ハリーポッターと忘却のハルピュイア   作:カネナリ

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その少年は魔法使い同士の親から生まれた

 

父は魔法省に勤めており母は魔法論の研究員だ

両親は優秀な存在であった

そこそこ裕福な家庭で大きい屋敷に住み

召し使いや屋敷しもべも居た

 

少年の両親は少年を愛していた

触れ合う時間はそれほど多くははなかったが確かな愛を少年に与え少年はその愛を感じた

 

少年はとても良い子供であった

両親が仕事に行くときは笑顔と共に激励の言葉で送り出した

召し使いの厳しい教育にも泣き言を言わず精一杯取り組んだ

 

少年はとても賢い子供であった

幼いながらも言葉を発することができた

読み書きに熟し数多くの本を読んだ

少年の両親は直接褒めたりはしなかったが父が召し使いに少年のことを自慢していたのを彼は知っている

 

少年は幸せな時を過ごした

 

そして少年は5回目の誕生日を迎えた

大きな屋敷から小さな屋敷へ移り住んだ

少年は初めて別荘というものを経験した

興奮覚めぬまま彼は床につき眠った

 

翌日の朝目覚めた少年は両親を探した

けれども何処にも両親の姿はなかった

 

両親が仕事で家を空けることはよくあったとはいえ両親がなにも言わずに何処かへ行ってしまうことは珍しいと感じた

そしてそのまま召し使いたちと共に日常を過ごした

 

半年が経つ頃には何かの異変を感じた

両親が半年も連絡をいれなかったことなど一度もない

それでも少年はいつもの日常が帰ってるのだと自身に言い聞かせた

 

両親がいなくなって一年も経つ頃にようやく少年は自分の召し使いに両親が何処に居るのか尋ねた

 

召し使いは何も言わず少年を抱きしめた

召し使いの目は少年にどう伝えるべきか悩み揺れ動いている

少年の背に回された手は拙い動きで子供をあやすかのようにして擦っている

珍しく緊張をあらわにしている召し使いの様子から両親はもう帰ってこないことを少年は理解した

 

段々彼の視界がぼやけてきた

今はもう遠い昔のように感じるその光景は霞んで見えなくなってきた

彼はそのあと何をしたかどうにも思い出せないまま遠のいていき

 

「ゲコッ」

 

彼は何かの鳴き声がすぐ近くから聞こえた為意識を覚醒させ目線を下に向けた

彼の膝には鎮座しているヒキガエルが一匹

つぶらな瞳で彼を見つめている

 

いつの間にか眠っていたようだ

何時からこのヒキガエルが居たのか寝惚けた彼は全く見当もつかなかった

膝に感じる妙な温もりに困惑しながら今しがたやって来た車内販売のおばさんからかぼちゃパイをひとつ買った

 

かぼちゃパイを一口齧った

サクサクした食感にかぼちゃのほんのりした甘味が口の中に広がりとても美味しいと彼は感じた

 

かぼちゃパイを食べ進め彼が飲み物も買っとけばよかったなと思ったとき

いかにも鈍そうな少年がやってきた

 

「あ!トレバー、こんなとこに居た。駄目じゃないか勝手に抜け出したら。あの、それで、その子を返してくると嬉しいなあ、なあんて、思っていたり?」

 

相当慌てているようだ

先程ぶつけたのか額に青い痣があった

目を回しているかのように揺れ動いている少年の瞳は彼と目を合わせようともしない

なにやら彼に捲し立てている

ヒキガエルの飼い主だと彼は理解した

 

返して欲しそうだったので

彼は空いている片方の手でヒキガエルの背を掴み少年に渡した

 

少年は精一杯の感謝を述べた後

逃げるようにヒキガエルを大事そうに抱え去っていった

何もしていないのに随分と彼に怯えているようだ

最後の一口であるかぼちゃパイを口に放り込み手に付着した生地のカスを払った

ペットの管理ぐらいしっかりしてほしいものだと彼は思った

 

彼は数時間程眠っていたようだ

窓から空を見れば昼ごろは一片の雲もない晴れ模様であったのに現在は分厚い雲に覆われている

僅かに見えた太陽は地平線に沈もうとしている

彼は雨が降りそうな天気だと思った

 

結局このコンパートメントに入って来る人はいなかった

彼はトランクを上にあげた意味がなかったなと思った

トランクを引きずり出し新品のローブを取り出して着替えた

 

彼の召し使いが用意したこのトランクには魔法がかけられており見た目以上に物が入るようになっている

もう少し小さいのは無かったのか気になるところだ

見栄を張ってこれで良いと言った彼も彼だか

 

彼が着替え終えトランクから水筒を取り出し水を一口含んだ

 

汽車が減速し始めた

窓の外の流れていく景色がゆっくりになっていく

どうやらもう少しで到着するようだ

 

彼は水筒を仕舞い中に住み着いている猫を一撫したあと蓋を閉じた

 

暫し待った後汽車が終着駅に停車した

彼は重たいトランクに憂鬱そうに顔をしかめながら掴み車両から降りた

 

「荷物はこちらにお願いします!」

 

ホグワーツの生徒たちが教師らしき人物に荷物を渡している

 

彼はこれ幸いにとトランクを預けた

自分の部屋に運んでくれるようだ

 

後方から新入生を呼ぶ声が聞こえた

彼が振りかえれば毛むくじゃらの大男が新入生たちに呼びかけている

 

彼はそちらに足を向けた

大男の周りには新入生たちが群がっている

取り敢えず彼は近くに居て大男の指示を待つことにした

 

喧騒とした駅だ

在校生であろう先輩方は駅から出ていっている

新入生と在校生でホグワーツに行く道が違うのだろうか

馬の鳴き声が微かに聞こえたので馬車であると見当をつけた

正直今の彼には不必要な事柄だ

 

そうこうしているうちに新入生が集まったのか移動を始め船着き場に出た

彼は毛むくじゃらの大男の指示に従い船に乗り込んで闇夜に浮かぶホグワーツへ向かう

 

窓から漏れ出る光がこちらを誘っているかのように揺らめいた

 


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