闇物語-星のカービィ クロス・ダークネス-   作:であであ

19 / 95
004.ENCOUNTER & TARGET

その光景は、逆に呆気に取られるものだった。原因を探るため東京、その吉祥寺に訪れたアンク。どれほどの惨劇かと胸を痛めていたが、結局地獄絵図は地獄絵図。何処に行こうと惨劇の悲惨さは変わらない。

 

「所々、生きてる奴の気配は感じられるんだがなぁ…。」

 

この惨劇の中でも、かろうじて生き延びている者たちはいるようで、救える命なら救いたいと、アンクが周りを見回していると、

 

「…何だ…?」

 

いつの間にか、自分が霧に包まれていることに気付いた。先程まで、血塗られた街の景色が見えていたはずなのに、今アンクの目がとらえるのは、広範囲に渡る濃霧、それだけだった。そして、

 

「ギャーっ!」「ゔわぁーー!」

 

「…っ!何だ!」

 

突如霧の中から大勢の悲鳴が聞こえてきた。それに反応したアンクは、その悲鳴の主を探すように濃霧の中を慎重に走り回る。見えない生存者を求めて辺りを見回し、そして気付いた。

 

「…っ!」

 

足元に、いや、至る所に人間の四肢が散らばっていた。その光景に思わず声を出しそうになり、抑える。

 

「切られて、いるのか…?」

 

この時、既に悲鳴を上げた者は絶命し、さらにこのままでは自分の命さえも危険だということを悟り、アンクは咄嗟に自分の腕を斜めに振り払った。そこから発せられたのは強烈な風魔法であり、自身を包んでいた濃霧を一瞬にして取り払った。

 

「…やはり…。」

 

完全に消え去った濃霧に安堵したのも束の間、存在を予想していた脅威に身構えるアンク。目の前にいたのは、大きな鎌を持ち、口内に3つ目の巨大な眼球がある、まさに不気味という言葉を体現したような異形だった。

 

「殺戮者は殲滅する…!」

 

家族同等の存在を殺された怒りがこみ上げ、3つ目の殺戮者に飛びかかろうとした、またにその時だった。

 

「…!」

 

轟音と共に異形を吹き飛ばし、アンクの目の前に止まったのは一台のバスだ。猛スピードによる突進の威力は凄まじく、吹き飛ばされた異形は、その先で血を流しながら動き出す気配はない。

 

「そこの君、早く乗って!」

 

バスから出てきたのは人間。そしてアンクは、その人に言われるままに乗車し、濃霧地帯を後にしたのだった。

 


 

「こいつらは、普通の生存者ではない。」

 

それが、バスに乗っている7人と1体に抱いた最初の印象である。理由は2つだ。1つ目、異形を撃退できたこと。アンクの知ってる生き残りは、泣き喚き逃げ回ることしか出来ない者たちだ。まぁそれが普通だとは思うが。そして、この生存者たちは、異形を連れていること。それが、2つ目にして最大の理由だ。

 

「まぁ、気持ちは分かるが、一先ず名乗っておこう。」

 

何食わぬ顔で生存者に紛れ込む異形を鋭く睨みつけるアンクに、隣に座る男が口を開いた。

 

「あぁ、俺は宵榊宮アンクだ。」

 

「そうか、俺の名前は児上貴衣。同じ生存者として、宜しくな。」

 

それから暫く、自己紹介の時間が続いた。最初に名を述べた男、貴衣は黒い衣服に身を包んだ、単髪の美男子だ。そして一通り、バスの中にいる者たち全員の情報を得て、そこである違和感を覚えた。

 

「…お前、この世界線の者ではないな…?貴衣だけじゃない、ここにいる奴ら全員、少なくともこの時代の人間じゃない…、どういうことだ…?」

 

「やっぱり分かったか。どうやら、君もただの生存者じゃないようだな。さっきだって、戦おうとしてただろ?」

 

「…教えてくれ、一体、何が起きてるんだ…。」

 

アンクのその問いかけに、貴衣はゆっくりと話始める。曰く、事の発端は未来。世界の再創生を狙う人物が、魔女の子供を拐うという事件が発生した。だが、最後の魔女の子はその時代には存在しなかった。何故なら、最後の魔女の子の親"福本つくね"は独身であり、子供を作ることが出来ていなかったのだ。このままでは世界の再創生が叶わないと悟った元凶は、過去を改変して、未来に子供が出来ている事実を作り上げることを思いついた。つまり、

 

「この惨劇は、この時代の福本つくねと、その想い人である児上貴衣を将来結婚させるために起こされたのも…?」

 

「そう言う事だ…。そして俺たちはそれを阻止するため、惨劇が起きた後の時間から遡って、この時間にやって来たんだ。そこにいる"魔法少女"、君の言う異形は、俺たちの仲間だ。」

 

今まで残酷な殺戮を繰り返して来た奴らの名が、そのイメージと正反対すぎて呆気に取られる。おまけに、ここにいるのはこいつらの仲間と来た。設定がぶっ飛びすぎてて、思わずため息が漏れた。そして、一先ず思考の整理が完了してから、アンクは最大の疑問を貴衣に投げかける。

 

「その、惨劇の黒幕とやらは、今どうしている?」

 

「奴はこの時代で、生徒として俺の高校に侵入して、この惨劇を引き起こした。だから、今もこの時代にいるはずだ。」

 

そう答えたのは、大人の貴衣ではなく、この時間に最も近い時間から来た高校生の貴衣だ。同じ空間に2人の同一人物がいるのは何とも変な感じだが、その違和感を無視し、アンクは続けて問う。

 

「そいつの名は…?」

 

「…姫路弥だ…。」

 

その名を口にした瞬間、バス内の空気が一気に張り詰めたことを、アンクは見過ごさなかった。




能力解説〜

もっと出さなければ…

ここらへんから原作から外れていく!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。