俺とミカは冬夜から別の世界の俺らについての説明を受けた。しかし……
「正直ピンと来ませんね」
俺にはさっぱり分からなかった。
「オルガはそう言う気がしてたよ。ミカさんは分かりました?」
冬夜がそう聞くと、ミカは「うーん」と唸りながらも答え始める。
「つまり、俺やオルガが元の世界で死んだ時、魂が何十個にも別れてその魂一つ一つが俺やオルガの形になったってこと?神様や冬夜が会ったっていう俺とオルガは元は同じ存在だったって……」
「はい。そういうことになります」
「すげぇよ、ミカは……」
魂が生まれ変わって
その俺らは冬夜と会った記憶があるやつとないやつ。そもそも元の世界の記憶がないやつなんかもいるらしい。
同じ姿の俺が別の世界に何十人もいるなんて、ホント勘弁してくれよ……。
「そして、別の世界のオルガ達がほぼ共通して持ってる力が【希望の花】」
「なんなんだよ、そいつは……」
「オルガにもその能力があるか、ちょっと試させてもらうね?ミカさんは手を出さないで」
「……?わかった」
「は?」
パンパンパン
俺は冬夜が懐から取り出した変な形の銃でいきなり撃たれた。
……痛ってぇ……。
血が……止まらねぇ……。
なんで、こんな事で殺されなきゃならねぇんだ……。
「オルガっ!?」
「待って、ミカさん!」
「オルガを殺るなんて聞いてない……!」
ミカが冬夜の胸ぐらを掴み、冬夜の体を持ち上げているのが、薄れていく意識の中でなんとなくわかった……。
「オルガ!「止まるんじゃねぇぞ」って唱えて!!」
冬夜の焦った声が聞こえる。
良く分からねぇが、言われた通りにするしかないみたいだ。
俺は薄れゆく意識の中、何とかその言葉を口にした。
「止まるんじゃ……ねぇぞ……」
しかし……何も起こらなかった。
勘弁……して、くれよ……。
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「【リカバリー】」
その冬夜の呪文とともに、俺は死にかけの状態から復活した。
俺が朦朧としながら、立ち上がるとミカがすぐに駆け寄ってくる。
「オルガ!?」
そして、その後ろからやってきた冬夜が、頭を下げて謝った。
「ごめんオルガ!僕達の知っているオルガには【希望の花】っていう蘇生能力があって、「止まるんじゃねぇぞ」って唱えれば何度でも甦る事が出来たんだ。てっきりオルガにも同じ能力があると思って確認したんだけど、まさかこんな事になるなんて……ホントごめん!」
別の世界の俺はそんなトンでもねぇ能力を持ってるのか……すげぇよ……。
「理不尽に殺されたのは確かに文句の一つも言いたくなるが、さっき魔法で俺を直してくれたのもお前だろ?もう何も言わねぇよ」
「ありがとう。本当にごめんなさい」
そんな時、冬夜の懐にしまってあった携帯端末が鳴り響いた。
ピロピロピロピロ
「……?ギルドのレリシャさんからだ。何だろう?」
冬夜がそう言って、携帯端末を耳に当てる。どうやらあれは電話のようだ。
電話越しに俺の耳にも女の声が届く。
《
フレイズ……?
さっきからピンとこねぇ話ばっかしやがって……いったいなんなんだよ……。
「場所はベルファスト王国、パラメス領の領都、パラメイア!出現数はおよそ五千!明日には結界が破られるみたいです!!」
「何だって!今日中に避難指示を出さないと!すぐにベルファスト国王に連絡します。ギルドも避難誘導を手伝って下さい!ユミナにも連絡しなきゃ!」
電話を受けた冬夜が血相をかいて、電話の向こうの相手に指示を出す。
そして、電話が終わったかと思ったらまた別のやつに電話を掛けた。何回も何回も……。
しばらく放置されていた俺らだったが、最初の電話から15分くらい経った頃、金髪でオッドアイの少女がやってきて俺らを案内すると言い出した。
その金髪オッドアイの少女──ユミナとか名乗ったこいつは長く広い廊下を歩きながらこう喋りだした。
「お久しぶりですとは言いません。貴方達が私達と出会っていない別世界のオルガさんと三日月さんなのはすでに耳にしています」
「ふーん」
心底どうでもよさそうなミカの相槌には何も反応せず、ユミナはミカにこう話しかけた。
「それを承知で三日月さんにお尋ねします」
「何?」
「バルバトスは……召喚出来ますね?」
は?バルバトスを召喚?
バルバトスはモビルスーツだ。この世界のモンスターとかじゃねぇんだぞ?
召喚なんて出来る訳が……
「……出来ると思うよ」
「は?」
「なら問題ありませんね。三日月さんもいらっしゃれば五千のフレイズなど恐るるに足りません」
話のついていけない俺はユミナとミカの話を遮ってミカに質問する。
「ま、待ってくれ!?ミカ!バルバトスを召喚なんて出来るのか?」
「うん出来るよ。バルバトスなら呼べば答えてくれる」
「すげぇよ、ミカは……」
良く分からねぇが出来るみたいだ……。
俺はまだピンと来てねぇが、ミカが出来るって言うんなら出来るんだろう。
そうして、ユミナに連れてこられたのは本がいっぱいある部屋だった。
いわゆる図書室ってやつか。
その図書室で待っていた背中に透明な羽を生やした銀髪の少女が俺らを見るなり、こう口を開いた。
「あら?貴方達が別世界のオルガと三日月なの?本当に見た目じゃ判断つかないじゃない」
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俺達がユミナに連れられ、図書室へとやってくると、そこではリーンとかいう妖精族の少女が待っていた。
その妖精族ってのもピンと来ねぇんだけどよ……。
そして、リーンはフレイズについて長々と説明をした。
「まぁ、今長ったらしく説明した事をまとめるとフレイズというのは体が水晶の様な物質と赤く光る核で構成された生命体のことで、様々な異世界を渡る事が出来るの。異世界へ旅立ったフレイズの王を探す為に色んな異世界へ渡ってはそこの住民をしらみ潰しに殺してるってわけ。それでそのフレイズの王……女王ね。その子は今この国に居る」
この世界に来てからピンと来ねぇ事ばかり言われて頭の中が止まりそうだ。
俺は話についていけていないが、ミカはちゃんと理解しているようで、リーンにこう確認をとる。
「で、そのフレイズは体が固くて、魔法を吸収して、ついでに傷ついても回復するんだっけ?」
「そうよ。さすが三日月。オルガと違って話が分かるわね」
「勘弁してくれよ……」
「バルバトスのメイスなら潰せるの?」
「以前、別世界のあなたがそのフレイズと戦った時は第4形態の太刀でなんとか傷をつけられたって聞いたわ」
「……元のグシオンと一緒か。わかった何とかするよ」
「頼むわね。核を砕けば再生する事もないわ」
「元のグシオンと一緒」というミカの言葉でやっとわかった。
とにかくブルワーズのグシオンと同じような硬い装甲のやつらが明日五千体も現れるっつーわけか。
「やべぇじゃねぇか……」
「そうよ。だから貴方達にも手伝って欲しいって言ってるわけ」
そういうことか……。
「よーし!鉄華団初の異世界での大仕事だ!気ぃ引き締めて行くぞー!」
「…………」
「うん。行こうオルガ」
「あ……あぁ」
もっと「おー!」とか、言えねぇのか……?
乗り悪いなぁ……ミカもリーンも……。
まぁ、ミカに言っても今さらだけどな……。
迫り来る
次回『
お楽しみに!