マリア・カデンツァヴナ・イヴは破竹の勢いでスターへの階段を上り続けた。
テレビで見ないことなど最早ない。
一躍時の人へとなったのである。
そして、彼女は風鳴翼との共演のために多くの布石を行うのだった。
某バラエティ番組。
「マリアは日本が好きなんだって?」
「ええ。日本のカルチャーにはとても大きな影響を受けているわ」
「例えばどんなものに影響を受けたんだい?」
「救急戦隊ゴーゴーファイブよ」
「…え?なんだって?」
「だから救急戦隊ゴーゴーファイブよ」
カンペを見る司会者
「あ~パワーレンジャーねパワーレンジャー」
「そっちじゃなくて日本の方よ。マスクの中の顔が見えるのがいいわね。あとやっぱり熱いし、人の命は地球の未来っていうのは至言よ。あと他にも戦隊だとタイムレンジャー、ガオレンジャー、ハリケンジャー(以下略)仮面ライダーだとアギトが好きね特に18、19話が好きなのよ。あのヘイトを溜めまくっていた北條君にスポットの当たる回で最後、自身の尊敬する先輩の罪を暴き涙を流すのはまさに役者である山崎潤氏の演技力が光る………」
こんな感じでマリアは親日アピールを繰り返した。
やけにその内容が偏っているのは中の人のせいなので仕方ない。
だが、これに日本のオタク達は大いに盛り上がった。
ネット上ではマリアを「オタク界のジャンヌダルク」
「オタク達の聖母マリア」と呼び尊んだ。
更にマリアの親日活動は続く。
某雑誌のインタビュー。
「マリアさんが尊敬しているアーティストはいますか?」
「日本の風鳴翼よッ!(即答)いずれ共に同じステージに立ちたいと思っているわッ!」
「それはいいですね!二人が共演するライブを是非見てみたいわ!それじゃあ次の質問なんだけどプライベートはどう過ごすの?」
「そうね…日本のマンガを読んだり、アニメ、特撮を見たりして過ごしているわ。あと風鳴翼の曲を聞いたりライブDVD見たり。あまり外には出ないわね」
「流石ジャパニーズOTAKUね。特に好きなマンガは何かしら?」
「そうね…どれも甲乙つけがたいのだけど…」
めっちゃ悩むマリア。
「ブラックジャックは好きだけどこう、なんていうのかしら…聖書ッ!そうッ!聖書よッ!私にとってのバイブルはブラックジャック!そして悩みに悩んだ結果ッ!特に好きなマンガはスティールボールランよッ!ジョニィの人間臭さがいいわ!私もジョニィのように成長していきたいと思っている。あとやっぱりタスクがかわいいわね私も欲しいわ。爪弾で歯磨きしてみたい。それからそれから……」
「うわぁオタクキモ…(そうなんですね!私も興味を持ちました!)」
マリアは、その手の会話の時は早口になるのだった。
仕事を終えて帰宅した俺は浴槽に浸かっていた。
「ふう…今日も疲れた…」
現在、念願のマイホームを手に入れ一人暮らし中。
施設じゃ仕事に行くのには遠すぎるからね、仕方ないね。
まあみんなといられないのは寂しいけれど、これも原作回避のためだ仕方ない。
あと少し…あと少しで風鳴翼との共演が叶いそうだとマネージャーから話があった。
連日の日本LOVE営業が功を奏したようで向こうから共演の打診があり日程を調整中とのこと。
とても…とても…長かった(二ヶ月くらい)
この調子で風鳴翼と接触(意味深)して…いや(意味深)じゃねえ普通に接触してこっちの情報を伝えて…
などと考えていると風呂の扉が開く音が。
「マリア姉さんッ!」
「ひゃぁ!?セレナァ!?なんでいるのッ!?」
「話があって来たの!」
「話があるだけならッ!なんで裸でッ!お風呂入る準備万全なのッ!?」
「マリア姉さんとお風呂で話すためだけど…え?ダメ?」
「ダメじゃないけど…」
そういうと鼻息荒く浴槽に私と向かい合うように入ったセレナ。
あっ、これ選択肢ミスったやつや。
「あの、マリア姉さん」
「な、なにかしら…?」
「まさか、マリア姉さんがアイドルになるなんて思わなかった…普段は引っ込み思案な姉さんが…たまに突拍子のないことすると思ってたけど、アイドルは予想外過ぎて…」
「そ、そうかしら…」
そうかな…そうかも…
まあ芸能界に憧れて入ったとかじゃないし…
上の空になって考えているとセレナがぐっと体を寄せてきた。
成長したセレナのセレナがぐっと押し当てられて…おっふ。
男の体だったら大変なことになっていた…
てか顔近ッ。
「マリア姉さん…私ッ!」
セレナの指が脇腹を撫で、少しずつ上昇していき…
「ちょっとセレナ!やめ、やめなさい!こらこの…変ッ態ッ!!!」
※なにをして、なにをされているかはご想像にお任せします。
「ぐはっ…そ、そんな…前はこんなことする人じゃなかったのに…元の優しいマリア姉さんに戻って…」
「ご、ごめんなさいセレナ…やり過ぎたわ…痛かったで…」
「隙ありッ!」
「諦めわるッ!?この変態ッ!」
「も、もっと罵ってマリア姉さんッ!」
「ッ~!こんの…変態がぁ!!!」
「きゃああああああ!!!!!!」
ここに、変態は倒れた。
せめてもの情けだ、風呂で溺死しないようにはしてやるか…
そして、遂に…
やって来た…我が(心の)故郷…
日本ッ!
リハやら取材やらなにやらと忙しいが…
とにかく今日は一大イベント…風鳴翼と顔合わせ!
ここで色々と情報を提供すれば大丈夫…なはず。
あれ、けど神獣鏡がないとビッキーのガングニールが消えないからビッキー死んじゃう?
あれそしたらヤバい?
神獣鏡持ってくればよかった?
ヤッバイ今になってとんでもないことに気付いた…
ビッキー…どうしよう…
F.I.S.のことを教えればなんかこう押収やらなにやらしてくれるかな…
うーんなにはともあれやるっきゃねぇ!
ここまで来たんだ。
人の命が奪われるのは少ない方がいい…
というわけでいざ!
「はじめまして。私が風鳴翼です。あなたとの共演を楽しみに…って、ええっ!?ど、どうして泣いているの?」
「ぐすっ…だって、だって…ようやく願いが叶ったから…ずびっ!ああ…本当に、本当に、なんて遠い廻り道…ぐすっ」
思わず感極まって泣いてしまいました。
いい大人なのに恥ずかしい。
周囲の人間達は風鳴翼のファンを公言するマリアが遂に風鳴翼と会えて感動して泣いているんだなと思っている。
しかしッ!マリアが流す涙の本当の理由は違ったッ!
マリアが泣く理由ッ!それはッ!
風鳴翼に接触するまで本当に色々あったわ…
セクハラ、女芸人に混じってのヤバめバラエティのロケ参加、熱湯コマーシャル…
どれも辛く、投げ出したくなる時もあった…
だけど世界を救うためならとこれまで耐えてきた(三ヶ月)
そこ、三ヶ月とか一瞬なんて言うんじゃない。
同じ三ヶ月でも密度が違うんだよ密度が!
日本に飛んで二課に接触すれば万事解決だと思ったけれど日本行きを許されなかったからアイドルになるなんていうまわりくどい方法を取った。
だけどもうアイドルも卒業!
目的がもう果たせるのだから!
「そう泣くな…折角の綺麗な顔が台無しになってしまう」
翼さんがハンカチを差し出してくれた。
マジイケメン。
嫌いじゃないわッ!
…嫌いじゃないわッ!ってマリアさんで言ってもあんま違和感ねえなおい。
「このあとお二人の親交を深めようと二人でお話する時間を取っていますので早速どうですか?」
さっすがNINJA!わかってるぅ!
「ぜひッ!!!ずびっ!」
部屋に通され、翼さんと二人きり。
テーブルに向かい合わせに座り、中央にはお菓子が。
あっルーベ○。
いただきます(早速)
ふう…これで緊張はなんとか緩和出来た。
それでは早速…
「ずっと、あなたと話がしたかったのよ」
「私も、同じ歌の世界で羽ばたくマリアとこうして言葉を交わせることが嬉しい」
「そうね…だけど、今は歌女ではない貴女と話がしたい」
「なに…?」
「もっと分かりやすく言いましょうか。特異災害対策機動部二課に所属するシンフォギア装者である風鳴翼と話がしたい」
「なっ!?何故それをッ!?」
不敵に笑うマリア。
しかし、内心は…
やべえよやべえよ…
遂に言っちゃったよ…
緊張し過ぎで内臓吐きそう。
ルー○ラ食うんじゃなかった…
○ーベラ美味しいよね!