Re:Imagination Orga   作:T oga

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※鉄華団は出てきません。
※インフィニットオルフェンズ2ノベライズのネタバレが少しあります。

とりあえず現状のストックが減ってきたので次回以降はまた日を改めて投稿する予定です。
少し期間が空きますが、それまでお待ちいただけると幸いです



幕間 ~螺旋の邂逅~

レイチェルがオルガ達の旅についていく事を決意した日の夜──

 

青い月の光が射し込む夜空で二機のISが激しくぶつかり合っていた。

 

「君を彼らの元に辿り着かせる訳にはいかない。君の相手は私がしよう」

「その剣技、その戦い方、また君か!こんな異世界まで追ってきて、厄介なやつだよ、君も」

 

一機は深紅の装甲と兎の耳のような二本のアンテナが特徴的なIS

両腕のシールドから剣を展開し、敵機目掛けて接近を試みる。

 

対するもう一機はパールグレーの機体色で単眼(モノアイ)式の頭部メインカメラを持つトサカ頭が特徴的なIS

背中の大きなスラスターも特徴的であると言えよう。

右手に持つ銃から()()()を放ち、敵機の接近を防いでいた。

 

両機とも全身装甲(フルスキン)のISで中の操縦者は見えないが、声から察するに男だろう。

 

ISの世界で確認されていた男のIS操縦者は計五人、その内二人はオルガ達がISの世界を訪れた為、世界から消え……

 

残った三人は

織斑一夏

マクギリス・ファリド

ラウ・ル・クルーゼ

 

織斑一夏がISの世界から異世界へ旅立ったという情報はない。

この異世界に他の男性IS操縦者がいるという可能性もないことはないが、その確率は限りなくゼロに近いだろう。

 

その為、二人とも機体は変わっていても中の操縦者はお互いに察する事が出来た。

 

「やはり亡国機業(ファントムタスク)のラウ・ル・クルーゼだな。あのBT兵器が無くとも、簡単に接近はさせてくれないようだ」

「そう言う君はIS学園のマクギリス・ファリドだろう?あの白いIS──バエルだったか?あれはどうしたのだ?」

「今の私はモンタークだ。マクギリスではないよ」

「ほう……」

 

一先ず、接近を諦めたモンタークのIS『グリムゲルデ』は両腕のヴァルキュリアブレードをシールドの裏側にマウントし、拡張領域(バススロット)からヴァルキュリアライフルを呼び出(コール)し、発砲。

 

クルーゼのIS『ゲイツ』はその銃弾を左腕の盾で防ぎつつ、右手に持つビームライフルで応戦する。

 

「その機体には射撃武器もあるのか。良い機体だな、()()()()()()()()

「その言葉……アグニカ・カイエルへの侮辱と捉えるぞ!下衆めっ!!」

 

クルーゼの煽りに対して激情したモンタークは再びヴァルキュリアブレードを展開し、瞬時加速(イグニッションブースト)

一気にゲイツへと迫る。

 

しかし、無論それは罠であった。

 

「今だ、ユラ」

 

クルーゼが小さくそう呟くと、何もなかったはずの夜空が急に歪曲し、四方の異空間から水晶の触手が伸びてくる。

 

その四つの水晶の触手によってグリムゲルデは拘束されてしまった。

 

「……っ!?もしやこれは束の言っていた…フレイズか?」

「その通りだ。マクギリス・ファリド……いや、モンターク」

 

そして、モンタークの目の前の空がまた歪曲し、そこに現れた異空間から一人の男が出てくる。

 

その男は全身が水晶で出来ているフレイズの現王。ユラであった。

彼とともに、モンタークのグリムゲルデを拘束した触手が伸びてきた四方の異空間からもそれぞれ触手を伸ばしたフレイズが現れる。

 

「あのシノノノタバネとかいう人間の女……どこまで多元世界について知っているのだ?もしやあの女もエンデュミオンと同じ『渡る者』……『シフトウォーカー』なのか?」

 

四匹の巨大なフレイズ──上級種を引き連れたユラはモンタークにそう尋ねるが……

 

「私に聞かれても知らんな」

 

モンタークはこう答えるのみであった。

 

ユラは数秒間、グリムゲルデをジッと睨みつけた後、ため息をついてこう言った。

 

「……どうやら、本当に知らないようだ」

「分かるのか。ユラ?」

「我々、フレイズは共鳴音……人の心の音を聴く事が出来るのだ。彼の音は嘘をついてる者の音ではない」

「ふむ……。やはりどの世界でも人は所詮、己の知る事しか知らぬという訳だな」

 

クルーゼとユラが話している間、モンタークはこの場にフレイズが現れた事について動揺していた。

 

(フレイズと亡国機業(ファントムタスク)が手を組んだのか?……いや、違うな。おそらくラウ・ル・クルーゼ自身がフレイズと手を組んだのだ。亡国機業(ファントムタスク)の目的とフレイズの目的はおそらく合致しないはず……)

 

「……あぁ、君の想像のとおりだよ。我々フレイズは亡国機業(ファントムタスク)と手を組んだわけではない」

「……っ!?」

 

(何故、心の声が……!?)

 

「何故だと?先ほど言ったではないか。我々フレイズは人の心の音が聴こえるとな」

「マクギリス・ファリド……いやモンターク。彼らを甘く見ない方がいい。フレイズは結果だよ。だから知る!この多元世界は自ら育てた闇に喰われて滅ぶのだ。そして私にはあるのだよ!この多元世界でただ一人、全ての世界を滅ぼす権利がな!!」

 

クルーゼが能弁に語る。

 

それほどに彼の心は憎悪に満ち溢れているのだろう。

モンタークは以前、ISの世界でキラ・ヤマトから聞いた忠告を思い出した。

 

『気を付けて。あの人は…僕のいた世界での…色々な、良くない部分を、一番見てきた人です。……だから強い。もしあの憎悪が、この世界にも向けられるなら、それは止めないといけない』

 

その憎悪がISの世界だけではなく、全ての世界に向けられてしまったという事だ。

 

そこまで思考してモンタークは一つ、疑問を浮かべる。

 

「……ならば、君は何故、フレイズとともにISの世界を滅ぼさなかった?亡国機業(ファントムタスク)と袂を別ち、そうする事も出来たはずだ」

「…………」

 

クルーゼは何も言わない。

 

しかし、その隣でユラは笑みを浮かべていた。

 

一体、彼らは何を企んでいるのだろうか?

 

「……君が何を望もうが、願おうが、もう無意味だ。どう足掻いたとて、君はここで死に絶える運命(さだめ)なのだからな」

 

クルーゼは一言そう言って、ゲイツの左腕の盾に内蔵された2連装ビームクローを展開させ、それをフレイズに拘束されたグリムゲルデへと振り下ろす。

 

その時だった──

 

《それでも僕は……!》

 

突如現れた閃光に遮られ、ゲイツは後方へと退く。

その閃光はまるで神の炎。

 

「……っ!?」

 

ゲイツが避けた炎の光はそのまま一匹のフレイズの上級種へと向かい、光を浴びたフレイズの上級種はそれに飲み込まれ、四散した。

 

「何っ!?上級種を一撃で葬るだとぉ!?」

「あの機体は……!?」

 

ユラとモンタークはその光の出所である地上に立つ白き機体を見る。

 

その機体には赤いバックアップや緑の砲台、青い刀剣がこれでもかと取り付けられていた。機動力の低下や取り回しの重さなどは考えられていない。重武装の機体。

 

「……ストライク。ムウ…いや君か、キラ・ヤマト」

 

パーフェクトストライク。『エール』『ソード』『ランチャー』の各種ストライカーパックの特性を全て併せ持つマルチプルストライカーを装備したストライクの姿。

かつて煌めく雲海で三日月のバルバトスルプスと激しい戦闘を繰り広げた無人ISと同じものである。

先ほどの炎の光は左腕に抱えた320mm超高インパルス砲『アグニ』だ。

 

 

そして、そのストライクから拡声器越しに彼の声が聞こえてきた。

 

《種を植えるだけじゃない。多くの花が咲き続ける世界を僕らが護っていくんだ!》

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

パーフェクトストライクが右手に持つ対艦刀『シュベルトゲベール』でグリムゲルデを拘束するフレイズの触手を全て叩き斬ると、モンタークはすぐさまクルーゼとユラから離れて態勢を立て直す。

 

「すまない、キラ君。助かった」

《いえ、束さんにはマク…モンタークさんをサポートするようにと言われているので》

 

ちなみにこのパーフェクトストライクは束から借り受けたキラ専用の移動式ラボの中から遠隔操作している。

そして、この移動式ラボは異世界間の移動も可能とするのだ。

 

どういう原理で異世界間の移動を可能にしたのかは束しか知り得ない情報である。

 

キラの操るパーフェクトストライクはクルーゼのゲイツへ向けて、アグニを掃射。ゲイツはそれを避けるが、その隙をついて接近し、シュベルトゲベールで斬りかかる。

 

《やはり、貴方は世界を滅ぼそうというんですか!?》

 

パーフェクトストライクのシュベルトゲベールを盾で防ぎながら、クルーゼはキラの問いにこう答えた。

 

「私達の居た世界も、織斑一夏の居たあの世界もやはり人は戦いを求める。引き金を引く指しか持たぬ。だから滅ぶ。世界は!人は!滅ぶべくしてな!!」

《それは貴方の理屈だと!》

 

キラはそう叫びながら、シュベルトゲベールを手放し、次はビームサーベルを抜いて、再度斬りかかる。

 

《そう言ったはずだぁぁ!!》

「くっ……!」

 

ゲイツはパーフェクトストライクのビームサーベルをすんでのところで避け、距離を取ろうとする。

 

《確かに人はどれだけ花を咲かせても、また吹き飛ばしてしまうのかもしれない》

 

しかし、そのクルーゼの判断は悪手だった。

 

《それでも、人はまた花を植える!そして、僕らがそんな世界を護るんだ!》

 

キラはそう決意の叫びを上げながら、距離を取ろうとするゲイツへ正確にアグニを向けて、その光を放つ。

 

何とか上昇して避けようと試みたクルーゼだったが、ゲイツの左足はアグニの光で溶けて消えてしまった。

 

「……撤退だ、ユラ」

 

クルーゼは左手を剣の形に変え、モンタークのグリムゲルデと斬りあっているユラへとそう言った。

 

「確かに、これ以上戦闘を続ければ我々は不利か」

 

ユラは一度、グリムゲルデの目の前から姿を消し、瞬間移動のごとくクルーゼのゲイツの隣へすぐさま移動する。

 

「まもなく最後の扉が開く!…私が開く!そして世界は終わる!全ての世界が!」

「我々…いや私がメル様を取り込めば、全ての世界を滅ぼす力が手に入る!そうなれば、我々の勝ちだ!」

「もう誰にも止められはしないさ!この多元世界を覆う、憎しみの渦はな!」

 

そう言葉を残して、ユラとクルーゼは異空間へと消えていった。

 

「ありがとう、キラ君。助けてもらった件、もう一度礼を言わせてもらうよ」

「いえ、あの人とはやっぱり……僕が決着をつけないといけないかも知れません」

「君のISは……?」

「残念ながらまだです」

「ならば、君はそのISの調整を急いだ方がいい」

「そうさせて頂きます。オルガさんと三日月さんについては……」

「わかっているよ。鉄華団とは早急に合流した方が良さそうだ」

 

そう言ってモンタークもまた異世界へと旅立つ。

 

 


 

 

「ふむ。レイチェル・ガードナーは見失ったか」

「はい。申し訳ございません。ラスタル様」

「やはり、私も捜索に出るべきだったのだ!」

「イオク様は黙っていて下さい」

「なんだと!?」

「ということはもう鉄華団はこの世界から旅立ったのかもしれんな」

「その……ラスタル様の意見を否定する訳ではないのですが、その異世界…こことは異なる世界など本当にあるのでしょうか?」

「私は反対です!あのような人外の異生物と手を組むなど!」

「イオク様と意見を同じくするのは癪ですが…私もそう思います。それにあの仮面の男も信用出来ません」

「しかし、本当にあのユラという者が人外の異生物であるならばやはり異世界でもないと説明がつかん。そして、仮面の彼の言う事にも一理ある」

「…………」

「それは……」

「それに私は見てみたいのだよ。もし本当に異世界があるなら、そこはどんな世界なのか、とな」

 

そして、彼らもまた導かれる。

 

 




誕生日──それは孤児達にとってあまりいい思い出が少ないものだった。オルガや三日月は自分の生まれた日すら知らない。しかし、仲間とともに、家族とともに過ごす誕生日は戦う彼らに安らぎと平穏を与える。

次回『外伝 ~???の誕生日~』

6月10日18時から、お楽しみに!



この日は誰の誕生日でしょう?



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