのかもしれない。
だけど、黒ロンゲには、戦う意志がなくて、黄金の男の方は、激昂して理性が消えている。
だったら、俺は──、
「──スカーレット、」
『──Balwisyall Nescell gungnir tron』
「──ニードルッッ!!」
バキンッッ!! と、鈍い音が虚空に木霊した。
「なっ・・・!?」
黄金の男は驚愕の表情を浮かべる。
それもそのはず。
「貴様、なぜ助けた・・・?」
困惑の声を上げる黒髪ロンゲに、俺はにやりと笑った。
「あんたは悪い奴じゃないと思ったから」
「・・・は?」
「事情は分からないけど、あんたは俺を人質にすれば、ここで痛い思いをしないで済んだんだろ。それなのにあんたは俺を逃がそうとしてくれた。だから、俺はあんたの力になりたい思った」
「・・・・・・」
「・・・民間人、いや、俺のスカーレットニードルを防いだ者を民間人とはいえないな。お前、何者だ」
黄金の男は、眼前から恐ろしい殺気を向けてくる。
俺は僅かに思考してから、毅然と言った。
「俺は人間兼
前から書きたかったシチュエーション
気が向いたら続けます