鯖癌の亡者   作:斗掻き星

8 / 9
天啓…ッ!


メイド、気づく〈?〉

『ポラリスターイム!』

 

私のポケットからポラリスさんの声が。そういえばお嬢様のチケットは私が預かっておりました。

取り出してみればポラリスさんの見た目が少々変化していました。

 

『ヴィジットボーナスが追加されたよ! いっぱい貯めると最後にいいことがあるかも!!』

「ましろ、ヴィジットボーナスってなんですか?」

「…分かりません。なんでしょうか…」

 

ヴィジット…ブースを訪れればポイントが追加されるということでしょうか。

ですが広い上にブースの数も少なくありません。全てのブースを訪れるというのは非現実的でしょう。ですので、

 

「まぁ多分、そう大事な事でもないように思います」

「そうなのですか?」

「たくさんのブースを見て回ってくださいね、ということかと」

「なるほど」

 

そんなこんなで次のブースへ。

シャンフロブースでなくともやはり人はいるもので、一つのブースに長くとどまることはしません。

ちらっと見てお嬢様のお気に召した物があれば買う、といった感じでぶらぶらしていると、

 

「ましろ、あれは何ですか?」

 

見れば、ARゲームをプレイする高校生くらいのカップルが。

 

「スワローズネスト社のブースですね。近くで見ますか?」

「見ます!行きましょう!」

 

チラシがあったので見てみますと、スクラップ・ガンマンというゲームのようです。

新感覚ハック&ショットアクションと銘打ったそれは、倒した敵から奪ったパーツで銃を強化しながら戦うゲームだそうです。

 

「おお…かっこいいですね…」

「……」

「ましろ?」

 

…何か違和感が、いえ既視感ですね。なんでしょうか。今まで銃を扱うゲームはいくつかプレイしてきましたから、既視感があっても不思議ではありませんが…。

 

「ましろ?」

「すいません。何でしょうかお嬢様」

「どうかしましたか?」

「いえ…何もございません」

 

というかこれは…ゲームというより、あのプレイヤー(彼氏さん)に既視感が?

あの動き、どうにも身に覚えが…。

 

 

 

 

まさか。

姿形どころか、性別すら違いますが…。

いえ、あの非常識的な近接戦は誰にでもできるものではありません。

間違いありません。

彼は、

 

「μ-skY…!」

「みゅー?」

「いえ何でもありません」

 

気難しい職人気質の方でしたから、このような場にいるとは驚きです。

数年ぶりにあのゲーム…サバイバル・ガンマンのことを思い出しました。

思えばそのころでしたか。人に仕える、という事をし始めたのは。

懐かしいものです。

 

「ボス戦…!あれ?足だけ?」

「おそらくARゴーグルをしていれば全身が見えるのかと」

「なるほど。私も見てみたいです…」

「では並びましょうか」

「でも、あれ…」

 

お嬢様が待機列の入り口を指さすと、そこには人の形のシルエットが描かれた看板がございました。身長制限があるのですか。

 

「測ってみますか?」

「…いちおう、測ってみます」

 

看板に並び立つと、身長は足りておられませんでした。お嬢様は同年代と比べても背は低い方でございますから、致し方ないでしょう。

 

「むぅ。これが…ARゲーム…!」

「えっと、製品版はお嬢様のサイズも用意されるかもしれませんよ」

「むぅ。まぁ、できないものはしかたありませんね」

 

聞き分けの良いお嬢様。素晴らしいです。

 

「ではましろ。あなたがプレイしてきてください」

 

ん?

 

「お嬢様ができないのであれば私もしませんが…」

「遠慮はいりません。どうぞプレイしてきてください」

 

どうなされたのですかお嬢様。

 

「目を、キラキラさせていたではないですか」

 

お嬢様…

 

「ましろも楽しんでくれたほうが、わたしはうれしいです!」

「…ありがとうございます」

 

顔に出ていましたか…。まだまだ未熟者ですね。

折角ですのでお嬢様のご厚意に甘えさせて頂きましょう。

とはいえお嬢様を一人にするわけにもいきません。少し離れて護衛をしている同僚に連絡を入れて、少しの間仕事を変わってもらいましょう。

 

「あっ!鈴木さんも来てたんですね!」

「はは、奇遇ですね日万凛お嬢様。真白を待つ間、私とお話しませんかな?」

「します!ましろ、わたしはここで鈴木さんと見てますからね!」

「分かりました。…すいません鈴木さん」

「これくらいなら構いませんよ。行っておいで」

「ありがとうございます」

 

では待機列に向かうとしましょう。

 

 

 

「スワローズネストブースにようこそ!お一人様ですか?」

「ええそうです」

「他のお客様とペアを組んで頂く事になりますが、よろしいですか?」

「構いません」

「ではこちらへどうぞー!」

 

先に並んでいた方とペアになるようで、列のかなり前の方へ連れて来られました。

というかほぼ最前列ですが。

 

「お待たせしましたお客様!こちらの方とペアを組んで頂きます」

 

私とペアを組むのは女性の方。二十代の中頃くらいでしょうか?

おとなしい雰囲気の方です。

 

「え、メイド…?あの、よろしくお願いします…」

「真白と申します。よろしくお願いいたします」

「あ、えっと、葵です」

 

まずは挨拶。共に戦うのですから、大事な事です。

 

「あの、コスプレ…ですか?」

「いえ、仕事着です」

「…?あ、コスプレのお仕事を?」

「いえ、私は侍従をしております。つまりメイドです」

「本物…!?」

 

声は細々としておられますが、なかなかお喋りな方のようです。

 

「えっと、今日はどうして…?」

「お嬢様のご厚意で先行プレイをさせて頂く事になりました」

「お嬢様…!その、メイドさんって普段どんなお仕事を…?」

 

どうやらメイドに興味があるようでしたので、事細かに話して差し上げました。

なかなかお話が弾みまして、すぐ私たちの番が回ってきました。

 

「あの、こういうゲーム得意ですか…?」

「経験はあります。足手纏いにはなりませんよ」

「あ、その、頼りになります…」

 

なんというか、自信の無いご様子。

 

「不安ですか?」

「あ、いえ、その、ARは初めてなので…」

「私もです。何とかなると思いますよ。大丈夫です」

「あ、ありがとうございます」

 

スタッフの指示を受けながら、ゴーグル等を装着し、ARコントローラーを持って、ARスペースへ進んで行きます。ドキドキしますね…!おっと、冷静に。平常心。

横を見ると、葵様は相当緊張しておられます。私は笑いかけて、

 

「楽しみましょう!」

「あ…はい!」

 

いざ!スクラップ・ガンマン!




ヘナチョコ葵さんとワックワクのメイドさん。

身長制限は私が勝手に付け加えた要素です。
あんまり設定付け足したくはなかったんですが、致し方なし。
無理のある設定ではないと思いますので…!

出身鯖は多分次で明らかにできるかと思います。

プレイスタイルが際立ち過ぎてあちこちに身バレするサンラクさん好き。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。