丸一日後。
「」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
「」ムクリ
「・・・」
「生きてる・・・・」
現在位置は郊外の第3核融合発電所の近く。一歩間違えれば変電設備に飛び込んで黒焦げになっていただろう。
が、そのおかげで直通大出力電魔変換回路から魔力を補給できているので結果オーライ。
地平線近くではいまだに激しい閃光と爆炎が上がっている。「致死的攻撃を行わないこと」「敗北を認めたものへの攻撃は行わないこと」「悔恨が残らないようにすること」を条件に3つ巴の戦いに落ち着いたまではよかったが、その余波に巻き込まれたりいろいろあってボロボロになってぶっ飛ばされてここに至る、と。
『ガガッザピーガー…緊急コール3。緊急コール3。』
「ナンバー3応答、こちら“オンリーワン”。“メイン”応答求む。」
『通常コード回線より秘匿暗号化回線に変更。マスター、間もなく魔人軍が到着します。援軍到着まで残り142時間。ハーピィ隊はすでに第4自動対空拠点を突破して領土直接攻撃に入っています。』
「・・・こちらが動かせる軍備は?」
『空中航空母艦2隻、及び空中戦闘艦2隻の炉に火が入っています。他残存艦駆逐級8隻、及び全航空戦力がアクティブです。』
「了解。・・・戦闘機は対空ベルト、攻撃機は対地目標へ換装。第1次攻撃隊順次h発進!さぁ、戦争を始めよう!」
半分死んでいた唯我の目に光が戻る。
エンジンを唸らせて出番を待ち構えていた航空部隊が一斉にプロペラを回し始める。半数が燃料を燃やすレシプロ、残りが魔道回路を用いて飛行する魔術飛行機だ。
エンジンを温めていたレシプロ機のほうが早く発進できる。レシプロ特有の重低音を奏でて、第七滑走路へ移動する。
先に待機していた機体は既に離陸した後のようだ。ハイパーコンピュータN-GAI(結局略された)に全機指揮されているため誘導灯は必要ない。上空で旋回して編隊を組む中に合流して、4機一組の小隊を形成。続々と4本の滑走路から離陸する最新鋭の8000
スペックは若干劣るが量産性に優れていて大量生産された5000γ型2500機。100機しかないが魔燃両用な試作機2100β型に人の搭乗が考慮された電子戦機100α型10機、艦上戦闘機2000機(うち実戦運用1000機)それに無数の攻撃機群を加えて総勢13660機が唯我軍の全航空戦力である。
レシプロ機が全機離陸した後も、急ピッチで魔素の充填作業が進められていた。基本的に魔導型のほうが魔力によって機体が強化されている分カタログ上のスペックは高いが、魔素障壁に対して脆弱で特に無属性の魔素隗を直接当てられると一撃で墜ちてしまう。
そのため、遠距離が使える魔導士をレシプロ機が一掃してから魔術的攻撃を加えるスタイルをとる。
ボロボロになって変換回路にもたれかかって休む唯我の頭上を、無数の黒い影が飛んでいく。第一次攻撃隊だ。プロペラが風を切って目標に向かって一直線・・・ではなく、風に乗って燃料を節約しながら飛んでいる。陸上攻撃機及び戦闘機は航続距離が命だ。
一方、ゆっくりと・・・と言っても時速120㎞というスピードで移動を続けている空中空母は、倍以上の速さで空を駆ける陸上機にあっさりと追い抜かれながらも確実に前線へと近づいてゆく。
遂に、戦いの火蓋は切って落とされた。
各地に配備された
そして、人間離れしたその聴覚は接近してくる非常にやかましい飛翔体―――我らの空を脅かすものたち―――を確認した。
ただ、彼女らにとって誤算だったのは、そいつらがハイパーコンピューターに統率された対空戦に特化している機体たちなのを、軽いおやつが向こうからやってきた程度にしかとらえていなかったことだろう・・・
『8820小隊緩降下、8900大隊及び8840中隊上昇。8824,8828,8832小隊は20小隊の援護!8836小隊,8880中隊及び8800小隊は水平飛行を続けよ。』
高度という位置エネルギーを速度という運動エネルギーに変換して、ぐんぐんと迫る機影。
なにかがおかしい―――ハーピィ達を“違和感”が襲う。魔力の反応からしてあいつらは戦う力を持たないニンゲン・・・それどころかほとんど魔力が存在しない・・・はずなのに、なぜ空を自由に舞っている?何か自分たちにはわからない力が働いて私たちの空を脅かしているのはわかる。でも、もしそれが空を飛ぶ以外にも使われているとしたら・・・?
答えが出ることはなかった。
12.7mm徹甲弾がハーピィの強固な体表を食い破り、脳を貫通して止まった。容赦なく機関砲から吐き出される高初速高威力の銃弾。彼女は一瞬にしてミンチとなって墜ちていった。
そのまま掃射を続け、銃身の冷却に入るころには十体分近いこま切れ肉が出来上がり、激怒したハーピィ達は対魔力結界を張る。
No.8823が通過したのち、僚機の8822が結界へと突っ込んで魔導制御部分を焼き切らせながらも、更に掃射をしようと初弾を放とうとした・・・その直後、ワッと群がってきたハーピィの鋭い掻き爪でバラバラにされた。
数発だけ撃って後続の8820と8821は左右に分かれて離脱する。
決して軽傷ではないレベルのダメージを負ったハーピィが2,3体出たが、そんなのでひるむわけではない。むしろ、仲間の敵を討とうと戦意は向上している。
急降下して回避機動に入る8823機から注意をそらすように、さらに12機が襲い掛かる。各小隊めがけて属性の異なる魔法攻撃が飛び、空は綺麗な3色に染まった。
火の魔法「ファイアーショット」の直撃を受けた機体は、そのまま燃料に引火して派手に爆散してバラバラに。
水の魔法「アクアヴェール」はエンジン温度を下げて一時的な出力低下をもたらしたものの、攻撃チャンスを逃して直接援護に向かう羽目になったが撃墜には至らず。
風の魔法「ウィンドストライク」はむしろ向かい風となって位置エネルギーをチャージする結果になった。まあ、1機ほどエンジンに過負荷がかかって滑空するのみになったのは機体も出たが。
それでも、火・岩以外の魔法は非常に効果が薄い。さらに、AIは学習する。火は弾丸よりも遅いので見てから回避が余裕だ。岩・火・風を複合して弾丸を射出されたらひとたまりもないが、土属性の魔法は空中だと発動が難しい。風と水は比較的発動が速いが、エンジン出力を上げ下げすることで影響を打ち消せる。
時間が経つにつれて、形勢は唯我有利へと傾いていった。はじめは数機墜とせていた火の魔法は発射前に感知されてことごとく避けられ、軌道をずらすくらいはできたほかの魔法も効果を発揮しなくなってきた。何より、ハーピィは墜とされたら終了だが、いくら撃墜しようとも次から次へと増援がやってくる。総戦力が289機・・・損失はわずかに11機、レシプロのみで制圧が終わってしまった。
ハーピィの第一陣が崩壊してもなお、ほとんどの機体の燃料計はまだ3分の2以上を示していた。・・・追撃の時間だ。
敗走するハーピィの背後から、悪魔の羽音が聞こえてくる。時速350㎞を誇る巡航速度から降下してさらに速度を上げて突っ込んでくる。銀色の翼から放たれるは12.7mmの死の雨。
領土のほぼ全域の制空権は、唯我の手の中にあった。ハーピィの第一陣どころか本隊含めすべてが壊滅・撤退状態にあって空域内に一体たりとも残っていない。だが、大陸を横断して帰ってくるほどの燃料は詰まれていないため、領空の外まで追い返すと小隊がいくつか哨戒に当たるのみで大半は基地へと帰っていった。
一方そのころ、陸上にて。戦車大隊と魔人軍が衝突していた。戦車といっても、中に人はなく大破すると一定時間後に残っている火薬と燃料のすべてを点火して自爆するシステムが組みこまれているため、戦車爆弾、といったほうが正しいのだろうか?遠距離からは砲撃し、中距離ならば副砲の自動照準サブマシンガンをばらまいて近距離になればその巨体で轢いてしまう。でもって死に際に大爆発、何と厄介な。
響く地響きに流れる硝煙のにおい。魔人軍にとって唯一の救いは、夜になると命中率が大きく低下するという弱点を抱えていることぐらいだろう。・・・まあ、探照灯を持った装甲車が突貫してきたり、夜間爆撃が無ければの話だが。
4式汎用攻撃機。
3000馬力というふざけた出力の星型18気筒空冷エンジン、主武装は20mm機関砲4門に3tという化け物じみた搭載量。これで単発だというのだから笑えない。
エンジンの生産がボトルネックになっているため、4発の重爆撃機に比べて生産が容易く、そのうえで機関砲やロケット弾と色々運べるので今回採用された。ハイパーミサイル開発部が思う存分やりたい放題やった結果、火薬の威力も馬鹿げている。
要するに何が言いたいかというと。
死屍累々
地形は大きく変わり、B+~A-ランクの決して弱くはない魔人が全滅しているのである。損害は軽微、20機強ほど墜とされたがそんなの関係ないといわんばかりの物量。数は力だ。
たとえ墜とされようとも、3tの火薬庫が落ちてくるわけなので殺傷能力的にはあんまり関係なかったりもする。
戦車隊も自爆コマンドを起動したのはものの2,3両のみ。完全勝利だが、ここで終わるほどヨギリノユイガという人は優しくない。空中戦艦は進む、周囲の敵対するすべてを粉砕して。
最終戦果。
クレイマン軍、壊滅。クレイマンの必死の嘆願により本土空爆は避けられたものの、多額の賠償金を支払わされる。具体的にはクレイマン領の税収5年分に匹敵する量となった、とだけ言っておこう。
天翼国フルブロシア。
フレイ、引きこもりになる。本土空爆の結果、山が数個消し飛んでその結果発生した土砂の中に含まれる希少鉱石群を根こそぎ略奪された。
魔王が二柱を退け、空を支配する空挺軍事国家として一大国を築きあげたのだ。
次回。多分、RTA編 終話。
この後はRTAで摩耗した唯我の心をヒロイン勢が癒すほのぼの系のお話になると思います(願望)、ここまでご愛読ありがとうございました!新しい小説の構想が浮かんだ関係と、どこかで一区切り入れないとRTAにもイチャラブにもヤンデレにもなり切れないままグダグダと続きそうだったので、少々強引にこの戦争の終結をもって一旦一つの終わりとさせていただきます。
今後の方針についてはアンケート貼るんで協力お願いします!以上、ここまでプロットも何も作らずに勢いだけで走ってきた作者でした。
・・・再走しようかな(自信喪失)
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再走(リメイク)あくしろよ
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とっとと完結させて、どうぞ
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編集加筆・・・・ですかねぇ
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プロットから♰書き直して♰
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(読む価値なんて)ないです