東方/聖杯戦争   作:オルノ

4 / 5
色々と自己解釈が入ります。本編はいつ始まるんでしょうね。


召喚ダイジェストその3

一匹の狼が死んだ。 

 

外の世界ではすでに絶滅したはずの二ホンオオカミの雄だ。仲間が死滅しただ一匹だけ生き残っていた彼の死因は大雨で緩んだ地盤による土砂崩れに巻き込まれたからだった。土砂と泥にまみれ、世界から忘れ去られながら彼は考えていた。呼吸するだけで体中に激痛が走るほど酷い怪我を負っていたが思考だけは静かで冷静だった。 

 

理不尽だ。何もかもが。

 

自分の先祖は猿共の鉛弾によって狩られていなくなったらしい。母は自分と兄弟たちを守るためクマに殺された。兄弟は餓え、事故、争いで死んだ。自分はこの通り事故で。自然とはそういうものだし、自分も沢山の獲物を殺した。だからこそ、殺されて喰われるならまだ納得できた。なんで事故死なのだろうか。どうして同胞たちは全滅しなくてはいけなかったのだろうか。どうして土塗れで死ななくてはいけないのだろうか。どうにも納得して死ねなかった。母を殺したクマも何故、わざわざ狼なんて襲ったんだ?

 

考え始めると不満が湧いてくる。不満があるとなかなかあの世にも逝けないもので、苦しみながらも意識が残っていた。その内幻覚まで見えるようになっていき、死んだはずの母や兄弟たち、先祖の狼たちや会ったことのない狼たちまでたくさんの狼が目の前に現れた。狼たちは口々にこの世の理不尽をぶちまけ、恨みつらみを語り合った。死にゆく自分の前にこいつらはなんで現れたんだろう?逝く時くらいは静かでいたかった。その内、先祖たちはお互いの文句を言い始め挙句一番最後に死んだ自分に責任を取らせようということになった。まことに遺憾である。

 

 

しかし責任を取らせようにもこいつはこちら側に前脚を突っ込んでいる。

 

 

初めて猿共の鉛弾を喰らった狼が言った。

 

 

我々がこいつに力を貸してやることにしよう。

 

 

猿共に初めて殺された狼が言った。

 

 

それが良い!どうも普通の猿より強いのがこの戦いには参戦しているらしいし、ちょうどいいだろう。

 

 

初めて群れを作った狼が言った。戦いとは何のことだ。

 

 

良いか若き狼よ。我らの悲願は理不尽への復讐だ。そのためにはどうにか願望機を手に入れなくてはいけない。

 

 

何処かで無念の死を遂げた狼が言った。途端に、狼たちが自分の中に入り込んできた。いい加減老害どもの戯言にうんざりしていたら今度はとんでもない行動をし始めた。ここに集結した老害どもが全員自分の中に入り込み暴れている。入られるたびにこの世の理不尽に対する怒りを押し付けられ、自分の中に蓄積される。いつの間にか傷は癒え、力がみなぎっていた。そしてどうしようもなく怒りが湧いてきた。我々が受けてきた数々の理不尽に対する怒りが、何よりこんなどうでもいいことの為に先祖に利用される理不尽に対する怒りが湧いてきた。もうなんでもいいからさっさと戦いを終わらせて復讐を成し遂げよう。

 

ここに先祖の復讐心によって狼がよみがえった。別にしたくもない復讐のために先祖の依り代にされた狼は復讐者(アヴェンジャー)として聖杯戦争に参加した。自分自身を英霊?としたマスター?は理不尽に復讐できるのか。

 

 

あーあ!イライラする!いつの間にかよく分からない所にいるし、おなか減ったし!獲物はいないかー!

 

 

復讐に燃える狼は唸り声をあげて妖怪の山を駆けて行った。

 

 

______________________________________________

 

 

幻想郷のどこかにある大きな屋敷。存在があやふやであるのかないのか良く分からない屋敷の中でぐうたら寝そべる幻想郷の支配者とそれを叱りつける式神がいた。

 

 「紫様いい加減にしてください!」

 

もうすぐ春だというのに未だに冬眠から抜け切れず、炬燵に入り浸る主を八雲藍は呆れ半分焦り半分で起こしていた。幻想郷中で大規模な魔力、神力の減少が確認され、いたるところで危険な降霊儀式の成功が確認されている状況で何も行動を起こさない主は危機感が無さすぎる。魔術師たちの行おうとしている儀式は絶対に幻想郷に悪影響を及ぼすだろう。弾幕ごっこならいざ知らず、彼女たちが行おうとしているのはガチの殺し合いである。全てを叶える願望機を勝ち取れるなら問答無用、死に物狂いで争うだろう。

 

 「幻想郷の危機なんですよ!」

 

 「だぁいじょうぶだって。」

 

幻想郷の管理者(笑)は炬燵から顔を出し、炬燵の上のミカンに手を伸ばす。

 

 「もしもの時は力ずくでも止めればいいし、何よりこんな楽しそうな催し潰すのももったいないじゃない?」

 

 「ですが、、、」

 

 「それに私も参加するしね?」

 

 

は?自ら危険で無価値な戦いに参加する?もう酔っているのか?

 

 

 「私が直々に参戦してこんな騒動を始めた三人組にお灸をすえてやるわ。私にかかればどんな英雄だってイチコロよ!それに勝てばどんな願い事だって叶うのよ?やるっきゃないでしょ。」

 

 

 「そんな風に油断したから月で痛い目にあったんじゃないですか?」

 

 

 「し~らな~い。」

 

 

紫はまた炬燵の中に潜り込んでしまった。

 

 

 「そんな訳で、英霊の召喚するから準備しれくれる?確か物置小屋にたくさん刀があったはずだから良さげのを取ってきてちょうだい。」

 

この、、、!

 

藍はやり場のない怒りをぐっと抑え込み、物置に向かった。いくら何でも紫様は気を抜きすぎじゃあないか?どんな被害があるか分からないのに、、、少し沸騰寸前だった頭を落ち着かせるため深呼吸した。まあ、紫様はあんなでも賢いお方だ。もしもになったらしっかり行動してくださるだろう。それに、この騒動を収束させるためにも実際に参加するのは良い方法かもしれない。この騒動、、、いや、この異変で重要なのは聖杯とそれを求める英霊たちだ。彼らを止め、被害を最小限に抑えるには参戦し、情報を集め、勝ち残るしかない。

 

八雲家の大きな物置は永い間掃除していないためかひどく埃っぽかった。この物置には紫様が長きにわたって溜め込み続けたガラクタの山が出来ていた。そんな宝の山ともゴミの山ともつかない物置の最奥に武具が山積みにされていた。この武具も紫様が一時期収集していたもので、名刀のレプリカから本物の魔剣までより取り見取りだった。ガラクタのほうが多いのだが。藍は英雄と所縁のある刀など見分けられないが、山の中でひときわ目立つ刀を手に取った。異常に長いその刀は目立ちたがり屋な英雄にはおあつらえ向きな物だった。

 

藍は刀を鞘から抜き、刀身をあらわにする。刃が光を反射してテラテラと輝いていた。こんな刀、異変が収まったら物干し竿にしてやる。

 

 「幻想郷を乱す輩め、、、報いを受けさせねば。」

 

パキ、、、

 

 

 「ん?」

 

 

 パキン!!

 

 

刀がはじけ飛んだ。咄嗟に身を守ったおかげで破片が刺さったりはしなかったが突然の事に戸惑いを隠せない。え?なに?強く握り過ぎた? 

 

 

 「ほう、、、此度のマスターは狐の妖魔か、、、ふっ、つくづく女狐には縁があるな。」

 

 

 「!!、、、だれだ!曲者!」

 

 

物置の陰から声がする。呼びかけると、先ほど藍が持っていた刀と似た長大な刀を帯びた侍が現れた。紺色の雅な陣羽織に身を包み、長髪を後ろに纏めたその侍はゆっくりと藍の前にやって来た。

 

 

 「我こそは佐々木小次郎。余人に振るえぬ‘物干し竿‘を得物とする剣士なり。」

 

藍は考えた。先ほどから右手の甲が熱く燃え上がることも気にせず考えた。

 

 

 やっべぇー!これ紫様になんて言おう!!

 

 

運命のいたずらか、かつて何処かで起こったかもしれない聖杯戦争のように、使い魔がマスターとなり使い魔と契約した。

 

 

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 「「「先生さようなら!」」」

 

 「はいさようなら。寄り道せずにまっすぐ家に帰るんだぞ?」

 

 「「「はーーい!」」」

 

 

人間の里は寺子屋で今日も元気いっぱいな子供たちの声が響き渡る。ようやく長くてつまらない授業から解放された子供たちは仲のいい友達と一緒に家に帰っていく。おしゃべりしながら、ちょっかいを出し合いながら楽しく家に帰っていく。愉快なおしゃべりは楽しく続く。

 

最近夜になると髑髏のお化けが人里に出るんだって!えぇ~本当?ほんとほんと!僕みたもん!私は、森の方に金色お化けが出るって聞いたわよ。知ってる!お父さんが新しい妖怪かもしれないって!こわ~い!森の方と言えば時々かみなりみたいな音が聞こえてくるよね。また魔女のお姉ちゃんが何かやってるんじゃない?あはは!きっとそうだよ!また寺子屋に来てくれないかなぁ。

 

そうやって賑やかに子供たちが歩く横で、買い物帰りの主婦たちが噂話に盛り上がっていた。女性の化粧とうわさ話は果てしなく長い。和気藹々と繰り広げられるおば様トークの盛り上がりはピークに達しようとしていた。

 

この前、霖之助さんのお店に行った時お手伝いの男の子がいたんだけどもぉ~カッコいいのよ!争うなの?あそこがお手伝い雇うなんてねぇ。金髪で少し小柄なんだけど、ずーっと微笑んでいてね。私がうっかお皿を落としちゃったらササッと破片を片付けてね、『大丈夫ですか、マダム?』ってもぉ~カッコいいのよ!あら羨ましい!ウチの馬鹿旦那にも見習ってほしいわね。でも大丈夫だったの?最近魔法の森に新種の妖怪が出るって聞いたわよ。えぇ!本当!?聞いた聞いた!金色のお化けとか髭もじゃの大男が出るそうよ!怖いわねぇ、また異変かしら。異変でもなんでも巫女様が解決してくださるわよ。いつも解決するまで時間がかかるけど腕は確かだからねぇ。

 

奥様方が噂話に花を咲かすそのそばで、酒で赤くなったおっさん達が集まっていた。仕事が早く終わった者、仕事をサボった者、そもそも仕事をしていない者。愚痴を肴に盛り上がっていた。

 

あぁ~仕事終わりに酒!幸せだね!お前は働いてねぇだろ。うるせぇな、気持ちよく飲ませろ。そんなんじゃあ良い嫁さん貰えんぞ。いらんいらん、お前こそ浮ついた話はないのかよ。あったらこんな所で野郎と飲んでねえよ。それもそうか!俺も最近ご無沙汰だぜ。あーあ、守矢の巫女さんに会いてぇな。ああの緑の娘か。良い娘だよな。妖怪退治もできて、気立ても良くて。何よりあの体!思わずボムは弾幕だけにしとけよ!とか言いそうになるぜ!お前そろそろ酒をやめろよ?変な酔い方してるぞ?俺はあの娘が好みだなぁ、ほら銀髪の。あ~!メイドちゃんね!いやはや、どっちかとお近づきになれないかね。まあ無理だろ。レベルが違うし、あの娘たちの方が俺たちより強いし、、、、、飲むか。店員さん、もう一本。

 

 

こんな感じの特に変わったことのない日常。人里はいつも通り平和だ。人が圧倒的に弱い世界で細々と営みを続けている。

 

人里を覆う塀を超えればすぐ妖怪に貪られる世界で彼らはしっかり生きていた。彼らの心の奥底にはあきらめにも似た希望があった。

 

弱肉強食な世界、理不尽な世界だがきっと何とかなるさ。私達は妖怪にかなわない。運が悪ければすぐに死ぬ。

 

だけどそうならない。何故なら彼らが守ってくれるから。彼らは妖怪を退けてくれる。我々の守護者であり、壁だ。

 

幻想郷に住み続けた人類は永い時間を掛けて自分たちだけの、自分たちを守るためだけの人理を作った。これは人類がより長く、より確かに、より強く反映するように作られたものではない。自分たちがより長く、より確かに、より強固に守られるための物だ。自分たちを守らせるために壁を育て続け、外部から人を呼んだ。自分たちを守る壁が死ねばその魂を決して逃さず、座に閉じ込め、また壁にする。これが、未だに神代並みの魔力量を誇る幻想郷で人類が生み出した人理だった。

 

幻想郷に住む人類は心の底でこう願っている。

 

生贄を、奴隷を、壁を作ろう。そして恐ろしい妖怪から守ってもらおう。そうすればついに我々は繁栄する。

 

 

幻想郷に巻き起こる騒動から人類を守るのに今ある壁では不十分と人理は判断した。そうして今まで使い潰してきた壁と今ある壁を混ぜ合わせ、強固な壁を作った。

 

 

それは三角帽をかぶり、腋の露出した巫女服を着ていた。緑の長髪はところどころ銀色が混じり、太腿にはナイフを装備している。顔は一定に保たれず、過去に人里を守った少女たちの顔に似ているような気がする。色々なキャラを継ぎ接ぎしたみたいな『壁』は人里にある小さな社でただじっと出番を待っている。

 

 

幻想郷の人類にとって壁とは、自分たちを守ってくれる少女たち(主人公)の事である

 

 

少女たちは永遠に人類の奴隷として、生贄として、壁として、幻想郷を守っていくだろう。

 

 

 

その魂に安寧は永遠に訪れない。

 

人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させるために彼女たちはより長く、より激しく、より厳しく、使われ続けるだろう。

 

 

壁として。

 

 

 




アヴェンジャーは和風新アヴェを想像してください。

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