Re:Imagination Orga   作:T oga

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次の異世界へ行く前に一旦小休止です。



幕間 ~鉄華団炊事担当 シャルロット~

「腹へった~」

 

イチカ達の世界からアドモス商会に戻ってきたミカが最初に言った台詞はそれだった。

 

「ねぇ、オルガ。仕事の後は腹減るんだよ」

「……つってもな。ここの冷蔵庫なんも入ってねぇぞ」

 

俺が最初、砂漠の世界に行った時に飲み物を探しにこのアドモス商会にある冷蔵庫を開けて中を確認した事はあるが、冷蔵庫の中身はからっぽだった。

あの後、何か入れた覚えもないからまだ冷蔵庫には何も入ってねぇはずだ。

 

「昨日野宿の時に出してもらった焼き鳥みたいなの、冬夜まだあるか?」

 

俺は冬夜にそう聞く。

昨日、IS学園から少し離れた森に逃げ込んだ時、冬夜の収納魔法【ストレージ】から焼き鳥を出してもらってそれを夕飯にした。

 

冬夜の【ストレージ】は良くわからねぇが中のモノの時間を止められるらしい。

だからだろう。【ストレージ】の中に入れてあった焼き鳥は暖かった。

 

「あるにはあるけど……ここ調理室とかないの?折角ならちゃんとした物でお腹膨らませたいなぁ」

「調理室……?」

 

俺はそんな部屋に検討もつかず首を傾げるが、ミカは知ってるようでこう答えた。

 

「料理する部屋なら確かあるよ。アトラとかククビータさんもよく使ってた」

 

あるのかよ……じゃあ砂漠の世界に行った時もそこで水飲めば良かったじゃねぇか……。

まぁ、過ぎた話はもういい。そんなことより……

 

「……冬夜は料理出来んのか?」

「……スマホでレシピを調べれば?」

 

……不安だ。

 

「どうしたのだ?」

「何の話をしてるの?」

 

俺らがそんな話をしているとアドモス商会の二階の客間を覗きに行っていたシャルとラウラが戻ってきた。

 

アドモス商会に来てまず先に異世界へ行くカメラを覗きに行ったミカや冬夜と違い、これから住む場所を見ておきたいって考えるのはやっぱ女の子だからなんだろうな、などと考えつつ俺は冬夜としていた話をシャルとラウラにも話した。

 

すると、二人はこう言った。

 

「なら僕が何か作るよ!」

「私も手伝おう!」

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「止まら~ない からだじゅ~うに♪」

 

鼻歌を口ずさみながらアドモス商会の事務所の奥にあった小さな調理室で何やら料理を作っているシャル。

冬夜がそこらの布を【モデリング】して作ったエプロン姿がめちゃくちゃ似合ってる。可愛い。

冬夜には感謝しなきゃだな。

 

「シャルロット、じゃがいもの皮むき終わったぞ」

 

同じくエプロンを掛けるラウラも手際よくじゃがいもの皮むきを終えた。でもそのナイフ、料理で使うもんじゃねぇよな?サバイバルナイフっつーやつか?まぁ、いいけどよ。

 

ちなみに今、シャル達が使っているじゃがいもやらタマネギ、ニンジンなどは冬夜の【ストレージ】から出した物だ。

お前ホントなんでも持ってるな……。

 

「ありがとう、ラウラ。じゃあ次はそのじゃがいもを半分に切って鍋に入れてくれる?」

「了解した」

 

ラウラはそう言うと、ダンッ!という音を立てながらじゃがいもを真っ二つに斬っていく。「切る」ではなく「斬る」だ。

そっちのがしっくり来る。

 

「シャルロットさんは料理部に所属してたって聞いたし、料理のする姿も様になってるから安心して見てられるけど……ラウラさんは大丈夫かな?」

 

冬夜が調理室の様子を覗きながらそう言う。

 

するとミカが冬夜にこう言った。

 

「俺のラウラを馬鹿にしないで」

「……ごめんなさい」

「すいませんでした……」

 

俺のラウラって……いや、あの世界のミカとラウラは夫婦?だったらしいからな。間違いじゃないんだろうが……。

 

と、そこまで心の中で呟いてふと思う。

 

俺とシャルはどんな関係だったんだ……?

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

数時間後──

 

「はい!出来たよみんな!」

 

事務所で待ってた俺らにシャルとラウラが作った料理を披露する。

 

作った料理はポトフのようだ。

 

「コンソメとソーセージかベーコンがあればもっと良かったんだけどね……」

「あー、ごめんね。もっと【ストレージ】に材料入れとけば良かったかな?」

 

冬夜はそう謝るが、シャルは笑顔でこう言った。

 

「ううん。大丈夫!塩こしょうは調理室に置いてあったし、冬夜君の用意してくれた野菜も結構あったからそれを炒めて入れるだけでも充分味は出るよ!」

「うん。うまい」

 

ミカが真っ先に料理に食い付く。相当腹減ってたんだな。

さて、んじゃ俺も……っと。

 

「おお!めちゃくちゃうまいぞ!シャル。これからの炊事担当はシャルでいいんじゃねぇのぉ?なぁ?」

「私も!!作ったのだが!!」

「あっ……すまねぇなラウラ」

「全く……」

 

ラウラが拗ねちまった……。

ミカもポトフを口に入れながら睨んでくるし……勘弁してくれよ。

 

「ふふっ、ありがと。オルガ!」

「お、おぉ……」

 

まぁ、でもシャルが嬉しそうな顔をしてくれたし、悪い気分じゃねぇな。

 

そんなシャルの笑顔を見て俺はとある事に気付いた。

 

なんだよ……。思ってみれば簡単な事じゃねぇか。

 

前の俺とシャルがどうだったかなんて関係ねえ!思い出はこれから先いくらでも作れるんだからな!!

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

そして食べ終わった後、ラウラがこう話を切り出した。

 

「そういえば、このアドモス商会の社長室にあるという異世界を見るカメラ。まだ私達は見せてもらっていないな」

「あっ!そうだった!オルガ達はもう見たの?次の世界行けそう?」

 

実は俺とミカ、冬夜は先ほどシャルとラウラが料理を作っている間にカメラを覗いて次の異世界の景色が見えるか試していたのだ。

 

そこにはIS学園ではない別の場所が写っていた。つまり、オリムラ先生から逃げるようにアドモス商会に来た俺達だったが、無事次の異世界には行ける事が証明された訳になる。

 

「うん、行けるみたいだよ」

「アメリカの都市外れみたいな街並みだったかな」

 

アメリカってのは、俺達の世界で言うとSAUの経済圏に位置するところらしい。

 

まぁ確かに言われてみればSAUで似た街並みを見たかもしれねぇな。

 

「へぇ~。見せて見せて!」

「興味深い……!早く見せろ!」

「ふへっ、待ってろよ……」

 

ウズウズワクワクしている二人を俺達は社長室へと連れていく。

 

そこのカメラを覗いてシャルはこう言葉を漏らした。

 

「うわ~。青くてキレイな月だね。でも何だろう?本物じゃないみたい……」

 

そう。俺達が次にやって来たのは青い月が煌めく世界。

 

この世界で俺とミカは因縁のアイツらと再び戦う事となる。

 

 

 




鉄華団が新たにやって来た異世界はラスタル・エリオン率いるギャラルホルン月外縁軌道統制統合艦隊アリアンロッドのいる世界だった!

次回『アリアンロッドのいる世界』

お楽しみに!

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