DX3rd 南条支部騒動記   作:支部長
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仕事が思ったより忙しく書く暇がありませんでしたがようやく二話投稿です。何とかして続けますのでよろしくお願いします。


邂逅〜南条支部〜2

南条市・某所

 

氷室が望月に車に乗せられ、連れられて来た場所は市街の外れにある路地裏だった。

 

通りは失業でもしたのだろうか、ホームレス達の住居になっているようだ。

 

突如現れた来訪者にホームレス達は怯えながらも警戒心を露わにしていた。

 

「驚いたな、南条市にもこのような場所があるだなんて……」

 

南条市は数年前に就任した市長により大きくその姿を変えた。

 

南条市は大きな港湾施設を保持しており、市長はそこに目をつけた。

この港湾施設を大々的にPRし、企業の誘致を積極的に行ったのだ。

 

他にも福祉の充実や新たな公共事業の立ち上げなどを行い、今では日本国内でもトップレベルの都市に数えられる程だ。

 

 

「市長は国内で最も裕福な都市、なんて言ってるけどね。この世に完璧なんてものは存在しやしないさ。光がある場所には必ず影がある。同んなじことさね。南条市がどれだけ発展しようとも、この光景が無くなることはないだろうねぇ」

 

そのような会話をしている内にどうやら目的地へ着いたようだ。

 

「着いた。ここが南条市名物の情報屋だよ」

 

望月に連れられて着いたそこにあるのは、お世辞にも綺麗とは言えない一つのプレハブ小屋。

 

本当にこんな所に人が住んでるのか?

 

言葉にこそ出さなかった氷室だか、こんなことを思わずにはいられない程、その小屋はみずぼらしかった。

 

二人が小屋の扉の前に立つとまるで二人が来るのを分かっていたかの様に扉がひとりでに開き、中から声がかけられる。

 

「このような場所にUGNの方がわざわざ何の用でしょうかねぇ?」

 

「相変わらずだね、あんたは。どうせ分かってて聞いてるんだろ?」

 

二人はそのまま小屋の中へ入る。するとそこには一人の男が椅子に腰掛けていた。

 

「おや、見かけない方がいらっしゃるようですが?」

 

男はそう言って氷室を観察するように見ている。

 

「南条支部所属のUGNエージェント、氷室だ」

 

「これはご丁寧に。私はここで情報屋を営んでます、蛇塚と申します」

 

蛇塚と名乗ったは顔に満面の笑みを浮かべ、握手を求めてくる。

 

変な所に住んでるが悪い奴じゃ無さそうだな。

 

それが氷室が蛇塚に抱いた第一印象だった。

 

望月は二人の自己紹介が終わるのを見計らい、本題へと移った。

 

「蛇塚、あんたもここ最近南条市で連続猟奇殺人事件が起こってるのは知ってるだろ?あたしたちゃこれはジャームの仕業だと思ってるんだけど、あんたなんか知らないかい?」

 

蛇塚は頭を掻き、気だるそうにしながら部屋にある棚から一つのファイルを取り出し、望月に投げ渡す。

 

「ええ、確かに。これはジャームの仕業ですよ、はぐれのね。事件が起こる一週間程前には既に南条市に潜伏していました。潜伏先もある程度絞り込んでますよ••••••あぁ、情報料はいつもどうりでお願いしますね」

 

情報が記載されたファイルを受け取り、中身を確認する。

 

「相変わらずよく調べてるね」

 

望月はそのまま小屋を出て行こうとする。

 

 

「……とだよ」

 

声の発生源は氷室だった。

 

「お前、さっきジャームは事件起こす一週間前から居たっていったよな?」

 

顔は下を向いており、表情こそ読み取れないがその声色は氷室が怒りを抑えきれていない事を感じさせるには十分だった。

 

「じゃあ何でさっさと報告しねぇんだよ‼︎そうすりゃ助かった奴だっていたかもしれねぇだろ⁉︎テメェが見つけたジャームのせいで一体何人死んだと思ってるんだ、あぁ⁉︎」

 

正面から怒りをぶつけられたにも関わらず蛇塚は悪びれるどころか、表情一つ変えずに答える。

 

「何故って言われても、ねぇ?聞かれても無い事をなぜいちいち貴方方に報告しなきゃならないんですかねぇ。••••••そうですね。侵入していた事も知っていました。何処に何秒潜伏し、どの様なルートをたどり、何人殺したか手に取る様にはっきりとわかっていました。助けること?出来ましたけど助けて何か得になりますか?一般人が被害にあい、UGN はそれを察して動き、私は情報を売り、口に糊をして生きていく。此が社会構造。変えることの出来ない世界の仕組みなんです••••••まぁ、本当の所は私、食事中でして運動はちょっとねぇ?」

 

この言葉に堪忍袋の尾が切れた氷室は蛇塚に殴りかかろうとする。が、急に体が自分の物でなくなってしまったかのように動かなくなる。

 

「おっと、暴力はいけません」

 

自分が殴られそうになったにも関わらずニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべている蛇塚。

 

「テメェ、何しやがった⁉︎」

 

突然体が動かなくなった事に驚く氷室は怒りを露わに蛇塚へと叫ぶ。

 

「なに、ちょっと〈領域〉を弄くっただけですよ。痛いのは嫌いでしてねぇ」

 

(領域だと?こいつまさか早月と同じ〈オルクス〉か⁉︎)

 

レネゲイドウィルスに侵された者は生物を超越した超能力を手にする。

その超能力を系統立てたものをシンドロームと呼ぶ。

 

オルクスもそのシンドロームの一つである。

ローマ神話の冥府の王の名を冠するこのシンドロームは、今まで発見されたシンドロームの中で一番謎に包まれている。

オルクスの発症者は自らの〈因子〉を周囲の空間に浸透させ、その空間内の物を自由に動かすことが出来る。(この空間の事を専門家は〈領域〉と呼んでいる)

 

 

今にも殺し合いを始めてしまいそうな二人を放っておくわけにもいかず、望月は面倒そうに仲裁に入る。

 

「二人ともその辺にしときなよ。氷室も、折角良い情報が手に入ったんだ。今回はこの辺で帰ろうじゃない」

 

望月のこの発言に頷く事で賛同の意を示した蛇塚は氷室の拘束を解いた。

 

拘束を解かれた氷室は体が動く事を確認すると舌打ちをして望月の後に続くように小屋を出て行く。

 

「まいどありがとうございました。またのお越しを、お待ちしていますよ」

 

 

 

 

 

小屋のあった路地裏から出た二人は車に乗り込むと南条支部目指して車を走らせる。

 

氷室はまだ納得が行ってないのか、窓に手をかけ、不機嫌そうに外を眺めている。

 

そんな蛇塚に望月が声を掛ける。

 

「あんたらしくも無かったねぇ。あんなに感情を前にだすなんて」

 

望月の横顔が映った車の窓を見たまま氷室は答える。

 

「••••••いや、あいつの言い方にちょっとイラついただけっすよ。実際あいつの言ってる事全て間違いでも無かったですしね」

 

「まぁあいつの反感は買わない方がいいさね。プライベートって言葉があんたの辞書から消えたく無かったらね」

 

「••••••努力はします」

 

そうしなよ!

 

そう言って望月は氷室の背中を叩いた。

 

氷室が思っていたよりも背中は激しい痛みを訴えることとなった。

 

 

 

 

 

 

南条市・南条支部

 

「ご苦労様、二人とも。ジャームの動きも掴めたし、早速今夜仕掛けて頂戴」

 

支部に戻って報告を終えた二人をアンナは労った。

 

「それにしてもこの情報量、あんた達あいつの所に行ったわね?」

 

アンナは眉間に皺を寄せて二人に尋ねる。

 

「あいつってあの蛇塚って情報屋のことですか?確かに行きましたけど••••••あいつを知ってるんですか?」

 

次の瞬間、アンナはデスクから身を乗り出して叫び出す。

 

「当たり前よ!あいつ、私がUGNの支部長だって分かった瞬間何て言ったと思う⁉︎『こんなペタンコ幼女が支部長だなんて、世も末ですねぇ』だって、私はもう17だってんのよ!ムキーーー‼︎」

 

聞いてもいない事を叫びながらデスクを両手で叩き出す支部長を見て、巻き添えを食わない内に部屋から出て行く二人だった。

 

 

 

 

 

「今回は楽そうで良かったよ。ゆっくりお酒が飲めるからねぇ」

 

そんな事を言いながら既にラベルにスピリッツ88と書かれた瓶を片手に酒盛りをしている望月に半ば呆れつつ、今夜のジャーム掃討作戦の準備を進めていた氷室はふと気になっていた事を望月に尋ねた。

 

「そう言えば望月さんのシンドロームをまだ聞いてませんでしたね。なんのシンドロームなんですか?」

 

いつの間にか手に握ってい瓶のラベルがスピリタスに変わっている望月はもったいぶって答える。

 

「それは今夜の作戦で分かるさ。まぁテキトーに頑張ろうじゃないさ」

 

望月の締まらない台詞に聞かなければ良かったと溜息をつきながら準備を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の南条市。

 

シャッターが閉まりきった薄暗い商店街を一人の女性が歩いていた。

 

その女性の後を一つの影が追う。

 

おおよそ人間とは思えない、B級映画に出てくるエイリアンのような面立ちの化け物–––––––––ジャームは女性を襲う好機を今か今かと伺っていた。

 

そして女性に襲い掛かろうとした瞬間、今まで歩いていた女性と入れ替わるように一人の男がジャームの目の前に現れた。

 

「よぉ化け物、俺とデートでもしないか?」

 

女性と入れ替わりで現れた男は氷室だった。

 

突如現れた男に焦りを見せたジャームは初動が一瞬遅れてしまった。

 

しかし、氷室にはその一瞬で充分だった。

 

貰った!

 

氷室は電撃を纏った拳を叩き込む。

 

その瞬間、化け物はニヤリと顔を歪めた。拳が当たるべきだった場所には何もなく蛇の様な滑らかな動きでかわされていた。

 

化け物が腕を二、三振るうとそれに同調して地面のコンクリートがはぜる。

 

衝撃波を利用しているのか‥‥‥いや、違う。

 

超高速で腕を伸縮させている。あの身体の変化はエグザエルだろう。

 

「これだから、エグザエルは手間がかかるんだ」

 

長期戦の予感に氷室は顔を歪めた。

 

ジャームの攻撃を回避しつつ、拳を繰り出す氷室だったがその全てをかわされてしまう。

 

しかしそれがまるで予定通りとでもいうかの様に、焦ることなく拳を振るう。

 

しばらく激しい攻防を繰り広げていたが、氷室が突如ジャームから距離を取った。

 

次の瞬間、一筋の閃光がジャームを襲った。

 

「遅いですよ、望月さん。一生こいつの相手をさせられるのかと思いましたよ」

 

氷室の声に合わせて現れたのは、自らの能力で模倣したレミントンM700を抱え込んでいる望月だった。

 

「いやぁ、なんか今日は狙いがイマイチ定まらなくてねぇ」

 

勿論これは嘘であり、望月はいつでも狙撃する事ができた。

 

氷室の実力を知るため、あえて狙撃をするタイミングを遅らせたのだった。

 

試された事を感じ取った氷室は溜息をつきながらジャームの前に立つ。

 

「あばよ、化け物」

 

再び電撃を纏わせ、ジャームの体を拳で貫く。

 

ジャームの消滅を確認した二人はそれぞれの通信機で同時に支部への通信回線を開いた。

 

「「任務完了(ミッションコンプリート)」」

 

氷室の南条支部に来ての最初の任務はこうして幕を閉じた。




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