伏線バラまきますよ~
冬夜がオリムラ先生と戦っていたミカを回収した後、俺達は学園寮の1025室へと戻ってきた。
「こっち異常ないわよ」
「こちらも問題ありませんわ」
「どうやら先生達は撒けたようだな」
それぞれ見張りをしてくれているリン、セシリア、ホウキからそう連絡が入る。
「それじゃ、これでお別れか。なんか悲しいけどオルガ達は元の世界に戻りたいんだもんな。この世界にはもういられないだろうし……」
「すまねぇな、イチカ。この世界に俺らが来た事で本来この世界にいたはずの俺らが消えちまう事になっちまって……思い出とかもあっただろ?」
「関係ねぇよ。オルガはオルガ、ミカはミカだろ。まぁ、確かに少し寂しくなるけどさ。泣き事は男らしくないからな」
「ありがとう、イチカ」
「ふへっ、お前も立派な鉄華団の男だな」
「団長が教えてくれたんだぜ?「止まるんじゃねぇぞ」ってさ」
「……そうか」
「だから、オルガもミカも止まるんじゃねぇぞ!」
「あぁ……わかってる」
きっとこの世界の俺は幸せだっただろうな。こんなあったけぇ仲間に囲まれて……。
俺は次にシャルとラウラの方に向き直り、別れを告げる。
「シャルとラウラもサンキューな。二人が信じてくれたからここまで戻ってこれた。この世界の鉄華団にもちゃんと会って心を通わせられた。全部、二人のおかげだ」
「ありがとう。シャルロット、ラウラ」
俺とミカは二人に感謝を述べるが、二人は何故か顔をうつむかせたままだった。
そんな二人の様子に俺は疑問を覚え、「どうかしたのか?」と声を掛けようとしたが、それより先にイチカと冬夜が口を開く。
「シャルロット、ラウラ。オルガ達について行きたいなら一緒に行ってもいいんだぞ?」
「僕達は来てくれた方が心強いです。ね!オルガ、ミカさん」
その二人の言葉にシャルとラウラは顔を上げる。
なんだよ……。そういう事なら早く言ってくれりゃいいのによ。
「いいの……?」
「あぁ、シャルが居てくれると助かる」
「本当に良いのか……?」
「うん。俺もラウラと一緒にいたいな」
「じゃ、じゃあ……」
「なら……」
俺はシャルの手を、ミカはラウラの手を取り、俺達は1025室の扉を開けた。
「さよならは言わないぜ。オルガ、ミカ!」
「また会う日まで……というやつだな」
「オルガ団長、三日月さん!それにシャルロットさんとラウラさんもどうかお気をつけて」
「僕もいるんだけどな……」
「アンタ達!止まるんじゃないわよ!!」
「あぁ、本当に世話になった。お前らこそ止まるんじゃねぇぞ……!!」
「またね。みんな」
「ありがとう。一夏、みんな!!」
「このIS学園での生活、決して忘れん……!!」
イチカ達の為にもますます俺達は止まれなくなった。だが、それでいい!
俺達は鉄華団だ。今までもこれからも決して枯れない、止まらない鉄の華だからな!!
そして、オルガ達がこの世界から脱した頃、IS学園の生徒会室ではとある姉妹と教師がこう言葉を交わしていた。
「楯無、君はいいのか?」
「何が?私にはオルガ君や三日月君を止める理由も異世界に行きたい理由も無いわよ。それよりも簪ちゃんのが行きたかったんじゃないの?」
「ううん。私はいいの。シャルロットさんとオルガの間には入れないって分かったから」
「そう……」
楯無と呼ばれた青髪の生徒会長──更識楯無は妹である簪の言葉を聞いて、少し悲しそうな表情をするが、簪の心は晴れやかであった。
(オルガ、シャルロットさん。二人の幸せを心から祈ってます……)
「しかし、生徒が減るのは問題ではないのか?」
「確かに専用機持ちが一気に四人も減ったのは痛手だけど、別に問題はないわ。忘れたの?私は生徒会長なのよ」
「彼らが抜けた穴は君が埋めるという訳か。頼もしい限りだな」
「お姉ちゃんだけじゃない。私も一夏君達も頑張るから」
「簪ちゃんの言うとおりよ。……それにファリド先生も旅立つんでしょう?篠ノ之博士から貴方宛に届いていた手紙、悪いとは思ったけど勝手に読ませてもらったわ」
「君も読んだのか。ならば私もそろそろ行くとしよう」
ファリド先生と呼ばれた金髪の教師──マクギリスは、そう言って生徒会室を後にする。
「あっ、ファリド先生!忘れ物よ」
楯無は生徒会長の机の引き出しからとある仮面を取り出し、マクギリスへと投げ渡す。
マクギリスはそれを受け取り、笑みを溢した後、その仮面を顔に付ける。
「もうファリド先生ではないよ」
「あら、そうなの?」
「じゃあ、どう呼べばいいんですか?」
そして、仮面の男はこう名乗った。
「モンタークで結構。それが真実の名ですので」
所変わって、篠ノ之束の移動式ラボ内では──
「ちーちゃんでも驚く事あるんだね~。異世界って言葉慣れてないみたいだし、面白かった~」
「……それは良かったですね」
「良かった良かった良かったよ~。可愛いちーちゃんの声が聞けて束さんは満足です。…………それでキラくん?」
「はい……?」
「マッキーの新しいISとキラ君の専用ISどこまで組み終わった?」
束にそう言葉を掛けられた少年──キラ・ヤマトの前には紅色の戦姫の名を冠したISと自由の名を持つ蒼天の翼を広げたISが置かれていた。
そして、
「……IS学園に侵入しているレインから連絡があったわ。セカンドマンとサードマン、それにデュノア家の妾とドイツの
「分からぬさ、誰にも……この先はな」
「織斑一夏はこの世界に残るのだな。ならば私には関係ない話だ」
「……ではエム。君とはここでお別れになるか。悲しいな」
「私は全く悲しくもないがな」
「その言い草も悲しいよ。私は君の事は好きだったがね」
「ふん……!」
「……それで連れていくのは結局誰なのだ。私も悠長に待っているほど暇ではない」
「まぁ、慌てるな。ユラ」
この中で一人だけ明らかに人間とは違う生命体だと一目で分かるのが全身が水晶で出来た身体をしているユラと呼ばれたこの男。
彼はフレイズの支配種である。
「スコール。以前奪った福音のコアはもらっていくぞ」
「そういえば、前回京都を襲撃した時に貴方のISは破壊されていたわね」
「直すさ。だがそれまでの繋ぎの機体もいるのでな。シグー……いや、ゲイツにするか」
「いいわ。持っていきなさい」
「では、ユラ。行こうか」
「うむ。貴様の力、当てにさせて貰う」
こうして、異世界への扉は開かれた。
「くくくっ、面白くなってきたね。そう思わないかい?メル様?」
「…………」
「そんなに警戒することはないじゃないか」
「無理矢理連れてこられて警戒するなという方が難しいです」
「なるほど。それは確かに君の言う通りだ。これはボクの手落ちだったね」
そう笑顔で語る
(エンデ……貴方は今、どこにいるの?)
篠ノ之束、
次回『幕間~鉄華団炊事担当 シャルロット~』
お楽しみに!