ハリーポッターと忘却のハルピュイア   作:カネナリ

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彼女は練習を再開した

だが最初のように上手くいかないようだ

杖を振っては首をかしげている

 

「あの、どうしたら魔法が使えるのでしょうか。それが未だに分からなくて」

 

おそらくだが彼女は自分の魔力を感じていないのだろう

感じないものを動かすのはかなり難しい

彼も最初は苦労したものだ

自力で感覚を掴むのは一日や二日では不可能だ

 

そこで彼は召し使いにされたことを彼女にすることにした

彼は彼女に手を出すように言った

彼女は不思議に思いながら右手を差し出した

彼は触れることを一言断りをいれて左手で彼女の手を握った

彼は左手に魔力を溜めて彼女の手にゆっくり少しずつ流し込んだ

 

「はわわ、何か動いててむずむずします」

 

その動めいているのが魔力だ

魔法を使いたいという意思と溜めた魔力に応じて魔法は発動する

少なくとも彼はそれで魔法を使っている

まあ、ちょいとコツがいるがな

 

彼は手を握ったまま彼女に魔力を動かすよう促した

 

「は、はい、分かりました。動かしてみます。え~と、こう!こう?こう、あっ、こうかな?う~ん、こう?」

 

彼女は声と共に表情を百面相させながら魔力を動かそうとしている

時々彼女は力んで彼の手を強く握ったり、感触を確かめるようにニギニギしてきたりする

これは疚しいことではなくちゃんとした鍛練であることを明言しておこう

 

「こう、かな。あっ、動きました!こうですね!」

 

彼女は魔力を動かすコツを掴んだようで感嘆の声を上げた

コツを掴むのが随分と速い

興奮した彼女は魔力を動かしまくり彼の手に魔力を流し込んだ

それはもう、ドバッと

 

はいってきたそれは焦らしてないにしてはあまりにも大きすぎた

大きく、強く、速く、狭い道を押し広げていくようにそれは彼の中にはいり込んでいく

周りをえぐるようにそれを押し込まれた彼はジクジクとした痛みを覚えた

奥の方に何かが雪崩れ込んでいく

彼は離れようと身を捩ったが興奮してガッチリと押さえ付けている彼女の手から逃れることはできない

 

第二波が彼を襲う

今度のそれは第一波よりも大きかった

しかしえぐる痛みはもうすでに無くなっていた

はいってきたそれに慣らされて狭かった道は大きくなっている

はいってきたそれを彼はすんなりと受け止めた

彼はそれを少しだけ押し返し彼女に流し込んだ

 

「う!いった!え?なに?何が起こったの?」

 

彼女はバッと右手を離した

痛むのか左手で擦っている

このように急に流し込まれると激痛が走るようになっている

どのように感じるかは人それぞれだが気分の良いものではない

現に彼の左手はそれはもう酷いことになっている

そう、酷いことにだ

 

彼は彼女に魔力を動かすのは慎重にしないと危険だと注意した

怒られた彼女はシュンとした表情になってか細い声ですみませんと謝った

落ち込み過ぎだろう

 

しかし説明不足であった彼の方にも非がある

彼は意気消沈とした彼女にこんな短時間で魔力を動かせれるのは大したものだと褒めた

褒められた彼女はシュンとした表情を吹っ飛ばしてえへへとはにかんでいる

嬉しくなりすぎだろう

 

彼の気質はどちらかと言うと褒めて伸ばす方だ

断じて彼女の落ち込んだ姿に罪悪感を感じたわけではない

 

あれぐらい魔力を動かせれるのなら簡単な魔法ならすぐに使えるだろう

彼は彼女に魔力を少しだけ溜めてから杖を振るえば魔法が使えるはずだと言った

そして実際に杖を一振りしてマッチ棒を針に変えてみせた

 

「はい、やってみますね」

 

彼女は彼と同じように杖を振るうと杖先から青い閃光が迸りマッチ棒を何かに変化させた

 

「……また、ですか」

 

マッチ棒は姿形はそのままで何かに変化した

彼はそれを手に持ち前回と同様に魔力を流し込んだ

マッチ棒の先から青く細い光が一直線に出て天井を指し示した

 

両隣に座っていた生徒がぎょっとした顔でこちらを見たのですぐに消した

幸いにもマクゴナガル教授はこちらに背を向けていた

 

それはレーザーライトだった

その光の集束率は驚くほどに高くどんな暗黒でさえ刺し貫くであろう

星座を確認するときに便利だ

これも中々作ろうと思っても作るのは難しい一品だ

彼は彼女を褒めた

 

「嬉しいです。嬉しいんですけど、なんか違う気がします」

 

彼女は目的とそぐわない物を作り出す呪いにかかっているかもしれない

そういったところも含めて才能かもしれないが

 

彼女がすごく腑に落ちないといった顔をしていると前方でどよめきが起きた

ハーマイオニー=グレンジャーがマッチ棒を針に変えたようだ

 

マクゴナガル教授はその針を生徒たちにどんなに銀色で、どんなに尖っているかを見せた

やはり初日で変えた生徒は少ないのだろう

マクゴナガル教授はハーマイオニー=グレンジャーに誇らしげに微笑んだ

昔の自分を重ねて見ているようだった

 

彼は自分の机にある針に手をかざした

数秒の間の後彼が手をどけると針はマッチ棒に戻っていた

 

ハーマイオニー=グレンジャーは誇らしげにふんぞり返っている

この部屋は彼女を称賛する気持ちで一杯だ

そんな空間に自分も出来たと茶々を淹れるつもりは彼には無い

彼は空気を読める男だから

「いいんですか?せっかく針に変えたのに」

 

彼はいいのさと彼女に言った

ムードを壊すような無粋な真似はしたくないようだ

それに彼は

これ以上を求めるのは厚かましいだろう

 

程なくしてマクゴナガル教授は授業の終わりを告げた

皆を寮に戻るよう促している

今日の授業はこれで終わりだ

あとは自分の寮で明日の準備をするだけだ

 

「あの、私マクゴナガル先生に聞きたいことがあるので、先に行ってくれますか?」

 

彼女が彼の顔色を窺いながらそう言った

あのマッチ棒のことでもマクゴナガル教授に相談するのだろうが

どうせなら彼女と帰りたかった彼だがそんなことを強要する権利など持ち合わせていない

彼は敢えなく別に構わない、それじゃあ、僕は寮に戻るよと彼女に返した

 

彼女は彼の返答を聞いてほっと安心したかのような顔をしてマクゴナガル教授の元に歩いていった

そこまで深刻な問題なのだろうか

彼女から覚悟を決めた雰囲気を感じた

 

 

彼は教室を出た

これを機に「薬草学」の教科書を取りに行くことにしたようだ

彼は一階にある職員室に行きスプラウト教授を訪ねた

彼が扉をノックしようとすると扉が開いた

フリットウィック教授が丁度よく出てきた

 

「スプラウトかい?今は温室にいるはずだよ」

 

フリットウィック教授が親切に教えてくれた

彼はお礼を言い城の裏手にある温室に向かった

 

彼の二度目の来訪もスプラウト教授は薬草の世話をしていた

よくよく見ればとても奇怪な植物だ

風も吹いていないのにカサカサと動いている

耳をすませば声も微かに聞こえる

おそらくその植物はマンドレイクだ

授業で使うのだろうか

 

「おや?Mr.ヒートニー、あの子は元気になったかい?」

 

スプラウト教授に彼女は元気になったことを伝えた

 

「それは良かった。それで、あたしになにか用かい?」

 

彼は自分の教科書が机に置いたまま行ってしまったことを伝えた

 

「教科書かい?レイブンクローの男の子が二冊とも持っていったよ」

 

昼食時に渡してきたのは少女で彼女の教科書しか無かった

その少年と渡すタイミングが合わなかったというのは無いだろう

「変身術」の教室では最後尾に座っていた

教室から出るときに必ず彼の存在を認識する

声をかけるなり、教科書を渡すなり何かしらの行動は起こすだろう

 

彼は教科書が紛失したことに気づいた

彼の教科書が今どこにあるのか、誰が持っているのか彼には知るよしもない

いつかは出てくるだろうが明後日にある「薬草学」の授業には間に合いそうにない

彼はスプラウト教授に自分の教科書が戻ってきていないことを伝えた

 

「おや、そうかい。まあ、教科書を失くす子はごまんと居るから、あまり気にしないことよ。え~と、予備の教科書はこの棚に…」

 

スプラウト教授は薬草の世話をやめて階段の近くにある戸棚の戸を開けた

戸棚の中には何もあらず空っぽであった

 

「あら?おかしいわね、昨年はここにあったはずなんだが」

 

戸棚の中にはうっすらと埃が積もっている

彼はその埃の様子から放置されて一ヶ月は経っていることが分かった

ろくに掃除もされていないのか蜘蛛の巣まで張ってある

 

それにしても管理が疎すぎる

教科書も一応は高価な物だ

施錠ぐらいするものだろう

 

「すまないね、どうやら予備を切らしていたみたいだ。発注してここに届くまで一ヶ月はかかるから、それまで誰かの教科書を見せてもらいな」

 

彼は彼女と教科書を見ることにした

なに、一ヶ月程度のことだ

そこまで苦ではないだろう

ちなみに彼はレイブンクローに置いてある本棚にその教科書があることを覚えている

 

彼はスプラウト教授に了承の意を伝えレイブンクローの寮に向かった

明後日の授業を楽しみにしながら

 




魔力のくだり、あなたはどう感じましたか?(純粋な質問)
私?私は狙って書きました(汚れきった心)



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