東方/聖杯戦争   作:オルノ

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息抜きに書いているので不定期投稿になります。


事の始まり

霧雨魔理沙は闇夜を飛んでいた。目指すは霧の湖、紅魔館。その中にある大図書館だ。大図書館に所蔵される大量の魔導書を読めば今行き詰っている研究にも進展があるかもしれない、そんな目論見だ。いつも通り白昼堂々侵入し、分捕っていってもよかったのだが、大図書館の司書パチュリーが最近ピリピリしている。下手に刺激したらどんなしっぺ返しを食らうか考えたくもない。

 

あの紫モヤシは何をそんなにピリピリしているのだろう。おかげでコソ泥みたく夜中に侵入する羽目になった。そもそもパチュリーは常日頃から自分の事をコソ泥呼ばわりする。借りた本は死んだら返すと言っているのに何故分からないのだろう。あの万年生理女め!という罵りは満月の夜空に消えていった。

 

魔理沙の脳内愚痴大会は延々続く。ようやくひと段落したのは夜の霧の湖でもはっきり分かるほど真っ赤な館が見えたころだった。案の定門番の姿は見えない。目を凝らすとテラスにメイドとおぜう様(笑)の姿が見える。呑気に茶など飲みよって、大怪盗魔理沙様がやって来たぞ。おっと、ちゃんと死んだら返すさ。早速乗り込もうと思ったとき、紅魔館に向かう明りを見た。

 

こんな夜中に紅魔館に用があるなんて何者だ?ブーメランになっているのは気にも留めず少しずつ高度を下げる。あれは、、、白蓮か?人間の里で妖怪寺を建てている物好き尼さんがどうして紅魔館に?しかも夜中に?魔理沙の人十二倍強い好奇心が鎌首をもたげていた。一体なんで白蓮が紅魔館にやってきたのか知りたい!!行き詰った研究も魔導書もどうでもいい。魔理沙の鋭敏な嗅覚は何か面白い事があると感じ、スンスンと興奮しっぱなしだった。先回りして様子を見よう、そう思ったときまた気付いた。いつも自分が吹き飛ばす壁、大図書館の壁の窓にもたれかかり月を眺める少女に。アリスマーガトロイドだ。魔理沙の目がギランギランと輝く。

 

紅魔館と白蓮とアリス。これは間違いなく何かある。絶対に面白い事が起きる。この霧雨魔理沙様を差し置いて?そんなのぜっっったい嫌だ!何企んでいるのか絶対暴いてやろう!白い歯を輝かせニカニカと笑う魔理沙の頭の中には研究や魔導書など一切残っていなかった。

 

幻想郷一、二を争う速さで紅魔館の敷地に忍び込む。館に向かって闇を進む。途中、邪魔するパチュリーの結界やトラップを難なくすり抜ける。いい加減もっと強力な結界を張ればいいのに。同じ結界しか使わないから侵入する側としては楽でいいが、少し心配になる。あまりにも警備がザルじゃないか?窓から館に入り込む。紅魔館の構造は頭に入っている。白蓮達と鉢合わせしないように遠回りして大図書館に行こう。確か大図書館の隣に物置部屋があったはず。物置部屋と壁を挟んだ場所には司書室がある。何か話をするなら間違いなくそこだろう。物音を立てないように、けれど早く、館を駆けていく。

 

白蓮、アリス、そしてパチュリー。この三者に共通するのは、皆魔術が使えるという事。そして、一流の魔術師であるという事。何か魔術的な、それも大規模な企てなのはほぼ確定だ。では一体どんな?人には成せない魔法の開発?新たな神秘や奇跡の再現?まさか根源へ至る道を探し当てた?考えれば考えるほど興奮が高まる。とてもとても面白そうだ!!根源がどうのとか神秘がどうのには興味はない、だけどそれを成し遂げるための過程にはとても興味がある。結果よりも手段を楽しむ魔術使い。順位よりもスポーツ、子供よりもセックス、金よりもギャンブル、結果よりも過程を楽しむ魔術使い。それが霧雨魔理沙だった。

 

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 「私達の悲願もあと三か月で成就します。」

 

机に置かれていた虫食いだらけの和綴じの本が宙に浮かぶ。本の表紙にはかすれた文字で雨と書いてあった。

 

 「五年前に幻想郷に流れ着いたこの本、そして白蓮が魔界から戻った時に持ち帰った超抜級の魔術炉心。そしてアリスが作り上げた器になりうる人形。あとは私が作り上げたシステムが上手く起動すれば聖杯戦争の幕開けよ。」

 

 「そのせいはいというのは本当にすべての願いを叶える願望機足りえる物なのですか?」

 

おっとりとした口調で白蓮は尋ねる。

 

 「何度も話したはずでしょう。この古書に書かれた情報が正しければ、聖杯は全ての願望を叶え魔術師を根源に導く手段となる大規模魔術式であり、万能の願望機よ。全く、漢文だったから解読に苦労したわ。確かに不安点も多い。この書物の情報だけでは不十分な術式は私達が手を加えたし、本来準備に六十年掛かる代物をたった五年で仕上げたんだから。魔術炉心を動かしたのは一年前よ?五年前からため続けた魔力と幻想郷に満ち満ちた魔力があったからどうにかなったけど、こんなハチャメチャな術式に不安がないほうがおかしいわ。」

 

しかし、とパチュリーは繋ぐ。

 

 「たとえ今回儀式に失敗したとしてもまた次回、もっと完璧な準備で始めればいい。正直今回の聖杯の降霊が成功するとは思えないもの。次が駄目なら更にその次に。何度でも根源に挑戦しなくてはいけない。」

 

 「確かにあたし達は永い命があるわ。でも、幻想郷の魔力は永遠じゃない。最近、妖怪たちが体調不良になるのも魔法の森に異変が起きているのも全部魔術炉心が無理やり魔力を集めたからでしょ?こんな事何度も続けてたら八雲紫に目を付けられるし、魔術じたい使えなくなるかもしれない。」

 

 アリスがパチュリーに提言する。

 

 「ええそうね。だけど幻想郷という閉鎖空間に捕らわれた私達が根源を目指すにはこの方法しかないのよ。それに、あなた達にも令呪の兆しは来ているはず。」

 

パチュリーが掲げた右手の甲には、紅魔館の紅い壁にも劣らない、燃え盛る紅い二筋の模様が浮き上がっていた。

 

 「急ごしらえの聖杯だから出力不足で令呪も二画だけど、令呪のシステムは問題なく機能している。もう後戻りできないの。二人とも覚悟を決めて。」

 

白蓮とアリスは互いに自分の手の甲を見る。紅く燃えがる令呪は覚悟と決心をもたらした。

 

 「最終確認よ、今回の大規模儀式『聖杯戦争』には14名の参加者が必要。これは、不完全な聖杯だと世界の外に穴を開けるには七騎の英霊の魂では不十分だったから。令呪が二画なのは英霊召喚の奇跡を14体分行えるようにするため。私達は団結して残り11名のマスター達を打ち倒し、最後に私達で競い合う。勝ち残った一人は根源に至る。」

 

三人が頷き合う。

 

 「では、召喚術式の最終確認をしましょう。最も優れている『三騎士』を確実に呼び出す必要があります。」

 

三人と物陰で聞き耳を立てる一人の少女は英霊を喚ぶ為の秘術を共有し合った。三人の魔術師と一人の魔術使いの密会。聖杯の奇跡が成就するのは近い。人間と神と妖魔が入り乱れる地に21体の英霊が降臨する。この地で行われる聖杯戦争は根源に至るための奇跡になるのか、それともすべてを破滅し尽くす呪いの儀式か。それは神にも分からない。

 

まあ、紫モヤシの不安通り碌な結果にはならないだろう。ガバガバすぎる術式の影響で座への扉は空きっぱなしで魔術炉心への魔力供給は一向に止まらない。そんな聖杯なのだから。何人か復讐者的なのがニコニコしながら聖杯に向かってるし。そろそろ不幸な暗殺者教団が今回の聖杯戦争参加資格を押し付け合う頃合いだろうか。どこぞの腹ペコ王も食事を求めて聖杯に向かっているかもしれない。

 

 「いいこと聞いちゃった♪私も参加しよう♪」

 

更に追加でもう一人。少女、、、とはもう呼べない。結界を守護する大妖怪も居合わせた。

 




さてどの英霊から被害者にしてやろうか。

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