東方/聖杯戦争   作:オルノ

5 / 5
なろうに投稿してる方が全く書けないせいでこっちが本業になりつつある気がする。


紅魔館崩壊三秒前

 

 

紅魔館のなかで一番黴臭く一番陰気な場所、大図書館。その最奥にある司書室で一人の魔女が魔法陣を描いていた。紫モヤシことパチュリー・ノーレッジである。流石一流の魔女、その手際は洗練されており正確に魔法陣を描いていた。だがほんの少し乱暴だった。

 

彼女が今回の聖杯戦争に参加するにあたり、達成しようと決めていた目標は二つ。儀式の成功及び根源への到達。もう一つは霧雨 魔理沙への仕返しだった。今まで何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!魔導書や聖遺物を強奪された。病弱な体を振るい立て、迎撃しようとするたびにスルリと逃げられる。強力な結界を貼ってもゴキブリのように入り込む。長い人生の間で最もストレスを与えられる日々だった。彼女に魔導書を強奪された日はあまりにもイライラしすぎて元々低い血圧が高血圧になった。

 

何が最もイライラするかと言えば魔理沙の捨て台詞である。

 

 「盗むんじゃねえ。死ぬまで借りるだけさ!」

 

業腹である。

 

最早それは借りるとは言わない。ただの強奪、窃盗、盗みである。そもそも魔理沙も魔術師の端くれ、いつかは捨食の法、捨虫の法を会得するだろう。そうなれば魔導書が返されることは半永久的にないだろう。借りるにしても持ち主の許可を得るのは常識だろう。まあ、頼まれても貸すつもりは微塵もないが。

 

ああ、ああ、ああ!!あの顔を思い出しただけではらわたが煮えくり返る!この借りはたっぷり返してやらないと、、、貸し借りだけに。フフフフフ、、、

 

召喚の直前だからか、怒っているからか、はたまた疲れているのか。パチュリーのテンションはおかしかった。病弱な彼女が活発な魔理沙に仕返しできる、その幸福感も彼女のテンションをおかしくさせるのに一役買っていた。

 

魔理沙はあれでも魔術師。しかも実力がある。確実に聖杯戦争に参加するだろう。参加を確実なものとさせるためにわざと紅魔館への侵入を許し、会議を盗み聞きさせた。しっかりと英霊召喚の準備をし、全力で戦うだろう。

 

 それを私が叩き潰す!

 

 ついでに今まで盗まれたものも返してもらう。

 

彼女の中では根源への到達よりも魔理沙への仕返しのほうが重要になっていた。魔法陣を描き終わった彼女は気味の悪い笑い声を響かせた。テンションマックスである。

 

 

 「パチュリー様ぁ~、いきなり笑い始めたりして気持ち悪いですよぉ?」

 

 

パチュリーの横で気だるそうにしている赤髪の少女、紅 美鈴はパチュリーに声をかける。彼女はパチュリーに呼ばれ、英霊召喚の手伝いをさせられていた。

 

我に返ったパチュリーは咳ばらいをして美鈴に向き直る。

 

 

 「オホン。今から英霊召喚を始めます。アレ、持ってきてくれたわよね。」

 

 「持ってきましたけど、、、ちゃんと返してくださいね?」

 

美鈴は自室から持ってきた古びた槍をパチュリーに渡す。この槍は美鈴が紅魔館にやってくる前から使っている鍛練用の物だった。この槍が持つ異質な雰囲気に目を付けたパチュリーはこれを触媒に使用し、ランサーを召喚しようとしていた。

 

パチュリーは紫モヤシと揶揄されるほどに病弱である。サーヴァントと共に縦横無尽に戦うなど無理だ。そのため彼女は三騎士の中でも素早さと白兵戦能力に優れ、ある程度の偵察力を持つランサーを召喚する事に決めていた。ランサーが偵察、戦闘を行い私がバックアップ、指揮を執る。最高の作戦だ!(当社比)

 

パチュリーは古びた槍を重そうに引きずって魔方陣の中央に置く。最初は親友であるレミィの血を触媒にし串刺し公を呼ぼうと考えていたが、誇り高い人物を顎で使うとどんな反発を受けるか分かったものではないし、そもそも親友の祖先を使役するのは気が引けた。

 

そんな中見つけたのがこの槍である。

 

 「さっきも言ったけど今から行う召喚術は、この槍に所縁のある過去の英雄を呼び出す術なの。この槍が誰の物だったか本当に知らないの?」

 

 「ホントのホントに知りませんよ。まだ私が修行のために放浪してた頃に拾ったものなんですから。」

 

魔術師が見ればただの槍ではないと分かるような代物をたまたま拾ったなどと信じられるだろうか。いあや、でも美鈴だからなぁ~。彼女なら拾うだろう。パチュリーはそう納得した。美鈴は自分が貶められているのだろうな、と感じたがいつもの事なので受け流した。

 

 

 「まあいいわ。貴方に来てもらったのは槍を持ってきてもらうためだけじゃないのよ。」

 

 「はぁ。」

 

 「この槍が中国で見つかった物なら呼び出される英霊は高確率で中国の人物よ。貴方、中国の妖怪だし呼ばれた英霊が誰か分かるでしょ。」

 

 「えぇ!なんですかその雑な理由!確かに中国出身ですけど中国出身の英雄をみんな知っているわけじゃないですよ!」

 

 「もう一つ、私の護衛よ。もし呼び出された英霊が好戦的で、私を攻撃してきたときの為に守ってほしいの。一応対策はしているけど相手はサーヴァント、白兵戦で敵うとは思えないから。」

 

 「そんなことなら任してください!ふっふっふ、、、修行中、数多の猛者たちと戦いに明け暮れた闘龍が復活しますよー!!幻想郷に来てから本気の殺り合いはしてないからワクワクしますね!」

 

無駄に膨らんでいる胸を張って美鈴は得意げな顔をする。彼女は普段抜けているところがあるが、その武術の腕前は本物だ。妖怪としての体力と怪力、今まで培った武術があれば最高位の使い魔であるサーヴァントとも互角に渡り合えるだろう。

 

 「自信があるのはいいことだけど、油断はしないでね。それじゃあ、、、詠唱を始めます。」

 

 

 「押忍!いつでもこーい!!」

 

 

華人小娘と花雲の少女が魔法陣に向き合う。

 

 

 

 「素に銀と鉄。 祖に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ) 閉じよ(みたせ)繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する、、、」

 

 

少女は盗人への怒りを込めて詠唱する。

 

 

 「告げる!!」

 

 

魔法陣は発光し、槍が小刻みに震えだす。大図書館全体がザワザワと揺れだす。少女の体に刻まれた魔術回路を魔力が逆流していく。不快感に襲われながら少女は確信した。召喚は成功すると。

 

 

 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者!汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 

魔法陣が一際光り輝き、爆風が巻き起こった。狭い司書室で吹き荒れた突風は棚を倒し、机の上を吹き飛ばした。突然の事にパチュリーは目を細める。風と光が収まり、目を開けると魔方陣の中央にコートを着た老人が立っていた。

 

老人は触媒に使われた槍を拾い、パチュリーを見つめる。

 

 

 「、、、ランサー。召喚に応じ参上した。」

 

 

老人は魔方陣から一歩踏み出した。所作の一つ一つが洗練され、スキがない。殺気を込め、場の空気を圧倒する鋭い眼差しからはこの老人がただ物ではないことが伺える。その手に握られた槍は全盛期の輝きを取り戻し、その刃に血が滴るのを今か今かと待ちわびている。

 

間違いなく、申し分ない実力をもった英霊である。心の弱いものなら視線だけで倒せてしまいそうな勢いがある。そんな英霊を召喚したマスター本人は腰を抜かしていた。

 

 

 「ぬしがマスターか。」

 

 

 「あ、、、あ、、あ。」

 

 

サーヴァントとは聖杯の力で一側面を具現化することでしか使役できない最高位の使い魔である。パチュリーもとんでもなく強い存在が出てくると覚悟していたが、予想以上だった。何せ出てきたのは殺気ガン漏れな武闘派爺である。あまりの迫力に完全にビビっていた。

 

しかし、彼女が腰を抜かしたのはサーヴァントだけが原因ではない。彼女が恐怖したもう一つの理由は、老人の後ろで眼を爛爛と輝かせる龍の存在だった。

 

いつものどこか抜けている美鈴は消え、闘気をあらわにし強敵との対峙に狂喜する龍に変貌していた。美鈴は確信していた。こいつは本気を出しても壊れない人間だと。早く殺り合いたい!美鈴の頭にはそれしか残っていなかった。

 

老人が振り返る。その顔は若々しく歪み、目の前の肉に食らいつくのが待ちきれないといった獣の表情だった。

 

 「まあいいさ。マスターが誰であろうとな。」

 

 

老人()は槍を構える。

 

 

 「パチュリー様、図書館壊したらごめんなさい。」

 

 

美鈴()は構える。

 

 

 

 

 「さあ、、、、思う存分、、、死合おうか!!

 

 

 

両者の脚がほぼ同時に踏み出され、必殺の一撃が放たれた。放たれた槍の突きを拳が防ぎ、打ち込まれた拳を槍がいなした。

 

いなした勢いをそのまま槍に込め、石突で腹を突く。咄嗟に腕で防がれたが、勢いはなくならず吹き飛ばされる。吹き飛ばされた美鈴は司書室の壁を破壊し、本棚を粉砕する。幾つか本棚を破壊しながら勢いを殺し、床に脚がついたらすぐに駆け、敵に鋼鉄の拳を放つ。紙一重の差で防がれたが、勢いはなくならずに老人は吹き飛ばされた。壁と本棚を破壊しながら。

 

目の前で繰り広げられる化け物同士の死闘に紫モヤシはオドオドするしかなかった。いつもはあんなだけど本気になったら美鈴ってこんなになるんだ、、、狂気に陥ったフランといい勝負じゃない、、、

 

 「その本棚、魔導書が、、、、」

 

粉砕された。

 

 「あ、その棚、、、、」

 

槍によって切断された。

 

 「ちょっと待って!そこは、、、」

 

破壊された。

 

パチュリーは頭を抱える。失敗だ。まさか英霊がこんなにも強いだなんて、、、所詮は人間の英雄だなんてたかをくくっていた。英霊が皆これほどの実力を持っているとしたら私は、本気を出した美鈴と互角に殺し合う存在を幻想郷に14騎も呼び出したことになる。一体どうやって収集をつければ、、、異変なんてレベルじゃない。とんでもない大災害を引き起こしてしまった、、、!

 

 

大図書館の6割が崩壊したあたりで、化け物の死闘はピークを迎えた。

 

 

 「熾撃ぃ、、、!」

 

 

 「我が槍は是、、、!」

 

突然、パチュリーの魔力が令呪を通して吸い上げあられた。それはそこまで多い魔力量ではなかったが、パチュリーは確信した。間違いなく宝具が使われる。そして一つ、この暴力の嵐を止める解決方法を思い付いた。こんな最序盤で使いたくはなかったがしょうがない。

 

令呪を使う。

 

 

 「『大鵬墜撃拳』!!!」

 

 「ッッ!!!」

 

 「令呪をもって、、、!」

 

三者が全力を尽くした一手を放とうとしたとき、そのすべてが止められた。

 

 

老人の槍と美鈴の拳は紅い槍によって防がれた。

 

 

パチュリーの声は乱入した二人に対する驚きで止まった。

 

 

 「あなた達、、、私の館で何をしているの?」

 

 

 

 「アハハハハハ!!楽しそう!私も混ぜて♪」

 

 

化け物二体追加 

 

 

ラウンド2!レディー、、、ファイッ!

 

 




真名出さなかったけどバレバレですね。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。