ゼルダの伝説〜異世界の兵士共 NS(イセカイのツワモノドモ ニュー・ストーリー)〜   作:油揚げパン

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子供扱い 〜NS〜

 ちょっとした、”時の勇(大切な友が見)者の闇(つからない)”を垣間見る事などがあった前回。その後に身支度を済ませたリンクは、イタミ達との合流するため……フォルマル家の宮殿内、その中の来賓(らいひん)室に足を運んでいたのだが……?

 

 「……気の所為でなければ、イタミ殿の傷が昨日より増えている様に見えるが……?」

 

 リンクとは別に、来賓室へと訪れていたピニャ殿下。だが、この前に若干寝不足気味になりそうな程の”決死の作戦”を考えたにも関わらず……彼女の顔は、噴火直前なデスマウンテンの如き”真っ赤な怒り”で再び染まり切っていた。その理由は明白だ。彼女達、薔薇(バラ)騎士団が練っていた作戦の標的(ターゲット)であるイタミの顔に……見事な”モミジ模様”と、”引っ掻き傷”が赤々と装飾されていたからだ。

 

 「右目は元々あったしぃ」

 

 「ワタシの爪でもないニャ」

 

 【……まぁ、”ハイラルの魔物”が入ったワケじゃあないよな……】――ハイラル時代、サリアと会うために赴いた『森の聖域』や、打倒大魔王(ガノンドロフ)のために”七賢者”を目覚めさる旅の目的地の一つである『魂の神殿』などで、交戦する機会のあった”ウルフォス(狼型の魔物)”……。リンクにとっては多少テコ(体力が多いだ)ズる相手(けのザコ敵)だが、ココ(特地)だと一体に対して”一個小隊(二十五〜五十人規模)”か、最悪”騎士団(精鋭部隊)”を呼ばなくてはならなそうな相手が侵入するワケが……と、”ロゥリィ”や”猫亜人のメイド”の話を聞きつつ、内心はそう思っていたリンクなのであった……。

 

 「わ、わたくしが…やりました……」

 

 ほんのり涙を滲ませつつ、赤面した表情で恐る恐る”小さな挙手”をしながらそう呟くボーゼス。その言葉を聞いたピニャ殿下は、気絶しそうになるのを何とか堪えつつ……キッ! ……と、”トアル意外と苦労人で変態(ナルシスト)魔族長”を彷彿しそうなキレ具合で、ボーゼスを睨みつけた。

 

 「リンク殿はミュイ伯爵令嬢が、甲斐甲斐しく面倒を見てたと言うのに……またお前は……ッ!」

 

 「ちっ、違います! 姫様! 確かにイタミ殿にはしてしまいましたが、リンク殿には……」

 

 「ここに来て言い訳とは、見苦しいぞ! ボーゼスッ!?」

 

 リンクにも同罪と思えるもみじ模(・・・・・・・・・・)()一瞥(いちべつ)していた事から、その責任の追求をするピニャ殿下。実際の真相としては……”痴話喧嘩にも満たない会(プロポーズ(?))話”の弾みによる、ミュイ伯爵の不意打ち(ビンタ)により、首を痛めていたリンク。何故そうされたか(・・・・・・・・)は本人は理解に及ばなかったが……流石は”勇者((朴念仁))”。同じく”冤罪仲間”になりそうだったボーゼスを助けようと、助け舟を出そうとするも……ピニャ殿下の思わぬキレっぷりに、中々口を出せずにいた……。

 

 一方のミュイ伯爵令嬢と言えば……冤罪に合うボーゼスに申し訳ないと思いつつも、その事がバレない様に装うも、背中は冷や汗でビッショリとなっていた……。 助け舟を出せないリンクは痺れを切らしたのか……この冤罪騒ぎの原因である彼女に、視線を向ける。しかしながら、その合った視線は即座にプイッ! ……と()らされてしまうのであった……。そして、一向に口を割らずに涙しながら俯いていたボーゼスに、少々の疲れを感じていたピニャ殿下。彼女は一つタメ息をした後……ふとリンク達の方を見た。すると、上記のやり取りの真っ最中だったのを偶然見ることが出来た彼女は、その”甘酸っぱそ(二人共……少し大人)うな光景(の階段を登って……)”に何を思ったのか……【ハァ、ボーゼス。以後は気を付ける様に】――と何かを悟っては、困惑するボーゼスを他所に彼女を許すのであった……。

 

「(フォルマル家は亜人に詳しく、理解があるとは聞いていたが……まさか、ミュイ伯爵令嬢までとは……多少問題はあったと言えど、そっち(リンク殿と)は上手く行った様なのにィィィ!?)

 はぁぁぁぁ……この始末、どうしてくれよう……」

 

 そんな彼女の気苦労を知る由もなく……冤罪とは言え、拉致された伊丹隊長を連れ帰るのが目的だった富田自衛官は、この素晴らしい(何ともファンタジーな)交流会が終わる事を密かに名残惜しく思いつつも……日本語で理由を話し、続く様にレレイが通訳として話し始めた。

 

 「〈私達は隊長を連れて帰りますので、そちらの事はそちらへ……〉」

 

 「我々は隊長を連れて帰る。そちらの事は我々に関係ない」

 

 その言葉に再び、”死神の鎌”が自分や帝国の首に近づいてきた感覚を思い出したピニャ殿下は、必死の形相で引き止め出す。

 

 「そっ、それは困るッ! も、もう朝だ。そうだ! 朝食を用意しようッ! 帝国一豪華な物をなッ!? それに、和解の意を込めて……豪華な晩餐なども含めた、騎士達との歓談の場を……ッ!」

 

 ピニャ殿下の必死の形相に、その真意は分からずとも少々引き気味な気分になってしまう富田ニ曹。そんな彼もそうだったがそれを聞き、この場所(フォルマル伯爵家)天国(・・)と思っていた”ケモナー自衛官”の倉田三曹が、少々苦笑い気味に日本語でこう答えた。

 

 「〈申し訳ないですが、伊丹隊長は国会で参考人招致(しょうち)されてまして……今日にはアルヌスに帰らないとやばいんです〉」

 

 「イタミ隊長は元老院(げんろういん)に報告を求められている。今日には帰らねばならない」

 

 その言葉を聞いたピニャ殿下はそれはもうゾンビ(リー◯ッド)の如く、カラカラになりかねない勢いで……更に血の気が引くような感覚を感じていた……。

 

  「(元老院に報告!? こんな少部隊の隊長が、近衛騎士団並みのコネ(エリートキャリア)を持っていたのか!?)ででで、ではッ! 妾も行こうッ! 妾もアルヌスへ同行させて貰いたいッ!」

 

  イタミの報告一つで自衛隊が動くと判断したピニャ殿下の決断は、それはもう……”ハイラル王国の郵便(ポストマン)”の如く早かった。

 

 「此度の協定違反、ケングン団長か上位の指揮官に正式に謝罪をしておきたい。……よっ、宜しいか? イタミ殿……?」

 

 「え!? え〜と……招致まで時間が無いですし、車も狭いので……リンクも乗るから、後一人位なら……」

 

 「あれ? そう言えば……エポナは?」

 

 「先にアルヌス行ったみたいで、駐屯地から連絡があったわ。家が牧場だったり……動物好きな隊員が世話しようとも、ほとんど言う事を聞かず暴れて大変だから、早く抑えてくれ……って」

 

 

 ふと、思い出したリンクの疑問に栗林が応えてくれた。全く……! (オレ)を置いて逃げやがったな……! ……いや、今回は”タルミナの時と(ロマニー牧場で)ドコか似た(保護されていた)感じ”だし……自分じゃ無理と判断しちゃあ、助けを求めたのかなぁ……。

 

 「一人……か。ならば、妾だけで行こう。ハミルトン、しばらく妾の代行をせよ。騎士団の者達は、お前に任せる」

 

 

 「ちょ!? 殿下一人で行かせる訳には参りませんッ!」

 

 「そうですよ殿下ッ! 我々も同行するよう、どうかお考え直しをッ!」

 

 「しかし……一人しか乗れんと言っておるぞ」

 

 リンクも同様な思いであったが……彼女達の”真意”を知らないイタミ達は、『どうでもいいから早くしてくれ』……って顔をしていた。

 

 「あ、じゃあこうすれば……」

 

 ◆

 

 数時間後……。アルヌスの丘に繋がる、テッサリア街道を駆け抜ける高機動車の中では……?

 

 「イ〜ヤ〜//! ハ〜ナ〜シ〜テ〜///ッ!」

 

 「コラ! 我儘(ワガママ)言わない!」

 

 ……一応の同族(エルフ)である、テュカの膝に座らされていたリンク。恥ずかしいのか、暴れるので無理矢理抑え込まれていた。

 

 「〜! 〜! (クリ(ロマニー牧場)ミア(のオーナー)さん程じゃ無いけど……さっきから、テュカ姉の胸が当たっ(ぱ◯ぱ◯し)て恥ずかしいんだよッ!?)」

 

 「フフ、ボウヤにはお似合いよぉ……? それに、満更でも無さそうだしぃ」

 

 「〜〜〜///ッ!」

 

 ……少し前の”イタリカ攻防戦”時の意趣返(いしゅがえ)しなのか……その光景を面白がっては、赤面するリンクをクスクスと笑いつつもイジるロゥリィなのであった……。

 

 

 

 


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