ハリーポッターと忘却のハルピュイア   作:カネナリ

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扉を潜り彼がまず目についたのはたくさんの人々だ

駅で見かけた在校生たちと教授らが新入生たちに歓迎の拍手を送っている

彼はとても暖かな気持ちが込み上げてくるのを感じた

 

次に彼は天井に目が移った

大量の蝋燭が浮かびその奥には本当の天気だと見違えるような景色がどこまでも続いている

ゴーストたちが飛び交い新入生たちに歓迎の言葉を投げ掛けている

 

彼が手を引っ張っていた彼女は感嘆の声をあげている

興奮しているのか彼の手ごとブンブン振っている

そうしていると彼女は手を握っていたことを思い出してすぐに離した

 

彼女はご、ごめん、とか細い声で謝ってきた

彼は友達なんだから手を繋ぐぐらい当たり前だよ、とさらっと言った

そんな彼に彼女は人前でするのは、恥ずかしいです、と返した

無理強いは良くないことを彼は知っているので二人きりの時に手を繋ぐことを密かに決めた

 

先導していた老女がこちらに振り返ったので新入生たちは足を止めた

彼らの前には大人用の椅子と古びた帽子が置いてある

 

すると帽子が歌い出した

新入生も在校生も皆耳を傾けている

歌の内容は寮の紹介のようなものだと彼は思った

帽子が歌い終えると拍手の雨と共に組分けが始まった

 

老女が次々と名前を呼ぶ

呼ばれた者は帽子をかぶって組分けされていった

ある人はグリフィンドール

ある人はレイブンクロー

ある人はパッフルパフ

ある人はスリザリンへと

そして

 

「ヒートニー=レーニン」

 

彼の名前が呼ばれた

 

彼は椅子に歩み寄り腰掛けて帽子をかぶった

 

「ほう、君はとても優しい子だな。優しさに満ち溢れている。けれど、それ以上に何かを求めている思いが強い。それは、知識のようだね。君の頭の中には潤沢に知識が詰め込まれているのに、まだまだ足りないと知識を欲している。何故そんなに求めるのか分からないけれど、そんな君にはあそこがぴったりだ。

レイブンクロー!

 

帽子が叫び彼が住むべき寮を宣言した

彼は立ち上がり帽子を椅子に置いた

彼はレイブンクローの空いている席へ向かった

レイブンクローの皆はこちらへやってくる彼を不躾な目で見ている

歓迎されていないと彼は感じた

男なのに女性の名前なのが気持ち悪く思われているのだろうか

こういったことは彼にとって初めてなのでどうにも判別がつかなかった

 

彼が席に着いたら名前を呼ぶ声が再開した

彼がどうしたものか考えていると

 

「ジュリア=レイラ」

彼女の名前が呼ばれた

彼女は椅子に座り帽子をかぶった

数十秒の間の後帽子が叫んだ

 

レイブンクロー!

 

レイブンクローの生徒が発する歓声と共に彼女は立ち上がり笑顔を浮かべ帽子をかぶったままこちらに小走りでやってきた

彼は彼女を見ながら自身の頭を指差した

 

「あたま?頭がどうかしました?」

 

不思議に思い彼女は手で頭に触れようとし頭の上の存在に気がついた

彼女は顔を真っ赤にし慌てて次の人に渡した

そして彼の隣に縮み込むようにして座った

 

「うぅ、レンくん。初っ端からドジってしまいました。もうおしまいですぅ」

 

本当は友達の彼と同じ寮に入れたことが嬉しい彼女だが

恥ずかしがってまともに彼の顔を見ることができないでいた

気にすることはない、よくあることさ、と彼は彼女と同じことをしているネビルと呼ばれたヒキガエルの飼い主を見ながら励ました

 

それでも中々立ち直れない彼女

そこで彼は大丈夫だってリラちゃん、なんとかなるさ、と彼女を愛称で呼んだ

彼女は彼に恥ずかしさと戸惑いの混じった目を向けた

 

彼は自分だけ愛称で呼ばせるのは変だと思ったから自分も彼女のことを愛称で呼ぶことにした、と伝えた

嫌ならば普通の名前で呼ぶことも伝えた

 

「別に私は構いませんよ。あ、でも、愛称で呼び合うのってすごく友達っぽいですね!」

 

とても嬉しそうにはにかみながら彼女は言った

彼も彼女の笑顔が見れてご満悦だ

 

気づけば組分けの呼ばれて居ない者が残り少なくなっている

着々と組分けの終わりに近づいていくなか一人の少年の名が呼ばれ先程までの喧騒が嘘のように静まり返った

あの丸眼鏡の少年だ

名を「ハリー=ポッター」

生き残った男の子

ホグワーツに集う人々があの少年に注目している

 

彼は魔法史の本に何度か出てきた名前だということを思い出した

魔法界の英雄がキングズ・クロス駅で迷っているとは思いもしなかったと彼は驚いた

 

丸眼鏡の少年は顔の強ばりから非常に緊張しているのが見てとれた

少年は今椅子に腰掛け組分け帽子をかぶりしきりに何かを呟いている

 

組分け帽子は長い苦悩の末少年の住むべき寮は

グリフィンドールであることを宣言した

その瞬間グリフィンドールから爆発的な拍手喝采が巻き起こった

 

少年は長年の呪縛から解き放たれたかのように安心仕切った顔でグリフィンドールの席へ向かった

グリフィンドールの生徒は魔法界の英雄を暖かく迎い入れた

 

残り数人の組分けを行い慎みなく終えた

髭の長いお爺さんが教壇の前に進み出て新入生に歓迎の意を伝えた

あのお爺さんは彼の屋敷に入学の手続き書を直接届けに来た人だ

貫禄と思慮深さから偉大な人物だと思ったがホグワーツの校長をしているとは思わなかった

手をひとつ鳴らしただけですべての机の上に沢山の料理が並んでいる

 

彼は自分の皿に食べ物を盛り付け食べていく

普段は召し使いの監視のもとマナーに準じて上品に食べることが求められている

とても静かな食事が彼の普通であったが騒がしいのも良いものだなと彼は思った

 

「美味しいですね」

 

彼はそうだね、こんなに豪勢なのは誕生日以来だ、と彼女に返した

 

「魔法ってすごいですね。何でもできそうです」

 

彼は魔法にもできないことがあるしここまでの魔法を行使するには相当な時間がかかるだろう、と彼女に言った

 

「なら頑張らないといけませんね」

 

彼女はそう意気込み握りこぶしを作ってフンス、と鼻息を荒らげた

彼はそんな彼女を見てほほえましい思いが心を満たした

 

 

料理を食べ進め彼がデザートのかぼちゃプリンを食べていると校長先生が教壇にのぼった

校長先生は注意と連絡を話した

彼はクィディッチが二週目にあることが分かり彼女に観に行こうか、と言った

 

「ふぁい、とっても楽しみですぅ」

 

ぽわぽわしている彼女がいた

欠伸をして目を擦っている

とても眠たそうだ

彼は寝惚けているのを良いことに彼女の柔らかい頬を指でつついていた

彼女はくすぐったそうな声を出したが彼の指を拒むことはなかった

 

校長先生が寝る前に校歌を歌うことを生徒に言った

校長先生の指揮と共に統一性の欠片もないメロディーで生徒たちが歌いだした

彼はこういった手合いは楽器ならなんとかなるが歌は正直無理である

 

歌が終わると校長先生は寮で眠るよう生徒たちに急かした

彼はレイブンクローの監督生の後に続いた

大広間を出て移動し急な螺旋状の階段がある塔に入った

 

彼女は疲れと満腹感からか非常に眠たそうで足元がおぼつかない

とても危なっかしいので彼は彼女の手を握って階段を上ることにした

 

階段を上りきり監督生がブロンズ色の鷲のドアノッカーに何事か呟いた後ドアが開いた

 

他の生徒たちと共にドアを潜るとそこは円形の大きな部屋であった

中には優雅なアーチ型の窓があり壁には青とブロンズ色の絹が掛かっている

ドーム型の天井には星が煌めいており足元の暗い濃紺の絨毯をほどよく映えさせている

 

机と椅子そして大量の本が仕舞われている本棚が幾つも置かれている

そびえ立つ白い大理石でできている石像は創設者の一人

ロウェナ=レイブンクローその者だろう

教科書の一つ「魔法史」にて創設者たちの肖像画を見ているので分かった

 

石像の奥には二つの扉が見える

女子と男子に別れて生徒たちが入っていく

どうやら部屋へと続いているようだ

 

彼は彼女におやすみ、また明日、と言った

彼女はふにゃふにゃとなにやらわからぬ言葉を口にし扉の先に入って行った

 

彼も扉を潜った

扉の先には螺旋階段があった

昇りきった先に廊下が続いており両脇には扉が等間隔に配置されている

 

自分の部屋はどこか探しはじめたが監督生に呼び止められた

どうやら彼の部屋に案内してくれるようだ

監督生の表情は嫌そうに歪んでおり面倒臭いという思いがひしひしと伝わってくる

 

「こっちだ、新入生」

 

彼は監督生に連れられ奥の方へと歩いていく

一番奥で前から5つ目の扉で止まった

 

彼はその部屋に入った

正面には小窓がある

机と椅子に空の本棚が部屋の隅に置かれている

左にはクローゼットが二つ並んでいてその横には扉があった

右には天幕つきの大きいベットがありシーツの上には彼のトランクが置いてある

 

「中の物は好きに使え。あと、あそこの扉はシャワー室だからな」

 

彼がご丁寧にどうも、と監督生に言えば

 

「俺は案内したからな」

 

と言い早々に立ち去ってしまった

夜の帳は既に落ちている

良い子は寝る時間だ

 

彼はトランクをどかしローブを脱ぎ去り靴を飛ばしてベットに潜り込んだ

目を瞑れば睡魔がすぐさまやってきた

さすがの彼でも疲れがたまっている

今日の出来事を思い起こすと穏やかな気持ちになった

 

独り寂しい部屋で彼の意識は微睡みのなかに消えていった

 




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