これを読んで「このスパロボ面白いな」って思ったら騙されたと思ってイセスマ本編も読んでみて下さい。アニメ版イセスマが苦行だと感じなかった人は面白いと感じるはずです。
ブリュンヒルド城の客間で一晩過ごして、その翌日。
俺達は今、広い高原に居る。
冬夜の【ゲート】とかいう魔法を使ったお陰で、城からここまでくるのは数分とも掛からなかった。
すげぇよ、冬夜の魔法は……。
俺が心の中でそう呟くと、隣に来たミカも同じ事を口にする。
「すごいね。冬夜」
「あぁ、【ゲート】といい【リカバリー】といい、冬夜の魔法は……」
「そっちもすごいけど、そうじゃなくて」
「ん?」
ミカは俺らの後ろにある本陣にズラッと並ぶモビルスーツと同じくらいの大きさの機体(「フレームギア」というらしい)を指差してこう言った。
「冬夜、一日であの数の機体を揃えちゃった」
あぁ、ミカが驚いてんのはそっちか。
確かにちゃんと数えた訳じゃねぇが百機は軽く超えるだろう。
「……あれが王様の権力ってやつなんだろうな」
「火星の王になってたらオルガも冬夜みたいになってたの?」
「いや、多分俺には無理だったろうな。俺は家族を……鉄華団を護るだけで手一杯だった。集められても数十機。金もカツカツだったしな……」
「そっか、やっぱりすごいね冬夜。まぁいきなりオルガを殺ろうとしたり、少しおかしいところもあるけど」
「あぁ、そうだな……」
俺とミカがそんな話をしていると、紫色の腰に刀をぶら下げた機体が近付いてきて、その機体から一人の和服の少女が降りてきた。
「冬夜殿は拙者達の自慢の夫でござるよ!」
「うん。その夫って話も聞いた時は驚いた」
その和服の少女──八重に対してミカがそう答える。
昨日、ユミナから聞かされた話だが冬夜には九人の嫁がいるらしい。全く羨ましい限りだ。
女との好いた惚れたは良くわからねぇ……。
そう感じた俺はすぐさま話を切り替える。
「エルゼとリンゼの双子姉妹、ユミナとリーン、それとお前がこの世界に居た俺の事を知ってるんだったな」
「拙者達がスゥ殿と初めて会った時にはオルガ殿も三日月殿も一緒にいたのでござるが……スゥ殿は印象がうすいと言っておったでござるよ」
スゥ……ってのは昨日紹介してもらった冬夜の嫁の中で一番年が低いスゥシィってやつの愛称だったな。
「そのスゥシィとは一緒に旅したって訳じゃねぇのか?」
「そうでござるな。どちらかといえばスゥ殿のお父上であるオルトリンデ公爵のがオルガ殿や三日月殿と顔馴染みでござるよ」
公爵とも顔馴染みだったのか……。この世界にいた俺とミカは……。まぁ、国王の冬夜もいるんだし、今さら感はあるけどな。
そんな時だった。
《空間に亀裂を確認! フレイズの出現兆候あり! 総員直ちに戦闘準備に入れ!》
警報が鳴り響き、本陣が慌ただしくなる。
「来たでござるな……!三日月殿もバルバトスの召喚を!!」
「わかった」
バルバトスの召喚……本当にそんな事出来るのか、ミカ?
俺が少し心配しながら隣でミカを見ていると、ミカはこう呟いた。
「【来い!バルバトス】」
するとその呟きとともにミカの左腕につけられていたミサンガが輝き、そこから発せられた光にミカが包み込まれる。
その途端、ミカを包んだ光はモビルスーツと同等の大きさまで広がっていき──
やがて光が晴れると、そこにはバルバトスルプスが
本当に召喚出来ちまった……。
何度も言ってるがまた言わせてもらう。
……すげぇよ、ミカは……。
そして、数秒待っていると、平原の奥からモビルアーマーの子機であるプルーマと同じような水晶の魔物の群れが現れた。あいつらがフレイズって魔物か……!
「あれが敵か……!」
ミカもフレイズを確認したらしく、臨戦態勢を整える。
「いざ!出陣でござる!!」
紫の機体に搭乗した八重の号令で後ろに待機していたフレームギアが一斉にフレイズの群れへ向けて突撃。
ミカのバルバトスルプスも大きく跳躍して、フレイズの群れへと向かっていく。
俺は元の世界でもこの世界でも見てる事しか出来やしねぇ……。少し歯痒いが、ミカの戦いを見守るのが鉄華団団長である俺の使命だ……。
こうして、ブリュンヒルド公国連合軍とフレイズとの戦闘が始まった。
────────────────────────────────────────────
「
冬夜の多様戦万能型フレームギア『レギンレイヴ』が畳まれた背中の翼を開き、十二枚の水晶板を展開する。
その十二枚の水晶板がさらに四つに分かれ、四十八個の短剣がレギンレイヴの前にズラリと並んだ。そして──
「行け!【
その掛け声とともに四十八個の短剣はフレイズの群れへとまっすぐ飛んで行き、その一つ一つが数十キロ先のフレイズを一体ずつ的確に突き穿つ。
「敵は下級種と中級種だけみたいだ!このまま殲滅する!各員、気は緩めないように!!」
「了解しました!冬夜さん」
そう答えるユミナの乗る機体は狙撃戦特化型フレームギア『ブリュンヒルデ』。
その白銀のフレームギアは片膝をついて、スナイパーライフルを構えていた。
「ユミナ・エルネア・ベルファスト、ブリュンヒルデ!狙い撃ちます!!」
所変わって、ブリュンヒルド公国連合軍中衛
「弾切れを惜しむ必要はないわね」
リーンの乗る殲滅戦砲撃型フレームギア『グリムゲルデ』が両腕と胸部に取り付けられたガトリング砲で何百発もの弾丸の雨をフレイズに浴びせた。
黒いグリムゲルデがある程度撃ち終わると機体に取り付けてある冷却口から排熱を行う。
その排熱の一瞬の隙をついたフレイズがグリムゲルデに近付くが──
「させ、ません!」
そこに飛んで来た青い戦闘機が変形し、細身の人型へとその姿を変える。
リンゼの空中戦可変型フレームギア『ヘルムヴィーゲ』だ。
ヘルムヴィーゲが手に持つライフルを構えながらリンゼは柄にもなくこう叫ぶ。
「一方的に攻められる、痛さと怖さを、教えてあげます!!」
そして、前衛では──
「今日の拙者は阿修羅すら凌駕する存在でござる!!」
「どんな装甲でも撃ち貫いてあげるわ!!部の悪い賭けは嫌いじゃないのよ!!」
八重の白兵戦軽装型フレームギア『シュヴェルトライテ』とエルゼの格闘戦突撃型フレームギア『ゲルヒルデ』がフレイズの群れへと斬り込んでいく。
その二機の後ろから一機の
その
「シェスカ、ロゼッタ、モニカ、準備はいいか?」
「グングニル、問題ありませン」
「レーヴァテイン、準備完了でありまス」
「ミョルニル、いつでもいけるゼ!」
「うむ、ならば行くぞ!冬夜!」
スゥシィのスマートフォンから冬夜へと連絡が入る。
「よし。スゥ、合体シークエンス開始。ドッキング承認!」
「フレーーームッ!チェーーーンジッ!!」
スゥシィの叫びとともにオルトリンデは空高く飛翔し、宙に浮かび上がってその手足を折りたたむ。
そのまま空中で、二つに分かれた万能地底戦車『ミョルニル』がそれぞれ右足と左足のパーツに変形し、オルトリンデの両足にドッキング。
同様に二つに分かれた弾丸装甲列車『レーヴァテイン』もそれぞれ右腕と左腕にドッキングし、その先から右手と左手が回転しながら飛び出した。
最後に高速飛行艇『グングニル』が背中に取り付くと、胸部から飛び出したマスクが頭部を覆い、額の角が光を放つ。
「完成ッ! オルトリンデ・オーバーローーーードッ!!」
合体してフレームギアの二倍ほどの巨体になったオルトリンデ・オーバーロードは右手にとある武器を召喚する。
「ゴルドッ!ハンマーーッ!!」
……これが、勝利の鍵だッ!!
────────────────────────────────────────────
「すげぇよ、冬夜も……リーン達も……」
冬夜とその嫁達のフレームギアが圧倒的な力を見せ、フレイズを殲滅していく中、ミカも同様にフレイズと戦闘を繰り広げていた。
《慣性制御システム、スラスター全開》
バルバトスルプスがフレイズの群れの真ん中へ落下していきながら、腕部200mm砲を収納状態のまま真下に発砲した。
ちなみに俺は今、本陣に居る。
ミカや他のフレームギアの
そのスマートフォンの映像には大きな土煙をあげて着地し、近くにいたフレイズをメイスで攻撃するバルバトスルプスが映っていた。しかし……
キィィン
《硬いな……それに丸っこいから
そう言ってミカが取り出した武器はバルバトス第5形態と第6形態で使用していたレンチメイス。
どうやらあのバルバトスルプスはすべてのバルバトスの武器を何もない空間から取り出す事が出来るようだ。
レンチメイスでフレイズを挟んで内蔵されたチェーンソー刃でフレイズを切り刻んだ。
《これなら、行ける……!》
そう言ってミカのバルバトスルプスはレンチメイス片手にフレイズの群れへと突っ込んでいった。
そして、ブリュンヒルド公国連合軍とフレイズとの戦闘は一時間程で決着がついた。
結果はブリュンヒルド公国連合軍の圧勝だ。
冬夜は戦闘後の事後処理の為、すぐに城へと戻ったが俺とミカはまだフレイズと戦闘を繰り広げてた平原に残っていた。
「ミカ。終わったな」
「うん」
この世界で俺らがやるべき事
それは冬夜達と出会い、この戦いを共に戦い抜く事だったのだろう。
「……なぁ、ミカ。次は何をすればいい?」
「そんなの決まってるでしょ」
「あぁ、そうだな。……行こう」
「次の異世界へ」
次回『旅立ちの世界』
お楽しみに!