【二次創作】僕の英雄譚を覗かせてあげます‼︎【エクス・アルビオ】   作:ささくれガチ恋勢Ⅱ型

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第十二話です。全く関係ないですけどyoutubeで配信されてる「ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE」の新OPめっちゃ好きです。


12. 30億

 珍しく普通の服を着込んだエクスと彼の友人が横に一人。その手には小さい紙切れ。

 

「おいマジかよ.....ヒム、これ幻じゃないよな?」

 

「幻じゃないよ。現実。」

 

「現実.......」

 

 エクスと彼の友人であり同僚のイブラヒムは二人で遊んでいた。

 

 イブラヒムはエクスの後輩にじさんじ配信者(ライバー)で、元石油王現温泉経営者。エクスと相性が良いようでよく一緒に遊んでたりする。二人ともとある罪を犯したが故に、コンビ名は自戒の意をこめて「にじさんじゴーミーズ」となっている。

 

 帰り際に宝くじを一枚買った。二人ともあまり期待をせずに買ったもの。そして当選番号を確認した際、二人は絶句する。

 

「当たってる......。」

 

「当たったねぇ.....。」

 

 .......。

 

((30億、当たったぁぁぁぁぁ!!!!!))

 

 なんと一等の30億を引き当てた。エクスのくじを持つ手が震える。

 

「これマジで当たったんだよな!? あの30億当たったんだよな!?」

 

「そそそそうだよ、あの30億が当たったんだよ。え!? あの30億が当たったの!?」

 

「とっ、とりあえず換金しようぜ! 銀行だ銀行!」

 

「急ごうか! 他の人に見つかる前に! これは俺たちのものだ!」

 

 二人は真っ先に銀行へ向かった。道中二人は当たった金でなにをしたいかで盛り上がる。

 

「やっぱまずは旅行だろ! で、美味しいもん食ってハイスペックPC買っったりしてさ!」

 

「俺はでっかい家買って、あと温泉を強化して..... やばいわやりたいことが多すぎる!」

 

 二人は笑顔で銀行に向かう。夢を掴むために。

 

「よし、エビさん。ちゃんとくじ持ってるよね!」

 

「おう! ちゃんとこの手の中に....」

 

「手の中に.......」

 

「.......。」

 

「エビさん?」

 

「手の中にあったはずなんだけどな....。」

 

「なにやってんのエビさん!? まじでやばいよそれ!!」

 

「いや大丈夫!! 後ろ見てみ! 普通に落としただけだったよ!」

 

 宝くじは道端に落ちていた。

 

「もうびっくりさせんなよぉ。しっかりしてくれエビさん。」

 

「わりいわりい。」

 

 エクスが後ろに戻って取りに行こうとした瞬間、風が吹いた。

 

 そのせいで宝くじがエクス達から飛んで行った。

 

「やばいやばい! 行くぞヒム!」

 

「絶対取り戻さなきゃ! 俺たちの夢を!」

 

 エクスとイブラヒムは飛び続ける宝くじを追いかけるが、いつになっても手は届かない。

 

「クソ! このままじゃ夢が消えちまう!」

 

「そうだ! エビさん! 俺をぶん投げてくれ!」

 

「いや急に何言い出すの!? 正気かよ!?」

 

「正気じゃ夢は守れねえ! はやく!」

 

「後で文句言うなよ!」

 

 エクスはイブラヒムより先に出て手を組む。そのままイブラヒムはエクスの手に飛び乗る。そしてすぐにエクスが腕を上げ、イブラヒムを投げ飛ばす。

 

 イブラヒムは宝くじに近づき、その手でしっかりと掴み取った。

 

「エビさんとったとった!」

 

「ナイスヒムゥ!」

 

 空中でサムズアップするイブラヒム。それにエクスもサムズアップをし返す。

 

「でもエビさん助けてくれぇ! ゲットした後のこと考えてなかったんだけどぉ!」

 

「あっやっべ! って前見ろヒム! 受身をとれぇ!」

 

「え? ちょっと待っ.....うわあああああ!!!!!」

 

 頭から電柱に激突した。

 

「ヒムゥゥゥ!!! ああ! なんで! なんでなんだっ! 俺だけを置いていくなんて! ........大丈夫だ。お前の分まで使ってやるからさ。」

 

「いや死んでないんだよね。勝手に殺すな。でも、この手の中に宝くじが......」

 

「あれ?」

 

 二人とも上を見た。宝くじがひらひらと舞っている。そのまま風に流され近くの軽トラの荷台に載った。

 

 そしてそのまま軽トラはどこかへ走り出した。

 

「.....。」

 

「.....。」

 

 気がついたら軽トラを追いかけていた。

 

「待てええええええええええ!!!!!」

 

「うおおおおおお!!!!」

 

 本来なら人は追いつけないはずの速度だが、欲望に支配された二人は追いつけそうな勢いである。

 

 だが、軽トラが目的地に着いてしまった。軽トラは大きな倉庫の中に入っていった。

 

「まじかよ中に入っちまったよ。諦めようよエビさん。」

 

「.......。」

 

「エビさん?」

 

「ヒム、簡単に夢を諦めてもいいのか?」

 

「俺たちは夢を叶えるためにここまで来たんだろう?」

 

「いこうよ。」

 

「.........わかった。」

 

 二人は倉庫の中に侵入した。倉庫の中には人が多く、雰囲気がかなり険しい。

 

「さっさと手に入れてこんなところからズラかろう。」

 

「そうだね。」

 

 二人は物陰に隠れながら例の軽トラに近づく。そこで中にいる男二人の会話が聞こえてきた。

 

『例のブツ、ちゃんと来るんだろうな。』

 

『来るさ。向こうの取引先ともwin-winだからさ。』

 

『あれさえあれば俺たちの目的が達成できるわけだ。』

 

『ああ。もともとここは俺たちの世界だ。異世界人だがなんだか知らないが、あいつらがいるのはいけ好かないな。』

 

 二人は理解した。ここは思ったより危ない場所だったと。

 

 この世界は様々な異世界と繋がりやすい性質を持つ。故に異世界人の割合が多め。それに対して排他的な思想を持つ団体がいくつか存在する。そしてここがその現場だった。

 

「ねえやばくね? マジで俺らおっかないところに来たみたいだよ。」

 

「とりあえずもうちょっと盗み聞きしようぜ。」

 

 物陰に隠れたままの二人。それに気づかず男二人は会話を続ける。

 

『そういえばどういうブツか聞いてないんだがお前は知ってるか?』

 

『噂によれば異世界人にのみ影響が出るビーム兵器らしいぞ。』

 

「ヒム、ビーム兵器ってやっぱやばいのかな。」

 

「わかんない。でも科学の結晶みたいなところあるからねビームってのは。」

 

『ビーム兵器だからなんでも破壊できるみたいだぜ。』

 

『ほう。それは楽しみだな。』

 

『ああ、これさえあれば異世界人どもにギャフンと言わせられるぜ!』

 

『ああ! これでこの世界は正しい姿に戻る!!』

 

「なんかすごそうだなぁ。」

 

 小声で呟いた瞬間、足元に落ちてたゴミを踏んでしまった。

 

 甲高い潰れる音が倉庫に響いた。

 

『誰だ!』

 

 一瞬で二人がいることが感づかれてしまった。

 

「しまった! 一旦宝くじ諦めるぞ!」

 

「さっさと逃げよう逃げよう!」

 

『いたぞ! あいつらを捕らえろ! あの感じ異世界人だぞ!』

 

 エクスとイブラヒムは倉庫の外に逃げた。追手は来ているが建物の陰に隠れてやり過ごすことができた。

 

「さて、ヒム。どうやって宝くじを取り戻す?」

 

「その前にもっとヤバいこと起きてるけど。宝くじどころじゃないでしょ。」

 

「30億」

 

「とりあえず奴らと交渉して隙を見て取り戻してトンズラする?」

 

 30億のことを言ったらあっさり軌道修正できた。ちょろい。

 

「覚悟はできてるよ。」

 

「よし。」

 

 

 

 

 

 結果うまくいった。追手のおまけつきだが。

 

 今エクスのポケットの中に宝くじがある。

 

「このまま銀行行くぞヒム!」

 

「おうよ!」

 

 走る二人。途中でエクスが対向から走ってきた人にぶつかったりしたが、なんとか銀行についた。

 

「よっしゃあ! これで30億が!」

 

「俺たちの!」

 

「「物だああ!!!」」

 

「いいや、」

 

 すると後ろから声がした。知っている声だ。二人はすぐに後ろを振り向く。

 

「俺たちのものっす!」

 

「悪いね二人とも。これは僕たちが有効に使うからさ。」

 

 そこに立っていたのはコンビ名、クロノワールの二人の葛葉(くずは)(かなえ)だ。そして葛葉の手には宝くじが握られている。

 

 エクスはすぐ腰ポーチの中を見るが宝くじがなくなっている。

 

「さっきぶつかったのはあなた達でしたか。」

 

 葛葉は二人の先輩にじさんじ配信者(ライバー)で吸血鬼だがどうやら日の下に出れるらしい。銀髪で赤眼、ジャージを着た現金な性格のニートゲーマー。対する叶はおなじく二人の先輩にじさんじ配信者(ライバー)で記憶喪失らしいがそこは怪しい。一見ふわっとした性格で茶髪に今日は水色の上着を着た青年。そして今日はぬいぐるみを抱きかかえている。

 

「お前たちが宝くじを当てた瞬間を俺は見たんだ。だから、叶に協力してらって隙をずっと伺ってた。こんな簡単なことで30億も手に入るなんて人生勝ち組だぜぇ!」

 

「ちょっとそりゃないでしょ! 今すぐ返してくださいよ!」

 

「大丈夫。ちゃんと二人には1000円くらい恵んであげるからさ。」

 

「いや少なっ! さすがの先輩相手でもこれはちょっと容赦しないよ。ねぇエビさん。」

 

「いいぜヒム。ボコボコにしてやろうぜ!」

 

「かかってきな!....って言いたいけど場所変えようぜ。ここはちっとやりづれぇ。」

 

「そうですね。そうしましょうか。」

 

「じゃああそこの倉庫地帯にしようか。」

 

「オッケーです。」

 

 場所移動した四人。そして約束の地にたどり着いたゴーミーズとクロノワール。

 

「っしゃああ! かかってこおおい!!」

 

 葛葉が戦いの狼煙を上げたと同時に葛葉の横を暴風が吹き荒れた。

 

「なんだなんだ!?」

 

 暴風の軌道の先にいたのはエクス。その手には宝くじが握られていた。

 

「残念でした! これは俺のものです!」

 

「ナイスエビさん! どうだお二人さん!あの30億はあなた達のものなんかじゃないんですよ!」

 

「くっ、待てえええええ!!!!」

 

「よしヒム! あとは任せた! この30億は大事に使うぜ!」

 

「よし先に逃げな! ここは俺がなんとか.......ん!?」

 

 エクスの言葉に反応したイブラヒム。

 

「イブラヒムゥ、いつ俺たちがさ、」

 

 

「仲 間 だ と 言 っ た ?」

 

 イブラヒムは今理解した。自分は今切り捨てられたということに。

 

「........ふざけんなよ。それは......その30億は.....ッ!」

 

「エビさんの物じゃねえええええ!!!!!」

 

 駆け出すイブラヒム。

 

「いやおめえのものでもねえよ!!! これは俺のものだ!」

 

 葛葉が反論した。これは自分のもだと威嚇する。

 

「ありがとう葛葉。良い口実ができたよ。」

 

 叶が穏やかな声で喋った。それと同時に三人の元で爆発が起きた。

 

「これで僕にも30億を独り占めする権利ができたわけだね。」

 

 叶はロケットランチャーを構えていた。さっきまで抱えていたぬいぐるみ『ロト』が変化したものだ。『ロト』はどういう仕組みかはわからないが、銃器に変化させることができる。弾数は叶のスタミナが尽きない限り無限。

 

「........叶?」

 

「葛葉言ったでしょ。それは俺のだって。」

 

「.......なんでもお見通しってわけかよ。」

 

「自分でボロ出しただけでしょ。」

 

「って宝くじ宝くじ!どこいったんだABO(エービーオー)!」

 

「くっそぉ......」

 

「あ! 捕まえたぜ英雄さんよぉ! さぁ返してもらうぜ!」

 

「返すってもともと俺のものですよ! そして今持ってないですし!」

 

「は?」

 

 確かにエクスは宝くじをすでに持っていなかった。

 

「これは俺のものだ! あんたらには渡さねえ!」

 

 すでにイブラヒムが宝くじを爆煙に紛れて手にして逃げていたのだ。

 

「しまった! ヒムの野郎!!」

 

「絶対に逃さねええ!!!」

 

 エクスと葛葉もイブラヒムを追いかける。叶に関してはすでにその場にいなかった。

 

 

 

「はぁ.....はぁ............」

 

 息を切らしながら走るイブラヒム。

 

「これでだいぶ撒けたでしょ。一回休まないと......」

 

「てかなんか見覚えがあるなここ。」

 

 イブラヒムは建物の陰にへたりこんだ。すると、イブラヒムの顔の横を何かが通った。

 

「なんだ!?」

 

 すぐ後ろの建物の壁を見ると、そこには弾痕らしき傷ができていた。

 

「まさか......!」

 

 イブラヒムは再びすぐに走り出した。そして彼を襲いかかる鉄の雨。

 

「どこにいるんだ!? 叶さんは!!」

 

 叶が銃でこちらを狙ってきていると考えたイブラヒム。

 

「ここだよ。」

 

 前を見るとそこには拳銃の銃口をこちらに向けた叶がいる。

 

「それはここに置いていきな。一応脅しのつもりだからね。」

 

「いや絶対渡せないです。この30億は誰のものでもない、俺のものです!」

 

 イブラヒムが後退りすると叶の拳銃が火を吹いた。

 

「あっぶね!」

 

 間一髪で避けたイブラヒムはすぐに後ろへ走り出した。叶の追撃を避けながら。

 

「待ちなよイブくん!」

 

 叶の拳銃はいつのまにかアサルトライフルに変化していて、それが放つ鉄の雨がイブラヒムを襲う。

 

「うわあああああ!!!!」

 

 イブラヒムは悲鳴をあげながら走る。そして今度こそうまく撒けた。

 

「くそっ! イブくんの野郎どこ行きやがった!」

 

 物陰に隠れたイブの目に叶が写った。

 

 

 

 

 一方その頃、エクスと葛葉の間では風も寄せ付けない格闘戦に発展していた。

 

「あの30億は俺のものだ! おとなしく譲りやがれッ!!」

 

「絶対譲りません!! あの30億は俺を選んだんだ!」

 

 場所は倉庫内、屋内戦となっている。葛葉は倉庫内の壁を忍者のように駆け回り、隙を見てエクスに飛びかかる。対してエクスは葛葉が飛びかかってきた瞬間に体を反らして往なす。

 

「しぶとい野郎だ! ちょいと趣向を変えるか!」

 

 再びエクスに飛びかかる葛葉。だが攻撃はせずにそのままエクスの懐に入る。

 

「くっ...!」

 

 危険を感じたエクス。すぐに胴体の前に腕を持ってきて防御体勢に入る。

 

「喰らえッ!!」

 

 葛葉はエクスの腕を左足で蹴り上げエクスの胴はガラ空きに。そのまま左足で回し蹴り。エクスは間一髪で腕を戻して防御できた。だが葛葉の攻めは一撃では終わらず勢いをそのままに右足で蹴りつけ、その次は再び左足でと連打をし続ける。

 

 防御を崩したら一気にやられる状況。英雄とはいえ昔に比べ力は劣っている。彼の顔に汗が浮かんだ。

 

 でも腐ってもやはり英雄だった。

 

「うおらあああ!!」

 

 エクスは襲いかかる葛葉の足に左フックを当てた。葛葉のバランスは崩れてしまった。

 

「やべっ!」

 

 今度は葛葉が防御体勢に。彼の前には拳を叩き込もうとするエクスの姿。

 

「どりゃああ!!!」

 

 エクスの拳が飛んでくる。葛葉は防御をやめ、回避した。

 

「......あぶねえなおめえよぉ! 手加減くらいしろやぁ!」

 

 避けた葛葉の後ろの壁には大穴が開いていた。しかもその穴はさらに後ろにある倉庫の壁にも開いていた。

 

「30億を前にして手加減する方がおかしくないですか? 葛葉さんは30億を手に入れようとしてるのに本気出さないんですか? さっきまで本気のようでしたけど。」

 

「それもそうか!」

 

 二人に汚い大人が本気を出して、しかも同僚を仕留めてまで大金を手に入れようとする。

 

「そういえば葛葉さん。」

 

「なんだよ。」

 

「30億を何に使うつもりなんですか?」

 

 素朴な疑問。他意は一切なく本当に気になって聞いただけ。

 

「何に使うって....そりゃ豪邸とか...食べ物とか.....じゃな....いですかね。」

 

 なぜか言い淀む葛葉。エクスは何も考えずに葛葉が大金を手に入れようとしているわけではないと見抜いていた。

 

「本当はどうなんですか。」

 

「本当は.....」

 

 

「お金があれば友達を増やすきっかけになると思って....ですね......はい。」

 

 

 先ほどまでの威勢は完全に消えてた。彼はだいぶ強がっているが、根は人見知りだった。

 

「葛葉さん....。」

 

 エクスは共感した。いまは若干克服できたものの、彼も人見知りだ。

 

「手を組みましょう。」

 

 葛葉がバッとこっちを見た。

 

ABO(エービーオー)...!」

 

「一緒に30億を手に入れて....」

 

「陽キャになりましょう!!」

 

「おう!!」

 

 二人の汚くてちょっぴり切なくて情けない大人が手を組んだ。

 

 

 

 イブラヒムは他の三人に隠れながらここから逃げ出そうとしていた。あと一歩で逃げ切れるその瞬間、

 

「見つけたよイブくん!」

 

 叶に見つかった。周りには遮蔽物が一切なく、動けない。

 

「クソッ! 一か八かだッ!」

 

 だがイブラヒムは覚悟を決めて走り出した。

 

「逃がさないよ!」

 

 叶も拳銃を二丁持ちにして追いかける。

 

「よっしゃあ! もう少しだ!」

 

 もうすぐで出口となる。外に出ればさすがの叶でも発砲はできないだろう。イブラヒムは勝利を確信した。

 

 しかしそれは許されなかった。

 

「見つけたぞヒムゥ!!」

 

「お前は俺たちの夢の!!」

 

「「礎になれえええええ!!!!!!」」

 

 手を組んだエクスと葛葉が出口方面から襲いかかってきた。

 

「しまったああああ!! 二人のこと忘れてた!」

 

 足が止まるイブラヒム。そのせいで叶との距離も縮まっていく。

 

「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」

 

 そしてイブラヒムに三人が飛びかかった。

 

「うわああああああ!!!!!」

 

 イブラヒムは絶望した。自分の手の中にある30億を失う事になるからだ。

 

『いたぞおおおお!!!!』

 

 だが、男の怒声が聞こえた。

 

『異世界人どもを全員吹き飛ばせええええ!!!!』

 

 イブラヒムはようやく思い出した。この倉庫地帯の正体を。ここはさっきの異世界人を嫌っている団体のアジトだった。

 

 だが時はもすでに遅し。男たちの手に握られている銃のようなものから光が放たれた。

 

「「「「えっ?」」」」

 

 四人は爆炎に包まれた。ついでに過剰火力で倉庫地帯全体も爆炎に包まれた。

 

 

 

 

 黒こげになった瓦礫の上に黒こげになった四人が倒れていた。その四人のそれぞれの手には一つの宝くじが掴まれてた。四人は意識を取り戻し宝くじを引っ張り合う。

 

 だが、

 

「ちょっと待ってください。これもしかして。」

 

 違和感を感じるエクス。すぐにスマホを取り出してなにかを確認する。

 

「これ一等の30億じゃないっすね。この宝くじよく見たら6等でした。」

 

「「「は?」」」

 

「マジで言ってるエビさん?」

 

 衝撃の事実、よくみたら番号は一等のものではなかった。

 

「じゃあいくらなんだよ。」

 

 葛葉が問う。

 

「1万5千。」

 

「「「........。」」」

 

 静寂が長い間流れる。それを叶が切り開いた。

 

「四人でその金で焼肉行こっか。」

 




第十二話でした。個人的には葛葉さんが素手で戦うとしたら蹴り技が多いイメージがあるんですよね。そして今回はボケもツッコミも少なくなってしまいました。

今回とは関係ないですが実は黛さんの頭の青いアレ、メッシュじゃなくてインナーカラーだったこと最近知りました。腹を切ります。

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