ハイスクールすぐ死ぬ 旧タイトル:駒王新横浜協奏曲   作:鳩胸な鴨

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人外よ、震えて眠れ…という内容になってます。
変わらない下品よ、読者に届け…と思いながら書きました。


大パニック

新横浜の殺人鬼が捕まった翌日。

この世界と密接にありながら、別の空間に存在する世界…『冥界』にて。

 

「うん。今日も美味しい」

 

冥界のトップの一人…『魔王』と呼ばれる立場に居る青年が、屋敷のベランダにて紅茶を嗜んでいた。

彼の名は『サーゼクス・ルシファー』。

人格者として名の通った統治者である。

妻が淹れた紅茶…世界でこれに勝る紅茶はない。

そんなことを思いながら、茶菓子を口に含み、また紅茶のカップを手に取った。

 

 

 

「大変ですサーゼクス様ァッッッ!!!」

「おわァァァァァァァァァァーーーーーッッッ!?!?!?!?」

 

 

 

そんな憩いの時間ごと吹き飛ばされたドアが、サーゼクスに襲い掛かる。

 

 

しかし、流石は魔王というべきか。

吹き飛ばされたドアは容易く弾き飛ばされ、冥界の空を彩るお星様となった。

ドアを吹き飛ばした張本人…古参のドジっ子メイドは、何かを握りしめながらサーゼクスに詰め寄る。

 

「大変ですよ、サーゼクス様ァ!!」

「大変なのは君だよね?

ドア吹き飛ばすって、完全に殺す気だったよね?」

「へ?」

「うーん、見事なまでの無自覚ドジっ子」

 

言っても無駄だ。

説き伏せようにも数百年はかかるな、と一人呟き、サーゼクスは眉間を抑えた。

 

「そんなことより、この新聞を見てくださいよ!!」

「そんなことって、主人殺しかけておいてよく言えるよね」

 

流石にドアが突き刺さった程度では死なないが、心臓に悪いのは確かだろう。

悪魔でも人間でも、ストレスで体を壊し、挙句死ぬというのはよく聞く話だ。

このメイド、クビにした方がいいのでは…?

そんなことを考えながら、サーゼクスは渡された新聞に目を通す。

 

「『オータム新聞』…?聞いたことない新聞社だな」

「そっちじゃなくて、見出し!!」

「見出し……?」

 

サーゼクスは言われるがままに、新聞の見出し部分に目を向ける。

 

「…………………は?」

 

 

 

そこには、大々的に『神々は実在した!?衝撃!!人外だらけの社会!!』と書かれていた。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

世間は『人外』と呼ばれる存在を、いとも簡単に信じた。

ソレも無理はない。

ついこの間、『新横浜が入れ替わる』という怪奇現象が起きたばかりなのだ。

 

 

更に付け加えるなら、役所に勤める人間たちにより、『戸籍の数と人口が合わない』という問題が数年前から深刻化…。

トドメに『人間の記憶を弄るような存在も居る』ということが暴かれたことにも原因があった。

 

 

隠蔽しようにも、『オータム新聞社』の記者がアレやこれやと人外による問題を暴いていく。

無論、人外らは血眼でその記者を殲滅しようとするも、全滅。

割り当てられた全ての人員に、海よりも深く、スター○ォーズのダー○サイドよりも闇がタップリなトラウマが刻まれた。

 

 

社会問題にまで発展したソレを止める術は、人外たちには最早存在しなかった。

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「情報提供、ありがとうございます」

「いいいいいっ、いええええ、ここここのてて程度、なななんてこっとととないっすよよよよよ!!」

 

ロナルドの事務所には、一人の来客が居た。

男にしてはサラリとした長髪。

眼鏡がより映える、知的な顔立ちにビジネススーツ。

 

 

そして、それら全てを台無しにする『バトルアックス』。

 

 

「……フクマさん、なんでここに居るの?」

「オータム社の社員は、新人研修時に時空転移の取得を強要されますので」

「ソレ出版社員の必須スキルじゃないよね絶対」

 

 

彼こそ、ロナルドたちの恐怖の象徴。

世界最強…いや、『最恐』であり『最凶』の出版社『オータム社』のエリート。

その名も『フクマ』である。

 

「この度、この世界に『オータム新聞社』を設立することになりまして。

そのデビュー記事として、いいネタになりました」

『お、お役に立てたなら、何より……』

 

先日の感謝を伝えるために訪れていたバケモノ…『鳥羽』は、フクマの笑みに苦笑いを返す。

その視線は、どう考えてもフクマには似合わないバトルアックスに向けられていた。

 

『ねぇ、この人何?めっちゃ物騒なんだけど…?』

「彼はフクマさん。ロナルド君の自伝、『ロナルドウォー戦記』の担当編集者だ」

『おっかしーなぁ……?俺、耳が遠くなったのかな?

編集者って、あんな殺意MAXなバトルアックス持ってるモンだっけ……?』

 

無論、違う。

鳥羽の常識は、何一つ間違ってない。

この新横浜があった世界がおかしいのだ。

 

 

あの世界は、『編集者は何かしらの武術を嗜み、作家たちに圧力を掛けることに長けていなければならない』という常識がある。

 

 

『オータム社』は、まさにその最高峰と言っても過言ではない超大手。

作家たちへの殺意なら、他の追随を許さぬ程に武術に長けているのだ。

 

このことを全く知らなかったドラルクとロナルドは、過去に幾度となく痛い目を見ているが、それは別の話としておこう。

 

「ツッコミたいのはわかるが、我慢しろ。

逆らえば、鳥羽君のミニ鳥羽君と永遠のお別れになるぞ」

『怖いこと言うなよ…。俺まで目ェつけられたらどうなるかわかんないんだから……』

 

ちょっと想像してしまったのだろう。

2人は揃って内股になり、大事なモノを掌で抑えた。

 

「ロナルド君なんか、締め切り守らないせいで毎度女の子になりかけてるからな」

 

ドラルクが場を和ませようとしたのだろう。

ロナルドが毎度の如く締め切りを破るという話題に変えようとする。

しかし、悪口というのは当人にはよく聞こえるらしく…。

 

「その殆どはテメェの邪魔のせいだろうがァァァァァーーーーーッッッ!!!!」

「ぶべらっ!?」

 

フクマとのやり取りを終えたロナルドが詰め寄り、ドラルクにアッパーカットをかました。

 

『ちょっ、ロナルドさん!

急にドラルクさん殺さないで下さいよ!

目に入って痛いんスよ!』

「あっ、ごめん」

「ウェェン私の心配なんて誰もしてくれないんだァァァ」

「付き合ったら面倒臭いタイプの女か!!」

 

嘘泣きするドラルクに一喝するロナルド。

そのやり取りに割り込むかのように、フクマが間に入った。

 

 

 

「それはそうと、ロナルドさん。ロナ戦の最新刊、進捗はいかがでしょうか?」

 

 

 

ピシリ。

言葉にするのなら、このオノマトペだろうか。

ロナルドはまるで、急に石になったかのように動きを止める。

フクマの言葉の意味をじわじわと理解するたび、その全身から脂汗が吹き出し始めた。

 

「ブバラベラッベヴェバリルブバババババヴェアァァァァァアアアアアァァァァァーーーーーーッッッ!?!?!?!?」

「全然出来てないんですね?」

「ヴェアァパパっピャアアアアアァァァァァーーーーーーーッッッ!!?!?!?」

 

フクマの尋問…内容としては、ただ仕事の進捗を問うているだけ…に、断末魔の如き叫びをあげるロナルド。

鳥羽は事務所にあるカレンダーを見て、小さく「あっ」と声を漏らした。

 

『……締め切り、今日だったんでしょう?

謝って書いたらいいじゃないスか』

「鳥羽君。君はこの後どうなるか知らないから、そう言えるんだ」

 

ドラルクが言うや否や、フクマはバトルアックスを立てかける。

倒れないことを確認した後、事務所の戸を開け、あるモノを引きずってきた。

 

 

女神のような顔の銅像。

一見すれば、芸術品として評価されそうなソレだが、見世物とは違う用途がある。

 

 

「メイデンだ」

『は?』

「針はないが、パソコンはあるあのメイデンにブチ込まれて、書けるまで出てこれない」

 

 

 

その名は『アイアンメイデン』。

 

 

処刑用具として使われ、今や『作家への仕置き道具』として、オータム社で愛用されている代物である。

パソコン以外何もない空間で、黙々と書かなければ永遠に出れない。

オータム社の編集長曰く、常人なら二十分で発狂するらしい。

 

『うっわ……。作家じゃなくてよかった……』

「テメェら他人事だと思いやがってェェェェェアアアアアアアアアアメイデンは嫌だァァァァァアアアアアーーーーーーーッッッッッッ!!!!!」

 

ホラー映画のワンシーンのように、メイデンの中へと引き摺り込まれるロナルド。

ブチ込んだ張本人であるフクマは、軽く手を払うと、置いたバトルアックスを持ち上げた。

 

「書けるまでここに居ますので、どうぞご自由にお寛ぎ下さい」

『……気のせいかなぁ?めっちゃ「しくしくしく…」って聞こえるんだけど』

「ロナルド君の自業自得だ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

所変わって、吸血鬼研究センターにて。

Y談おじさんと共に、密室に閉じ込められた異形…『悪魔』は、血涙を流しながら叫んだ。

 

「金髪幼女のヘソに挿れたいィィィィィィィィィーーーーーーーッッッ!!!!」

「静かにしたまえ。いくら叫んだって、君は絶対に外に出さないらしいぞ」

 

あの日から「自身の性癖を暴露するだけの哀しい生き物」と化した悪魔。

通路を通りがかる職員に、強化ガラス越しに詰め寄るものの、皆苦笑いを浮かべて去っていく。

 

「君は一生そのままだぞ。鳥羽くんやDの孫のご好意でな」

「ヘソォォォォォォァァァァァアアアアアーーーーーーーッッッ!!!!」

 

何を言おうにも、全て「ヘソ」に変換されてしまう悪魔。

そう。何を隠そう、あの新聞の内容のほとんどの情報の出所は、この悪魔なのだ。

 

「金髪幼女のヘソを食べたい!!」

「ああ。確かに『話せば元に戻すことも視野に入れる』とは言った。

しかし、私は『戻す』とは言わなかったぞ」

 

おじさんは言うと、机にある皿からクッキーを取り出し、口に含んだ。

 

「諦めたまえ。喋らせたら危ないヤツに、まともに喋らせるわけがないだろ」

「ヘソソソソソソ……!!」

「もはや鳴き声だな」

 

おじさんはそう小馬鹿にし、天井へと視線を向ける。

そこには、一つの監視カメラが備え付けられていた。

 

「世間は今ごろ、楽しいことになっていそうだな」




オータム社員はこの作品でトップクラスに強い設定にしてます。

次回からは『第一章:旧校舎の変な動物』になります。
変態度マシマシでお送りしますが、脱ぐのは漢だけです。

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